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嫌がらせは筋トレの始まり
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朝の学院に、焼きたてのパンと噂話の匂いが充満していた。
廊下を歩くだけで、視線が刺さる。ひそひそ声が波のように広がっては引いていく。
「——あいつだよ、体力測定で魔法障壁を素手で……」
「ノーマジックの怪物って呼ばれてるらしいわ」
「近寄らないほうがいいって。何されるかわからない」
剛田鉄心は、そんな囁きの中を堂々と歩いていた。
「おう、おはよう!」
すれ違う生徒に片手を上げて挨拶する。相手が怯えて壁に張りつくのも気にせず、鉄心は朝日が差し込む廊下を闊歩した。一歩踏み出すたびに石畳が微かに軋む。百十キロの体躯は、魔法学院の繊細な建築には少々荷が重い。
「……おい、見ろよ。笑ってやがる」
三階の渡り廊下から、冷ややかな目がその背中を追っていた。
マルクス・ヴァン・レーゲンスブルク。金糸のような髪を撫でつけ、学院の制服を寸分の乱れなく着こなした少年だった。細い顎を上げ、鉄心を見下ろすその目には、嫌悪と苛立ちが同居している。
「ノーマジックの分際で、名門の学院を我が物顔で歩くとはな」
取り巻きの二人が、忠実な猟犬のように頷いた。
「マルクス様、あんな野蛮人、放っておけばいいのでは——」
「黙れ」
マルクスの声が鋭く廊下に響いた。
「レーゲンスブルク侯爵家の名の下に、あの汚点を放置するわけにはいかない。——教育してやろう」
その唇が、薄く歪んだ。
◇
昼食の鐘が鳴り、食堂には温かいシチューの湯気と、焼いた肉の香ばしい匂いが漂っていた。
鉄心は山盛りの皿を三つ抱えて席についた。パンが六個、シチューが二杯、肉の塊が三切れ。隣に座ったカイルが呆れた顔で自分のスープを啜る。
「お前、ほんとによく食うな……」
「体は資本だからな! 食わなきゃ筋肉が泣くぜ」
鉄心がパンにかぶりついた——その瞬間、口の中に強烈な苦味が広がった。
舌がしびれるような刺激。普通なら吐き出すレベルの苦味魔法薬が、シチューに仕込まれていた。食堂の隅で、マルクスの取り巻きがにやにやとこちらを窺っている。
「お?」
鉄心は咀嚼を止めた。
——そして、目を輝かせた。
「おお、この苦味がクセになるな! なんだこれ、薬草か? 体に良さそうだ!」
完食。皿まで舐めかねない勢いだった。
カイルが怪訝そうに鉄心のシチューの残りを嗅ぎ、顔を顰めた。
「……おい鉄心、これ変な匂いがするぞ」
「そうか? 俺には香ばしいとしか感じなかったけどな。おかわりあるかな」
食堂の隅で、取り巻きの一人が青ざめた顔でマルクスに駆け寄っていた。
◇
午後の講義が終わり、鉄心は訓練場へ向かう廊下を歩いていた。
石壁に反射する午後の光が、埃の粒子を金色に染めている。窓の外では秋の風が木々を揺らし、乾いた葉の擦れる音が微かに聞こえた。
三歩目。
足元の石畳が不自然に沈んだ。
転倒の罠——魔法で石畳の摩擦を消し、足を滑らせる仕掛けだった。精巧な魔法陣が床面に描かれている。上級生でも気づかないレベルの罠。
だが。
ドゴッ。
鉄心の体重が罠ごと床板を踏み抜いた。百十キロの質量が魔法の仕掛けを物理的に破壊し、石畳に靴の形の穴が空いた。
「ん? なんか踏んだか?」
鉄心は足元を見下ろし、首を傾げた。穴の開いた石畳を覗き込んで「ああ、床が老朽化してるのか。あとで直しとくか」と呟きながら、何事もなかったように歩き去る。
物陰で見ていたマルクスの取り巻きが、顔を見合わせた。
「……罠が、壊された?」
「魔法で壊したんじゃない。踏み抜いたんだ——物理的に」
二人の声が震えていた。
だがマルクスは諦めなかった。次の手を打つ。
講義棟の掃除用具入れ。鉄心が通りかかったタイミングで、背後から押し込んだ。三人がかりで扉を押さえ、施錠の魔法をかける。
「ふん。暗い場所で頭を冷やすがいい」
マルクスが勝ち誇った声を上げた——その三秒後。
バキィッ!
