11 / 28
第11話 聖女と殲滅の夜
しおりを挟む
ヴァイスがエスティナ攻略のために出立した後、ルーフィはティートとともにさっそく教会内部の人間たちを次々と自分たちの『仲間』へと変えていこうとしたが、その前にちょっとした事件が起こった。
「……修道院のシスターが行方不明?」
教会支部の自分の執務室で支部長の報告を聞いていたルーフィがそう言った。支部長は司祭の服を着た四十すぎの男だった。ルーフィの傍らにはティートの姿もあった。
「はい。数人のシスターが山に薬草を取りに行ったまま戻って来ていないとのことです」
「……魔物の仕業?」
「いえ、最近この辺りを荒らしている盗賊団の仕業と思われます。近隣の村人でならず者のような集団の中にシスターらしき人影を見たという者がおりましたので……」
「なるほど。それでその盗賊団のアジトの場所は特定した?」
「はい。数名の神殿騎士に痕跡を辿らせたところ、盗賊団のアジトと思われる砦を発見しました。現在、シスターの救出隊を編成中です」
支部長がそう言うと、ルーフィは少し思案した。
「……救出隊は必要ないわ。いい機会だし、私たちがやります。ね、ティート」
ルーフィはそう言ってティートを見る。しかしティートは露骨に面倒くさそうな顔をして「えー、私たちでやるのー」と言った。ルーフィは「もう文句は言わないの。たまには外に出て身体を動かさないと」と言ってティートをたしなめる。
「……よろしいので?」
「ええ。いい戦闘訓練になるし、捕らわれたシスターも『仲間』にできて一石二鳥でしょ?」
ルーフィはそう言うと笑みを浮かべた。
「なるほど、そういうことですか。それは確かにいいアイデアですな」
ルーフィを見て支部長もニヤリと笑う。既に支部長はルーフィたちの手によって『寄生』させられていたのだった。
ルーフィはティートと一緒に二人で盗賊団のアジトへと向かった。聖女の格好はさすがにまずいので、ルーフィは普通の市民のような服を着ていた。ティートは特にいつもとは変わらない服装だった。
盗賊団がアジトにしている砦は近くの山の中腹にあった。そこそこ大きい砦で外には見張りの盗賊たちがいるのが見える。砦の規模から見て盗賊は数十人以上はいるだろうか。時刻は既に日が暮れていたが、ルーフィたちは闇に紛れるために付近の森の中に潜んでさらに時間が過ぎるのを待った。そして、十分に闇が深くなり、盗賊も寝入る時間になると、二人は行動を開始した。
「そろそろいい頃かな。ティート、わかってると思うけど一人も生きて返しちゃだめよ」
「りょ~かい~。ふふ、初めての戦闘ってなんだか緊張するね」
「私は戦闘自体は初めてじゃないけど、『この身体』になってからは初めてかな。すごくわくわくする」
盗賊との戦闘を前にして、ルーフィは身体の内側から高揚感が湧き上がってくるのを感じた。盗賊を逃さないために、ルーフィたちは二手に別れ、ルーフィは正面、ティートは裏口から内部に侵入することにした。
ティートと別れたルーフィは砦の正門のすぐ近くまで来る。
正門は空いていたが、門の脇には盗賊が二人立っていた。松明の明かりに照らされながら、眠そうな顔をして見張りをしている。ルーフィは背中から触手を二本生やすと、目にも止まらぬ速さで盗賊たちの胸に触手を突き立てる。
「がっ……」
「ごほっ……」
胸を貫かれた盗賊たちはその場に崩れ落ちる。ルーフィは木の影から出て、門から砦の中へと入った。中では何人かの盗賊たちが周りを巡回しているのが見えた。ルーフィは気づかれないように建物の影へと潜む。巡回中の一人の盗賊が近づいてくると、ルーフィは素早く影から出て盗賊の胸に自分の手を押し当てる。次の瞬間、ルーフィの手から触手が飛び出し、盗賊の胸を貫いた。盗賊はその場に倒れる。ルーフィはすぐに倒れた盗賊の体を引きずり、建物の裏へと隠した。
ルーフィは同じような手口で次々と付近の巡回中の盗賊を片付けていった。そして、気がつけば建物の外部にいた盗賊は全滅していた。
(後は建物の中にいる盗賊だけね。ティートの姿が見えないけど、建物内にいるのかな?)
