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1章・箱庭
21.一等星アンタレス
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「妹……俺の妹……セシア……」
クロノは膝を着いたまま涙を流していた。
「正気に戻ったかクロノ…。聞かせろ。12年前、お前に何があった。」
「……あれはセシアが死んだ翌日のことだった。夜、俺の部屋に変な奴が来たんだ。」
クロノは少しづつ話し出した。顔つきはもう昔のクロノ・アンタレスの顔になっていた。
「変なやつ?」
「あぁ、そいつは俺の左肩を強く押してきたんだ。抵抗しようにも…何故か身体が動かなかった。」
「そいつ、なにか喋っていたか?」
「いいや何も喋っていなかった。ただ俺の左肩を推し続けた。いつの間にか俺の左肩から奴の手が身体に入り込んできた。それ以降、次の日まで記憶がなかった。ただ、朝目が覚めた時、左肩には縫い目があった。それから頭の中で……変な声が聞こえるようになった。俺はその声を聞くうちにセシアが死んだのは俺のせいだと認識した。俺が弱いせいでセシアが死んだと思い込んだんだ。」
「なぜだ、その声はお前になんと言ったんだ。」
「分からない……覚えていない……。」
アルタイルは話を聞きながらクロノの左肩の方へ目をやるが、腕を根元から切り落とされているため、クロノの縫い目のついた左肩は地面に転がっていた。
「俺は…どうして……俺は…………」
クロノは困惑しているようだった。
「もういい。」
アルタイルはそう言って正座をし、クロノを寝かせてクロノの頭を自分の膝へ持ってきた。
クロノはさらに困惑しているようだった。
「セシアならきっとこうするだろう。」
アルタイルのその言葉にクロノは少し安心したような顔をした。
「どうあったってお前は間違ったことをした。その事実だけは確かだ。私はお前を許さないし、セシアも悲しむだろう。師匠もきっと向こうでお前に一喝入れるだろうな。」
「そう…だろうな……アルタイル……俺は…強かったか……?」
クロノは遠くを見るような目をしていた。
「あぁ、強かった。」
「そうか……やっぱりセシアには敵わないな…」
「私はセシアじゃないぞ?」
「そういう意味じゃない、こっちの話だ……」
「そうか。」
アルタイルは、冷たくなったクロノをしばらく膝に寝かせていた。
周囲には、地面の大きな亀裂、散らばった瓦礫の山、燃える木造の何か、少し遠くに行けば幾千もの死体が転がっている。
そんな激戦を物語る戦場と、クロノの頬を濡らした涙を照らすように朝日が上り出した。
戦場に立つ生き残ったごく僅かな者達は、もう戦う気力など残ってはおらず、ある者は戦友の遺品を持って、ある者は仲間の肩を持って拠点へと戻っていった。
クロノは膝を着いたまま涙を流していた。
「正気に戻ったかクロノ…。聞かせろ。12年前、お前に何があった。」
「……あれはセシアが死んだ翌日のことだった。夜、俺の部屋に変な奴が来たんだ。」
クロノは少しづつ話し出した。顔つきはもう昔のクロノ・アンタレスの顔になっていた。
「変なやつ?」
「あぁ、そいつは俺の左肩を強く押してきたんだ。抵抗しようにも…何故か身体が動かなかった。」
「そいつ、なにか喋っていたか?」
「いいや何も喋っていなかった。ただ俺の左肩を推し続けた。いつの間にか俺の左肩から奴の手が身体に入り込んできた。それ以降、次の日まで記憶がなかった。ただ、朝目が覚めた時、左肩には縫い目があった。それから頭の中で……変な声が聞こえるようになった。俺はその声を聞くうちにセシアが死んだのは俺のせいだと認識した。俺が弱いせいでセシアが死んだと思い込んだんだ。」
「なぜだ、その声はお前になんと言ったんだ。」
「分からない……覚えていない……。」
アルタイルは話を聞きながらクロノの左肩の方へ目をやるが、腕を根元から切り落とされているため、クロノの縫い目のついた左肩は地面に転がっていた。
「俺は…どうして……俺は…………」
クロノは困惑しているようだった。
「もういい。」
アルタイルはそう言って正座をし、クロノを寝かせてクロノの頭を自分の膝へ持ってきた。
クロノはさらに困惑しているようだった。
「セシアならきっとこうするだろう。」
アルタイルのその言葉にクロノは少し安心したような顔をした。
「どうあったってお前は間違ったことをした。その事実だけは確かだ。私はお前を許さないし、セシアも悲しむだろう。師匠もきっと向こうでお前に一喝入れるだろうな。」
「そう…だろうな……アルタイル……俺は…強かったか……?」
クロノは遠くを見るような目をしていた。
「あぁ、強かった。」
「そうか……やっぱりセシアには敵わないな…」
「私はセシアじゃないぞ?」
「そういう意味じゃない、こっちの話だ……」
「そうか。」
アルタイルは、冷たくなったクロノをしばらく膝に寝かせていた。
周囲には、地面の大きな亀裂、散らばった瓦礫の山、燃える木造の何か、少し遠くに行けば幾千もの死体が転がっている。
そんな激戦を物語る戦場と、クロノの頬を濡らした涙を照らすように朝日が上り出した。
戦場に立つ生き残ったごく僅かな者達は、もう戦う気力など残ってはおらず、ある者は戦友の遺品を持って、ある者は仲間の肩を持って拠点へと戻っていった。
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