5 / 28
第5話 最初のターゲット
しおりを挟む
ヴァイスはまず情報収集をするために、近隣の町へと向かった。ヴァイスが追放されてから既に1年以上が経っているが、ヴァイスは念の為に自分の顔を少し錬成し、別人になってから町の中へと入った。ヴァイスは宿を確保すると、まっすぐに酒場へと向かう。情報収集をするなら、やはり酒場が最適だろう。時間もちょうど日暮れ後で都合がよかった。
ヴァイスはただの旅人を装ってカウンターで麦酒を頼む。そして、1年ぶりに飲む麦酒の味を堪能しながら酒場のマスターにそれとなく最近の王国について聞いた。
「……最近の王国の状況? あんた他国出身の人間かい?」
「いや、この国出身だが、ちょっと国外に出かけててな。久しぶりに帰ってきたんだ。それで何か変わったことはあるかと思ってね」
「あーなるほどな。でも別に変わったことなんて何もないぞ。庶民はいつもと同じみすぼらしい生活、貴族様はそれとは逆に貴族様らしい優雅な生活を送ってるだけさ」
酒場の主人はそう言って肩をすくめる。
「……教会関連では何もないか?」
「教会? ……ああ、それなら変わったことがないということもないな」
そう言うと、酒場の主人は周りとキョロキョロと見渡し、ヴァイスへと身を寄せてきて小さな声で言った。
「……あまり大きな声では言えないんだけどよ、最近は教会の異端者狩りが本当に厳しくなったんだ。以前と比べてかなり多くの人間が異端者として教会に連行されるようになった。……中には無実の人間もいるって話だ。あんたも気をつけた方がいいぜ」
「……なんで教会は急に異端者狩りを強化し始めたんだ?」
ヴァイスには心当たりがあったが、それは知らないふりをして聞いた。
「それはさすがにわからないが、きっかけは1年前の王都での事件だろうな。教会の締め付けが厳しくなったのもそれからだ。あんた知ってるかい? 1年前の王都での事件。高名な錬金術師が異端者として国外に追放されたんだよ」
「知ってるよ。……よく知ってる」
ヴァイスはそう言って麦酒の入ったジョッキに口をつける。
「そうかい? ま、とにかくそれからだよ、教会が異端者狩りを強化したのは。ほんとその錬金術師様も余計なことしてくれたって思うぜ」
「…………」
ヴァイスは無言だった。だが、非があるのは教会の方であり、自分ではないと強く思った。
「聖女はどうしてる? 確かその事件の時にも王国に来たらしいが、まだこの国にいるのか?」
「ああ、いるよ。……ってあんた俺の話聞いてなかったのかい? どこに教会の目があるかわからないんだ。そこは聖女様だろ、聖女様」
酒場の主人は呆れた顔をして言った。しかし、ヴァイスは聖女に対して皮肉以外の意味で一切敬称を付けるつもりはなかった。
「三人の聖女様は1年前の事件のあとすぐに聖地に帰っていったんだけどよ、末女の聖女様は少し前にまたこの国に巡礼にやって来たんだ。聞いたところのよると、1年ぐらいはこの国に滞在する予定なんだとか」
ヴァイスはそれを聞いて思案した。三人全員を一網打尽にするというのも一つの手だが、順番に一人ずつ落としていくというのも悪くない。末女から落としていって、最後に二人の妹が既に籠絡されていることに気づいて絶望するイザリアの顔を見るというのも一興だろう。ヴァイスは心の中でニヤリと笑った。
「……あんた、妙に教会のことを気にしているようだが、なにか理由でもあるのかい? 教会嫌いとか?」
「……まぁ、そんなところだ」
「そうかい。でも教会の連中と揉め事を起こしても何もいいことはないぜ。1年前の王都の事件では高名な錬金術師様ですら国外追放されたほどだからな……。というかあんた、まさか反教会派の連中の一人で聖女様に対して何かヤバイことを企んでるとかじゃないだろうな」
酒場の主人が冗談っぽく言いつつも、目は笑っていなかった。きっと酒場の主人は、俺が教会や聖女に対して妙に詮索するものだから何か企んでいると思ったのだろう。それは、まったくもってその通りなのだが、正直に言うわけにもいかない。ヴァイスはそう考え、言い訳をすることにした。
「まさか。俺は確かに教会嫌いの人間だが、逆にそれで教会の聖女とやらがどういう人間なのか気になってね。一度この目で見られればと思っただけさ」
ヴァイスはそう言って肩をすくめる。
「ああ、なるほど、そういうことか。確かにこんな地方じゃ聖女様を生で見ることなんて滅多にないからな。俺もこの目で見たことはないが、三人の聖女様はみんな相当のべっぴんさんだって話だぜ」
「そうなのか? それはぜひともこの目で見てみたいな……」
ヴァイスは薄ら笑いを浮かべて言った。しかし、ヴァイスが本当に見たいのは聖女三姉妹の麗しい姿ではなく、彼女たちが絶望しヴァイスに涙を流しながら懇願する姿であった。ヴァイスは、酒場の主人に聖女三姉妹の末女であるルーフィが滞在している都市を聞いて酒場を後にした。ヴァイスの復讐の最初のターゲットは彼女に決まったのだった。
ヴァイスはただの旅人を装ってカウンターで麦酒を頼む。そして、1年ぶりに飲む麦酒の味を堪能しながら酒場のマスターにそれとなく最近の王国について聞いた。
