復讐の慰術師

紅蓮の焔

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10章 入院生活

115話 食事

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【どうしよう…】
そう考えているとアリサが顔を上げた
アリサの視線の先を見るとアベルが居た
【なんだ、話してたのか…】
大きく溜め息を吐いて壁を見詰める
【どこで…間違ったんだろうな…アリサを残して、復讐果たしたと思えばすぐに返り討ち、その次は無関係者アリサ達を巻き込んで…その上こんなに心配掛けてたなんて…】
何もする事が無くてボーッとしていると顔の前に紙が提示される
『それじゃあお昼ご飯持って来るから待ってて』
コクッと頷くと紙を丸めて捨て、部屋を出て行ってしまった
【迷惑掛けない為には…やっぱりアリサと距離置くだけじゃ駄目なのか? 嫌われて…嫌われ嫌われ、心底嫌われて見放された上で出て行けば…やっと出ていってくれた…そう思ってくれるかも知れない。そうすればアリサを危険に晒す事も無いし…でもそれだと今の俺じゃ聞こえないんで生活なんて出来ないよなぁ…どうすれば良いんだよ…】
壁を見詰めていると目の前で手が振られた。腕の先を見ると車椅子に座ったアベルがレンゼのベッドの隣にいた
【やっぱり異世界感無いし…】
心で嘆息するとアベルに小さく首を下ろした
(あ、アベル。ごめんな…俺のせいでそんな事にさせて…)
口を動かすとアベルは首を横に振った
(許してくれるって事か?)
アベルはゆっくりと口を動かし始めた
(い?)
アベルは首を振る
(き?)
またもや首を振る
(し?)
またまた振られる
(ち?)
コクコクと首を縦に振った
そして口の動きを変えた
(あ?)
ペチッと頭を叩かれ、その衝撃が身体に伝わり地味に痛く感じる
(痛いなぁ…『ち』の後はなんなんだよ聞こえないんだから仕方ないだろ?)
何か怒鳴っているが全く聞こえないので意味が無い
(あ~あ…腹減った~! 体動かしたい~! 疲れた~! 考えたくない~!)
口を大きくして言うとアベルの米神に青筋が浮かび始め、笑顔が引き攣りだした
【とは言っても何も出来ないし考える位はしないと頭まで腐るしなぁ…そう言えばリハビリ込みで半年かな? 若しくはリハビリ抜き? 多分、抜きだな…】
長い溜め息を吐くと影の形が変化して、アベルの方を向くと拳をゆっくりと顔の横まで上げていた
(怒ってんの?)
アベルが小さく頷くとレンゼは苦笑した
(落ち着けって何で怒ってるのか知らねぇけど怒っても良いこと無いぞ?)
そう言うと堪忍袋の緒が切れたのか拳を振り翳してきた
それに驚いて目を瞑る。しかしいつまで経っても拳は来ない
(あれ?)
車椅子を押してレンゼに背中を向ける

ピッ

目の前に提示された紙の出処を見るとアリサが立っていた
『ご飯持って来たから』
(どうやって食べろと!?)
突っ込むとパンを一口サイズに千切ってレンゼの口まで持って来た
パンの乗った皿は銀のトレイに乗っていて、トレイには他にスープ、サラダ、平たいステーキ2枚、牛乳が乗っていた
(…もしかして全部赤ちゃんみたく『あ~ん』で食べろ…と?)

コクッ

(嫌だからな! そんな事死んでもしたくなッ! …いてて…)
目尻に涙を浮かべるとアリサはもう片方の手で書き綴った
紙を千切ってレンゼの前に紙を提示
『それならどうやって食べるの? 何も出来ないんだから大人しく食べなさい。この超絶天才美少女があ~んってしてあげるんだから感謝しなさい!』
ぐぐぐ…と唇を噛むと目を逸らして頬を紅潮させながら口を開ける

ハムっ

もぐもぐと口に入れられたパンを噛み締めてゴクンと飲み込んだ
すると再びパンを持って来られる

もぐもぐ…ゴクンッ!

(喉渇いたんだけど)
そう言うとコップに入った牛乳を口に持って来られ、それに口を付けると優しく傾けられた
【なんか…釈然としない…】
ご飯を食べ終わると睡魔が襲って来て眠りに着いた
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