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12章 放浪
166話 殺し
しおりを挟むガキンッ!
「ッ!?」
胸を背後から撃たれたが金属音が鳴り響き弾いた
「「「「…え?」」」」
この時、賊とマルクの思いが一瞬だけ重なった
「ど、どうなってんだ…?」
マルクが撃たれた背中を見ようとしていると賊達は茫然と立ち尽くしていた
「と、とにかく今の内に…」
レンゼの方に戻ろうとしたマルクは背後から聞こえてきた声に冷や汗を垂らした
「待ちなさい」
「待てって言われて誰が待つか!」
マルクが走り出すと後ろから溜め息が聞こえ、背筋を凍らせた
ゴゴゴゴゴ…
突然マルクの周りに壁が生成されていった
「ッ! 出せ!」
光が無くなると触れていた壁を頼りに出口が無いか模索する
「おい、お前は何者だ? なんでここに来た…? 銃弾を跳ね返せる?」
何処からか聞こえてくる声に手を振り回す
「くっ…質問攻めか? …俺はしがない旅の者さ。銃弾を跳ね返せるのは産まれ「親分! 入口の方に化物みたいなガキが!」」
(あのチビ、一体何をやったんだ…!?)
「…ほう。化物みたいな…か? お前ら、そいつを殺して来い」
「おいやめろ! あいつは関係ねぇ!」
壁を叩くとまた声が聞こえてきた
「俺らの縄張りに入った挙句に部下に手ぇ出したんだ。無関係じゃあ終わらせねぇよ」
(どうすりゃ良いんだよ指揮官殿…)
今更体が震えて何も見えない恐怖が襲い掛かる
「そう言えばお前は人を殺した事。あるか?」
「…ッ! …あ、ある!」
「なら何故震える? 人を殺した事が初めてだからじゃ無いのか? 体に纏わりつく血液。死の間際に見せる顔。その手に残る人殺しの感覚。1つ遅れてやってくる殺しに対する恐怖。どうだ? 怖いか? 恐ろしいのか? それとも…ただ気持ち良かったのか?」
マルクは頭を抱えて歯をガチガチと鳴らし始めた
「やはり…人を殺めた事に対する嫌悪感か…先程までの威勢はどこに行った?」
「五月蝿い…!」
「何、人を殺めた所で何も恥じる事は無い。ここの連中は皆、人を殺めた経験は豊富だからな」
「黙れ…!」
「よく聞けよ? 殺人者が今まで通りのうのうと生きていけると思うなよ? 村に戻れば蔑まれ、街に行けば嫌悪感をぶつけられる。そして国から逃げれば問答無用で軍の敵だ…どうだ? 俺達と来ないか? 一緒にあいつらを虐め、犯し尽くし、搾取して甘い汁を吸うんだよ。どうだ? 入る気になったか?」
耳を塞いでしゃがみ込んだ
「もう…喋んな…!」
「おいおい、傷付くこ「お、親グフッ!」」
ドサッ…
壁の外で人が倒れる音が聞こえてきた
「うん。良いと思うよ? 人を殺したくないって気持ち。それが普通だもんね。それが無い奴が、人の事を考えない奴が犯罪者になるんだよ。大丈夫。マルクは犯罪者じゃ無い。人を殺して考えてる。怖がってる。だから墜ちる事は無いよ。マルク…」
ガラス張りの壁の奥にしゃがみ込んで泣き崩れるマルクを見詰めて溜め息を吐いた
「私風邪引いてるんですよ。だからマルク連れて逃げても良いですか?」
レンゼが挙手して言うとマルクの前に立っていた男がレンゼの方に振り返った
「お前が…報告通りガキだダハッ!」
地面から突然、生えてきた土の棘に腹を刺され吐血しレンゼを睨みつけた
「誰がガキだ? あぁ? 風邪だからって大人しくしてりゃあ随分と調子に乗ってくれたなぁ?」
「い、良いのか!? 俺を殺せばお前も人殺しの仲間入りだぞ!」
「ごめん。悪いけどもう人殺しだわ」
その声に驚愕の表情を分かりやすく見せるとレンゼは片手で口元を押さえてもう片手で地面を触った
ザシュ! ザシュ!
「ぐああぁぁぁぁあああ…!!」
足の裏から棘が勢い良く伸びてきて足を貫通した
「ぐっ…! これ以上罪を重ねるつもりか!? お前のお母さんも悲しむぞ!」
「…母さんは殺されたよ。お前たちみたいな賊共に…」
感傷に浸っても悪くなる可能性が上がるだけなのでレンゼはしゃがみ込んで両手を地面に着けて魔力を流す
ドシュッ!
賊長の脇に突き刺さり大きな悲鳴が洞窟内に木霊した
「マルク…落ち込むな。人を殺してしまった時点で悪じゃ無いんだ。人を殺して後悔しない奴が悪なんだ」
ガラスに近付いて地面に魔力を流すと棘がガラスを突き割った
「戻ろ? 疲れたし…気分も…悪…ッ! オロェェエェェェエエェェエ……!」
胃液を吐き出して口元を拭うと青い顔で手を差し伸べた
「…そう…だな…そうだな。俺が元気じゃ無くてどうすんだって話だよな!」
マルクを見て微笑みフラッと倒れるとマルクはレンゼを抱え上げ洞窟の外に出る
その途中で洞窟内には壁が建てられていたり棘があちこちに生えており、血の滴る音と鉄の臭いで充満していた
「あ…その体、戻さないと化物と思われるよね…」
レンゼがマルクの首筋に両手を乗せて魔力を流すと咳き込んだ
それと同時にマルクの腕が元の肌色に戻っていった
「ありがとうな」
マルクは背中で咳き込むレンゼを見て微笑むと外に向かって歩いて行った
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