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Present#1 死神-glim-
Present#1 死神-glim-
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「死神ねぇ……まだここに住み着いてんのか、奴は」
調書も書き終え、三人を追い返した遠藤さんは、そのままオノの居た椅子に腰を下ろし、煙草に火をつけた。
「富岡は知ってんの?」
何気ない問いかけだが、『何を』と敢えて聞かない遠藤さんの目は、まさに獲物を追う鷹の目。
机の下でばれないように拳を握りしめ、平常通り口を開く。
「知ってますよ、その頃自分、高校生でしたから」
「あー……高校生好きだよなぁ。ちょいワル」
実際はちょいワルなんてもんじゃねぇんだけどなぁ、と煙を吐き出し、遠藤さんはまだつけたばかりのタバコをぐっと灰皿に押し付けた。
「なぁ富岡」
「はい?」
「五年前、『死神』は確かに死んだ。死亡届けは出てる」
「はい……そのように早川さんから引き継ぎの時に聞いています」
「アサヒか……まぁアサヒも本心信じてねぇ。俺と同様、な」
自分と入れ替わりで本庁へと異動したかつての相棒を思い出したのか、鷹の目が一瞬遠くを見るようにして、それから再び自分を映した。
でもその目に、先までの鋭さはない。
ただ変わりに、その瞳の奥に、別の感情を垣間見る。
「遠藤さん?」
「……俺さ」
「なんですか?」
自分を映しているはずの、遠藤さんの目に映るのは『恐怖』。
「一度だけ、マジで死神を見たことがあるんだわ」
いつも飄々として、大切な場面ですらおどける遠藤さんの右手が、押さえつけた煙草を柱にずっと細かく震えていた。
調書も書き終え、三人を追い返した遠藤さんは、そのままオノの居た椅子に腰を下ろし、煙草に火をつけた。
「富岡は知ってんの?」
何気ない問いかけだが、『何を』と敢えて聞かない遠藤さんの目は、まさに獲物を追う鷹の目。
机の下でばれないように拳を握りしめ、平常通り口を開く。
「知ってますよ、その頃自分、高校生でしたから」
「あー……高校生好きだよなぁ。ちょいワル」
実際はちょいワルなんてもんじゃねぇんだけどなぁ、と煙を吐き出し、遠藤さんはまだつけたばかりのタバコをぐっと灰皿に押し付けた。
「なぁ富岡」
「はい?」
「五年前、『死神』は確かに死んだ。死亡届けは出てる」
「はい……そのように早川さんから引き継ぎの時に聞いています」
「アサヒか……まぁアサヒも本心信じてねぇ。俺と同様、な」
自分と入れ替わりで本庁へと異動したかつての相棒を思い出したのか、鷹の目が一瞬遠くを見るようにして、それから再び自分を映した。
でもその目に、先までの鋭さはない。
ただ変わりに、その瞳の奥に、別の感情を垣間見る。
「遠藤さん?」
「……俺さ」
「なんですか?」
自分を映しているはずの、遠藤さんの目に映るのは『恐怖』。
「一度だけ、マジで死神を見たことがあるんだわ」
いつも飄々として、大切な場面ですらおどける遠藤さんの右手が、押さえつけた煙草を柱にずっと細かく震えていた。
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