金属の扉が内側から膨らみ、蝶番が悲鳴を上げて弾け飛んだ。鉄心が満面の笑みで扉を押し開けて出てきた。
「おう、狭いから筋トレにちょうどいいな! アイソメトリックスって知ってるか? 壁を押すだけで鍛えられるんだぜ!」
汗ひとつかいていない。むしろ上機嫌だった。
マルクスの取り巻きが、じりじりと後退した。その目に浮かんでいるのは軽蔑ではない。恐怖だった。
◇
夕暮れ。寮の部屋に戻った鉄心は、扉を開けて足を止めた。
壁に、魔法の光で文字が焼きつけられていた。
『ノーマジックは出ていけ』
赤黒い光が脈打つように明滅している。高度な定着魔法——簡単には消せない呪印だった。部屋の空気が冷たく、焦げた匂いが鼻をついた。
「おお……」
鉄心は目を丸くした。
「魔法の文字ってかっこいいな! 光ってるし、なんか紋章みたいだ!」
感嘆の声だった。純粋な、混じり気のない感動。
「消すのもったいないけど、寮の壁だから消さないとな」
鉄心は拳を構え——壁を削り取った。
ドゴォッ、と石壁が抉れる。呪印ごと壁材を剥がし取る荒業だった。魔法で消せないなら、壁ごと除去する。発想が根本的に違う。
そのとき、削れた壁の断面に何かが見えた。
「ん? なんだこれ」
壁の内部に、古い紋様が刻まれていた。学院の建材に直接彫り込まれた、見たことのない文様。魔法陣とも違う、もっと原始的な——まるで素手で刻んだような荒々しい線。
「模様があるな……まあいいか。先に壁を直さないと」
鉄心は訓練場から資材を持ってきて、黙々と壁を修繕し始めた。セメントに似た充填材を練り、穴を埋め、表面を拳で叩いて平らにする。一時間後、壁は元通り——いや、元より頑丈になっていた。
「よし、完璧だ!」
腕を組んで満足げに頷く鉄心の背後で、扉が開いた。
「……おい、鉄心」
カイルだった。赤毛を掻きながら、複雑な顔で部屋を見回している。
「聞いたぞ。昼飯に変なもん入れられたり、廊下で罠仕掛けられたり、ロッカーに閉じ込められたり」
「ああ、今日はいろいろあったな。この学院、イベント多くて楽しいぜ!」
カイルの眉間に皺が寄った。
「あのな、鉄心。あいつら——マルクスって奴とその取り巻き——お前を虐めてるんだぞ」
沈黙が落ちた。
鉄心の笑顔が凍った。——と思ったら、別の意味で固まっていた。
「えっ、マジで?」
心の底から驚いた声だった。
「俺てっきり歓迎の儀式かと……。入学したての新入りにやる、こう、洗礼みたいな」
「どこの世界に毒盛って歓迎する学校があるんだよ!」
カイルが声を荒らげた。だが鉄心の顔を見て、こみ上げるものを堪えきれなくなった。唇が震え、ぷっと吹き出す。
「……お前、ほんと馬鹿だな」
「おう、よく言われる!」
カイルは笑いながら、窓枠に腰を下ろした。夕日が二人の影を長く伸ばしている。
「……俺は男爵家の三男だから、こういう貴族の陰湿さはよく知ってるよ」
カイルの声から、笑いが消えていた。窓の外を見る横顔に、鉄心は何かを感じ取った。
「上の兄貴二人は魔力が高くてさ。三男の俺は——まあ、いなくても困らない存在ってやつだ。家の晩餐会で俺の席だけ端に追いやられてても、誰も気にしなかった。学院に入っても同じさ。男爵家の三男なんて、上位貴族からすれば空気みたいなもんだ。廊下ですれ違っても目も合わせてもらえない」
カイルは自嘲するように笑った。
「だからかもな。お前が誰にでも『おう、おはよう!』って声かけてるの見て——ちょっと眩しかったんだよ。身分も魔力も関係なく、誰にでも同じ態度を取れる奴なんて、初めて見た」
「……カイル」
「だからって、やられっぱなしでいいわけじゃない。お前も、気をつけろよ」
鉄心は黙って頷いた。そして——大きな手でカイルの肩を叩いた。
「ありがとな、教えてくれて」
カイルの肩が、一瞬だけ跳ねた。
「……別に。当たり前のことだろ」
そう言って顔を背けたカイルの耳が、夕日のせいだけではなく赤かった。
◇
同じ頃。
上級生寮の一室で、マルクスは拳を机に叩きつけていた。
「どうして——どうしてあの野蛮人に、何一つ通じない……!」
