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第2話 謎の鞄と彼のぬくもり
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「……やっぱり貴方の鞄なんじゃ?」
私は、もう一度確認してみるが彼は首を振る。
「……俺の物じゃないものも入ってるぞ。見てみろ」
彼と鞄の側に、近寄り鞄の中を探ってみる。
「女物が入ってますね。服と下着……ですね?あと食べ物も。水も飲みかけのがあります。女物の服などは貴方の彼女さんのものとかでは……?」
私が問いかけると、彼はまた首を振った。
「……彼女なんかいねぇ。……それにお前まだこの鞄が俺のだと思ってるな。……俺の服以外、鞄自体も女物の服も見覚えがねぇよ」
すると、彼は少し考えたあと、私に聞いた。
「……この女物の服は、お前のじゃないのか?」
「え?」
「俺たち二人は、何らかのかたちでこの草原に誰かに連れてこられたんだと俺は考えている。この鞄はその誰かが用意したものなんじゃないかと思う」
彼の推理は当たっているようにも思えるが、私は腑に落ちない。なぜなら。
「では、女物の服はなぜ私のものじゃないのでしょうか……。残念ですが、見覚えがありません。」
「……」
「その誰かは、貴方のものは貴方の家から持ってきて、私のものは買ってきたのでしょうか?なぜそんなことする必要が?」
「……そうだな。お前は格好からして、家で夜眠っているとき拐われたんだろう。その誰かがお前の服を用意するならその時お前のタンスから持ち出せばいい」
「あ!でも時間がなかったとか……家の者に気づかれたとかかもです!」
「なるほどな…。だか、俺の場合……」
「っっっハックション!!」
「!!大丈夫か?とりあえず、話してる場合じゃねえな。着替えるか、なんか羽織れ。幸い靴も入ってるぞ。いつまでもスリッパじゃな……」
彼は、ビックリして鞄のなかからカーディガンと靴を出してくれた。
こんな目隠しもなにもないところで、着替えるのも恥ずかしく、彼からカーディガンを受け取り羽織った。
スリッパから靴にはきかえたが、サイズが少し窮屈だ。
スリッパを鞄に入れようとすると、彼は私の手からスリッパを取り、靴が入っていた靴袋にスリッパを入れてから丁寧に鞄に入れた。
「靴はどうだ?合ってるか?」
「ちょっと窮屈で……。ん?」
私は靴を一旦脱いで、靴のなかを見てみると、中に紙をクシャクシャにしたものが入っているのに気付いた。
「これ、新品ですね、匂いもないし、この紙はお店に売っているときに靴のなかに入っているわら半紙です」
彼は、私の後ろに周り私のカーディガンの首元を引っ張りこう言った。
「よく見ると、服にも値札がついたままだな」
「そうですか?っっあ、きゃっ!」
片方靴を脱いだ状態で、片足で立っていたものだから、つまずきそうになった。
「っっ!!」
後ろから彼が私を抱き締めるように、支えてくれる。
なんだか彼からなにか懐かしいような優しい匂いがした。
「すまねぇ、大丈夫か!?」
「はっ、はい。大丈夫です……」
彼の腕の中に支えられ、彼のぬくもりを感じる。冷えきった私の体に染みるようだ。
「お前、すげぇ冷えてるな。そんなに寒かったのか。」
「はい……」
彼は私を後ろからぎゅっと抱き締めた。
「もう、日が落ちてきたな。早めに今日寝るところを探さねぇと……」
「そうですね……。」
さっき会ったばかりの人なのに、とても安心する。
抱き締められても嫌じゃない。
そしてこの人も違和感なく抱き締めてくる。
いったいこの人はなんなんだろう?