ルーフィがそう思っていると、不意に砦の入り口の方から声がした。急いで入り口の方へと戻ると、そこでは盗賊三人がかなり驚いた様子で門の見張りの盗賊たちの死体を見ていた。どうやらその盗賊たちはたまたま外に出かけていて、ちょうど今戻ってきた盗賊のようだった。
「お、おいどうなってやがる……。だ、誰がやったんだよ……」
「お、俺が知るかよ……」
「胸を正確に一突きにされている……。やべぇぞこいつは……」
盗賊たちが怯えた様子で会話をしていると、ルーフィはその前に自身の姿を現した。姿を現すことなく闇討ちすることも可能だったが、ルーフィは少し『遊んで』みたくなったのだった。盗賊たちはルーフィの姿を確認すると、驚きつつもすぐに武器を構えて大きな声で言った。
「な、なんだてめぇは!?」
「!! お、おい、服を見ろ! 血がついてる!」
「何!? じゃあこいつがやったってのか!?」
盗賊たちが武器を構えながら口々に言った。心なしか全員身体が震えているように見える。
「その通り。私がやったわ。でも安心して? 貴方たちもすぐに同じようにしてあげるから」
血まみれの服を纏いながらルーフィは笑みを浮かべて言った。
「くッ!! てめぇええええ!!」
盗賊の一人がルーフィに向かって駆け出し、ルーフィに剣を振り下ろす。ルーフィはそれを後ろに一歩引くことで躱した。しかし、剣の切っ先はルーフィの服を切り裂き、ルーフィの胸元が露わになる。しかし、ルーフィは気にすることなく「ふふっ……」と呟いた。
「ちっ、かわしやがったか。だが、次はねぇぞ。おい、お前ら合図したら一斉にこいつに斬りかかれ!」
盗賊が他の二人にそう言うと、他の二人は頷き、ルーフィにジリジリと近づいていてくる。
「――今だ!!」
盗賊がそう叫ぶと、三人は一斉にルーフィへと切りかかった。しかし、そのときルーフィの胸元が縦に裂け『眼』が開いた。その大きな瞳が盗賊たちを見た瞬間、盗賊たちの動きが止まる。盗賊たちは身体を震わせて一歩も動くことができないでいた。
「ふふっ、私の【蝕眼】に魅入られた者は一切動くことができない」
ルーフィはそう言った。ルーフィは事前に自分の胸元の眼についてヴァイスに聞いており、それが【蝕眼】という特殊な能力を持った眼であることを知っていたのだった。ルーフィは背中から触手を三つ生やすと、恐怖で顔を歪ませている盗賊たちの前でうねうねと空中に漂わせる。
「ねぇ、見てこの触手。とっても可愛いでしょ? 私の思い通りに動くのよ。それで今からこの触手で貴方たちの胸を貫くの。……やめて欲しい?」
ルーフィは妖艶な笑みを浮かべてそう問いかける。しかし、【蝕眼】に魅入られ一切行動ができない盗賊たちは声を発して答えることすらできなかった。
「ふぅん、答えなしか。それなら仕方がないわね」
ルーフィがそう言うと、触手は一斉に盗賊たちへと向かいその胸を貫く。
「がっ……」
「ぐっ……」
「ごっ……」
盗賊たちは口から血を流してその場に倒れる。ルーフィは微かに笑うと、触手を引っ込め、盗賊たちに背を向けた。ルーフィは砦の内部へと戻ると、近くにあった倉庫のような建物に目をつけ、静かにその中へと入る。ルーフィは倉庫内に誰かいないか調べ、誰もいないことを確認すると外へと出た。すると、ちょうど奥の建物から出てきたティートと目が合った。ルーフィは静かにティートのもとへと歩み寄った。
「ティート、そっちはどう? 私は一応外の敵は全員やったと思うわ」
「えーとね、私は裏口から入ってすぐのところにあった建物に入ったけどね、盗賊の宿舎だったみたいで、みんな寝てたよ。だからみんな殺っておいた。あとこの建物は食糧庫みたいで中には誰もいなかったよ」
ティートはそう答える。ティートの服もルーフィ同様血まみれだった。
「となると、残るはあの建物だけね」
ルーフィはそう言って中央広場の近くにある建物を見た。シスターが捕らわれているのもあの建物で間違いないだろうとルーフィは思った。
ルーフィはティートと一緒に静かに建物の中へと入る。中では廊下に沿って三つの牢屋が並んでいた。廊下の奥の椅子には見張りと思われる盗賊が一人座っていたが、壁に寄りかかって眠っていた。ティートが小声で「私がやるね」とルーフィに言うと、ティートは静かに眠っている盗賊へと近づいていく。
盗賊のすぐそばまで来ると、ティートは静かに右腕を鋭利な刃へと変え、盗賊の首を掻き切った。盗賊は目を開け、首を両手で押さえて口をぱくぱくさせるがすぐに動かなくなった。ティートは盗賊が死んだのを確認すると、ルーフィに親指を立てて得意げな顔をした。ルーフィはやれやれと言った顔でティートの元へ行く。
「シスターならそこだね」
ティートはそう言ってそばの牢の中を指差す。中には若いシスターが三人捕らわれていた。みんな身体を寄り添うにして縮こまり、寝入っている。服は汚れ、ところどころが切り裂かれていた。中には下着を露出させていたシスターもいた。ルーフィはそれを見て盗賊に乱暴されたのかもしれないと思った。
「こんな目にあってかわいそうに……。すぐに出してあげるからね……」
ルーフィはシスターたちを見てそう呟く。
「はい、鍵あったよ」
ティートがそう言って見張りの盗賊が持っていた鍵をルーフィに渡した。ルーフィは静かに鍵を開け、シスターたちへと近寄る。
「……さぁ、私たちと『一緒になって』からここを出ましょうね」
ルーフィはそう言うと背中から三本の触手を生やした。触手の先端は割れてヒトデのように開き、粘液のようなものを垂らしている。ルーフィはその触手を三人のシスターのそれぞれの口へと一気に押し当てた。触手はシスターの口にへばり付き、中から管のようなものをシスターの口内へと侵入させる。
異変に気づいたシスターたちは目を覚ますが、何がなんだかわからないうちに触手は管を通して寄生体をシスターの体内へと入れた。寄生体はすぐにシスターの身体を侵蝕し、急速にシスターと同化していった。シスターたちは目を半白目のようにし、身体をビクンビクンと痙攣させて意識を失う。
――そして、しばらくするとシスターたちは目を覚ました。シスターたちの目には爛々とした光が宿っていた。それは紛れもなくシスターたちが寄生生物になった証拠だった。ルーフィはそんなシスターたちを恍惚とした表情で眺めていた。寄生生物にとって他の生物を自分たちと同じ寄生生物にするのは、とても快感を覚えることなのだ。
こうしてルーフィとティートは盗賊団を全滅させ、シスターたちを救い出した。その後、このシスターたちは修道院に戻ると同じように『仲間』を増やしていくのだが、それはまた別の話である――
「……修道院のシスターが行方不明?」
教会支部の自分の執務室で支部長の報告を聞いていたルーフィがそう言った。支部長は司祭の服を着た四十すぎの男だった。ルーフィの傍らにはティートの姿もあった。
「はい。数人のシスターが山に薬草を取りに行ったまま戻って来ていないとのことです」
「……魔物の仕業?」
「いえ、最近この辺りを荒らしている盗賊団の仕業と思われます。近隣の村人でならず者のような集団の中にシスターらしき人影を見たという者がおりましたので……」
「なるほど。それでその盗賊団のアジトの場所は特定した?」
「はい。数名の神殿騎士に痕跡を辿らせたところ、盗賊団のアジトと思われる砦を発見しました。現在、シスターの救出隊を編成中です」
支部長がそう言うと、ルーフィは少し思案した。
「……救出隊は必要ないわ。いい機会だし、私たちがやります。ね、ティート」
ルーフィはそう言ってティートを見る。しかしティートは露骨に面倒くさそうな顔をして「えー、私たちでやるのー」と言った。ルーフィは「もう文句は言わないの。たまには外に出て身体を動かさないと」と言ってティートをたしなめる。
「……よろしいので?」
「ええ。いい戦闘訓練になるし、捕らわれたシスターも『仲間』にできて一石二鳥でしょ?」
ルーフィはそう言うと笑みを浮かべた。
「なるほど、そういうことですか。それは確かにいいアイデアですな」
ルーフィを見て支部長もニヤリと笑う。既に支部長はルーフィたちの手によって『寄生』させられていたのだった。
ルーフィはティートと一緒に二人で盗賊団のアジトへと向かった。聖女の格好はさすがにまずいので、ルーフィは普通の市民のような服を着ていた。ティートは特にいつもとは変わらない服装だった。
盗賊団がアジトにしている砦は近くの山の中腹にあった。そこそこ大きい砦で外には見張りの盗賊たちがいるのが見える。砦の規模から見て盗賊は数十人以上はいるだろうか。時刻は既に日が暮れていたが、ルーフィたちは闇に紛れるために付近の森の中に潜んでさらに時間が過ぎるのを待った。そして、十分に闇が深くなり、盗賊も寝入る時間になると、二人は行動を開始した。
