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「勘違いすんな。……そう、呼ばれてた、時期があるだけ」
一句一句をゆっくりと口にして、無意識なのか彼は頬に添えていた手に力を込めた。
「ただ、その一時期が原因で、こう追われてんだけどな」
「どうして」
「さぁ。殺したいのか、捕まえたいのか。それぞれ思惑が違うから、こういう結果になることもある」
こういう、とはこの現状を指すのだろう
彼を追うのは、一つの追っ手ではない。そしてそれぞれが『死神』を捕えようと起こした行為が、結果的に互いの足を引っ張り合い、本物の『死神』を逃がす。
そこまで考え、改めて思う。
『死神』とは、なにか。
そして、その名のもとに追われる彼は、いったい何者なのかを。
「俺はただ、死にたかっただけ、なのにな」
ぽつりと、死、という言葉を発した時、彼は少し自嘲気味に口角を上げた。
その声が耳に残って、離れなくて、ぽつり、聞く。
「……今も、死にたいんですか」
「そうだな」
即答だった。
「死ななきゃ、ならねぇし、な」
再び雨音しか聞こえなくなった世界で、ただ触れる衣服の生暖かな感触だけがリアルで、
早く手当てをと思う傍ら、僕は言葉を発していた。
「アズミ」
「……?」
「今日から貴方はアズミです」
自分を抱き寄せる手をゆっくり外して、僕の言葉の意図が掴めないでいる彼の脇に肩を入れる。
右足に痛みが走るもの、歩けないほどじゃない。
「俺は、」
「自分のものに名前をつけて何が悪いんです?」
「は?」
「死にたいんでしょ、だったら死神なんて死んでしまえばいい」
「何を、」
「ヤクザとして社会的にも物理的にも抹殺されなきゃいけない。だったら捨ててしまえ、そんな人生も名前も」
言葉を挟ませないように、強く強い言葉を重ねる。
「僕はここで何も持たない人間の形をした手負いのものを拾った。捨てられたものを拾うかは自分の自由で、誰にも何も言わせやしない」
僕よりずっと大きな体躯をしていながら、体の割に軽すぎる体を持ち上げて、間近になった目を真っ向から見る。
「貴方は捨てた。僕は今、ここで拾った。だからもう僕のもの。指一本、髪の一本までも貴方のものじゃない、僕のものだ。
自分のものにまず名前をつけて何が悪いんですか」
一句一句をゆっくりと口にして、無意識なのか彼は頬に添えていた手に力を込めた。
「ただ、その一時期が原因で、こう追われてんだけどな」
「どうして」
「さぁ。殺したいのか、捕まえたいのか。それぞれ思惑が違うから、こういう結果になることもある」
こういう、とはこの現状を指すのだろう
彼を追うのは、一つの追っ手ではない。そしてそれぞれが『死神』を捕えようと起こした行為が、結果的に互いの足を引っ張り合い、本物の『死神』を逃がす。
そこまで考え、改めて思う。
『死神』とは、なにか。
そして、その名のもとに追われる彼は、いったい何者なのかを。
「俺はただ、死にたかっただけ、なのにな」
ぽつりと、死、という言葉を発した時、彼は少し自嘲気味に口角を上げた。
その声が耳に残って、離れなくて、ぽつり、聞く。
「……今も、死にたいんですか」
「そうだな」
即答だった。
「死ななきゃ、ならねぇし、な」
再び雨音しか聞こえなくなった世界で、ただ触れる衣服の生暖かな感触だけがリアルで、
早く手当てをと思う傍ら、僕は言葉を発していた。
「アズミ」
「……?」
「今日から貴方はアズミです」
自分を抱き寄せる手をゆっくり外して、僕の言葉の意図が掴めないでいる彼の脇に肩を入れる。
右足に痛みが走るもの、歩けないほどじゃない。
「俺は、」
「自分のものに名前をつけて何が悪いんです?」
「は?」
「死にたいんでしょ、だったら死神なんて死んでしまえばいい」
「何を、」
「ヤクザとして社会的にも物理的にも抹殺されなきゃいけない。だったら捨ててしまえ、そんな人生も名前も」
言葉を挟ませないように、強く強い言葉を重ねる。
「僕はここで何も持たない人間の形をした手負いのものを拾った。捨てられたものを拾うかは自分の自由で、誰にも何も言わせやしない」
僕よりずっと大きな体躯をしていながら、体の割に軽すぎる体を持ち上げて、間近になった目を真っ向から見る。
「貴方は捨てた。僕は今、ここで拾った。だからもう僕のもの。指一本、髪の一本までも貴方のものじゃない、僕のものだ。
自分のものにまず名前をつけて何が悪いんですか」
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