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18章 その手の温もりは何処(いずこ)へ
299話 涙に濡れて
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階段を登って行き目的の階層に辿り着くとゆっくりと奥へ向かって歩いて行く
一つの扉の前に立ち止まりそれをノックする。それと同時にドタドタと駆け足が聞こえ、レンゼはすぐに後ろに下がった
バタンッ
「レンゼくん!」
「リズさん。今までありがとうございました」
と、ペコリとお辞儀をして見せて顔を上げる
「……え?」
「実は、戻ろうかと思いまして」
「本当に? もう、危ないことはしない?」
ええ。と頷くともう一度リズにお辞儀をした
「良かったぁ……。でも、今日は遅いから休んで行ってね?」
「……はい」
ギュッと握られた両手を見詰め、しっかり頷き返すとリズはジーっとレンゼの顔を見詰め返し、もう一度同じ質問を繰り返した
「はい。本当です。ちゃんと帰ります」
レンゼの顔に変化は見られなかったようでリズはホッと溜め息を吐いて、鼻を啜るとレンゼの頬に頬を擦り合わせた
「ッ……! ど、どぅしたんですか?」
「次いつ会えるか分かんないからこうやって──」
「せめてここではやめて下さい。見られると、恥ずかしいので」
と、頬を掻いてそう伝えると中に入って行き、これまで何をしていたのかを話して──
バンッ!
ビクッと、体を震わせた。リズが机を叩いたのだ。立ち上がりながら、叩いた。リズも体を震わせている。レンゼと違う所は一瞬だけではなく、長いこと体を震わせていたことだ
「サラ、さんが? どうして? なんで? ワケが分からない……なんでサラさんが出て来るの? ねえ、どうして?」
「あ、えっと……それは、ですね……」
「……言って!」
圧されて、全てを話した。サラのことを。過去のことを……。そして、最後に何かを言おうと口を開けた。が、レンゼは口を噤んだ
「どうしたの? まだ、何かあるの?」
落ち着いた様子で、もう椅子に座って対面からレンゼを見下ろしている
「いえ、何かがあった気がするんです。思い出せない。遠い昔のような、すぐ側にあるような……なんだかよく分からない。何も、分からないんです」
「そう……」
音を立ててキッチンの方へ向かって行く
「今日も、シチューにしよっ」
そう、振り向いた。笑っていた。ただ、ただ──
その日の夜
レンゼは目を覚まし、抱き着くリズを押し退けてベッドから降りた
「なんなんだ、一体。思い出せない。全く。何か、大切なモノだったような気がするのに……」
ベランダから差し込む月明かりが眩しく見えて、その白が懐かしく思えた。のにも関わらず何を忘れたのか、ただ、分からない。そう呟いて部屋を出て行った
向かった先はあの大きな建物。全てを終わらせる、あの建物。やけに静かだ。明かりは月明かりとガス灯のみ。随分と明るいが、コツコツ。リズから寝る前に貰った靴が木霊するほどの静けさに緊張が高まっていく
「やはり、来ましたね」
「ッ! そりゃあコッチのセリフだ。スペービァ!」
ニヤッと笑っていた。一対一なのに、勝てる見込みなど無いに等しいのに。それでも笑っていた
「今まで、お疲れ様でした。もう、お別れです」
「ああ。今度こそお前を倒して全てを終わらせる」
「減らず口ですね……。まあ良いでしょう。冥土の土産に一つ、いい事を教えて差し上げましょう」
「いい事?」
「ええ。プライドの事です」
少しだけ後退り、顎を引いてコクリと微笑むスペービァを見詰める
「プライドと貴方の戦闘。良かったですよ。まさかプライドが敗けるとは思ってもみませんでしたから。愉しませてもらいました」
スペービァがフフッと笑った。それは愛らしくも見えるが辺りの様子と異なって、異なり過ぎて異様だ
「やはり、イラの子なのですかね。その悪運も今回まで、ですよ」
と、ゆっくり歩いてレンゼに近づいて行く
「あと、プライドが私の子という件ですが……。何度かヴァニティーの胎内に戻してるんですよ。何度も、殺して」
「殺して……?」
「ええ。そう言えばイラが隠した物を探すためにどこかの村に盗賊を仕向けたこともありましたねぇ。あの時は被害を最小限に抑えるように言って置きましたから。運が良かったですね」
「運が?」
何を言っているのか分からない。そう言いたげに眉を顰めた途端、涙が頬を伝った。息が、肩が震える
そして、空を見上げてハッとした
レンゼはまるで──
「当初の目的を……忘れてたなんて……なんで、なんでっ、なんで!」
「さあ。知りませんよ。何故でしょうね」
ニコリと微笑んだスペービァを見詰めて涙を拭くと睨んで威嚇する
「お前の、せいなのか? アレも、全て、お前のせいか……?」
「どうなんでしょう。何を言っているのか、私には検討が付きません」
「……どう、言おうと良い。今は、母さんの仇が目の前に居る。ただそれだけで良い」
頭へ手を乗せ、爪を立てる
ガリガリガリガリ……
「お前も、盲目も、ブッ殺して全てを終わらせてやる!」
「出来るものなら……どうぞ」
ぅぁぁぁあああああああ!