「……最近の王国の状況? あんた他国出身の人間かい?」
「いや、この国出身だが、ちょっと国外に出かけててな。久しぶりに帰ってきたんだ。それで何か変わったことはあるかと思ってね」
「あーなるほどな。でも別に変わったことなんて何もないぞ。庶民はいつもと同じみすぼらしい生活、貴族様はそれとは逆に貴族様らしい優雅な生活を送ってるだけさ」
酒場の主人はそう言って肩をすくめる。
「……教会関連では何もないか?」
「教会? ……ああ、それなら変わったことがないということもないな」
そう言うと、酒場の主人は周りとキョロキョロと見渡し、ヴァイスへと身を寄せてきて小さな声で言った。
「……あまり大きな声では言えないんだけどよ、最近は教会の異端者狩りが本当に厳しくなったんだ。以前と比べてかなり多くの人間が異端者として教会に連行されるようになった。……中には無実の人間もいるって話だ。あんたも気をつけた方がいいぜ」
「……なんで教会は急に異端者狩りを強化し始めたんだ?」
ヴァイスには心当たりがあったが、それは知らないふりをして聞いた。
「それはさすがにわからないが、きっかけは1年前の王都での事件だろうな。教会の締め付けが厳しくなったのもそれからだ。あんた知ってるかい? 1年前の王都での事件。高名な錬金術師が異端者として国外に追放されたんだよ」
「知ってるよ。……よく知ってる」
ヴァイスはそう言って麦酒の入ったジョッキに口をつける。
「そうかい? ま、とにかくそれからだよ、教会が異端者狩りを強化したのは。ほんとその錬金術師様も余計なことしてくれたって思うぜ」
「…………」
ヴァイスは無言だった。だが、非があるのは教会の方であり、自分ではないと強く思った。
「聖女はどうしてる? 確かその事件の時にも王国に来たらしいが、まだこの国にいるのか?」
「ああ、いるよ。……ってあんた俺の話聞いてなかったのかい? どこに教会の目があるかわからないんだ。そこは聖女様だろ、聖女様」
酒場の主人は呆れた顔をして言った。しかし、ヴァイスは聖女に対して皮肉以外の意味で一切敬称を付けるつもりはなかった。
「三人の聖女様は1年前の事件のあとすぐに聖地に帰っていったんだけどよ、末女の聖女様は少し前にまたこの国に巡礼にやって来たんだ。聞いたところのよると、1年ぐらいはこの国に滞在する予定なんだとか」
ヴァイスはそれを聞いて思案した。三人全員を一網打尽にするというのも一つの手だが、順番に一人ずつ落としていくというのも悪くない。末女から落としていって、最後に二人の妹が既に籠絡されていることに気づいて絶望するイザリアの顔を見るというのも一興だろう。ヴァイスは心の中でニヤリと笑った。
「……あんた、妙に教会のことを気にしているようだが、なにか理由でもあるのかい? 教会嫌いとか?」
「……まぁ、そんなところだ」
「そうかい。でも教会の連中と揉め事を起こしても何もいいことはないぜ。1年前の王都の事件では高名な錬金術師様ですら国外追放されたほどだからな……。というかあんた、まさか反教会派の連中の一人で聖女様に対して何かヤバイことを企んでるとかじゃないだろうな」
酒場の主人が冗談っぽく言いつつも、目は笑っていなかった。きっと酒場の主人は、俺が教会や聖女に対して妙に詮索するものだから何か企んでいると思ったのだろう。それは、まったくもってその通りなのだが、正直に言うわけにもいかない。ヴァイスはそう考え、言い訳をすることにした。
「まさか。俺は確かに教会嫌いの人間だが、逆にそれで教会の聖女とやらがどういう人間なのか気になってね。一度この目で見られればと思っただけさ」
ヴァイスはそう言って肩をすくめる。
「ああ、なるほど、そういうことか。確かにこんな地方じゃ聖女様を生で見ることなんて滅多にないからな。俺もこの目で見たことはないが、三人の聖女様はみんな相当のべっぴんさんだって話だぜ」
「そうなのか? それはぜひともこの目で見てみたいな……」
ヴァイスは薄ら笑いを浮かべて言った。しかし、ヴァイスが本当に見たいのは聖女三姉妹の麗しい姿ではなく、彼女たちが絶望しヴァイスに涙を流しながら懇願する姿であった。ヴァイスは、酒場の主人に聖女三姉妹の末女であるルーフィが滞在している都市を聞いて酒場を後にした。ヴァイスの復讐の最初のターゲットは彼女に決まったのだった。
1
あなたにおすすめの小説
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで
渡里あずま
恋愛
アデライトは婚約者である王太子に無実の罪を着せられ、婚約破棄の後に断頭台へと送られた。
……だが、気づけば彼女は七歳に巻き戻っていた。そしてアデライトの傍らには、彼女以外には見えない神がいた。
「見たくなったんだ。悪を知った君が、どう生きるかを。もっとも、今後はほとんど干渉出来ないけどね」
「……十分です。神よ、感謝します。彼らを滅ぼす機会を与えてくれて」
※※※
冤罪で父と共に殺された少女が、巻き戻った先で復讐を果たす物語(大団円に非ず)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる