48 / 124
第48話 出来る! ワシはまだ出来るぞ!!
しおりを挟む大霊廟の大食堂。
「誠にぃ! 申し訳ございませんでしたああぁ!!」
「おじいちゃんがすいませんでした~!!」
見たことも無い見事な土下座を披露するアケノと爺さんsとノボリト。
「いや、いろいろ誤解があったということで、頭をあげて下さい」
特にアケノの後ろの爺さんsなんか、完全にとばっちりだもんなあ。
俺は爺さんsとノボリトに席に座るよう促す。
「孫の恩人である勇者様に度重なるご無礼、あまつさえお嬢様にまで言われもない暴言を……」
「ああ、そりゃもういいですよ。こちらも多少やり過ぎましたし、あと俺は義雄でいいです」
「有難うございます! 改めまして、孫の目を治して頂き、しかも孫の才能を見出して頂いた事にはお礼の言いようもありません」
そう言うと隣に座るノボリトの頭を優しく撫でるアケノ。照れ臭そうに身をよじるノボリトが微笑ましいね。
「しかしながらノボリトがうらやましい……ワシが先代にお仕えした時は大霊廟御物に手を加えるなど考えも及びませんでした」
「先代って、有馬さんにですか!」
「はい。我ら機獣の搭乗員として魔獣討伐にお供させていただきました。ここでの経験が我らをより高みに引き上げて、身に余る名誉と称号をもたらしてくれたのです」
過去に想いを馳せるかのように、ここでないどこかを見るアケノ。
「とは言え、よる年波には勝てませんな。衰えた身では槌を持つ事も叶いません。役目を終えた今はここにある機獣と同様、静かに消え逝くのみです」
せつないな……ん、待てよ?
「エイブル、ちょっとみんなに手伝ってもらえないか? 探したいものがあるんだ。ノボリトは爺さんたちの相手を頼む」
「はい。ただちに」
「ひよこもさがす~」
「おう、ひよこ! 合体だ!」
「らじゃ!」
ぴっと小さく敬礼するひよこを肩車すると、俺はお目当てのものを探し出すべく行動を開始した。
☆
「!!」
「こ、これは!」
「見える! 見えるぞ!」
「な、治ったのか?」
「出来る! ワシはまだ出来るぞ!!」
「これは……先ほどノボリトのメガネを借りて、もしやと試してみたのですが……」
驚愕の表情でさまざまなものを見比べ、その手ごたえを確かめる爺さんs。その顔にはメガネがかけられている。
「義雄様! どういうことですか? おじいちゃん達は私のメガネでは治らなかったのですよ?」
同様に驚きを隠しきれないノボリト。
「ああ、お前と爺さん達は違う眼の病気だ。厳密に言えば、お前は極度の近視だけど、爺さん達は老眼だ」
「老眼?」
「歳をとって目が老化する病だ。近くのものや、小さい字が見づらくなる。これには近視用のメガネじゃダメなんだ。老眼鏡が必要だ。ノボリトのとはレンズの構造が違うんだよ」
ひとしきりの興奮が収まったのか、老眼鏡をかけた爺さんsが俺の前に進み出た。
「義雄様、我ら一同はこれまでただ我が身の衰えに抗う術を持たず、この身を持て余してきました」
「しかし、今この時、義雄様のお陰で消えかけていたドワーフ魂に火がつきました!」
「余生ではなく、さらなる高みを目指す新たな人生を手にできたのです!」
「必ずお役に立ちます!」
「ここから先は義雄様に一職人としてお仕えさせて頂きたい」
「我ら一同を義雄様の配下にお加え下さい!!」
「ええ? マジですか?」
ナチュラル技術チート集団が仲間になっちゃったよ。まあ、ノボリトの最近のデスマーチっぷりには気が気でなかっただけにありがたく受け入れよう。
「わかりました……とりあえずノボリトが責任者で、爺さんsの面倒見てくれ。エイブル、宿舎の手配頼むよ」
☆
「ノボや、この山はナンジャラホイ?」
「えーっと、この前の203高地の攻略で手に入れたのです。こっちがゴーレムコアの山で、こっちがマテリアルの山です」
「……」
大霊廟内をノボリトに案内された爺さんsが203高地の戦利品の山の前で固まった。
