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「「「「「ミユキさん!」」」」」
「………」
喜ぶ少年達が駆け寄ってくる。ロンブスはショックから立ち直っていない。
「すごい! どうやってここまできたの?」
「手紙、通じたんだ?」
「え、あ、はい」
「で、どうやってここが判ったんです? そしてどうやってここに?」
ずずいと少年達をかき分けて、立ち直ったロンブスが問うてくる。
「えーとね」
視線が痛い。穴が開くんじゃないかというほどに痛かった。
「えー、エヘン、我が家に伝わる一子相伝、秘伝のお呪い、ドゥコヘディモドゥワーでやってまいりました。とりあえず、一瞬で移動することができるお呪いです」
「「「「「へええぇぇぇ!!!」」」」」
「………へぇ」
素直に目を輝かせる少年達と、冷ややかな視線は大人の階段を上りかけている?少年の違いが如実に表れている反応であった。
「それで、そちらの方は?」
「うむ、某、コウスケと申す。こちらはふたば殿だ」
「え、あ、はい。私はロンブスと申します」
何やら自己紹介が始まったが、本題に入らねばなるまい。
「それでサルモー君、何があったの?」
「あっ! そうだ。みんなが倒れてしまったんだ。魔力ぎれかなって……」
「そうなんです。朝、いきなりフラフラっとみんな倒れてしまって」
「この外でも同じみたいで大騒ぎになってて」
なるほど、と呟きながら赤髪の少年の手を取り、ミユキは回復の呪文を唱えてみる。いや、回復の呪文というのだろうか? いつもと変わらずのアレであるが。今回はピンポイントでやってみようと力を制限するイメージでやってみた。心なしか、濃い緑色の光が柔らかく少年達を包んでいくのを見ながら、ミユキが低く問うた。
「で、ここはどこですか?」
「え?」
「その、ここってどこでしょう?」
「判らない場所に来たんですか?」
「ははっ。とりあえず、サルモー君を目指して来たんで、ほら、アイテムボックスの感覚をたどりましてね」
「………(なんだそれは)」
「来てみたら随分豪華なお部屋だから、ここはどこ?ってな感じで。ははは」
期待に充ち満ちたキラキラとした目で倒れた友人達の様子を見ているサルモー達を横に、ロンブスは恨めしそうにミユキを見て、渋々と答えを返す。
「───城の中ですよ。隣で勇者様達が朝食をとられていて、その後この子達と引き合わせるために待たせていた控えの間です」
「ほぉ。いいところに呼んでもらえたなぁ」
「え?」
「………ぅん……」
気を失っていた少年が小さく呻いたのでそちらをみると、次々と意識を取り戻しているようだ。ほっとしたロンブスが顔を上げると、立ち上がったミユキがにやりと笑っていた。
「ミユキさん?」
「ちょっと勇者さんを探してきますね」
「え?」
起き上がる少年に喜んでいるサルモー達に聞こえないように、小声でミユキが言う。
「大丈夫、今はちょっとお話をするだけです」
「ちょ……?」
「そういえば、魔力がなくなったときに飲む薬みたいなものってないんですか?」
「ありますけど、希少な薬草を使用するので滅多なことでは使われないんです」
「なるほど」
「ミユキさん!」
明るいサルモーの声で呼ばれてそちらを見ると、復活した少年たちが立っていて、次々と頭を下げる。
「ありがとうございました」
「よかったよな、お呪いが効いて」
「え? おまじない?」
「そうだよ、ミユキさんは呪い師なんだ」
「なんでもできるんだぞ」
何故かドヤ顔のアミアである。
「よかった。ほんとに魔力切れだったのか……」
というか、あの回復で何が治るとか何が治らないとかわからないので何とも言えないが。ふと、あれ?とミユキは考えた。皆が倒れたのは今朝だという。
「あの……、魔力がなくなったのって、二回くらいきました?」
「はい?」
「あ、はい。ちょっと時間をおいて二度きましたね。僕が家にいる時と、寮に着いてからと」
「………」
「ミユキさん? まさかとは思いますが、何か心当たりがあるのでは?」
「いや、あの、そのね?」
「あの時ではないか?」
コウスケが突然口を挟んできた。
「ちょ、コウスケさん」
「あの時とは何です?」
「いやあの、ロンブス君」
「あの時、皆もがくりと力尽きていたではないか」
「う……あぅ」
ロンブスから鋭い視線を送られ、しどろもどろになるミユキである。
(オークを全滅させたかもしれない事件に続き、魔法使い大量失神昏倒事件(仮称)まで私が犯人なのか? マズい、マズいよ。バレたら逮捕どころじゃないんじゃないの……?)
