復讐の慰術師

紅蓮の焔

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8章 計画前夜…月明かりの下で…

85話 ピンチ

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(なんとか動かせる様にはなったな…)
まだ痛んでいるが、立てる様にはなったので後は勢いに任せて走り切ろうと考えた
「に、しても…」
未だに息の整わないまま、レンゼ達を担ぐと周囲を見渡す
「こんな昼間、なのになんで、誰もいない、んだ?」
問い掛けてはみるが、その返答は無い事は分かりきっているので本部を視界に入れるとそれを見失わない様に首を上げながら歩いていく


その頃、
「アベル様にも何か考えがあるのですよ」
「グズッ…」
鼻を啜り、目を赤く腫らして俯いている男児を慰める様に背中を擦る
現在、2号達がいるのは子供達が遊ぶ様な公園、その端に佇む長椅子ベンチに並んで座っていた
2号達の前では無邪気に遊ぶ子供達の姿が見られる
「お、お母さんも、目が見えなくても気が付きますよ? か、帰りましょう?」
「やだ…ししょーといる…」
椅子の上で小山座りをしてそこへ顔をうずめるとそのまま2人の間には静寂が降り立った
「…そ、そうだ!」
突然口の前で手を叩く2号に少しビクッと体を震わせて顔を上げてきた
「なんですか?」
「私と一緒にアベル様にご相談しましょう! 私も入ればきっとアベル様だって「むりだよ…ししょーのあのこえにはぜったいにかえないこえだった…おかーさんとおなじ…『だいじょーぶ』がはいってたんだ…でも…ししょーと…もっといたい…」」
そうして更に縮こまり、2号は再び思考を巡らせる
「…?」
その時におかしな点に気が付いた
「静か過ぎませんか?」
先程まで聞こえて来た子供達の声もろとも聞こえなくなっていたので辺りを見渡す
すると子供の声どころか姿すら見当たらない
「シンくん!」
「な、何?」
「おかしいです…私と手を握っていてください!」
「う、うん…」
2号はシンと手を繋いで公園の中を見て回った。しかしそれでも子供達…それどころか大人の姿すら全く見えずに不安に駆られ、その気持ちを隠しきれずに辺りを満遍なく見回す
「おねーちゃん?」
首を傾げる男児の声でハッとしてニコッと笑って見せる
「大丈夫ですよ。私もなんとかアベル様を説得して見せますから!」
それにシンはコクりと頷いた
それと同時にシンの後ろに降り立った黒い影に驚いて咄嗟に横に倒れた
手を繋いでいたのでシンも吊られるように倒れた
「勘、良いんだね…」
そこには細身の男が立っていた

カチッ

その時、公園の中心に立っている時計台は短針が12と1の間、少し12寄りを指していて、長針は4を丁度指した


その頃、アベルは必死の形相で街の中を走り回っていた
「はあっ、はあっ、はあっ!」
しかし全く近付いている気配すら無い
「くそがッ!」
段々と肩から聞こえてくる息が荒くなって来て更に焦り始める
「はや、早く…!」
次の分かれ道で左に曲がり、再び本部を見る。離れてはいないがやはり近付いてもいない
「なんでッ!? おかしいぞ!? 誰もいないし…! 近付けない! なんでだよ!」
アベルが怒鳴ると右肩から喘ぎ声が聞こえて来た
「レンゼっ!?」
「はあ…はは…悪いな…しくじっちまった…」
「喋るんじゃねぇよ! 今…今すぐ本部に連れて行くから! そこで治して貰えるからよ!」
「…アベル…」
「なんだよ! 早く…早く行かねぇとお前が…!」
涙を流していたアベルにレンゼは目を細める
「お前の…やりたい…事は…そんな…事なのか?」
「え?」
「俺を…助けた…所で、何に、なる…? それより…俺より…アリサ達を…頼む…! 気付いてる…筈だ…人が……いな…い……事…に…」
レンゼの表情が更に険しくなり呼吸が荒くなっていく
「俺なら…大丈夫だ。だから…アリサ達を…頼む! アリサ達を助けてくれ! 俺にとっての…最後の家族なんガハッ!」
頬から血が飛び散り、アベルの右頬を赤い液体で塗りたくった
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