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84-2 話 いいから聞け
しおりを挟むこの場にいた全員がフリーズした。いや、ひよこだけは意味がわからずキョトンとしている。あとで意味を聞かれたらどうしろと? この際エイブルさんに丸投げしよう。責任払いという事で。
とにかく、先ほどまでの感動的とも言える展開が、エイブルの一言で吹っ飛んだ。何この呪文? 効果範囲、破壊力、共に本日最強だぞ。その威力たるやエイブルメイド隊の全員の顔を真っ赤に染めあげた。見える! 頭から湯気が湧くエフェクトすら見えるぞ! ナカノなんか自分を抱きしめてクネクネと気持ち悪いダンスを披露している。うわっ、お前鼻血出てるぞ! 大丈夫か? あ、ノボリトがのぼせた。
比してひよこ親衛隊の連中は見事に血の気の抜けた青い顔だ。はからずも知ってしまった王室スキャンダルに思考はネガティブループに陥っているのだろう。王室あるあるの『知ったな……お前には消えてもらう』的なヤツが脳内にあふれてたりして。
「え? ええ? なんで?皆、どうしたのです? ナカノ、は、鼻血が吹き出してます!」
当の本人は自分が何をやらかしたのか解っていないよね。ナカノの止まることのない鼻血にオロオロと取り乱しているし、王族の感覚ってこうまで庶民感覚とかけ離れているのか?
「ブフ……エイブル様、お耳をお借りします」
ひとしきり不思議な踊りを踊ったナカノが一転、真顔でエイブルに近づく。いや、鼻血拭けよ。
「そんなことより手当てを……」
「いいから聞け」
おおう、いつになくワイルドなナカノ。有無を言わさずエイブルの耳元に口を近づけると何やらゴニョゴニョ。さすがに聞き取ることは出来ないから、どういう説明をしたか後で聞こうか。
「……ご……に……ょ……」
「な!……え?……!!」
やがて、エイブルさんの反対側の耳がピンとたち、両目は大きく見開かれ瞳孔が全開になる。顔色がこれでもかというぐらい赤く染まり、髪の毛は逆立ち、背後にいるメイドの視線がエイブルの腰のあたりに集まっているところから尻尾も似たような感じになっているのだろう。
「ウャアアアアアアアアアァァァァァッ!! ハ、ハニャニャニャ?ハニャア!」
大森林地帯に響き渡るエイブルさんの絶叫。おお、203高地山頂以来の猫語爆発だ。こりゃ魔獣が集まってくるなあ……うん、ポンコツエイブルさんはやっぱり良いねぇ。
「こ、コレはちがウニャニャ! は、初めての魔法は義雄様にって意味ですニャ!」
「その発想はなかった……」
「まあ、ここはエイブル様にお譲りしましょう。本妻ですから」
「え~、だったら私の初めても義雄様がいいです!」
「え? じゃあさっきのノーカン! ノーカンで!」
「みんなでかけましょ!」
「1.5倍が48人なら283387333倍です!」
「ぎゃー! 義雄様が凄すぎる!」
ニジニジと俺の周りを取り囲むメイド達。目がコワイから! 待て、コラ! そういう魔法の使い方はやめなさい! なんだそのそのわけの分からん計算は? 本当にそうなったらどーする!? やめれ! それ以上近づくなあ!! は、話せばわかる!
「ガンバー!!」x47
「あ、いやあああああああぁああああぁぁぁっ!?」
結論から言うと効果は1.5倍だった……ルイス、冷静にメモ取ってんじゃねえよ!
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短いですがキリがいいので。あとで84話と合成しますかも。
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