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資金調達と冒険者ギルド
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日が沈みかける頃に目的地の中継地点であるモヤズハムの村に到着した。
「先生ここはどういった場所なんですか? 商人のような方達が結構いますが」
「ここはギルドが仕切っている開拓村の一つだ。ここからが東に行くと鉱山があり、西に行くと漁村がある。そしてこのまま南へ行くと最終的には法国に着く」
「大きな街を結ぶ道の中継地点および避難所として、いくつかの開拓村やキャンプが存在している。ここもその一つだ」
「中継地点はわかりますが避難所ですか?」
「ああ。さっきも言った通りここはギルドが仕切っている。常に複数のギルド職員やギルドマンが在中しているから、何かしら問題がある場合は一時的な避難所として使用可能だ」
「はえー…じゃあここでもギルドの依頼とかって受けれるんですかね?」
「恐らくな」
「じゃあ!! 早速依頼を受けれるか僕聞いてきます!!」
「いやまて、まずは…」
そう言うとロイはウィルの静止を聞かずに開拓村の中へと走っていった。
「…はあ。まずは宿探しが優先だろう…」
ウィルはため息を吐きながら宿屋の看板が立っている方へと向かって行った。
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•
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「すみません!! ギルドは何処にあるかご存知ですか?」
ロイは近くで荷卸作業をしている商人風の男に話しかける。男はロウの呼びかけに振り返ると、若いロウを見て少し怪訝な表情をしながら返事を返してきた。
「ああ? 坊主ギルドになにか用でもあるのか?」
「うん。旅の資金が必要だから依頼を受けれないかなって」
「若いのに大変だな…ギルドなら向こうの建物だ。建物の入口には剣と松明のマークが描かれた看板があるから直ぐ分かると思うぞ」
「商人のおっちゃん、ありがとう!!助かった!!」
「おう頑張れよ!!」
軽く礼を言いロイは男が指差す方向へ視線を向け歩き出す。
「えーと、剣と松明…剣と松明…」
歩きながら建物の入口にあるという看板を探す。男は直ぐ見つかると言っていたがこれが意外と見つからない。
「看板がありすぎてわかんねぇよ…」
各建物の入口には看板が立て掛けられており、鳥をもした看板や騎士の様な模様が描かれた看板、剣と盾が描かれた看板など多種多様な看板が乱立していた。
その中には似た看板もありこれがまた目当ての看板を探す事を邪魔していた。
「あっ、もしかしてこれのことか?」
そう言いながらとある建物の入口には【剣を持ち松明を掲げる人のシルエット】が描かれた看板が立てかけられていた。
そしてその看板の下方には【冒険者ギルド】と銘打ってある。
「商人のおっちゃんが言ってた内容とぜんぜん違うじゃんか…」
その建物があったのは先程、商人の男と話していた場所から目と鼻の先でありこれまでの捜索は完全に無駄足だったことをロイは悟った。
「商人って意外といい加減なんだな…まあ、見つかったからいいか。よし!!気分入れ替えて依頼を受けるぞ!!」
ロイは自分の顔を叩き気合を入れてギルドへと入る。
ギルドへ入りまず目に入ったのは、屈強な戦士風の男、魔法使いと思われる女性、軽装の弓使いなどよく王都でも目にする冒険者たちではなく…
「おう?坊主どうしたそんなとこで固まって」
「なんだ迷子か…?」
「もしかして依頼を受けに来たとかか!!ハハハッ!!」
「ちょっとマイクさんあまり茶化さないでくださいっ!!」
ロイの目に入ったのは至って普通の農民…いや木こり?のような風体の男が数人と受付嬢が一人。
外の看板がなければきっとロイは勘違いだと判断し直ぐに外へ出ていただろう。
「えーと…ここって冒険者ギルドで間違いないんだよね?」
ロイは近くにいた木こり風の男へ尋ねる。その問い掛けに男は何が面白いのか急に笑い出す。
「ハハハッ!! まさか本当に依頼を受けに来たのか? たしかにここは冒険者ギルドだが」
「ちょっとマイクさん!! …ぼく?ここは冒険者が以来を受けに来る場所で君のような子供が来る場所じゃないのよ。迷ったなら案内してあげるから…」