「行けるか?」
「はい!」
彼は右手で私の手を握り、もう片方の手で鞄を持った。
「あっ⋯⋯手⋯⋯」
私が戸惑って、繋いだ手を見た。
「⋯⋯っ!すまねぇ、つい⋯⋯」
彼はそう言うと、繋いだ手を離した。
「いえ⋯⋯いいんです」
少し残念な気持ちになる自分が不思議だった。
「じゃあ、少し歩くぞ。無理するなよ。きつくなったら言え」
「わかりました」
そうして私と彼は夕日の中、歩きだした。
私は、もう一度確認してみるが彼は首を振る。
「……俺の物じゃないものも入ってるぞ。見てみろ」
彼と鞄の側に、近寄り鞄の中を探ってみる。
「女物が入ってますね。服と下着……ですね?あと食べ物も。水も飲みかけのがあります。女物の服などは貴方の彼女さんのものとかでは……?」
私が問いかけると、彼はまた首を振った。
「……彼女なんかいねぇ。……それにお前まだこの鞄が俺のだと思ってるな。……俺の服以外、鞄自体も女物の服も見覚えがねぇよ」
すると、彼は少し考えたあと、私に聞いた。
「……この女物の服は、お前のじゃないのか?」
「え?」
「俺たち二人は、何らかのかたちでこの草原に誰かに連れてこられたんだと俺は考えている。この鞄はその誰かが用意したものなんじゃないかと思う」
彼の推理は当たっているようにも思えるが、私は腑に落ちない。なぜなら。
「では、女物の服はなぜ私のものじゃないのでしょうか……。残念ですが、見覚えがありません。」
「……」
「その誰かは、貴方のものは貴方の家から持ってきて、私のものは買ってきたのでしょうか?なぜそんなことする必要が?」
「……そうだな。お前は格好からして、家で夜眠っているとき拐われたんだろう。その誰かがお前の服を用意するならその時お前のタンスから持ち出せばいい」
「あ!でも時間がなかったとか……家の者に気づかれたとかかもです!」
「なるほどな…。だか、俺の場合……」
「っっっハックション!!」
「!!大丈夫か?とりあえず、話してる場合じゃねえな。着替えるか、なんか羽織れ。幸い靴も入ってるぞ。いつまでもスリッパじゃな……」
彼は、ビックリして鞄のなかからカーディガンと靴を出してくれた。
こんな目隠しもなにもないところで、着替えるのも恥ずかしく、彼からカーディガンを受け取り羽織った。
スリッパから靴にはきかえたが、サイズが少し窮屈だ。
スリッパを鞄に入れようとすると、彼は私の手からスリッパを取り、靴が入っていた靴袋にスリッパを入れてから丁寧に鞄に入れた。
「靴はどうだ?合ってるか?」
「ちょっと窮屈で……。ん?」
私は靴を一旦脱いで、靴のなかを見てみると、中に紙をクシャクシャにしたものが入っているのに気付いた。
「これ、新品ですね、匂いもないし、この紙はお店に売っているときに靴のなかに入っているわら半紙です」
彼は、私の後ろに周り私のカーディガンの首元を引っ張りこう言った。
「よく見ると、服にも値札がついたままだな」
「そうですか?っっあ、きゃっ!」
片方靴を脱いだ状態で、片足で立っていたものだから、つまずきそうになった。
「っっ!!」
後ろから彼が私を抱き締めるように、支えてくれる。
なんだか彼からなにか懐かしいような優しい匂いがした。
「すまねぇ、大丈夫か!?」
「はっ、はい。大丈夫です……」
彼の腕の中に支えられ、彼のぬくもりを感じる。冷えきった私の体に染みるようだ。
「お前、すげぇ冷えてるな。そんなに寒かったのか。」
「はい……」
彼は私を後ろからぎゅっと抱き締めた。
「もう、日が落ちてきたな。早めに今日寝るところを探さねぇと……」
「そうですね……。」
さっき会ったばかりの人なのに、とても安心する。
抱き締められても嫌じゃない。
そしてこの人も違和感なく抱き締めてくる。
いったいこの人はなんなんだろう?
「行けるか?」
「はい!」
彼は右手で私の手を握り、もう片方の手で鞄を持った。
「あっ⋯⋯手⋯⋯」
私が戸惑って、繋いだ手を見た。
「⋯⋯っ!すまねぇ、つい⋯⋯」
彼はそう言うと、繋いだ手を離した。
「いえ⋯⋯いいんです」
少し残念な気持ちになる自分が不思議だった。
「じゃあ、少し歩くぞ。無理するなよ。きつくなったら言え」
「わかりました」
そうして私と彼は夕日の中、歩きだした。
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