THIEF -シーフ-

追跡

8-5

エリカは、あきれた顔でライトを見た。


「飽きれた人。本当に侵入するつもり?」


「不本意だが、仕方ない。今ある手掛かりは靴だけだ」



「そんな事をしなくても、情報を手に入れる方法はあるわよ？」


そう言って、エリカはもごもごと動いているチップの背中を見た。


「あいつがどう使えるっていうんだ？」



「彼は一応天才ハッカーよ？」



「一応、な」



「靴屋のネットワークに侵入させてみたら？今時の顧客管理は紙っぺらじゃなくて、電子管理じゃないかしら？」



エリカの鋭い視線を背中に受けたチップは、身震いをしながら恐る恐る振り返った。

「な、なんだよ…二人してこっち見るから、恐ろしいほどの殺気だ」



「チップ。あなたにひと仕事頼みたいの。ライトのために一肌脱いでくれない？」


とぼけた顔のチップは、エリカの言っている意味がわからなかった。



「こいつに凝った事を言っても通じないぞ」



ライトは立ち上がり、チップの横に立った。




「こいつを売っている靴屋の情報が欲しい。いわゆる顧客リストって奴だ」



「なんだ、そんな事か。俺にとっちゃ朝飯前だ」



ポキポキと指の骨をならしながら「どこの靴屋から狙う？」とキーボードに指を置いて、ライトの返事を待った。



「そうだな…」



「ブラクティック通りの靴屋からってのはどうかしら」



エリカの言葉に二人は顔を合わせた。