「なら俺が送っていくか? ちょうど宿に戻ろうかと思ってたからよ」
「あら、ロバートさんお願いできますか?」
「おう、リサちゃんの頼みだ任せておきなさい!!」
ロイを完全に無視してギルドに居た人達は迷子の案内をする方向で話をまとめていた。
「ちょっと!? 俺は依頼を受けに来たんであって、決して迷子じゃないんだけど!?」
「「え…?」」
ギルドの面々はロイの発言に正気を疑っているような視線を向ける。
「あー…坊主。ギルドの依頼ってのはな遊びじゃねんだ。危ないことは多いし、最悪死ぬことだってある」
「そうだぞ! 俺たちはこれでも冒険者だ。君みたいな若者が無茶をして死んでいくさまを何度も見てきている。悪いことは言わない親の元へ帰りな」
「だーかーらー、そんなことわかってるよ!!俺は王都でもちゃんと依頼を受けてきたし、もし疑うんだったら住民証明で依頼の履歴確認してよ!!」
「住民証明もちゃんと発行してるのか…リサちゃんちょっと、この子の履歴確認してもらえる?」
ギルドマンだという男の問にリサと呼ばれた受付嬢が慌てて返事をする。
「は、はい!! じゃあボク?住民証明をちょっと借りてもいいかな?」
自分を子供扱いする受付嬢に少しムッとするが、これ以上は話が拗れるので言い返すのは我慢する。
「はいどうぞ!!」
少し投げやりに住民証明を受付嬢へと渡すと、「ちょっとまっててくださいね!!」といながら建物の奥へと入っていった。
「にしても坊主。王都の住民証明があるってことはそれなりに裕福な家庭に生まれたんじゃないのか? それがなんでこんなとこで依頼なんか受けてるんだ」
マイクと呼ばれる男が無神経な質問を飛ばしてくる。それに男たちの一人が注意する。
「ちょっとマイクさん。流石に家の事情を聞くのは失礼ですよ。すみませんね、別に返答しなくても大丈夫ですよ?」
「…俺は今とある人に技を師事してもらいながら旅をしてるんです」
「武術でも習ってるのか?」
「いや…先生にはあくまでも戦いの基本とかを教えてもらってるだけ…それに武術は俺の父から教えてもらったものがあるから」
「その親父さんはどうしてるんだよ。心配してるんじゃないのか?」
「ちょっと…ロバートさんまで…」
「いいじゃねえか。気になるしよ...なあロバート?」
「まあな。で、なんで親父さんを置いて旅をしてるんだ」
ロイは、少し顔を下に向け話し出す。
「…父は2年前から行方不明です。修行でよく家を開けることがあっていつもなら数ヶ月で戻ってくるんですが…」
思っていた内容と違ったのか、ロバートとマイクは申し訳無さそうな顔をしている。
「あー…その、悪かったな。ズカズカと聞いちまって…」
「いや、俺の父がどこに居るのか、それとも死んでしまったのか。それを探すためにいつかは話すことになるだろうことだから…」
ロイの話に丁寧な話し方をする男が少し考えことをする素振りを見せる。
「2年前ですか…」
「なんだ、アレックス。なんか知ってるのか?」
「いえ、直接関係あるかはわかりませんが…2年前といえば…」
話の途中、建物の奥から女性の声が聞こえてきたたため、話を中断する。
「おまたせしました!! 履歴を確認した結果。依頼は受けても問題なさそうです!!」
「本当!? やった、じゃあ早速依頼を見せてもらってもいい!?」
確認が取れたことにロイは、ほっと胸を撫で下ろす。これで資金源の問題は解決できそうだ。
「はい!! じゃあ奥で依頼を受けるための手続きをしてもらうので、コチラに来てもらってもいいかな?」
「うん!! ごめん、ちょっと依頼の準備に行かなきゃだから!!」
「あ、ああ」
「あんま無茶はすんなよ?」
「まあ、一応保護者も居るんだろ?じゃあ大丈夫じゃねえか?」
「いや、先生は保護者じゃないから!?」
そう言いながらギルドマンたちに見送られるロイは建物の奥へと手続きをしに行った。
「それでさっき言いそびれたのは何だったんだ」
「ああ、多分関係ないとは思うけど【剣鬼】が活動を始めたのもこのあたりじゃなかったかなって…」
「うーん、たしかにありえなくはないが…」
「剣鬼って剣聖を殺したやつのことだろ? 剣鬼が剣聖を殺したのは1年くらい前だから関係ねえんじゃないか?」
「うん。だから直接関係あるかわかんないんだけど、武人を狙う辻斬り自体はその前からいたらしいしもしかしたら…って」
「まあ、確率は低いだろうな」
「やっぱりそうかな?」
