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8章 計画前夜…月明かりの下で…
84話 違和感
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「ガキが! 夢見てんじゃねぇぞ!」
何が男の逆鱗に触れたのか更にアイシスの腹を蹴り続ける
それに対しアイシスは吐血しても、腹が変色しても全くの無抵抗で蹴られ続けた
「はあ…はあ…」
男が息を切らした頃にはアイシスの髪は乱れに乱れ、血飛沫が口の周りに飛び散り、ピクリとも動かなくなった
3人の間には噴水の水の流れる音と荒い吐息しか聞こえない
「チッ…無駄に体力使わせやがって…」
男はアイシスに唾を吐くと辺りを見渡した
(誰もいないな…)
人が誰も通っていない事を確認するとその場に背を向ける
そしてレンゼの左頬を見詰める。あれだけの出血なのに今は流れようともしていない。つまりは血液が動いていない
(今日を逃げ切れば俺の勝ちだ!)
不敵な笑みを浮かべて立ち上がると男は再び足を動かし始めた
「ったく…この後も仕事が入ってるって言うのに…」
「…おい、レンゼ!?」
その場へ戻って来たアベルに見付かり、血の池の中で倒れているレンゼとその少し先で倒れているアイシスを見て驚きの表情を浮かべている
「誰だ! 誰がこんな事…!」
アベルは辺りを見渡すが人が1人として見当たらない
「アベル様~!」
「ししょ~!」
2号に背負われ、自分の方へ歩いてくる2号達の声を聞いてハッとした
「レンゼ様は見付かりましたか?」
「みつかりましたか?」
「来るな!」
2人は首を傾げ、歩いてくる
「来るなって言ってるだろうが!」
その声にビクッとして2号は立ち止まった
「レンゼ様は見付かりましたか~?」
「みつかりましたか~?」
「アリサさんとシルビアさんの所に戻っていてくれ!」
「わ、分かりました…」
2号はアベルに背を向けて、通ってきた道を戻って行く
「後、シン君はお母さんの所へ帰れ!」
「どーしてですか!?」
「これ以上、お前と俺は一切の関わりを持たない。帰れ!」
「で、でも「帰れって言ってるだろうが! このガキが!」」
アベルの怒鳴り声を聞いてシンは泣き叫んだ
「ア、アベル様…」
「2号! そいつを家に帰して来い! もし家の場所を教えない様ならその辺りに捨てて来い!」
「うわぁぁああぁぁ…!」
2号は振り返って鬼気迫るアベルの表情を目に入れるとその場を去った
「おい! おいレンゼ! しっかりしろよ!」
レンゼを担ぐと少し先に倒れているアイシスも反対の肩に乗せた
「早く治さないと…くそっ…」
自分の力不足により、レンゼの傷を治せない事を悔やんで頭の真上がキラリと光る空を仰いだ
「そうか! 軍の本部に行けば前みたいに!」
希望の光が見えて来た事に表情も明るくして建物の上から見える軍の本部を見詰めると、それに目標を定めて街道を通ってその建物へ近付こうと必死の思いで走り出した
「はあ…はあ…くそっ! こっちでも無い!」
「こっちでも無い!」
どれだけ走り回っても同じ様な景色がアベルの後ろへ飛んでいく
(次は右! 今度は右しかねぇ! 今度も右しかねぇ! 左! 真っ直ぐ! …やっぱりおかしい! さっきから同じ道を通ってるみたいだ!)
そして…
「また行き止まりかよ…」
何度もぶち当たる絶壁がレンゼ達が生き延びるのを拒んでいる様な気がしてならないアベルは、再び戻って走り始めた
「はあ…はあ…くそっ…早く…しない…と! …レンゼ…達が…死ぬ…!」
今この時も、レンゼのぶち抜けた頬からはレンゼの荒い吐息が聞こえてくる
血は既に止まっているが血が物凄い量、出ていたのでそのまま出血多量死する可能性もある
「はあ…はあ…ぐっ、はあ…はあ…!」
ずっと走りっぱなしだったので肺がズキズキ痛み出し、腕が少し冷えてくる
(くそっ! くそっくそっ! 何で近づけないんだよ!)
頭で愚痴を吐きながらも、必死で走る
ズザァ!
足が震えだし、その拍子に転けてレンゼ達がアベルの肩から落ちる
(やべぇ…立てねぇ…)
疲労のせいか、何のせいなのかは分からないが足が震えて力が入らない。更には踝の辺りや太股が痛みだし起き上がるのすら困難だ
(なんで…なんでこんな事に…俺が道を簡単に覚えれたら…あの時ちゃんと連れて行けば…)
目の前で転がっている2人まで、這いつくばって腕の力だけで近付く
そして辺りを見渡すがなぜか通行人が全く見当たらない
(おかしい…なんで誰も…?)
今更ながらその疑問が浮上して来て、腕でなんとか辺りを見渡し確認するが、自分達以外誰も姿を現さない
(な、何かあったのか…?)
