ふかし

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 「最近どう?」と突然マネージャーのナナさんに訊かれた。
 「いつも通り、歌、小説、セックス」と答えた。
 「それからタバコね」と付け足された。
 「電子タバコ」と訂正した。
 会議室にふたりなことを確かめたうえで、「最近は私としてくれてないね」と彼女は言った。
 「遠隔式のピンクローター仕込んできなよ、電源つけてあげる」と私。
 「それもいいけど、今日これから暇?」と彼女。
 「うん、後は自宅練習だけ」
 「じゃあ、終わったら追い出されるんだ?」
 「いてもいいけど、俺は歌うよ」
 「俺は歌うよ、かぁ、かっこいいね。そのフレーズ」
 「練習は大事だから」
 「ストイックだねぇ」と彼女は立ち上がった。
 私にキスをし、それから、「今日、泊まってもいい?」と甘えてきた。
 「いいよ」と服のうえから、胸のさきを刺激させた。
 「じゃあ、後ちょっと打ち合わせをして、あなたの家へ行きましょう」と椅子に腰を下ろした。
 会議の内容は主にグッズだった。
 ライブに向けてだけではなく、普段から新しいグッズを発売し、SNSなどで宣伝してはどうかということだった。
 コンプリートしたくなる熱狂的なファンのお財布事情を考えると、私はあまり気が乗らなかった。
 けれど、会社としては、今ブレイクしている間に少しでも利益を、ということだった。
 会社のことを考えると、そうだよなぁと、私も考え、普段から使えるものをと頭を働かせた。
 「パジャマとか、枕とかは?」と私は提案した。毎日、使うものとしてはいいんじゃなかろうかと思ったのだ。
 「それいいかも」とナナさんは商売人の顔をした。

 事務所を出て、ふたりで駅へ向かった。
 「ねぇ、タクシー乗ろうよ」とナナさんが言った。
 「いや、今日は電車。ある程度、電車に乗ったり、ファミレスに行ったり、皆さんと同じ生活してかいと勘が鈍るから」と私。
 「定期入れもいいね」とナナさんが閃いた。
 「ほら、電車のおかげ」と私。
 「ねぇ、タクシーにしようよ~」と言うナナさんを尻目に、私は駅のほうへと歩いていった。

 夕方だったので、仕事帰りの皆さんと同じように満員電車に揺られた。
 こういう経験をしなくなったら、世間とズレてしまうと、私は有り難がったが、ほれみろ、満員じゃないか、と言うナナさんの目と何度もぶつかった。
 「ねぇ、あつし、ハンバーグ食べたい」
 「いいねぇ、乗った」
 「じゃあ、次の駅で降りて、Bに行きましょう」
 Bとは庶民的なハンバーグ屋さんだ。
 私の大好物。
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