THIEF -シーフ-

事件発生

5-8

「あなたに言われなくたって・・・私・・・・・・」



強がっていたエリカは、言葉を飲み込み黙って四人を見送った。




 先に車に乗り込んだチップとウォルトは顔を合わせながら、少々不安げにしていた。



後から乗り込んだライトは、二人の表情を見て「どうかしたか？」と、とぼけた顔で言った。



「いや・・・彼女、やっぱり連れて来た方がよかったんじゃないか？」



ウォルトはスモークガラス越しに何故か突然不安そうな表情を見せてこちらを見ているエリカを見た。



 「大丈夫だ」



 根拠のない「大丈夫だ」はライトの口癖でもある。



チップに車を発進させると、車の後ろから黒塗りのバイクが後を追った。




 「あれ・・・ベスって人？・・・」



エリカは、そのバイクを直視しているとバイクの運転手はチラリとエリカの方を見た・・・気がした。



『 一つだけ確認させて』



インカムから、ベスの声が聞こえた。


ウォルトとチップは、耳に手を当てた。



ベスが誰に向かって話しているかは、二人にも分かっていた。




 『あの子は、ちゃんと家に帰すのよね？』



ウォルトは、ライトの方を見た。



「帰すも何も今ここにいるのは彼女の意志だ。俺たちがどうこう言う問題か？」



ライトは、車と平行に走っているバイクに視線をやった。



バイクは、そのまま速度を上げるとライトたちの車の前に出た。



 「ごもっともだけど、ちゃんとした説明が欲しかったんじゃないか？」


ウォルトは、バイクの方を見ながら言ったが、ライトはそれについては話をしなかった。