高鳴る鼓動を深呼吸で抑えると、考えても仕方がない…と、少し休憩を取る事にした
何が男の逆鱗に触れたのか更にアイシスの腹を蹴り続ける
それに対しアイシスは吐血しても、腹が変色しても全くの無抵抗で蹴られ続けた
「はあ…はあ…」
男が息を切らした頃にはアイシスの髪は乱れに乱れ、血飛沫が口の周りに飛び散り、ピクリとも動かなくなった
3人の間には噴水の水の流れる音と荒い吐息しか聞こえない
「チッ…無駄に体力使わせやがって…」
男はアイシスに唾を吐くと辺りを見渡した
(誰もいないな…)
人が誰も通っていない事を確認するとその場に背を向ける
そしてレンゼの左頬を見詰める。あれだけの出血なのに今は流れようともしていない。つまりは血液が動いていない
(今日を逃げ切れば俺の勝ちだ!)
不敵な笑みを浮かべて立ち上がると男は再び足を動かし始めた
「ったく…この後も仕事が入ってるって言うのに…」
「…おい、レンゼ!?」
その場へ戻って来たアベルに見付かり、血の池の中で倒れているレンゼとその少し先で倒れているアイシスを見て驚きの表情を浮かべている
「誰だ! 誰がこんな事…!」
アベルは辺りを見渡すが人が1人として見当たらない
「アベル様~!」
「ししょ~!」
2号に背負われ、自分の方へ歩いてくる2号達の声を聞いてハッとした
「レンゼ様は見付かりましたか?」
「みつかりましたか?」
「来るな!」
2人は首を傾げ、歩いてくる
「来るなって言ってるだろうが!」
その声にビクッとして2号は立ち止まった
「レンゼ様は見付かりましたか~?」
「みつかりましたか~?」
「アリサさんとシルビアさんの所に戻っていてくれ!」
「わ、分かりました…」
2号はアベルに背を向けて、通ってきた道を戻って行く
「後、シン君はお母さんの所へ帰れ!」
「どーしてですか!?」
「これ以上、お前と俺は一切の関わりを持たない。帰れ!」
「で、でも「帰れって言ってるだろうが! このガキが!」」
アベルの怒鳴り声を聞いてシンは泣き叫んだ
「ア、アベル様…」
「2号! そいつを家に帰して来い! もし家の場所を教えない様ならその辺りに捨てて来い!」
「うわぁぁああぁぁ…!」
2号は振り返って鬼気迫るアベルの表情を目に入れるとその場を去った
「おい! おいレンゼ! しっかりしろよ!」
レンゼを担ぐと少し先に倒れているアイシスも反対の肩に乗せた
「早く治さないと…くそっ…」
自分の力不足により、レンゼの傷を治せない事を悔やんで頭の真上がキラリと光る空を仰いだ
「そうか! 軍の本部に行けば前みたいに!」
希望の光が見えて来た事に表情も明るくして建物の上から見える軍の本部を見詰めると、それに目標を定めて街道を通ってその建物へ近付こうと必死の思いで走り出した
「はあ…はあ…くそっ! こっちでも無い!」
「こっちでも無い!」
どれだけ走り回っても同じ様な景色がアベルの後ろへ飛んでいく
(次は右! 今度は右しかねぇ! 今度も右しかねぇ! 左! 真っ直ぐ! …やっぱりおかしい! さっきから同じ道を通ってるみたいだ!)
そして…
「また行き止まりかよ…」
何度もぶち当たる絶壁がレンゼ達が生き延びるのを拒んでいる様な気がしてならないアベルは、再び戻って走り始めた
「はあ…はあ…くそっ…早く…しない…と! …レンゼ…達が…死ぬ…!」
今この時も、レンゼのぶち抜けた頬からはレンゼの荒い吐息が聞こえてくる
血は既に止まっているが血が物凄い量、出ていたのでそのまま出血多量死する可能性もある
「はあ…はあ…ぐっ、はあ…はあ…!」
ずっと走りっぱなしだったので肺がズキズキ痛み出し、腕が少し冷えてくる
(くそっ! くそっくそっ! 何で近づけないんだよ!)
頭で愚痴を吐きながらも、必死で走る
ズザァ!
足が震えだし、その拍子に転けてレンゼ達がアベルの肩から落ちる
(やべぇ…立てねぇ…)
疲労のせいか、何のせいなのかは分からないが足が震えて力が入らない。更には踝の辺りや太股が痛みだし起き上がるのすら困難だ
(なんで…なんでこんな事に…俺が道を簡単に覚えれたら…あの時ちゃんと連れて行けば…)
目の前で転がっている2人まで、這いつくばって腕の力だけで近付く
そして辺りを見渡すがなぜか通行人が全く見当たらない
(おかしい…なんで誰も…?)
今更ながらその疑問が浮上して来て、腕でなんとか辺りを見渡し確認するが、自分達以外誰も姿を現さない
(な、何かあったのか…?)
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