FLOWER WORLD~花に選ばれし者と愛されし者~

本山莉子

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第3話 かもしれないっていう気持ち

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大草原の中、彼と歩き始めた。

というか……
「どの方向に歩いていけばいいんですかね?」
私は彼に問いかける。

「まずは、俺達をさらってきた奴を見つけてボコりたいところだが、もう日が落ちてきてるんでな。どこか今日休める所を見つけてぇ…」 

彼はそう言うが、私としては、一刻も早く誘拐犯を見つけて帰りたい。休んでる場合ではない気がする。

「日が落ちてても、誘拐犯を見つけるべきでは?貴方なら誘拐犯を倒せるかもしれません。そしたら、お家に帰れるかもしれません」

彼は私をじっと見つめてから、言い聞かせるようにこう言った。

「かもしれない、っていう気持ちも大事だが、それだけで動くな。周りをしっかり観察しろ。いいか?ここは見渡す限り大草原だ。草以外何もねぇ。たまに木が数本生えてるくらいだ。その木の影にも誰かが俺達を遠くから見て嘲笑ってるような気配も全くない。そもそも隠れられるようなでかい木も無い。あと、誘拐犯は複数人で武器も持ってる可能性がある。俺一人で戦いながら、お前を守りきれるかも分からねぇ」

「はい……」
なんだか怒られてしまった。私がしょんぼりしているのを知ってか知らずか、彼は話を続ける。

「それと、さっき見つけた鞄は、たぶん俺達に用意されたものだろう。誘拐犯は、俺達を拐っておきながら、世話をする気がなく鞄と一緒に放置したって所じゃないか?」

「なるほど、そうですね。そんな感じがします……」

「まぁこれも、かもしれないっていう推理だがな……」
そういって、彼は私に照れたように笑った。
まるで、しょんぼりしている私を気遣うような、優しい笑顔にドキッとした。そんな場合ではないのに。

私も釣られて笑みがこぼれた。
「ふふっ。でも、この大草原に私と貴方しかいないのは現実ですね。見渡す限り、誰もいませんから」

「そうだな……」

彼はボソッとなにか呟いた。

「ちょっと、信用しすぎだ……」  

私は、聞き取れなかった。

「え?今なんて?」

「いや、なんでもない。とりあえず、夕日に向かって歩くか」

「走るのではなくて?」

二人で笑い、そして歩く。

「そういえば、お前、名前は?俺は京極大雅だ」
「きょうごく……?めちゃめちゃ格好いいお名前ですね。名前も虎みたいで……あっ、私は橘美弥です……」

今さらの自己紹介、そしてその名前に吹き出す私達。

「たちばな、みや……ね。おまえこそ猫みたいな名前だな」
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