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イベント
イベント⑧
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俺はゆっくりニンゲン、いや人ならざる何かを見つめる。
「驚いた、同族だったとは。」
まともに聞く彼の声は、軽快で陽気な響きを持っていた。
「いや、人間ですよ。ただ、ちょっと目に異常があるだけの。」
どうやら、他種族から見ると俺は魔族に見えるらしいな。悲しい。
「面白いね。・・・魔眼といったか、一部の人族は俺達と似たようなことができるのか。」
恐らく、今の状態は俺達以外の動きは鈍っているのだろう。俺は魔眼発動中、当たり前だが鈍くならない。その効果がこの人の能力にも影響していると考えられる。
「そんなところです。しかし、この能力は時間制限があるので厳密にいえば異なっているのかもしれません。」
「人族がそれほどの力を身に宿すにはそれくらいの代償が必要だろうな。さて、俺にもこの世に心残りがあるが致し方ない。俺の人生を聞いてくれるか?」
最初に目を合わせたとき、俺はすでに解った。あの目は、死にたくても死ねない、という苦痛の目だ。俺は一度見たことがある。忌まわしい過去にな。
「ええ、喜んで。」
「俺は、やんちゃな魔人だった。来る日も来る日も同郷の仲間達に危害を加え、鼻つまみものとして煙たがられていたよ。」
魔族にも色々な人がいるってことか。
「ある日ついに、俺は里を追放され、海へ流された。まあ、今思えば当然だろう。俺はあてもなく海をさまよい、ある時ついに海に墜ちた。」
人間の世界でいう流刑の強化版みたいな罰ってことだろう。
「本来そこで俺の命は尽きるハズだった。ところが、まだ俺には転機があった。」
そこで魔人は話を切ると、ここに無い何かを見るような遠い目で話し始めた。
「俺は、ある島に漂着していたんだ。目を覚ませば、そこは人族の寝床だったって訳さ。もちろん俺はここでも暴れようとした。でも、出来なかったんだ。何故かって?」
それは、と魔人は息を大きくつぎ、
「俺が、そこの娘に恋したからだよ。一目惚れってやつだ。生まれてこのかた、愛したことも愛されたこともない俺の、初めての恋だった。」
魔人は赤面しつつまくし立てる。
「俺はその娘に猛アプローチした。最初は玉砕だったよ。でも、俺は諦めなかった。魔法で一瞬で出来ることも自分でやり、生活全般に魔法を禁じた。」
まるで昨日のことのように、魔人は語る。
「そして、ある晩ついに、本気でプロポーズした。名前もわからない花を持ってね。そしたら彼女、泣きながら承諾してくれたよ。」
嬉しそうに、笑いながら魔人は言葉を継いでゆく。
「幸せな生活は、彼女が死ぬまで続いた。・・・俺が年をとらないのも、何も気にせず付き合ってくれた。」
魔人の顔に、一筋の涙が光る。
「彼女が死に、百年ほどかな。俺は島の端で、毎日海を眺めて過ごしていた。けど、ある時悲劇が起こった。巨大な魚が、島を丸飲みしようと襲ってきたのさ。」
魔人は、悲しそうに刻々と告げる。
「俺なら、奴を殺すことは容易だった。そう以前の俺ならね。」
「俺は、奴を殺すことが出来なかった。力が足りなかった訳じゃない。奴を殺せば、島の人達にも危害が加わるからね。だから俺は、わざと奴に吸収され、同化した。」
・・・
「こんな俺だからね。どんな死を迎えようが受け入れるよ。けれど、一つぐらい自分の生きた痕跡を残したいんだ。手を貸してくれるかな。
俺は黙って手を差し出した。
「ありがとう。命を賭けて俺を救ってくれた君に、せめてもの礼をさせてもらう。」
魔人から俺へ、魔力が流れてくる。魔力だけじゃない。記憶も流れてくる。
親が欲しくて、暴れ回った日々。
愛を妬んで、悩みに悩んだ日々。
全てを憎んで、自暴自棄の日々。
・・・
恋が欲しくて、努力した日々。
子孫が欲しくて、葛藤した日々。
