ナンセンス文学

イシナギ

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エピローグ~決断~

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━━━━━━━━気がつくと、僕の目の前には屋敷の天井があった。首だけ横に向けると、パイロンが椅子に座ったままウトウトしている。
「パイロン…?」呼んだ瞬間、彼女と目が合った。
「……!ひ、ひとつめ様!!文が…文が目を覚ましました!!」と慌ててひとつめ様の所へ走って行った。頭に少し違和感を感じて触ってみる。その瞬間、頭の中からナンセンスの声がきこえた。
「キュルル…ガウ…」え、何で!?ついにおかしくなったか…?
「文!良かった…治療は成功したみたいだな。」軽くパニックになっていると、ひとつめ様がそう言いながらパイロンに連れられて部屋に入って来た。
「ち、治療…?なんの事ですか?」
「やっぱり何も覚えて無いのか…」僕は必死で記憶を遡った。部屋で急に苦しくなって、変な声が聞こえて…そこからは何も覚えて無かった。するとひとつめ様がいつもの優しい口調で、そこから起こった事を説明してくれた。
「にしても、ナンセンスが僕の中に居るなんて…不思議な感じですね」僕はまた自分の頭をさすった。ナンセンスを撫でた時と同じような声が聞こえる。
「助けて頂いて、ありがとうございました。すみません、ご迷惑かけて…」
「気にするな。お前が完全にヤツに支配されなくて良かったよ」
ひとつめ様が言うには、「少し経てばナンセンスを身体から出し入れ出来るようになる」とのことだった。
しばらくして、パイロンが真面目な口調でこう訊いて来た。
「文…今はどう?例の怪物の声は聞こえない?」  自分の身体に意識を集中させてみる。…もうあの声は聞こえなかった。
「完全に支配出来たみたいだな。安心したよ!」とにこやかに言うひとつめ様。
と、ここで、タマゴが口を開いた。
「ひとつめ様、そろそろ…」何だろう?と思っていると、ひとつめ様は僕を外へ連れ出した。そして、「文、ナンセンスを出してみなさい」と言う。不思議に思いながら呼んでみる。今度はそれを身体に纏えと言う。「これでお前は三次元では姿を隠すことが出来る。もう人間じゃないからどんな怪我もすぐ治るし寿命は人間の何倍もある。そこでだ。」ひとつめ様は少し間を置き、「お前はこれからどうしたい?」と言った。ここに残るか、三次元あっちに戻るか、選ぶ時が来たのである。
そんな事はとうに決めてある。僕はひとつめ様を見つめ、片膝を着いた…





「生涯貴方にお仕え致します…ひとつめ様」





         ~[完]~
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