復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
259 / 315
15章 向かう先には……

253話 車

しおりを挟む
「ごちそうさま」
フォークを中に入れ蓋を閉めると隣に置いて息を吐いた
「ん。それ直すから渡して」
自分の口元に付いた米粒を親指に付けて口に入れるとその手でレンゼに手を伸ばす
「あ、うん」
弁当箱を渡すと、鞄の中に仕舞い、再び食べる
そしてジョンが食べ終わり、次にアリサ、最後にロゼが食べ終わり少しした所で……
『セントラル。セントラル……(以下略)』
「あ、着いたみたい」
よいしょ。とアリサが立ち上がるとレンゼ達も釣られて立ち上がった
「ほらほら! 早く行かないとしまっちゃうよ?」
慌てて列車から降りると呼吸を整える
「……それで、どこ行く?」
ジョンがレンゼの肩にポンッと手を置くとレンゼは首を捻った
「どうするかなぁ……」
「何かしたくてこっちに来たんじゃなかったの?」
腕を組むレンゼを下から覗き込むようにして顔を見る
「……それは、そうだけど……でもなぁ~」
頭を掻いて首を捻っているレンゼの隣で、ロゼは感嘆の声を漏らしながら駅の向こうを見詰める
「ねぇねぇ! 早く行こっ!」
満面の笑みで駅の向こうへと走って行くロゼを追い駆けてアリサも走り出した
「ま、考えてる事は大体分かるけどそれは後でも良いんじゃないかな?」
「そう……ですかね」
「アリサちゃん達も楽しみみたいだし、少しだけでもこの状況を楽しめば良いんじゃないかな?」
駅の出入り口、改札で手招きするアリサ達の元に歩いて向かう
「遅い! おバカさんな上に遅いなんてホンットおバカ!」
「分かったから早く行くぞ」
駅員に切符を渡すと駅から出て、行き交う人々の前で立ち止まった
「う~ん……どこ行く? リズさんに見付かっちゃダメだし……あ! シルちゃんの所行く?」
「そう言えばいつの間にそんな風に呼ぶ事になったんだ?」
「それはね~。レンゼが逃げて隠れてた時にそう呼んで欲しいって言われたから」
ロゼが微笑むアリサの袖を引っ張る
「ねぇねぇ。シルちゃん? の所早く行こ?」
「ええ。そうね」
ロゼをギュッと抱き締めるとすぐに立ち上がって手を繋いだ
「ハァ……まあいいや。早く行こう」
大きく伸びをして一歩、踏み出す
するとレンゼの眼前を左から丁度車が横切って行く
「あれ? レンゼは!?」
突然目の前から消えたレンゼを探して左右を見回す
「居た!」
ロゼが指を指した先には先程の車のドアの取っ手に鞄の紐を引っ掛け風に揺られて去って行くレンゼが居た
「ちょ! 追い駆けるわよ!」
「うん!」
「まさかこんな事になるなんてね……」
そう言うと三人はその車を追って走り始めた


「はぇ?」
突然の強風に思考が追い付かず、少し遅れて頭が回り始めた
「ちょ! 何!?」
肩から紐が外れ、両手で強く掴んだ
「は、はやっ!」
それでも強風は止まずにレンゼを襲う
「止まれぇ!」
足元から、もとい車からすれば背後から怒鳴り声が聞こえる
「るっせぇなぁ! こっ……」
窓から顔を出した男と目が合い、微笑んだ
「は、初めまして~……」
その後、片目だけうっすらと開けると男がニヤッと口角を上げたのが見えた
「おらぁ! てめぇらそのまま追っかけて来てみろ! こいつをブチ殺すからなァ!」
車の中から拳銃を取り出し銃口をレンゼに向ける
「はッ!?」
突然の事にレンゼはその紐を掴んだままギュッと目を瞑った
しかし、いつまで経っても衝撃が来ないのでホッとして左目を細く開ける
「くそっ……この風のせいでよく聞き取れねぇ!」
その目で男の顔を見上げると鞄の紐を掴み顎を小さく刳った
その意図を読み取ったのか、レンゼは小さく頷きつつも大きく息を吐き、ゆっくりと息を吸う
「『中に入れ』だとぉ? どうやって入れって言うんだよ……」
行動を起こさないレンゼを見ると舌打ちしてレンゼの視界から男の姿が肘より先が消えた
それと同時に甲高い音と共にレンゼが前へ放り出される
「うぎゃああ!」
しかし男の腕はレンゼを離さなかったようで車の正面のガラスに叩き付けられた
「……これならっ」
邪魔そうにレンゼの足の間や腕の間を見つつ、後ろを振り返りながら片手で車を進めていく
漸く開いた窓に手を引っ掛ける事に成功したレンゼは溜め息を吐いた
すると男は乱暴に鞄を助手席に放り込みその手を掴むと無理矢理引っ張ってレンゼを中に引き込もうとする
「いたたたたたっ!」
なんとかガラスに足の裏を付けると同時に頭を端にぶつけて中に放り込まれた
反対側のドアに再び頭をぶつけ頭を押さえる
「ったく……お前、誰だよ」
その声にハッとしたレンゼは慌てて座り男を睨み付けた
「人に名乗る時はまず自分から……じゃないのか?」
「そんな事知るか。なんなら今この場で殺す事も出来るんだぞ? 早く名乗れ
銃口を向ける男相手にパァッと一瞬だけ顔が明るくなったレンゼは首を横に振って再び男を睨み付けた
「レンゼ……」
「そうかい。で? 何用で引っ掛かってた?」
「歩いたら引っ掛かった」
男は一瞬、眉を顰め銃をレンゼと反対側に置くと再び後ろを確認した
「ったく……しつこいな……」
「何を……した」
「ちよっと……な。お前に言う義理も無ければ俺に利益があるとも思えないから言わねぇ」
再び前を向いた男はそのまま車を走らせた
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...