平穏を望んで、安寧の日々。
平穏を呈して、苦しんだ日々。
苦しみの中で、密かに喜んだ日々。
「驚いた、同族だったとは。」
まともに聞く彼の声は、軽快で陽気な響きを持っていた。
「いや、人間ですよ。ただ、ちょっと目に異常があるだけの。」
どうやら、他種族から見ると俺は魔族に見えるらしいな。悲しい。
「面白いね。・・・魔眼といったか、一部の人族は俺達と似たようなことができるのか。」
恐らく、今の状態は俺達以外の動きは鈍っているのだろう。俺は魔眼発動中、当たり前だが鈍くならない。その効果がこの人の能力にも影響していると考えられる。
「そんなところです。しかし、この能力は時間制限があるので厳密にいえば異なっているのかもしれません。」
「人族がそれほどの力を身に宿すにはそれくらいの代償が必要だろうな。さて、俺にもこの世に心残りがあるが致し方ない。俺の人生を聞いてくれるか?」
最初に目を合わせたとき、俺はすでに解った。あの目は、死にたくても死ねない、という苦痛の目だ。俺は一度見たことがある。忌まわしい過去にな。
「ええ、喜んで。」
「俺は、やんちゃな魔人だった。来る日も来る日も同郷の仲間達に危害を加え、鼻つまみものとして煙たがられていたよ。」
魔族にも色々な人がいるってことか。
「ある日ついに、俺は里を追放され、海へ流された。まあ、今思えば当然だろう。俺はあてもなく海をさまよい、ある時ついに海に墜ちた。」
人間の世界でいう流刑の強化版みたいな罰ってことだろう。
「本来そこで俺の命は尽きるハズだった。ところが、まだ俺には転機があった。」
そこで魔人は話を切ると、ここに無い何かを見るような遠い目で話し始めた。
「俺は、ある島に漂着していたんだ。目を覚ませば、そこは人族の寝床だったって訳さ。もちろん俺はここでも暴れようとした。でも、出来なかったんだ。何故かって?」
それは、と魔人は息を大きくつぎ、
「俺が、そこの娘に恋したからだよ。一目惚れってやつだ。生まれてこのかた、愛したことも愛されたこともない俺の、初めての恋だった。」
魔人は赤面しつつまくし立てる。
「俺はその娘に猛アプローチした。最初は玉砕だったよ。でも、俺は諦めなかった。魔法で一瞬で出来ることも自分でやり、生活全般に魔法を禁じた。」
まるで昨日のことのように、魔人は語る。
「そして、ある晩ついに、本気でプロポーズした。名前もわからない花を持ってね。そしたら彼女、泣きながら承諾してくれたよ。」
嬉しそうに、笑いながら魔人は言葉を継いでゆく。
「幸せな生活は、彼女が死ぬまで続いた。・・・俺が年をとらないのも、何も気にせず付き合ってくれた。」
魔人の顔に、一筋の涙が光る。
「彼女が死に、百年ほどかな。俺は島の端で、毎日海を眺めて過ごしていた。けど、ある時悲劇が起こった。巨大な魚が、島を丸飲みしようと襲ってきたのさ。」
魔人は、悲しそうに刻々と告げる。
「俺なら、奴を殺すことは容易だった。そう以前の俺ならね。」
「俺は、奴を殺すことが出来なかった。力が足りなかった訳じゃない。奴を殺せば、島の人達にも危害が加わるからね。だから俺は、わざと奴に吸収され、同化した。」
・・・
「こんな俺だからね。どんな死を迎えようが受け入れるよ。けれど、一つぐらい自分の生きた痕跡を残したいんだ。手を貸してくれるかな。
俺は黙って手を差し出した。
「ありがとう。命を賭けて俺を救ってくれた君に、せめてもの礼をさせてもらう。」
魔人から俺へ、魔力が流れてくる。魔力だけじゃない。記憶も流れてくる。
親が欲しくて、暴れ回った日々。
愛を妬んで、悩みに悩んだ日々。
全てを憎んで、自暴自棄の日々。
・・・
恋が欲しくて、努力した日々。
子孫が欲しくて、葛藤した日々。
平穏を望んで、安寧の日々。
平穏を呈して、苦しんだ日々。
苦しみの中で、密かに喜んだ日々。
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