復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
310 / 315
18章 その手の温もりは何処(いずこ)へ

304話 記憶の中に居ないヒト

しおりを挟む
嘔吐。そう、吐いたのだ。何度も何度も。一度吐いた時に女はレンゼから距離を取っていた
「……大丈夫?」
「来るなっ!」
息を荒げ、逃げる
「はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!」
逃げても逃げても闇ばかり。闇、闇。闇ヤミやみ……闇。闇ばかりだ。それでも走る。知り合いかどうかも分からない女の為に。どこまでも走って行く。走る走る走る。走り続ける──と、突然止まった
「戻って……る?」
「あらあら、気付いちゃった?」
「てめぇ…………誰だ!」
「アナタもよぉく知ってる人よ? でも、顔も名前も憶えてないんでしょう?」
妖艶な声で近付いて来る声に無我夢中で殴り掛かる
吐き気を飲み込むように、忘れようとせんばかりに、只管ひたすらに殴り掛かる
だが、それも一瞬の内に終わってしまった。吐いてしまったのだ。再び
拳を入れた回数は一回。相手はただそれを受けただけ
シュゥゥゥウウウウウ……。と音が鳴り、その音で分かった。分からされた。理解させられた

コイツは、敵だと

「どぉ? 苦しいでしょ? 教えて欲しい? どーしよっかなぁー。う~ん……分かった! 教えてあげる。アナタの吐き気の理由はアナタの心の問題。アナタの心は別のヒトのモノ。それを私へと上書きしようとして……あぁら不思議。その心が抵抗しちゃってそれに伴い吐き気を催す。これがホントの理由」

カチッ

女が言い終わると同時に電球に光が灯っていく
「あたしの名前はルクシラよ。宜しくね」
「ルクシラ……? ルクシラ……。ぁっ。お前は、アレか? サラさんの言ってた……」
「へぇ、サラのこと知ってるんだ。でも、関係ないけど」
レンゼは歯軋りさせながらニヤッと笑う。凶悪な笑みを浮かべているのだ。それも、今までで一番と言えるほどの──
「お前を倒せばこの、吐き気は治まる。そういう事だな?」
立ち上がり、黒く変色している髪をギュッと握る。膝裏まで伸びているそれを両手に握り締め、ルクシラを睨み付けた
「なら、お前をブッ殺して終わらせる!」
「そ? 異性である以上、無理だと思うけど?」
不敵に笑う。嘲笑わらう。口元に手を当てがい、レンゼを見詰めながら、笑う
それに対して歯軋りしながら口の中に含まれてしまった液体を吐き出す。唾と、胃液と、血の混じった、紅と透明の混沌としている液体を
それに映ったレンゼの後ろ姿は弱々しく、悲しくもあった
「がっ!?」
腹部を殴打され、よろけて後退する。瞳孔を震わせ、嘔吐を再開。少し黄色掛かっている。胆汁が混じっているのだ
「ほら、ね? 言ったでしょう?」
そう言いながら腰を折り、笑みを作る。嘲笑あざわらっている。さながら、甘い蜜のような笑みを浮かべて
「ハッ……! それが、どした……!」
と、笑みを作って返す。白い笑みで。今にも泣きそうな笑みを。頭の上からも、弱々しい鳴き声が聞こえてきた
「弱ッ……!」
『い』に濁点を付けたような声を発して後ろに倒れた。血が、脳天から吹き出した。風穴が、空いたのだ。誰かが撃った。銃器で。足音が近付いて来る
そして、レンゼの真後ろで止まった。影に覆われたレンゼの髪から、ふしゃー! と鳴き声が聞こえる
「ようやく、見付けたぜ?」
「……ジャック?」
「言っただろ? 俺にも、やることがある。ってな」
レンゼの背後から銃口をルクシラに向ける。三発。撃った。傷口から薄い白煙が上がる。ルクシラは動かない
わりぃな。さっきまで見させてもらってた。コイツは、たしか異性に対して心を奪うとかそういう能力。だろ? なあルクシラさんよぉ。聞いてたんだぜ?」
頭を潰す。ルクシラに跨り、両手をギュッと握り締めて上に振り上げ、ドッと。グシャ。バキッ。と、そんな感じの音が混ざり、グギャッ。みたいな音が鳴った
再生していく。潰す。潰す。潰す。潰す潰す潰す潰す潰す潰す

潰し続けた

もう、ルクシラは動かない。動けない。脳が、魂が、無いのだから──
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...