始まった
二人の戦闘が、再び──
「ごぅフッ!」
「……やはり、弱くなりましたね」
始まったと同時に拳を鳩尾に突き付けられ終わりを告げた
一つの扉の前に立ち止まりそれをノックする。それと同時にドタドタと駆け足が聞こえ、レンゼはすぐに後ろに下がった
バタンッ
「レンゼくん!」
「リズさん。今までありがとうございました」
と、ペコリとお辞儀をして見せて顔を上げる
「……え?」
「実は、戻ろうかと思いまして」
「本当に? もう、危ないことはしない?」
ええ。と頷くともう一度リズにお辞儀をした
「良かったぁ……。でも、今日は遅いから休んで行ってね?」
「……はい」
ギュッと握られた両手を見詰め、しっかり頷き返すとリズはジーっとレンゼの顔を見詰め返し、もう一度同じ質問を繰り返した
「はい。本当です。ちゃんと帰ります」
レンゼの顔に変化は見られなかったようでリズはホッと溜め息を吐いて、鼻を啜るとレンゼの頬に頬を擦り合わせた
「ッ……! ど、どぅしたんですか?」
「次いつ会えるか分かんないからこうやって──」
「せめてここではやめて下さい。見られると、恥ずかしいので」
と、頬を掻いてそう伝えると中に入って行き、これまで何をしていたのかを話して──
バンッ!
ビクッと、体を震わせた。リズが机を叩いたのだ。立ち上がりながら、叩いた。リズも体を震わせている。レンゼと違う所は一瞬だけではなく、長いこと体を震わせていたことだ
「サラ、さんが? どうして? なんで? ワケが分からない……なんでサラさんが出て来るの? ねえ、どうして?」
「あ、えっと……それは、ですね……」
「……言って!」
圧されて、全てを話した。サラのことを。過去のことを……。そして、最後に何かを言おうと口を開けた。が、レンゼは口を噤んだ
「どうしたの? まだ、何かあるの?」
落ち着いた様子で、もう椅子に座って対面からレンゼを見下ろしている
「いえ、何かがあった気がするんです。思い出せない。遠い昔のような、すぐ側にあるような……なんだかよく分からない。何も、分からないんです」
「そう……」
音を立ててキッチンの方へ向かって行く
「今日も、シチューにしよっ」
そう、振り向いた。笑っていた。ただ、ただ──
その日の夜
レンゼは目を覚まし、抱き着くリズを押し退けてベッドから降りた
「なんなんだ、一体。思い出せない。全く。何か、大切なモノだったような気がするのに……」
ベランダから差し込む月明かりが眩しく見えて、その白が懐かしく思えた。のにも関わらず何を忘れたのか、ただ、分からない。そう呟いて部屋を出て行った
向かった先はあの大きな建物。全てを終わらせる、あの建物。やけに静かだ。明かりは月明かりとガス灯のみ。随分と明るいが、コツコツ。リズから寝る前に貰った靴が木霊するほどの静けさに緊張が高まっていく
「やはり、来ましたね」
「ッ! そりゃあコッチのセリフだ。スペービァ!」
ニヤッと笑っていた。一対一なのに、勝てる見込みなど無いに等しいのに。それでも笑っていた
「今まで、お疲れ様でした。もう、お別れです」
「ああ。今度こそお前を倒して全てを終わらせる」
「減らず口ですね……。まあ良いでしょう。冥土の土産に一つ、いい事を教えて差し上げましょう」
「いい事?」
「ええ。プライドの事です」
少しだけ後退り、顎を引いてコクリと微笑むスペービァを見詰める
「プライドと貴方の戦闘。良かったですよ。まさかプライドが敗けるとは思ってもみませんでしたから。愉しませてもらいました」
スペービァがフフッと笑った。それは愛らしくも見えるが辺りの様子と異なって、異なり過ぎて異様だ
「やはり、イラの子なのですかね。その悪運も今回まで、ですよ」
と、ゆっくり歩いてレンゼに近づいて行く
「あと、プライドが私の子という件ですが……。何度かヴァニティーの胎内に戻してるんですよ。何度も、殺して」
「殺して……?」
「ええ。そう言えばイラが隠した物を探すためにどこかの村に盗賊を仕向けたこともありましたねぇ。あの時は被害を最小限に抑えるように言って置きましたから。運が良かったですね」
「運が?」
何を言っているのか分からない。そう言いたげに眉を顰めた途端、涙が頬を伝った。息が、肩が震える
そして、空を見上げてハッとした
レンゼはまるで──
「当初の目的を……忘れてたなんて……なんで、なんでっ、なんで!」
「さあ。知りませんよ。何故でしょうね」
ニコリと微笑んだスペービァを見詰めて涙を拭くと睨んで威嚇する
「お前の、せいなのか? アレも、全て、お前のせいか……?」
「どうなんでしょう。何を言っているのか、私には検討が付きません」
「……どう、言おうと良い。今は、母さんの仇が目の前に居る。ただそれだけで良い」
頭へ手を乗せ、爪を立てる
ガリガリガリガリ……
「お前も、盲目も、ブッ殺して全てを終わらせてやる!」
「出来るものなら……どうぞ」
ぅぁぁぁあああああああ!
始まった
二人の戦闘が、再び──
「ごぅフッ!」
「……やはり、弱くなりましたね」
始まったと同時に拳を鳩尾に突き付けられ終わりを告げた
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