「あ、アーティファクトの製作には金がかかる。そもそも材料費がバカにならん……そうそう簡単に高位のアーティファクトが作れん理由の一つじゃが……」
「マテリアルはまだまだいっぱいありますよ」
「こ、これだけ潤沢に材料を使いまくれるなら……」
「アーティファクト作り放題じゃああああああっ!!」
『yahoooooooooooooooooo!!』
爺さんsのテンションが限界を超えた。それはやがて大きな収穫と騒動を巻き起こすわけだが……
まさかの翌日。
「これってなに?」
目の前にあるのは二つのマンホールの蓋? みたいなものだった。
「これはですな、この二つのアーティファクトの間をあっという間に移動できるというものですじゃ」
「それって転送陣?」
「いやいや、異世界への移動は出来ません。この世界の中なら設置した2点間を自由に行き来できるのです」
「それってすごい魔力を消費するんじゃないのか?」
俺がこっちの世界に来るのに2ヶ月魔力を通し続けた。転送陣とかメイド隊の子が命を奪われるくらいに必要だったよな。
「この世界の中だけですし、おじいちゃん達の協力と魔法陣の基礎設計の見直しで移動する人の魔力だけで簡単に移動できます」
君達普通に受け答えしてるけどかなり凄いもの作っちゃったんじゃないのか? しかも一晩で? アレ? ノボリトのデスマーチっぷりには拍車がかかってる?
「そういう発想は、元々ありましたでなあ。技術、材料、情熱。足りないものが揃ったと言うことですじゃ」
「物は試しじゃ、試運転もかねて実演と行こうか」
「ふーん……ん?」
いや、なにみんなで俺を見るんだよ!やらないぞ、やらないからな!
「さあ義雄様、こっちに乗って下さい。魔力を通すだけの簡単なお仕事ですよ」
「そう言われてバイトで行った倉庫内軽作業で酷い目にあったんだよ! 言ってる事がブラック企業だぞ! よせ! なにグイグイ押してるんだよ!」
「言ってる意味がわからないです。さあ義雄様」
「大丈夫」とヴィラール。
「ハエと合体はしない」とペロサ。
「なに、シレッと物騒なこと言ってるんだよ! あ、やめて」
押し込まれた俺。誰が魔力なんか流し込むか!
「あっ、別に本人の魔力じゃなくても大丈夫ですよ。荷物とか送りますし」
そういうとノボリトがマンホールに触れるや魔法陣が蛍光グリーンに輝く。
ああ~!? いやあああ~……あ?
「あ、あれ?」
驚く間も無く一瞬で視点が変わっていた。というか隣のマンホールに移っていた。
「近けーよ!!」
「おお~!」×全員。
「実験は成功じゃあ!」
俺で実験するんじゃねーっ!
「で、これでどうするんだよ?」
「これを大霊廟と白金寮に置けばスタッフの移動もあっという間にできます。通勤が便利になります」
「ノボリト、ひとつ問題がある。これ、敵に奪われたらどうするんだよ? こっちに奇襲をかけられるぞ」
「大丈夫です。意図して魔力を流さないと発動しませんし、魔法陣にオンオフの隠しスイッチがあります。それにこのポータルは一度、2点間を座標固定して繋げますから、どちらか動かすか、壊すと停止します」
「なら大丈夫かな……ん? これ、トイレに使えない? ほらトイレと排水処理施設繋げて使ったら魔力流してシュッとさ? ここトイレないじゃん。中に作るのも色々不都合があるからどうかなあって思ってたんだよね」
「!!」×全員
その場の全員が驚愕の表情で立ち尽くす。俺、なんかやばいこと言った?
「アーティファクトをトイレにじゃと!?」
「何という悪魔的発想……そこが痺れる憧れる……」
「さすが義雄様……考え方が我々には及びもつきません!」
「おトイレ掃除が!」
「楽々に!」
「問題ないです!」
「最優先!」
「人員を最優先でこちらに回しましょう! 最優先案件です!」
女性陣の驚異的行動力に呆気にとられる俺と爺さんs……
「いい……のかな?」
「わしらに何か言えるかのお……」×爺さんs
ですよね~
0
あなたにおすすめの小説
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる