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覚悟と意志
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オレはロイを弟子にむかえ、次の街へと向かう道中で休憩がてら技を教えながら少し考え事をしていた。
「さて…ロイを弟子にしたのは良いが、宿代が増えるのは問題だな。しばらくは野宿でもするか?」
旅の武芸者にとって最も大きな問題...それは金である。ギルドに所属していたり特定の街に留まるならオレのような流れ者でも金を稼ぐ手段は幾分か存在する。
しかし…今のオレは定住をせず街を転々としているせいで、ギルド登録の条件でもある住民証明が無いのだ。
住民証明は一定期間以上街に住む者や長期間街に滞在する商人などに発行されるモノだ。王国内のどの街であれ、この住民証明さえあれば王国すべてのギルドを通して依頼など受発注することが出来る。
逆に言えばこの証明ができない限り、正式な依頼を受けることができないのである。
「違法な依頼を受けるのは流石にリスクがでかい…さてどうしたものか…」
そう悩んでいるとロイが顔を覗き込んでくる。
「先生?なにか悩み事ですか?」
「ああ、お前の宿代をどうするべきか考えていた。流石に貧民街とはいえ王都の小綺麗な場所で暮らしてたなら野宿は嫌だろ?」
「いやぁ、別に大丈夫だと思いますけど…でも宿を取れるならそれに越したことはないですね」
「ふむ…どうしたものか」
「あ…!!」
ロイが突然何かを思い出したかのように大袈裟な動きをする。
「ギルドで依頼を受けましょう!!」
「それができたらはじめからしている。俺はギルドの受注要件を満たしていないから依頼は受けられない」
「え…そうなんですか? 僕はたまにギルドで簡単な依頼を受けてましたけど…」
…今ロイはギルドで依頼を受けていたといったか?
「何故それを今まで黙っていた」
「え…だって聞かれなかったですし…」
そうか。よくよく考えてみればロイはオレと違い、貧民街とはいえ王都に住んでいたのだった。なら住民証明を持っていても不思議ではない。
「はぁ…そうだな。そこら辺を聞いてないオレも悪かった」
「いえ…僕ももっとはやく言えばよかったですね。ごめんなさい」
「謝る必要はない。それに依頼を受けれるなら宿代をかせぐことも容易になる」
これなら旅の問題の大部分は解決できる。ただロイに任せっきりになるのは癪ではあるが…
「問題は解決した。続きを始めるぞ」
「はい先生!!」
休憩のために中断していた戦いの稽古を再開する。
「ではまずはお前がどのくらい戦えるか見せてもらう。オレを討つ気で来い」
俺は剣を抜きロイへと構える。それに反応してロイも慌てて剣を構える。
「はい…!!」
ロイは腰を落とし剣を横に構える。
「では…いきます!!」
掛け声とともにロイはウィルとの距離を一気に狭める。ロイの剣はウィルの剣よりも短いため間合いに入るには相手が振るう前に動く必要があった。
「…あまいな」
剣がウィルに当たる。そう思った瞬間、ロイの剣に重い衝撃が奔る。明らかに自分より遅く動いたはずのウィルの剣がロイの剣を受け止めていた。
「っ…!?」
ロイはすぐさま距離を取ると、今度はサイドに回り込む。
「これならどうだ!!」
ロイはウィルの死角から横薙ぎに脚を狙う。しかしまたしてもロイの放った攻撃はウィルの剣に阻まれてしまう。
「虎牙流…根刺し。なんてこと無いただ剣を地面に突き立て、相手の横払いを防ぐ技だ」
「…くそ!!」
ロイはまた距離を取る。しかし…
「攻撃しては引く。悪い戦法ではないが、自らより疾い相手に対して行うのはいただけない」
そう言いながらロイとの距離を一気に詰め、切先をロイの首筋に当てる。
「…参りました」
その言葉をききウィルは剣を鞘に戻しながら総括を始める。
「動きは悪くない。死角にはいってすぐさまオレの脚を狙ったのも良かった。しかし…」
「攻めが消極的すぎるな。お前はいつもこうやって戦っていたのか?」
「いつもはもう少し攻撃を繋げていたのですが…先生の間合いに入って攻撃を防がれた後、次の動きに移行する瞬間に身体がうまく動いてくれなかったんです」
「そうか。ロイもう一度オレと立ち会え」
「もう一度ですか…わかりました」
ロイはまた剣を構える。しかしウィルは剣を構えようとはしない。
「あのー先生?」
「どうした。早くかかってこい」
ウィルは一向に動かないロイに早く攻めてくるよう促す。
「流石に先生でも素手で剣に対抗するのは無理なんじゃ…」
「やってみなければわからんだろう?いいから早くこい」
「…わかりました。怪我しても知りませんからね!!」
ロイは構えの状態からまたもウィルとの距離を一気に詰める。
「なるほどな…」
しかし今度は剣が触れるよりも早く、ウィルが身体を移動させロイの剣を持つロイの腕を抑えていた。
「え…!?」
「ロイお前は人を殺したことはあるか?」
おもむろにウィルが質問をしてくる。
「人は…無いです」
「やはりそうか。お前が何故消極的なのかわかった」
「…なぜですか?」
「お前の放つ攻撃は殺すのではなく、あくまでも相手を戦闘不能にするためのモノだ。お前の攻撃は意思も覚悟も弱く、故にオレの技に気圧されてしまっている」
「意思と覚悟が弱い…」
「恐らくまだ生き物を殺す事への免疫がないからだろうが、もし本当の技を身に着けたいのなら…いずれは誰かを殺す覚悟を持たねばならない」
「…」
「どれだけ崇高な目的を掲げようが…オレたちが修める技術は殺しの技だ」
「殺しから目を背けるような軟弱者が本物を手に入れれるわけがない。今はまだそれでいいが、いずれはその壁に直面する事になる」
「そうなったらお前は選択を迫られる。それだけは心に留めておけ」
そう言いウィルはロイに背を向け次の街へと歩きはじめた。
ロイは剣を鞘に戻しただ黙ってウィルの後を追った。
「さて…ロイを弟子にしたのは良いが、宿代が増えるのは問題だな。しばらくは野宿でもするか?」
旅の武芸者にとって最も大きな問題...それは金である。ギルドに所属していたり特定の街に留まるならオレのような流れ者でも金を稼ぐ手段は幾分か存在する。
しかし…今のオレは定住をせず街を転々としているせいで、ギルド登録の条件でもある住民証明が無いのだ。
住民証明は一定期間以上街に住む者や長期間街に滞在する商人などに発行されるモノだ。王国内のどの街であれ、この住民証明さえあれば王国すべてのギルドを通して依頼など受発注することが出来る。
逆に言えばこの証明ができない限り、正式な依頼を受けることができないのである。
「違法な依頼を受けるのは流石にリスクがでかい…さてどうしたものか…」
そう悩んでいるとロイが顔を覗き込んでくる。
「先生?なにか悩み事ですか?」
「ああ、お前の宿代をどうするべきか考えていた。流石に貧民街とはいえ王都の小綺麗な場所で暮らしてたなら野宿は嫌だろ?」
「いやぁ、別に大丈夫だと思いますけど…でも宿を取れるならそれに越したことはないですね」
「ふむ…どうしたものか」
「あ…!!」
ロイが突然何かを思い出したかのように大袈裟な動きをする。
「ギルドで依頼を受けましょう!!」
「それができたらはじめからしている。俺はギルドの受注要件を満たしていないから依頼は受けられない」
「え…そうなんですか? 僕はたまにギルドで簡単な依頼を受けてましたけど…」
…今ロイはギルドで依頼を受けていたといったか?
「何故それを今まで黙っていた」
「え…だって聞かれなかったですし…」
そうか。よくよく考えてみればロイはオレと違い、貧民街とはいえ王都に住んでいたのだった。なら住民証明を持っていても不思議ではない。
「はぁ…そうだな。そこら辺を聞いてないオレも悪かった」
「いえ…僕ももっとはやく言えばよかったですね。ごめんなさい」
「謝る必要はない。それに依頼を受けれるなら宿代をかせぐことも容易になる」
これなら旅の問題の大部分は解決できる。ただロイに任せっきりになるのは癪ではあるが…
「問題は解決した。続きを始めるぞ」
「はい先生!!」
休憩のために中断していた戦いの稽古を再開する。
「ではまずはお前がどのくらい戦えるか見せてもらう。オレを討つ気で来い」
俺は剣を抜きロイへと構える。それに反応してロイも慌てて剣を構える。
「はい…!!」
ロイは腰を落とし剣を横に構える。
「では…いきます!!」
掛け声とともにロイはウィルとの距離を一気に狭める。ロイの剣はウィルの剣よりも短いため間合いに入るには相手が振るう前に動く必要があった。
「…あまいな」
剣がウィルに当たる。そう思った瞬間、ロイの剣に重い衝撃が奔る。明らかに自分より遅く動いたはずのウィルの剣がロイの剣を受け止めていた。
「っ…!?」
ロイはすぐさま距離を取ると、今度はサイドに回り込む。
「これならどうだ!!」
ロイはウィルの死角から横薙ぎに脚を狙う。しかしまたしてもロイの放った攻撃はウィルの剣に阻まれてしまう。
「虎牙流…根刺し。なんてこと無いただ剣を地面に突き立て、相手の横払いを防ぐ技だ」
「…くそ!!」
ロイはまた距離を取る。しかし…
「攻撃しては引く。悪い戦法ではないが、自らより疾い相手に対して行うのはいただけない」
そう言いながらロイとの距離を一気に詰め、切先をロイの首筋に当てる。
「…参りました」
その言葉をききウィルは剣を鞘に戻しながら総括を始める。
「動きは悪くない。死角にはいってすぐさまオレの脚を狙ったのも良かった。しかし…」
「攻めが消極的すぎるな。お前はいつもこうやって戦っていたのか?」
「いつもはもう少し攻撃を繋げていたのですが…先生の間合いに入って攻撃を防がれた後、次の動きに移行する瞬間に身体がうまく動いてくれなかったんです」
「そうか。ロイもう一度オレと立ち会え」
「もう一度ですか…わかりました」
ロイはまた剣を構える。しかしウィルは剣を構えようとはしない。
「あのー先生?」
「どうした。早くかかってこい」
ウィルは一向に動かないロイに早く攻めてくるよう促す。
「流石に先生でも素手で剣に対抗するのは無理なんじゃ…」
「やってみなければわからんだろう?いいから早くこい」
「…わかりました。怪我しても知りませんからね!!」
ロイは構えの状態からまたもウィルとの距離を一気に詰める。
「なるほどな…」
しかし今度は剣が触れるよりも早く、ウィルが身体を移動させロイの剣を持つロイの腕を抑えていた。
「え…!?」
「ロイお前は人を殺したことはあるか?」
おもむろにウィルが質問をしてくる。
「人は…無いです」
「やはりそうか。お前が何故消極的なのかわかった」
「…なぜですか?」
「お前の放つ攻撃は殺すのではなく、あくまでも相手を戦闘不能にするためのモノだ。お前の攻撃は意思も覚悟も弱く、故にオレの技に気圧されてしまっている」
「意思と覚悟が弱い…」
「恐らくまだ生き物を殺す事への免疫がないからだろうが、もし本当の技を身に着けたいのなら…いずれは誰かを殺す覚悟を持たねばならない」
「…」
「どれだけ崇高な目的を掲げようが…オレたちが修める技術は殺しの技だ」
「殺しから目を背けるような軟弱者が本物を手に入れれるわけがない。今はまだそれでいいが、いずれはその壁に直面する事になる」
「そうなったらお前は選択を迫られる。それだけは心に留めておけ」
そう言いウィルはロイに背を向け次の街へと歩きはじめた。
ロイは剣を鞘に戻しただ黙ってウィルの後を追った。
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