11 / 263
一章 泡沫の夢に
7話 『勇気』
しおりを挟む「ッ……! レイくん!」
「ああ? まだ一発目だろうが。こんなんじゃ死なねえ、よ!」
殴る。二発、三発、四発、五──
「いづ!」
ミズキを上から踏み付けていた男が勢い良く倒れてテーブルに頭をぶつけてテーブルがひっくり返り不良の顔の上に落ちてきた
「ああ……最近の子供は昔の不良と違うッスね……」
ヨロヨロと起き上がったのはコオロギだ。腰に巻いた布は既に解けた
「ま、時代の流れ……ッスかね?」
「まだ生きてたのかよ。おい、やれ!」
「「うすっ!」」
二人の不良がコオロギに襲い掛かる
「ちょ……! 待つッス!」
テーブルが動いてコオロギの足首を打つ。と同時に不良の一人がコオロギの顔面を殴りテーブルの上に倒れてしまった
「まさかだなぁ……」
レイから離れて包丁を手に不良の背中を斬りつけた少女へ近付く
「う、うわぁぁぁあああああ!!」
ザシュッ! と右肩を突き刺す
「次はアナタです」
「俺が女如きにやられるほどの雑魚に見えんのかよ」
駆けてくるミズキの包丁をバットで受け止めて横腹に蹴りを入れる
「んなわけねえだろ。お前も随分力には自信あるだろうけどな、女は男には勝てない。これが昔からの世界の理なんだよ!」
振り下ろしたバットはミズキの頭を思い切り打ち付けた
「ッ……ミズ、キ……さん……!」
血が流れる。紅い紅い血が
「う、うァァァァァアアアアアアアアアアア!!」
なんで……僕を……。僕の……せいで……! ミズキさん、嫌だ、嫌だっ。嫌だ! ミズキさんは死んじゃダメなんだ! 殺しちゃダメなんだ!
「弱い」
渾身の一撃。それも鳩尾の部分のはずなのに、全く動じない。それどころかレイは蹴られてその場に尻餅を着いた
「なあ、この女、このまま死ぬと思うか?」と、しゃがみ込んでレイに問う
「ぇ……?」
「この女。ミズキ、だっけ?」
「な、なんで……」
「あ?」
「なんで、なんで僕なの……? こんなに男の人は居るのに、なんで僕を──」
「……ああ、やべっ、ムカついてきた。もういい。殺す。まだ居るしな」
「ひっ!」
ダメだ、殺される、嫌だ、嫌だ! 死にたくない……!
「嫌だ……嫌だ、死にたく、ない……」
「は? ここまできて命乞い? ……ダサっ」
なんで、なんでこんな事に──。
「あ~あ。惜しいよなぁ、こんな優良物件、殺す事になるなんて」
「やだ……。助けて……。嫌だ……やだ……」
「非力で頭も悪い。周りを人質にすればすぐ従順になる。すっげえ良い肉便器だったよ」
たすけて……。だれか、こわい、こわいよ。いたい、こわい……みんな、たすけて、なんで、むしするの……いやだ、むししないでよ……ねえ……ねえ……っ!
「助けて……」
「はあ、大人しくしてれば連れて帰るだけで済んだのによ、抵抗するからこんな事になったんだぜ? お、そろそろ皆痛みにも慣れてきたか? 立ち上がれてる奴もチラホラ居るなぁ」
「ッ……!」
頭を抱えて蹲る。それしかできる事は無い。だって、誰も恐怖になんて打ち勝てない。本当の恐怖には。圧倒的力の差の前には弱者は動けずにただ平伏すのみ
「あっ、そうだ。人生最期に良いもの見せてやるよ。お前の彼女の、初体験を」
「ぇ……? はつ……たい、けん……?」
倒れているミズキの方へ視線を動かすと不良達が取り囲んでいるのが見えた
「お前ら、日頃のストレスも込みでソイツで発散して良いぜ」
「「「うすっ!」」」
その隙間から見えた。複数の手がミズキの下半身へと伸ばされている所が
「ッ!」
ああ、ダメだ。あんなに優しくしてくれたミズキさん、地獄に手を差し伸べてくれたミズキさん、助ける為に来てくれたミズキさん。
ミズキさん、ミズキさん……!
「クッソァァァァアアアアアアアアアア!!」
涸れた声が辺りに響く。それが終わると血にまみれた空間が静寂に包まれた。時が止まったかのように。それも気のせいにしか過ぎない。秒針はそんな静寂の中でもしつこく時を刻み続けているのだから
「ミズキさんに、触れるな……!」
「は? 何言ってるのか分かってんの?」
ヨロヨロと立ち上がって稲継の顔を見上げる。身長差は覆せない
「ミズキさんは、僕の彼女だ! 触るな!」
「はあ? お前はまだ自分の立場すら理解してねえのかよ!」
「良いからやってろ」と不良達に命令してレイの前に立ちはだかる。恐怖のせいか、元々大きいせいか、まるで分厚い壁のように錯覚してしまう
「触れるな!」と不良の方へ走って行き体当たりをする「お前らみたいな! 汚い連中が! ミズキさんに触るな!」
「このガキぁ!」
一発頬を殴られて後退る。が、行く。今度は顔面だ。倒れてしまった。倒れて、藻掻き、喘ぎ鳴いている
クソッ……。クソッ……! どうして……。
0
あなたにおすすめの小説
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる