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長い一日だった……。
感謝されまくり、まだまだお礼が足りなさそうな家族を宥めて、部屋に案内してもらったミユキはベッドに倒れ込んだ。
(あぁ、そうだ。ひとりになったからやってみなくては……)
靴を脱ぎ捨ててベッドの上で両手をつく。
勿論、腕立て伏せである。
(おおおおおぉっ! 素晴らしい!)
ほいほいと軽くできるではないか。
50回数えたところでもう一つ用事を思い出して仰向けになった。
ステイタス、と心の中で唱えてみる。
次の瞬間、真っ白な空間の中、ミユキはふたばと一緒に、二階建のアパートくらいの高さはある石板の前にいた。
石板の前には、やはり、あの男が立っている。営業スーツのままだった。
(まだ一日も経っていないのに、すごく久しぶりな気分だ)
「おひさしぶりです」
心が読める男は、相変わらずの営業スマイルだ。いや、新人営業から若手の営業に成長した感じかな。
とにかくお礼を言わなくては。
「いろいろありがとうございます」
天使(見習い)は器用に片眉をあげた。
眉の上げ下げは得意技なのか……。
「あの程度はまだまだ序の口ですが? まだ回復魔法しか使われてませんよね? あ、あとその服でしたっけ」
「いえ、腕立てができるようになっていたので……あ、ええ。やはり、あれは回復魔法なんですよね? 何だかすごく驚かれて……」
「………そっちでしたか……」
少し残念なモノを見る視線を向けられた。
「いやいや、回復魔法! すばらしいですよね! でもほら、MP、魔力がどの位あるのかわからないので、使い切ったらどうなるのかな~とか思いまして」
視線が冷ややかになってきた。
「それで、その、」
(何か営業っぽくないんですけど!)
「どうしてステイタスが閲覧禁止なんです? しかも、皆さんのもこんなにでっかいんですか?」
「……収まりきれないからですよ。これ、よく見てくださるとお判りになるかと思いますが、右上に1/3とあるでしょう?」
天使(見習い)は、にこりと笑って人差し指を上に向けた。つられて見上げると、確かに何やら文字があるようだ。目を凝らすとくっきりと見える。1/3。スナイパーGの眼はさすがであった。
「これ3枚分、いろいろ書いてあるんですよね~~。言っときますけど、一文字の大きさはこのくらいですからね」
「はい?」
親指と人差し指で輪っかを作り、その輪から左目で覗いてくる。ちょっとかわいい、とか思うと睨まれた。
「この世界でできることを書き連ねていったら、そのくらいあるってことですよ」
(こ、このひとが書くものなの? ステイタスって、手書きなのかい?)
「そうですよ。誰が書くと思ってるんですか? 担当者に決まってます。この世界の方の分は生まれた時点でこちらの神が 自動的に設定しているから勝手に書き込まれていくようですけどね。こちらはレベルが上がるたびに書き足すのは面倒なので、最初から全部書いちゃいましたよ。書ききっちゃいましたよ」
何やら恐ろしいことをぶちぶち言っている。
「え? レベル? レベルって何したら上がるんですか? やっぱゴブリンかスライムから倒して上げていくんですか?」
(何か音楽が流れてくるくる回ったりするのかな? ○マサガみたいに戦闘中に電球が光って技を覚えたりするのがいいな)
ワクワクしながら質問するみゆきに天使(見習い)は冷たく言い放った。
「それが面倒なので先に全て書いたんですよ。もうレベルが上がることはありませんからね。技もこれ以上は覚えません」
フンと鼻で笑われた。
なんかやさぐれてるよ、見習い天使さん……。
(それって……マメなのか、 めんどくさがりなのかどっちだかさっぱりわからんな……って)
「ええええええええぇ!?」
「ちなみに魔力ですが、ご希望どおりの無限……正しくは使用した分が即補完されていきますから、まあ、元の数字も無限に近いものですのでどれだけ使われても、困ることはありませんよ」
「………」
「それから無限収納ですが、今はみゆきさんの着ている服のポケットに繋がっていますが、誤魔化すために何か鞄を使われた方がよろしいですね。適当に作ってください」
ぐうの音も出ないまま、説明が続いていく。
「調味料全般もその中にありますが、こちらも魔力と同じで使用した分が即補充されますのでご安心ください。あ、みゆきさんの魔法でも複製が可能ですので、いろいろ増やして商売されるのもいいかもしれませんね」
「あぅ」
「あ、でも一応みゆきさんが生前保有されていた財産も換金して保管してますので、折を見てご確認ください」
至れり尽くせりのようだ。もう、口を挟まずに聞いているしかない。質問は最後にしよう。
「ステイタスについてですが、万が一見られてもいいように、ダミーを用意しておきました」
天使(見習い)の手のひらの上に、人間の上半身くらいの大きさの石板が浮いている。無地だった。
「『何もない』なんてあり得ないのですがね」
口元に薄い笑みを浮かべながら、指でなぞると石板にみゆきの名前、年齢を白い光で浮かび上がってくる。
名前 ミユキ
年齢 35
体力 33
魔力 0
(サバよんでる! かなりサバよんでるよ!! めっちゃサバよんでるよ~)
大幅にサバよまれているが、天使(見習い)は涼しい表情で説明をする。
「この世界は一般の方の平均寿命が日本よりかなり短いのです。本当のお歳でしたらかなりのご高齢となりますから、女性がひとり旅をされるにはこのくらいのお歳でなければ、いろいろと難しいのですよ」
(それでみなさんお若いのに黄昏れてたのか……?)
「ギルドの登録や教会の水晶など、この世界の鑑定の類ではこのダミーが適用されます」
説明会はまたまだ終わりそうにないのであった。
感謝されまくり、まだまだお礼が足りなさそうな家族を宥めて、部屋に案内してもらったミユキはベッドに倒れ込んだ。
(あぁ、そうだ。ひとりになったからやってみなくては……)
靴を脱ぎ捨ててベッドの上で両手をつく。
勿論、腕立て伏せである。
(おおおおおぉっ! 素晴らしい!)
ほいほいと軽くできるではないか。
50回数えたところでもう一つ用事を思い出して仰向けになった。
ステイタス、と心の中で唱えてみる。
次の瞬間、真っ白な空間の中、ミユキはふたばと一緒に、二階建のアパートくらいの高さはある石板の前にいた。
石板の前には、やはり、あの男が立っている。営業スーツのままだった。
(まだ一日も経っていないのに、すごく久しぶりな気分だ)
「おひさしぶりです」
心が読める男は、相変わらずの営業スマイルだ。いや、新人営業から若手の営業に成長した感じかな。
とにかくお礼を言わなくては。
「いろいろありがとうございます」
天使(見習い)は器用に片眉をあげた。
眉の上げ下げは得意技なのか……。
「あの程度はまだまだ序の口ですが? まだ回復魔法しか使われてませんよね? あ、あとその服でしたっけ」
「いえ、腕立てができるようになっていたので……あ、ええ。やはり、あれは回復魔法なんですよね? 何だかすごく驚かれて……」
「………そっちでしたか……」
少し残念なモノを見る視線を向けられた。
「いやいや、回復魔法! すばらしいですよね! でもほら、MP、魔力がどの位あるのかわからないので、使い切ったらどうなるのかな~とか思いまして」
視線が冷ややかになってきた。
「それで、その、」
(何か営業っぽくないんですけど!)
「どうしてステイタスが閲覧禁止なんです? しかも、皆さんのもこんなにでっかいんですか?」
「……収まりきれないからですよ。これ、よく見てくださるとお判りになるかと思いますが、右上に1/3とあるでしょう?」
天使(見習い)は、にこりと笑って人差し指を上に向けた。つられて見上げると、確かに何やら文字があるようだ。目を凝らすとくっきりと見える。1/3。スナイパーGの眼はさすがであった。
「これ3枚分、いろいろ書いてあるんですよね~~。言っときますけど、一文字の大きさはこのくらいですからね」
「はい?」
親指と人差し指で輪っかを作り、その輪から左目で覗いてくる。ちょっとかわいい、とか思うと睨まれた。
「この世界でできることを書き連ねていったら、そのくらいあるってことですよ」
(こ、このひとが書くものなの? ステイタスって、手書きなのかい?)
「そうですよ。誰が書くと思ってるんですか? 担当者に決まってます。この世界の方の分は生まれた時点でこちらの神が 自動的に設定しているから勝手に書き込まれていくようですけどね。こちらはレベルが上がるたびに書き足すのは面倒なので、最初から全部書いちゃいましたよ。書ききっちゃいましたよ」
何やら恐ろしいことをぶちぶち言っている。
「え? レベル? レベルって何したら上がるんですか? やっぱゴブリンかスライムから倒して上げていくんですか?」
(何か音楽が流れてくるくる回ったりするのかな? ○マサガみたいに戦闘中に電球が光って技を覚えたりするのがいいな)
ワクワクしながら質問するみゆきに天使(見習い)は冷たく言い放った。
「それが面倒なので先に全て書いたんですよ。もうレベルが上がることはありませんからね。技もこれ以上は覚えません」
フンと鼻で笑われた。
なんかやさぐれてるよ、見習い天使さん……。
(それって……マメなのか、 めんどくさがりなのかどっちだかさっぱりわからんな……って)
「ええええええええぇ!?」
「ちなみに魔力ですが、ご希望どおりの無限……正しくは使用した分が即補完されていきますから、まあ、元の数字も無限に近いものですのでどれだけ使われても、困ることはありませんよ」
「………」
「それから無限収納ですが、今はみゆきさんの着ている服のポケットに繋がっていますが、誤魔化すために何か鞄を使われた方がよろしいですね。適当に作ってください」
ぐうの音も出ないまま、説明が続いていく。
「調味料全般もその中にありますが、こちらも魔力と同じで使用した分が即補充されますのでご安心ください。あ、みゆきさんの魔法でも複製が可能ですので、いろいろ増やして商売されるのもいいかもしれませんね」
「あぅ」
「あ、でも一応みゆきさんが生前保有されていた財産も換金して保管してますので、折を見てご確認ください」
至れり尽くせりのようだ。もう、口を挟まずに聞いているしかない。質問は最後にしよう。
「ステイタスについてですが、万が一見られてもいいように、ダミーを用意しておきました」
天使(見習い)の手のひらの上に、人間の上半身くらいの大きさの石板が浮いている。無地だった。
「『何もない』なんてあり得ないのですがね」
口元に薄い笑みを浮かべながら、指でなぞると石板にみゆきの名前、年齢を白い光で浮かび上がってくる。
名前 ミユキ
年齢 35
体力 33
魔力 0
(サバよんでる! かなりサバよんでるよ!! めっちゃサバよんでるよ~)
大幅にサバよまれているが、天使(見習い)は涼しい表情で説明をする。
「この世界は一般の方の平均寿命が日本よりかなり短いのです。本当のお歳でしたらかなりのご高齢となりますから、女性がひとり旅をされるにはこのくらいのお歳でなければ、いろいろと難しいのですよ」
(それでみなさんお若いのに黄昏れてたのか……?)
「ギルドの登録や教会の水晶など、この世界の鑑定の類ではこのダミーが適用されます」
説明会はまたまだ終わりそうにないのであった。
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