復讐の慰術師

紅蓮の焔

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10章　入院生活

１１４話　目覚め

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（ん？　ここは…？）
気が付くと見知らぬ天井と人影が見えた
（まさかまた転生！？　もう懲り懲りだし嫌だよ！　異世界感無いしまだ復讐も終わってないのに！）

ピチャッ

（ん？）
右頬に掛かった液体を拭こうと手を動か…せなかった
（いってええぇぇぇぇぇ！）
痛みが少し治まると自分の身体を良く見る
そこで気が付いた。腹、腕、脚等、体のあちこちにギプスが巻かれており、足はよくテレビ等で見る様に布に吊り下げられている
（…って事は…まだ死んでな～い！　これであの傷男に復讐出来る！　口ピアスも！　棒男も！　どうやって殺してやろうか…）
生きている事に喜び過ぎて、性格がおかしくなっていると頬を叩かれた
（っ！？　いってぇぇなぁぁ…おい！）
その方向にキッと目を向けるとアリサが泣いていた
（アリサ…？　ごご、ごめんな…？　だから泣くのやめて…？）
すると突然身体を揺らされ全身に激痛が迸る
（いたたたたたたたたたたたたたたたたたた！　痛い！　勘弁して！？）
身体が揺らされ終わるとホッとしてアリサを見た
すると上体が少しだけ上がり、腰がズキッと痛む
（え…？　ちょ、ちょっと待て…）
アリサは首を傾げて口を動かす
（…冗談だろ？）
レンゼの米神に冷や汗が流れる
固唾を飲み干し乾いた笑いを浮かべ、大きく息を吸う
（わあアアァァあッ…！　痛ぁ…でも…確信した…）
大声で叫んだつもりが全く聞こえなかったのだ
（難聴…だっけ…？　これ）
すると突然アリサが振り返り、ドアから白衣を纏った男が入ってきた
（誰これ…）
口をパクパクと動かしているが全く聞こえない
暫くそれを眺めているとアリサは目を見開いた
それと同時に男が白衣のポケットからペンとメモ帳の様な紙を取り出し、何かを書いていく
一枚、千切ってレンゼの顔の前に持ってくる
『あんたの耳は蝸牛って所が両方、破壊されて聞こえなくなってる。辛うじて死んではいないが、これは流石に慰術でも治すのは無理だ。あれは自然治癒力を促成する技であって治らない物を治す事は出来ない。ゼロをどれだけ掛けてもゼロなのと同じでな。後、あんたの身体には打撲６箇所、重軽傷含む骨折23箇所、肉離れ（重度）、貧血、栄養失調、臓器負傷…今の所発見されてるのでそれ位だ。他に聞きたい事があれば聞くといい』
それを読んでレンゼは絶句した
（え？　えぇ～…じゃあ耳以外はいつ治るんですか？）
白衣はくしゃくしゃと紙を丸めてゴミ箱に捨てると再び書き綴った

ビッ

そして再びレンゼの顔の前まで持ってくる
『早くて後半年、長くて５年』
（俺以外の人はどうなったんですか？）
『黒髪の子供ならてめぇの隣で寝てる。起きたのが１０ヶ月前だ』
首を動かしてアリサの反対側を見てみると苦笑して手を振ってくれた
（じゃ、じゃあ俺が起きたのってアレが起きてからどれ位経ったの？）
『大体、１年だ』
それを読んで顔を顰め、頭の中を整理し始めた
（えぇ～と、確か瓦礫の下で化物と殺り合って、気付いたらここで寝てて…そしたら耳が聞こえなくて…こんなになってて…）
『俺は仕事があるから行くが、何か用があれば彼女に聞いてやれ。ずっと付きっ切りだったんだからな』
その紙をレンゼの腹の上に置くと部屋を出て行ってしまった
（早くて半年…長くて５年…それまで復讐は出来ねぇのかよ…）

ビッ

アリサが紙をレンゼの顔の前まで持って来る
『ねぇ、こっちに来てからあんな事してたの？』
（いや…してない…断じてしてません…）
サラサラとペンで紙に書いていく
『嘘言ってもバレてるんだから正直に話して？　さもないと拘束してでも家に連れて帰るわよ？　それでも逃げるなら貴方を探して旅する。見付からない場合は貴方の性癖を広めていくし、見付ければその場で連れて帰る。本当の事を話して』
（…まあ、こっちに来てから…数回…ちゃんと話せてるよな？）
口を動かしている感覚はあるがやはり聞こえないと不安になる物で聞いてしまう
『えぇ、聞こえてるけど…もう危険な事…しないでね？　復讐込みで…』
ホッと胸を撫で下ろしたくなるが動かせないのでそのまま息だけ吐いた
（それは聞けない相談だ）
そう答えると走り書きの紙が提示された
『なら連れて帰ります。貴方はもう充分頑張ったわよ。もう良いのよ？　耳が聞こえなくなって、こんなに傷だらけになって…もう良いじゃない』
アリサがポロポロと涙を流すとレンゼは目を逸らした
逸らした先にアベルがいて、そこからも視線を逸らして目を瞑った

［作者のコメント］
はい、作者です。今回はお知らせしたい事がありまして…
まあ、主人公レンゼの耳が聞こえない状態となったので心の声と口に出す声を区別する“かっこ”を知らせに来ました

（）＝口に出す声

【】＝心の声

後にレンゼの耳代わりの者を出すつもりなのでそこからは再び元に戻ります
分かりにくくてすみません…（ペコリ）

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