Sleep in Game

イシナギ

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あいつは何者…?

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「にしても……なんで僕に頼んだんだ?」現実世界に帰る為、元の場所にマリンと移動しながら僕は訊いた。「えっとですね…あなた、私達のこと凄く大切に育ててくれてるじゃない?それに色んなジャンルのゲームを持っててそれぞれのゲームに対する愛情も深いから!」嬉しそうにマリンは答える。
しかしなにも僕とマリンだけで世界を救う訳がないよな…?あまりにも広すぎる。そう思っているとマリンが「宇宙さんだけに頼むわけじゃないわね。私達の仲間が、他の生粋のゲーム好き達に頼んでるの歪みを探してるうちに会うと思うわ」と言った。なるほどなぁ。
「ところでマリン、お前国王んとこ行かなくていいの?」するとマリンは、「国王は今籠城中。私は国民の様子を見るのも兼ねて旅に出ることになったのよ!」と誇らしげに言った。旅と言っても危険が常に伴うのだから、普通の女の子なら怖気付くものだけど、流石は王女といったところか。僕は凄く心配だが…
「それじゃ、私はここで。また今夜お願いね!」いつの間にか元いた場所に戻っていたらしい。元気よく尻尾を左右に揺らしながら走り去る後ろ姿を見送りながら、僕は現実世界に戻った。


数時間後

━━━━現実世界は夜


「待ってたわ、宇宙さん!」真っ白な毛をなびかせて、マリンは僕を出迎えてくれた。壊れたエフェクト、だだっ広いだけの道…僕はマリンの案内で街を歩きながら、歪みと敵兵を探し始めた。

しばらく歩くと、妙なものが見えた。空中に何か浮かんでる。…いや、浮かんでると言うよりは、壁に穴が空いているようだと言った方が正しいか。そこだけ色が赤黒く、四角いポリゴンがバチバチッと音を立てながら動いているように見えた。
「マリン…これって…」
「そう、例の歪みよ。今なら敵も居ないわ。今のうちに直しましょ!」マリンは僕を見てそう言った。
「直すって言ってももどうやっt」
「はいこれ!」
……ん?なんだこれ?
僕はマリンに渡された、鍵のような形のアイテムを見ながら首を傾げた。剣ほどの大きさがある。
マリンは、「それの先端を歪みの中に入れて、はめてある宝石を押して!」
「こ、こう?」僕は内心マリンがやればよくね…?と思いながら言われた通りにしようとしたその時。
バシッ
「キャッ!!」
隣で何かを強く叩くような音と共に、マリンの体が宙へ舞った。一瞬何が何だか分からなかったが、マリンが倒れているのを見て我に返った。
「マリン!」呼びかけながら走り寄ったが、返事は無い。
「クックック…小娘の分際で余計なことをするからですよ。」どこからか声が聞こえた。
「誰だ!」声のした方を振り向くと、そいつは目の前に降り立った。 黒いシルクハットに白いシャツ、血のように赤いネクタイに燕尾服姿で、満面の笑みを浮かべた仮面を付けた男だ。
「マ、マリンに何をしたんだ!」
僕がそう言うと、男は細い足でこちらに近づきながらこう答えた。「少々眠って貰ってるだけです。あの小娘の力は厄介なもんでして…」と。
「マリンの…力?」
「ええそうです。鍵を差し込む時にあいつの魔法でここらが全て元通りになり、私の部下は全滅してしまう。まあ、鍵を差しながら力を使う事は出来ない程未熟ですがね。」
それでマリンは僕に鍵を…。
「とりあえずこいつは預からせて貰います。これ以上力を使えないように!」そう言ってマリンを担ごうとする男の腕を、僕は掴んだ。
「何です?離しなさい!」手を振り払おうとするが、僕はさらに手に力を込める。
「ほう…笑わせますね!何の力も持たないクセにどうやって守るんです?」
男は嘲るようにそう言った。あまりにも悔しくて、僕は僕は男を睨みつけた。

「……私と1戦交えるつもりですか?」
途端に物凄いオーラが男を包む。表情は仮面に隠れて見えないが、殺意だけがハッキリと伝わってきた。
僕じゃこいつと戦うなんて無理だ…そう絶望した時、ある考えが頭をよぎった。あいつがマリンから手を離しさえすれば…!
「おい仮面野郎!オーラなんて出しときながら一向にマリンを離さず睨むだけとかビビりなのかな?wwあ、それともマリンを盾に?いやー卑怯だな~!悔しかったらマリンを置いてかかってきなよw」
僕は思いつく限りの言葉であいつを煽った。あいつがマリンを離すかは五分五分だが…
「貴方…どうしても死にたいようですね…人間の分際で調子に乗るなよ下等生物がぁぁ!!」
男は僕に襲いかかった。

……ビンゴだ!
僕は男が動いた瞬間左に回り込み、担がれているマリンを掴んで男から引き剥がした。

男の自信満々の口調、相手を嘲る態度。あれを見た時、相当プライドが高いと見たのだ。プライドは高ければ高い程、侮辱された時の怒りは大きい。きっと挑発に乗ってくれると踏んでいた。そしてあいつはまんまと挑発に乗った。その、マリンへの警戒が薄れたタイミングを狙ってマリンを取り返した…。これが僕の作戦だ。
「貴様、図ったなぁあ…!」男の怒りが頂点に達したようだ。

逃げろ!と体全体が訴えているのが分かった。僕は全力で逃げた。体が勝手に動き、気づけば自分でも信じられないスピードで走っている。

━━しばらくして後ろを振り返ると、もうあの男はいなかった。ほっと胸を撫で下ろし、僕は近くの大木の下に行き、マリンをおろした。

「……う、うぅ…ん…」
!!  
マリンが目を覚ました!良かった…!
「マリン!大丈夫か…?ゴメンな、ちゃんと守れなくて…」 僕はマリンの頭を撫でながら言った。するとマリンは「助けて…くれたのよね?ありがとう。宇宙さんが謝ることないじゃない!」無理に笑顔を見せながらそう言った。無理に笑わないでよ…僕はマリンを抱きかかえて立ち上がり、マリンの具合を治してくれる場所を探すことにした……。
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