復讐の慰術師

紅蓮の焔

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6章 喜びの楽園

56話 勧誘

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「…」
レンゼは今、無言で月光に照らされた街の中を走り回ってロゼを探していた
するとレンゼの目の前に大頭領が立って、無言で腰に携えた2本の刀を抜刀し構えた
「どけぇ!」
「ふんっ!」

ドフンッ!

大頭領は刀を振り、レンゼは思いきりそれを殴った
するとレンゼ達を中心に旋風が巻き起こり、レンゼは大頭領を蹴って一旦離れると別の道に曲がって逃げた
「あの目の模様は…」
大頭領は刀を腰に納めるとニヤリと笑った





レンゼが小道を進んでいると突然背中に何かを撃ち込まれて倒れた
「ぐぅ…! ロゼ…」

ダン! ダン! ダン!

3発、足に撃ち込まれてレンゼは手だけで動こうとしたが肩も撃たれ、顎だけで動いていると拘束された
「ぐぞ…ぐぞっ!」
レンゼが暴れようとすると頭を何度か強打されて気絶した





「うぅ…」
レンゼが目を覚ますと鉄の板に枷で手足を繋がれて拘束されていた
「よぉ、目ぇ覚ましたか?」
レンゼに話し掛けて来たのはサングラスを掛けた髪を逆立たせて、袖の破れた黒いジャケットに、黒く少し破れたジーンズを履いている男だった
「誰だよ! 外せよおい!」
「落ち着けって…俺は誘いに来ただけだぜ?」
「…何に誘いに来たんだよ…」
「俺の仲間にならないか?」
男がニヤッと笑うとレンゼはキッと睨み付けた
「っざけんな! 誰がお前なんかの仲間になるか!」
「ならなくても良いぜ? ただし…あの小娘、名前はたしかロゼ? だったか? あいつを連れ去った奴を俺は知ってんだぜ? 大人しく俺の仲間に入れば連れ去った奴を教えてやるよ」
「おい…なんで知ってんだよ…」
男はくっくっくっと笑いだした
「俺の事を覚えて無いってのか?」
すると男の手が黒い何かに覆われ、掌にグリードの顔があった
「グリード…」
『どうだ? 俺の仲間に入るか? そうすればあいつの弱点、能力、知ってる限りを教えるぜ?』
グリードの顔がニヤリと笑うとレンゼは首を傾げた
「能力?」
『あぁ? なんだ、知らねぇのか? お前も転生者じゃねぇのかよ!』
「…なんでそんな事、分かるんだ?」
『なぜ? さぁな、勘だ。転生者に出会うと直感で分かるのよ。あ、こいつは転生者だってな』
グリードの根拠の無い自信に呆れながら溜め息を吐いた
「分かったよ…仲間に入る。ただし、ロゼを取り戻すまでだ。良いな?」
『ああ、良いぜ? 俺は飽く迄も裏表の無い楽しい関係にしたいからな!』
グリードは掌からいつの間にか消えていて、男はニヤニヤ笑いながらレンゼの枷を外した
「それじゃあ案内するぜ。俺の新しい仲間にこの『喜びの楽園ジョイパラダイス』をな…」
そしてレンゼはグリードに誘われるがままにその部屋から出ていった





「よいしょ…よいしょ…」
その頃、アリサは部屋の中から這い出ようとしていたが途中で嵌まってしまい、なんとか抜け出そうとしたが、ついに力尽きてしまった
「あれ?」
そこへ、いつの間にかその場から離れてつまみ食いをしながら食事を持って来たライズリックに気付かれ、ライズリックは食事を隣に置いてアリサをグイグイ引っ張り始めた
「いたたたたた! 痛い痛い!」
「後少しだから我慢して!」
そして壁を少し破壊しながらアリサを引っ張り出すとライズリックも這って行けば入れる位の穴が出来た
ライズリックが穴から上半身だけを中に入れて部屋の中を確認すると隣にシルビアを見付けてホッと安心すると抱き寄せた
「良かった~…」
一旦シルビアを離すと穴から抜け出して、シルビアを引っ張り出した
その頃アリサは壁に頭を強く打って気絶していた
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