「そろそろいい頃かな。ティート、わかってると思うけど一人も生きて返しちゃだめよ」
「りょ~かい~。ふふ、初めての戦闘ってなんだか緊張するね」
「私は戦闘自体は初めてじゃないけど、『この身体』になってからは初めてかな。すごくわくわくする」
盗賊との戦闘を前にして、ルーフィは身体の内側から高揚感が湧き上がってくるのを感じた。盗賊を逃さないために、ルーフィたちは二手に別れ、ルーフィは正面、ティートは裏口から内部に侵入することにした。
ティートと別れたルーフィは砦の正門のすぐ近くまで来る。
正門は空いていたが、門の脇には盗賊が二人立っていた。松明の明かりに照らされながら、眠そうな顔をして見張りをしている。ルーフィは背中から触手を二本生やすと、目にも止まらぬ速さで盗賊たちの胸に触手を突き立てる。
「がっ……」
「ごほっ……」
胸を貫かれた盗賊たちはその場に崩れ落ちる。ルーフィは木の影から出て、門から砦の中へと入った。中では何人かの盗賊たちが周りを巡回しているのが見えた。ルーフィは気づかれないように建物の影へと潜む。巡回中の一人の盗賊が近づいてくると、ルーフィは素早く影から出て盗賊の胸に自分の手を押し当てる。次の瞬間、ルーフィの手から触手が飛び出し、盗賊の胸を貫いた。盗賊はその場に倒れる。ルーフィはすぐに倒れた盗賊の体を引きずり、建物の裏へと隠した。
ルーフィは同じような手口で次々と付近の巡回中の盗賊を片付けていった。そして、気がつけば建物の外部にいた盗賊は全滅していた。
(後は建物の中にいる盗賊だけね。ティートの姿が見えないけど、建物内にいるのかな?)
ルーフィがそう思っていると、不意に砦の入り口の方から声がした。急いで入り口の方へと戻ると、そこでは盗賊三人がかなり驚いた様子で門の見張りの盗賊たちの死体を見ていた。どうやらその盗賊たちはたまたま外に出かけていて、ちょうど今戻ってきた盗賊のようだった。
「お、おいどうなってやがる……。だ、誰がやったんだよ……」
「お、俺が知るかよ……」
「胸を正確に一突きにされている……。やべぇぞこいつは……」
盗賊たちが怯えた様子で会話をしていると、ルーフィはその前に自身の姿を現した。姿を現すことなく闇討ちすることも可能だったが、ルーフィは少し『遊んで』みたくなったのだった。盗賊たちはルーフィの姿を確認すると、驚きつつもすぐに武器を構えて大きな声で言った。
「な、なんだてめぇは!?」
「!! お、おい、服を見ろ! 血がついてる!」
「何!? じゃあこいつがやったってのか!?」
盗賊たちが武器を構えながら口々に言った。心なしか全員身体が震えているように見える。
「その通り。私がやったわ。でも安心して? 貴方たちもすぐに同じようにしてあげるから」
血まみれの服を纏いながらルーフィは笑みを浮かべて言った。
「くッ!! てめぇええええ!!」
盗賊の一人がルーフィに向かって駆け出し、ルーフィに剣を振り下ろす。ルーフィはそれを後ろに一歩引くことで躱した。しかし、剣の切っ先はルーフィの服を切り裂き、ルーフィの胸元が露わになる。しかし、ルーフィは気にすることなく「ふふっ……」と呟いた。
「ちっ、かわしやがったか。だが、次はねぇぞ。おい、お前ら合図したら一斉にこいつに斬りかかれ!」
盗賊が他の二人にそう言うと、他の二人は頷き、ルーフィにジリジリと近づいていてくる。
「――今だ!!」
盗賊がそう叫ぶと、三人は一斉にルーフィへと切りかかった。しかし、そのときルーフィの胸元が縦に裂け『眼』が開いた。その大きな瞳が盗賊たちを見た瞬間、盗賊たちの動きが止まる。盗賊たちは身体を震わせて一歩も動くことができないでいた。
「ふふっ、私の【蝕眼】に魅入られた者は一切動くことができない」
ルーフィはそう言った。ルーフィは事前に自分の胸元の眼についてヴァイスに聞いており、それが【蝕眼】という特殊な能力を持った眼であることを知っていたのだった。ルーフィは背中から触手を三つ生やすと、恐怖で顔を歪ませている盗賊たちの前でうねうねと空中に漂わせる。
