ふかし

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 ホテルでの時間より濃いものとなった。
 本棚を見せてもらうと、私がXで呟いた本が沢山あった。
 「これ、むずかしかった」とあなたはフランスの小説を手に持った。
 「確かに、難しいよね」と私はそれを受けた。
 「最後まで読んでくれたの?」と私。
 「もちろん」とあなた。
 髪を撫でた。
 「ねぇ、次のアルバムは何をカバーするの?」とあなた。
 「まだ内緒」と私。
 「ごめん、仕事のこと訊いちゃだめだね」とあなた。
 「楽しみにしてて」とキスをした。
 「ねぇ、俺、こんなお腹が出てるの気にならないの?」と私は尋ねた。
 「ぽっちゃり好き」とあなたは私のお腹を撫でた。
 が、続けて、「でもミュージシャンだからなぁ」と私のお腹を軽く叩いた。
 「ねぇ、一緒にジム行こうよ」とあなたは目を輝かせた。
 「気が向いたらね」と私は躱した。
 「気が向く可能性は?」と問われ、私は「0パーセント」と答えると、「もう、早死にするよ」と叱られた。
 「ひとはいつか死ぬ」と私。
 「長生きしたくないの?」とあなた。
 「歌うことと小説は好きだよ」
 「じゃあ、長生きしなきゃ」
 「死後の世界によるよ、あっちでも歌と小説があるなら死んだって構わない」
 「死んだって構わないなんて言わないで。寂しくなっちゃう」
 「もう言わない」とキスをした。
 「ねぇ、死後の世界に興味あるの?」
 「あるよ、生まれてくる前の世界も」
 「不思議なひとね」
 「この世界は暴力とか競争が基準でしょ? 飯を食うにしても動物や植物を殺さなきゃならないし、仕事にしても他のひとに奪われないためには勝たなきゃならない。こんな世界の外側に何があるか興味がある。この世界と似たようなものなら地獄だね」
 「ねぇ、生まれてきて良かった?」
 「生まれてくる前の世界によるかな、こっちの世界のほうがまだましなら良かったと思うよ」
 「ねぇ、私とえっちできて良かったと思う?」
 「もちろん」とキスをした。
 「じゃあ、生まれてきて良かったんだよ。私は生まれてきて良かったと思うなぁ」
 「俺のほうがファンになっちゃいそう」
 「いいじゃん、イベント来てよ」
 「イベント行こうかな、周りのお客さんに顔バレしてないしね」
 「絶対だよ、約束」とあなたは満面の笑みを見せてくれた。
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