復讐の慰術師

紅蓮の焔

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18章 その手の温もりは何処(いずこ)へ

302話 宵闇の灯り

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「ん……んんん……」
ベッドの上で目を覚ました

ブヂッ……

何かが切れたような音が聞こえて慌てて明かりを付けた。体中を確認してみても何もない。ただ、パジャマのボタンが取れていたので新しい物に付け直す
今度はベッドも確認してみたが何もない。やはり、何も千切れてはいない
「来世で、リオンと家族になれたら、お前も、リオンも、幸せだろうな」
外から聞こえてきた声の主を確認しようとカーテンを開く
この時に一度こけてしまい、パジャマがめくれてしまったが誰も見ていないのでセーフだ
──そして外を覗いた
「ひっ! な、ななな! え? ぁ……え? な! えっ?」
暫くの間、この動作を繰り返してようやく落ち着きを見せた頃、もう一度窓の外を確認して悲鳴を上げた
それと同時に辺り一帯の電気が一斉に付き始める。すると勿論、隣の電気も……だ
大きな音を立ててドアが開き、天井にぶら下がっている電球が揺れる
「今、何時だと思ってるのかなぁ……」
入口の所に手をついて欠伸を掻く。その男は少し痩せていて少し顔色が悪い。髪もボサついていていかにも不健康に見える
「だだだ、だって……! そ、外っ! 外が! 外で!」
「そと?」
ドアを開けて入って来た男は少女を退かして窓の外を覗く
「ッ……! シル、電話して来て。軍に。誰かが、殺された。と……」
「わ、わわ、分かった!」
ブンブンと頭を縦に振るだけで全く動こうとしないので男は素早く部屋から出て階下へ降りて行った


ガヤガヤと、騒がしくなり始めた
先程、レンゼの後ろの方で悲鳴が上がったのだ。彼女ではない。別の少女の声だ
周りが騒がしくなろうと関係ない
レンゼは只々本部に向かって突き進む。走り抜ける。民家の灯りが波のように付き始め、それと同じような速度で走り抜ける
少し走って行くと途端に民家が電気を付けなくなった
後ろの方はまだ明るいので走って走って走り続ける
「はぁっ……はぁっ……」
そろそろ息も切れ始めた頃合い。前方から数人の、黒を纏った男女が談笑しながら歩いて来たのだ
すぐに民家と民家の間に隠れ、別ルートから向かう。が、狭い路地は光が差し込まず、闇しかない。月明かりがあっても街道さきほどとの明暗の差に目が慣れず、少し入ってから壁に凭れて座り込んで口を塞ぎながら大通りの方を尻目に見る
「ふぅ……ふぅ……。速く行けよクソッ……!」
息を潜め、大通りに視線を向け続ける。光が黒い服に遮られ、ニヤッと笑みを浮かべる
しかし、突如として一人の青年がレンゼの方を向く。目を瞠り、息を止めた。動きを止める。微動だにしない
ずっと一点だけを見詰めている青年の方へ目を向けず、ギュッと目を瞑る
「どうした? 何か居たのか?」
「……いえ、犯人ホシではなかったみたいです」
「そうか。なら、行くぞ」
青年の肩を叩き、通り過ぎて行く。その足取りはとても重く聞こえてきた。まるで、死地を彷徨う亡者のような……
「ッ……! はぁっ! はぁっ……! はぁっ……はぁっ……」
胸を押さえ、去って行ったことを確認したレンゼは首を振って立ち上がる
「ッ……。まだ、居るのかよ……」
小声でそう呟いて闇の奥へ目を向ける。そして尻目で大通りの方へ振り向き、闇の中へ歩いて行った


「お父さんっ! 人が一杯出て来たよ! 私は流石に見たくないけど!」
「シル、寝ておき……って言っても無理そうだね。部屋に戻ってなさい」
「えぇ~! だって詰まんないし……」
「シル?」
その笑みは暗く、頬が引き攣っていた。その笑みが訴えているのだ。『早く寝ろ。せめて戻れ』と
「わ、分かりました……」
ゴクリと生唾を飲み込み、トボトボと階段を上がって行く。チラチラと目線をチラつかせながら登っていると足元に包丁が突き刺さり慌てて部屋に戻って行った
「……一応、聴取されるだろう。でも、まさか、レインさんが? いや、あの人は理由も無しに殺しはしないと思いたい。でも、時期が重なり過ぎている……やはりレインさんを行かせたのは間違いだったか」
男は黙り込み、深呼吸をして胸を撫で下ろすと電気を消した


「見えない……壁伝いに行ってもどこか分からない。クソッ……」

来い……!

誰かが闇の中、そう言った。近付いて来る足音、吐息、方向が分かり、慌てて身構える。正面だ
「心配するな。ちっとばかり手ぇ貸してやる」
その声の主が、レンゼを抱えて闇の中、走り出した。その声は以前、この街で聞いたことのある声だった
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