「いやあの、あれはつい出来心というか、ちょっと真似してみただけで、まさかそんなことになるなんて………。ほんとに悪気はなかったんですよ?」
「別に悪いことではないではないか。この世の皆に協力させて何がいけないのだ?」
「いやでも、ひとりでもいけそうだったんだけど、退屈だったんでつい……」
「──ミユキさん、あれとは何なんです?」
背後に何やら不穏なものを背負ったロンブスが笑みを浮かべて優しく問うてくる。その空気にたじろぎながらサルモー達もミユキに注目していた。
「その、まぁ、ね~~~?」
何をどう説明すればいいのやら、冷や汗を垂らしながら中途半端な笑みで返すミユキであった。
「………」
喜ぶ少年達が駆け寄ってくる。ロンブスはショックから立ち直っていない。
「すごい! どうやってここまできたの?」
「手紙、通じたんだ?」
「え、あ、はい」
「で、どうやってここが判ったんです? そしてどうやってここに?」
ずずいと少年達をかき分けて、立ち直ったロンブスが問うてくる。
「えーとね」
視線が痛い。穴が開くんじゃないかというほどに痛かった。
「えー、エヘン、我が家に伝わる一子相伝、秘伝のお呪い、ドゥコヘディモドゥワーでやってまいりました。とりあえず、一瞬で移動することができるお呪いです」
「「「「「へええぇぇぇ!!!」」」」」
「………へぇ」
素直に目を輝かせる少年達と、冷ややかな視線は大人の階段を上りかけている?少年の違いが如実に表れている反応であった。
「それで、そちらの方は?」
「うむ、某、コウスケと申す。こちらはふたば殿だ」
「え、あ、はい。私はロンブスと申します」
何やら自己紹介が始まったが、本題に入らねばなるまい。
「それでサルモー君、何があったの?」
「あっ! そうだ。みんなが倒れてしまったんだ。魔力ぎれかなって……」
「そうなんです。朝、いきなりフラフラっとみんな倒れてしまって」
「この外でも同じみたいで大騒ぎになってて」
なるほど、と呟きながら赤髪の少年の手を取り、ミユキは回復の呪文を唱えてみる。いや、回復の呪文というのだろうか? いつもと変わらずのアレであるが。今回はピンポイントでやってみようと力を制限するイメージでやってみた。心なしか、濃い緑色の光が柔らかく少年達を包んでいくのを見ながら、ミユキが低く問うた。
「で、ここはどこですか?」
「え?」
「その、ここってどこでしょう?」
「判らない場所に来たんですか?」
「ははっ。とりあえず、サルモー君を目指して来たんで、ほら、アイテムボックスの感覚をたどりましてね」
「………(なんだそれは)」
「来てみたら随分豪華なお部屋だから、ここはどこ?ってな感じで。ははは」
期待に充ち満ちたキラキラとした目で倒れた友人達の様子を見ているサルモー達を横に、ロンブスは恨めしそうにミユキを見て、渋々と答えを返す。
「───城の中ですよ。隣で勇者様達が朝食をとられていて、その後この子達と引き合わせるために待たせていた控えの間です」
「ほぉ。いいところに呼んでもらえたなぁ」
「え?」
「………ぅん……」
気を失っていた少年が小さく呻いたのでそちらをみると、次々と意識を取り戻しているようだ。ほっとしたロンブスが顔を上げると、立ち上がったミユキがにやりと笑っていた。
「ミユキさん?」
「ちょっと勇者さんを探してきますね」
「え?」
起き上がる少年に喜んでいるサルモー達に聞こえないように、小声でミユキが言う。
「大丈夫、今はちょっとお話をするだけです」
「ちょ……?」
「そういえば、魔力がなくなったときに飲む薬みたいなものってないんですか?」
「ありますけど、希少な薬草を使用するので滅多なことでは使われないんです」
「なるほど」
「ミユキさん!」
明るいサルモーの声で呼ばれてそちらを見ると、復活した少年たちが立っていて、次々と頭を下げる。
「ありがとうございました」
「よかったよな、お呪いが効いて」
「え? おまじない?」
「そうだよ、ミユキさんは呪い師なんだ」
「なんでもできるんだぞ」
何故かドヤ顔のアミアである。
「よかった。ほんとに魔力切れだったのか……」
というか、あの回復で何が治るとか何が治らないとかわからないので何とも言えないが。ふと、あれ?とミユキは考えた。皆が倒れたのは今朝だという。
「あの……、魔力がなくなったのって、二回くらいきました?」
「はい?」
「あ、はい。ちょっと時間をおいて二度きましたね。僕が家にいる時と、寮に着いてからと」
「………」
「ミユキさん? まさかとは思いますが、何か心当たりがあるのでは?」
「いや、あの、そのね?」
「あの時ではないか?」
コウスケが突然口を挟んできた。
「ちょ、コウスケさん」
「あの時とは何です?」
「いやあの、ロンブス君」
「あの時、皆もがくりと力尽きていたではないか」
「う……あぅ」
ロンブスから鋭い視線を送られ、しどろもどろになるミユキである。
(オークを全滅させたかもしれない事件に続き、魔法使い大量失神昏倒事件(仮称)まで私が犯人なのか? マズい、マズいよ。バレたら逮捕どころじゃないんじゃないの……?)
「いやあの、あれはつい出来心というか、ちょっと真似してみただけで、まさかそんなことになるなんて………。ほんとに悪気はなかったんですよ?」
「別に悪いことではないではないか。この世の皆に協力させて何がいけないのだ?」
「いやでも、ひとりでもいけそうだったんだけど、退屈だったんでつい……」
「──ミユキさん、あれとは何なんです?」
背後に何やら不穏なものを背負ったロンブスが笑みを浮かべて優しく問うてくる。その空気にたじろぎながらサルモー達もミユキに注目していた。
「その、まぁ、ね~~~?」
何をどう説明すればいいのやら、冷や汗を垂らしながら中途半端な笑みで返すミユキであった。
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