「ねぇ、見てこの触手。とっても可愛いでしょ? 私の思い通りに動くのよ。それで今からこの触手で貴方たちの胸を貫くの。……やめて欲しい?」
ルーフィは妖艶な笑みを浮かべてそう問いかける。しかし、【蝕眼】に魅入られ一切行動ができない盗賊たちは声を発して答えることすらできなかった。
「ふぅん、答えなしか。それなら仕方がないわね」
ルーフィがそう言うと、触手は一斉に盗賊たちへと向かいその胸を貫く。
「がっ……」
「ぐっ……」
「ごっ……」
盗賊たちは口から血を流してその場に倒れる。ルーフィは微かに笑うと、触手を引っ込め、盗賊たちに背を向けた。ルーフィは砦の内部へと戻ると、近くにあった倉庫のような建物に目をつけ、静かにその中へと入る。ルーフィは倉庫内に誰かいないか調べ、誰もいないことを確認すると外へと出た。すると、ちょうど奥の建物から出てきたティートと目が合った。ルーフィは静かにティートのもとへと歩み寄った。
「ティート、そっちはどう? 私は一応外の敵は全員やったと思うわ」
「えーとね、私は裏口から入ってすぐのところにあった建物に入ったけどね、盗賊の宿舎だったみたいで、みんな寝てたよ。だからみんな殺っておいた。あとこの建物は食糧庫みたいで中には誰もいなかったよ」
ティートはそう答える。ティートの服もルーフィ同様血まみれだった。
「となると、残るはあの建物だけね」
ルーフィはそう言って中央広場の近くにある建物を見た。シスターが捕らわれているのもあの建物で間違いないだろうとルーフィは思った。
ルーフィはティートと一緒に静かに建物の中へと入る。中では廊下に沿って三つの牢屋が並んでいた。廊下の奥の椅子には見張りと思われる盗賊が一人座っていたが、壁に寄りかかって眠っていた。ティートが小声で「私がやるね」とルーフィに言うと、ティートは静かに眠っている盗賊へと近づいていく。
盗賊のすぐそばまで来ると、ティートは静かに右腕を鋭利な刃へと変え、盗賊の首を掻き切った。盗賊は目を開け、首を両手で押さえて口をぱくぱくさせるがすぐに動かなくなった。ティートは盗賊が死んだのを確認すると、ルーフィに親指を立てて得意げな顔をした。ルーフィはやれやれと言った顔でティートの元へ行く。
「シスターならそこだね」
ティートはそう言ってそばの牢の中を指差す。中には若いシスターが三人捕らわれていた。みんな身体を寄り添うにして縮こまり、寝入っている。服は汚れ、ところどころが切り裂かれていた。中には下着を露出させていたシスターもいた。ルーフィはそれを見て盗賊に乱暴されたのかもしれないと思った。
「こんな目にあってかわいそうに……。すぐに出してあげるからね……」
ルーフィはシスターたちを見てそう呟く。
「はい、鍵あったよ」
ティートがそう言って見張りの盗賊が持っていた鍵をルーフィに渡した。ルーフィは静かに鍵を開け、シスターたちへと近寄る。
「……さぁ、私たちと『一緒になって』からここを出ましょうね」
ルーフィはそう言うと背中から三本の触手を生やした。触手の先端は割れてヒトデのように開き、粘液のようなものを垂らしている。ルーフィはその触手を三人のシスターのそれぞれの口へと一気に押し当てた。触手はシスターの口にへばり付き、中から管のようなものをシスターの口内へと侵入させる。
異変に気づいたシスターたちは目を覚ますが、何がなんだかわからないうちに触手は管を通して寄生体をシスターの体内へと入れた。寄生体はすぐにシスターの身体を侵蝕し、急速にシスターと同化していった。シスターたちは目を半白目のようにし、身体をビクンビクンと痙攣させて意識を失う。
――そして、しばらくするとシスターたちは目を覚ました。シスターたちの目には爛々とした光が宿っていた。それは紛れもなくシスターたちが寄生生物になった証拠だった。ルーフィはそんなシスターたちを恍惚とした表情で眺めていた。寄生生物にとって他の生物を自分たちと同じ寄生生物にするのは、とても快感を覚えることなのだ。
こうしてルーフィとティートは盗賊団を全滅させ、シスターたちを救い出した。その後、このシスターたちは修道院に戻ると同じように『仲間』を増やしていくのだが、それはまた別の話である――
1
あなたにおすすめの小説
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる