剣豪、未だ至らぬ

萎びた家猫

文字の大きさ
7 / 74

お調子者な子鬼

しおりを挟む
「師匠!! 次はどこに行くんですか!!」

 結局あの後王都の出口付近でロイに見つかり、一緒に旅をすることになった。旅の道中で撒こうかと考えたが、流石に子供を何もない道端で放置はどうかと思い次の街まで同行することを許可した。

「南にあるモヤズハムの村まで行きそこでお前を置いていく」

「ちょっと待ってくださいよ!? それじゃあわざわざ師匠についてきた意味がないじゃないですか!?」

「そんなことは知らん。お前が勝手についてきただけだろう」

「僕は師匠に戦いの技を教えてほしいんです!! その為だったら何でもする覚悟です!!」

「はぁ…」

 本当に厄介な荷物を引っ掛けてしまったものだ。
 
「お前は何故オレにそこまで技を教えてほしいんだ? いくら貧民街出身とはいえ他の寮に比べれば十分に生活は出来るレベルがほとんどだろう」

「僕が父に武術を教えててもらってたと言うのはさっき言いましたよね? その時に言われたんです」

「...なんと言われたんだ?」

「あっ!? もしかして気になりますか!?」

「…」

 苛ついたので歩く速度を早める。オレとロイでは体格に差があるのでロイは焦りながら駆け足で追いかけてくる。

「ち…ちょっと!? 師匠待ってくださいよ!? ちゃんと話しますから!!」

「父にはいつか教えた武術を世に広めてほしいと…僕ならそれが出来ると…そう言われました」

「ではオレに教わらずその親に教わればいいではないか?」

「父は金を稼ぐついでに修行をするため王都の外へ行くことが多々ありました。いつもなら1ヶ月ほどで戻ってくるのですが…」

「…2年ほど前から帰ってこないんです。」

「すまない、無神経なことを言ってしまった」

「いえ…僕が勝手に話したことなので!! それに師匠なら分かると思いますが、外には魔物なんかの危険が多いので父に限らず商人なんかもよく被害に合うらしいですし…」

「そうだな」

 これは事実だ。オレも武人や賊に遭遇するよりも、魔物と遭遇するほうが多かった。

 実際この世界での死亡する原因が病気の次くらいには街の外で魔物などに襲われて死ぬこと多い。

「父が魔物に襲われたのか、それとも誰かに殺されたのか。それはわかりませんが僕が教わった武術を…父の思いを…今のまま腐らせては父のこれまでが全て無駄になってしまう!!」

「小さい頃から父に武術を教えてもらったからこそわかるんです。父がどれほど苦労してあの技術体系を生み出したのか」

「…ですが今の僕には父の武術を継げるほど力はなく、技の継承にも行き詰まっていました。」

「…」

「そこに現れたのが師匠、あなたです」

「…」

「ひと目見てわかりました。あなたは僕が持っていない何かを持っていると…」

「きっとあなたなら僕だけでは成せない何かを知っていると…」

「だから…」

 ロイは立ち止まり頭を深く下げる。

「僕にどうか師匠のわz「わかった」…!?」

 ウィルの言葉にロイは即座に身体を起こす。そこには鬼が此方を見定めるように立っていた。
 
 その威圧感にロイは一瞬後退りしそうになるが、それをグッとこらえそしてウィルの眼をまっすぐ見た。

 その様子をウィルは少しの間黙って見ていたが、ついには逃げずにこちらを見たロイに…

「…お前に師事してやろう」

「本当ですか!?」

 喜ぶロイにウィルは、ただし…と付け加える。

「オレが教えるのは武器の扱い方と戦い方その基本だけだ。武術はお前が自分でどうにかしろ」

「っ…わかりました」

「そして…もし途中で泣き言をいう様なら」

「オレはその時点でお前を斬り捨てる。やり直しも何もない。たった一度きりのチャンスをモノにできない奴など死ねばいい」

 戦いとはそういうものだ…そう言うとウィルは再度歩き始める。それに遅れぬようロイもついて行く。

 しかし先程までのように焦ったりはしない。ウィルは歩く速度を緩め、ロイもそれに並んで歩く。

「てことはこれからは正式に師弟の関係ってことでいいんですよね!?」

「…それをどう呼ぶかは好きにしろ。」

「やった!! じゃあやっぱり先生呼びのほうが良いかなぁ? 僕にとっての師匠はやっぱり父唯一人ですし…」

「そういえば、お前の習った武術はなんという」

「父の武術ですか?」

「それ以外に何がある」

「そ…そうですよね!! えーと、父の武術の名は…」

 先程までの重い雰囲気は完全に消え、最初に出逢ったときと同じ調子で話すロイ。

 そして普段は寡黙で無感情なウィルもこのときだけは少しだけ…口元をほころばせた。


その日、剣鬼は一人の子鬼を拾った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...