「ああ、あまり不確かな情報で坊主の希望を砕くような話はしないほうが良いかもしれねえな」
「それもそうだね…」
そう言い男達はこの話を切り上げ、しばらくの間談笑しながらロイがくるのを待った。
「先生ここはどういった場所なんですか? 商人のような方達が結構いますが」
「ここはギルドが仕切っている開拓村の一つだ。ここからが東に行くと鉱山があり、西に行くと漁村がある。そしてこのまま南へ行くと最終的には法国に着く」
「大きな街を結ぶ道の中継地点および避難所として、いくつかの開拓村やキャンプが存在している。ここもその一つだ」
「中継地点はわかりますが避難所ですか?」
「ああ。さっきも言った通りここはギルドが仕切っている。常に複数のギルド職員やギルドマンが在中しているから、何かしら問題がある場合は一時的な避難所として使用可能だ」
「はえー…じゃあここでもギルドの依頼とかって受けれるんですかね?」
「恐らくな」
「じゃあ!! 早速依頼を受けれるか僕聞いてきます!!」
「いやまて、まずは…」
そう言うとロイはウィルの静止を聞かずに開拓村の中へと走っていった。
「…はあ。まずは宿探しが優先だろう…」
ウィルはため息を吐きながら宿屋の看板が立っている方へと向かって行った。
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「すみません!! ギルドは何処にあるかご存知ですか?」
ロイは近くで荷卸作業をしている商人風の男に話しかける。男はロウの呼びかけに振り返ると、若いロウを見て少し怪訝な表情をしながら返事を返してきた。
「ああ? 坊主ギルドになにか用でもあるのか?」
「うん。旅の資金が必要だから依頼を受けれないかなって」
「若いのに大変だな…ギルドなら向こうの建物だ。建物の入口には剣と松明のマークが描かれた看板があるから直ぐ分かると思うぞ」
「商人のおっちゃん、ありがとう!!助かった!!」
「おう頑張れよ!!」
軽く礼を言いロイは男が指差す方向へ視線を向け歩き出す。
「えーと、剣と松明…剣と松明…」
歩きながら建物の入口にあるという看板を探す。男は直ぐ見つかると言っていたがこれが意外と見つからない。
「看板がありすぎてわかんねぇよ…」
各建物の入口には看板が立て掛けられており、鳥をもした看板や騎士の様な模様が描かれた看板、剣と盾が描かれた看板など多種多様な看板が乱立していた。
その中には似た看板もありこれがまた目当ての看板を探す事を邪魔していた。
「あっ、もしかしてこれのことか?」
そう言いながらとある建物の入口には【剣を持ち松明を掲げる人のシルエット】が描かれた看板が立てかけられていた。
そしてその看板の下方には【冒険者ギルド】と銘打ってある。
「商人のおっちゃんが言ってた内容とぜんぜん違うじゃんか…」
その建物があったのは先程、商人の男と話していた場所から目と鼻の先でありこれまでの捜索は完全に無駄足だったことをロイは悟った。
「商人って意外といい加減なんだな…まあ、見つかったからいいか。よし!!気分入れ替えて依頼を受けるぞ!!」
ロイは自分の顔を叩き気合を入れてギルドへと入る。
ギルドへ入りまず目に入ったのは、屈強な戦士風の男、魔法使いと思われる女性、軽装の弓使いなどよく王都でも目にする冒険者たちではなく…
「おう?坊主どうしたそんなとこで固まって」
「なんだ迷子か…?」
「もしかして依頼を受けに来たとかか!!ハハハッ!!」
「ちょっとマイクさんあまり茶化さないでくださいっ!!」
ロイの目に入ったのは至って普通の農民…いや木こり?のような風体の男が数人と受付嬢が一人。
外の看板がなければきっとロイは勘違いだと判断し直ぐに外へ出ていただろう。
「えーと…ここって冒険者ギルドで間違いないんだよね?」
ロイは近くにいた木こり風の男へ尋ねる。その問い掛けに男は何が面白いのか急に笑い出す。
「ハハハッ!! まさか本当に依頼を受けに来たのか? たしかにここは冒険者ギルドだが」
「ちょっとマイクさん!! …ぼく?ここは冒険者が以来を受けに来る場所で君のような子供が来る場所じゃないのよ。迷ったなら案内してあげるから…」
「なら俺が送っていくか? ちょうど宿に戻ろうかと思ってたからよ」
「あら、ロバートさんお願いできますか?」
「おう、リサちゃんの頼みだ任せておきなさい!!」
ロイを完全に無視してギルドに居た人達は迷子の案内をする方向で話をまとめていた。
「ちょっと!? 俺は依頼を受けに来たんであって、決して迷子じゃないんだけど!?」
「「え…?」」
ギルドの面々はロイの発言に正気を疑っているような視線を向ける。
「あー…坊主。ギルドの依頼ってのはな遊びじゃねんだ。危ないことは多いし、最悪死ぬことだってある」
「そうだぞ! 俺たちはこれでも冒険者だ。君みたいな若者が無茶をして死んでいくさまを何度も見てきている。悪いことは言わない親の元へ帰りな」
「だーかーらー、そんなことわかってるよ!!俺は王都でもちゃんと依頼を受けてきたし、もし疑うんだったら住民証明で依頼の履歴確認してよ!!」
「住民証明もちゃんと発行してるのか…リサちゃんちょっと、この子の履歴確認してもらえる?」
ギルドマンだという男の問にリサと呼ばれた受付嬢が慌てて返事をする。
「は、はい!! じゃあボク?住民証明をちょっと借りてもいいかな?」
自分を子供扱いする受付嬢に少しムッとするが、これ以上は話が拗れるので言い返すのは我慢する。
「はいどうぞ!!」
少し投げやりに住民証明を受付嬢へと渡すと、「ちょっとまっててくださいね!!」といながら建物の奥へと入っていった。
「にしても坊主。王都の住民証明があるってことはそれなりに裕福な家庭に生まれたんじゃないのか? それがなんでこんなとこで依頼なんか受けてるんだ」
マイクと呼ばれる男が無神経な質問を飛ばしてくる。それに男たちの一人が注意する。
「ちょっとマイクさん。流石に家の事情を聞くのは失礼ですよ。すみませんね、別に返答しなくても大丈夫ですよ?」
「…俺は今とある人に技を師事してもらいながら旅をしてるんです」
「武術でも習ってるのか?」
「いや…先生にはあくまでも戦いの基本とかを教えてもらってるだけ…それに武術は俺の父から教えてもらったものがあるから」
「その親父さんはどうしてるんだよ。心配してるんじゃないのか?」
「ちょっと…ロバートさんまで…」
「いいじゃねえか。気になるしよ...なあロバート?」
「まあな。で、なんで親父さんを置いて旅をしてるんだ」
ロイは、少し顔を下に向け話し出す。
「…父は2年前から行方不明です。修行でよく家を開けることがあっていつもなら数ヶ月で戻ってくるんですが…」
思っていた内容と違ったのか、ロバートとマイクは申し訳無さそうな顔をしている。
「あー…その、悪かったな。ズカズカと聞いちまって…」
「いや、俺の父がどこに居るのか、それとも死んでしまったのか。それを探すためにいつかは話すことになるだろうことだから…」
ロイの話に丁寧な話し方をする男が少し考えことをする素振りを見せる。
「2年前ですか…」
「なんだ、アレックス。なんか知ってるのか?」
「いえ、直接関係あるかはわかりませんが…2年前といえば…」
話の途中、建物の奥から女性の声が聞こえてきたたため、話を中断する。
「おまたせしました!! 履歴を確認した結果。依頼は受けても問題なさそうです!!」
「本当!? やった、じゃあ早速依頼を見せてもらってもいい!?」
確認が取れたことにロイは、ほっと胸を撫で下ろす。これで資金源の問題は解決できそうだ。
「はい!! じゃあ奥で依頼を受けるための手続きをしてもらうので、コチラに来てもらってもいいかな?」
「うん!! ごめん、ちょっと依頼の準備に行かなきゃだから!!」
「あ、ああ」
「あんま無茶はすんなよ?」
「まあ、一応保護者も居るんだろ?じゃあ大丈夫じゃねえか?」
「いや、先生は保護者じゃないから!?」
そう言いながらギルドマンたちに見送られるロイは建物の奥へと手続きをしに行った。
「それでさっき言いそびれたのは何だったんだ」
「ああ、多分関係ないとは思うけど【剣鬼】が活動を始めたのもこのあたりじゃなかったかなって…」
「うーん、たしかにありえなくはないが…」
「剣鬼って剣聖を殺したやつのことだろ? 剣鬼が剣聖を殺したのは1年くらい前だから関係ねえんじゃないか?」
「うん。だから直接関係あるかわかんないんだけど、武人を狙う辻斬り自体はその前からいたらしいしもしかしたら…って」
「まあ、確率は低いだろうな」
「やっぱりそうかな?」
「ああ、あまり不確かな情報で坊主の希望を砕くような話はしないほうが良いかもしれねえな」
「それもそうだね…」
そう言い男達はこの話を切り上げ、しばらくの間談笑しながらロイがくるのを待った。
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