計画は全て裏目に出た。毒は効かず、罠は壊され、閉じ込めても笑顔で出てくる。取り巻きは怯え始め、嘲笑は自分に向き始めている。
マルクスの視線が、部屋の奥に向いた。
上級生の机の上に、古びた書類の束がある。そこには学院の非公式な制度——いや、公式でありながら滅多に使われない制度の申請書が綴じられていた。
「裁定戦」。
魔法による正式な決闘。学院が認める合法的な力の行使。勝者は敗者に一つだけ命令を下せる。
マルクスの手が、その申請書に伸びた。
——魔法による決闘なら、魔力を持たない者に勝ち目はない。
薄い唇が、三日月のように歪んだ。
廊下を歩くだけで、視線が刺さる。ひそひそ声が波のように広がっては引いていく。
「——あいつだよ、体力測定で魔法障壁を素手で……」
「ノーマジックの怪物って呼ばれてるらしいわ」
「近寄らないほうがいいって。何されるかわからない」
剛田鉄心は、そんな囁きの中を堂々と歩いていた。
「おう、おはよう!」
すれ違う生徒に片手を上げて挨拶する。相手が怯えて壁に張りつくのも気にせず、鉄心は朝日が差し込む廊下を闊歩した。一歩踏み出すたびに石畳が微かに軋む。百十キロの体躯は、魔法学院の繊細な建築には少々荷が重い。
「……おい、見ろよ。笑ってやがる」
三階の渡り廊下から、冷ややかな目がその背中を追っていた。
マルクス・ヴァン・レーゲンスブルク。金糸のような髪を撫でつけ、学院の制服を寸分の乱れなく着こなした少年だった。細い顎を上げ、鉄心を見下ろすその目には、嫌悪と苛立ちが同居している。
「ノーマジックの分際で、名門の学院を我が物顔で歩くとはな」
取り巻きの二人が、忠実な猟犬のように頷いた。
「マルクス様、あんな野蛮人、放っておけばいいのでは——」
「黙れ」
マルクスの声が鋭く廊下に響いた。
「レーゲンスブルク侯爵家の名の下に、あの汚点を放置するわけにはいかない。——教育してやろう」
その唇が、薄く歪んだ。
◇
昼食の鐘が鳴り、食堂には温かいシチューの湯気と、焼いた肉の香ばしい匂いが漂っていた。
鉄心は山盛りの皿を三つ抱えて席についた。パンが六個、シチューが二杯、肉の塊が三切れ。隣に座ったカイルが呆れた顔で自分のスープを啜る。
「お前、ほんとによく食うな……」
「体は資本だからな! 食わなきゃ筋肉が泣くぜ」
鉄心がパンにかぶりついた——その瞬間、口の中に強烈な苦味が広がった。
舌がしびれるような刺激。普通なら吐き出すレベルの苦味魔法薬が、シチューに仕込まれていた。食堂の隅で、マルクスの取り巻きがにやにやとこちらを窺っている。
「お?」
鉄心は咀嚼を止めた。
——そして、目を輝かせた。
「おお、この苦味がクセになるな! なんだこれ、薬草か? 体に良さそうだ!」
完食。皿まで舐めかねない勢いだった。
カイルが怪訝そうに鉄心のシチューの残りを嗅ぎ、顔を顰めた。
「……おい鉄心、これ変な匂いがするぞ」
「そうか? 俺には香ばしいとしか感じなかったけどな。おかわりあるかな」
食堂の隅で、取り巻きの一人が青ざめた顔でマルクスに駆け寄っていた。
◇
午後の講義が終わり、鉄心は訓練場へ向かう廊下を歩いていた。
石壁に反射する午後の光が、埃の粒子を金色に染めている。窓の外では秋の風が木々を揺らし、乾いた葉の擦れる音が微かに聞こえた。
三歩目。
足元の石畳が不自然に沈んだ。
転倒の罠——魔法で石畳の摩擦を消し、足を滑らせる仕掛けだった。精巧な魔法陣が床面に描かれている。上級生でも気づかないレベルの罠。
だが。
ドゴッ。
鉄心の体重が罠ごと床板を踏み抜いた。百十キロの質量が魔法の仕掛けを物理的に破壊し、石畳に靴の形の穴が空いた。
「ん? なんか踏んだか?」
鉄心は足元を見下ろし、首を傾げた。穴の開いた石畳を覗き込んで「ああ、床が老朽化してるのか。あとで直しとくか」と呟きながら、何事もなかったように歩き去る。
物陰で見ていたマルクスの取り巻きが、顔を見合わせた。
「……罠が、壊された?」
「魔法で壊したんじゃない。踏み抜いたんだ——物理的に」
二人の声が震えていた。
だがマルクスは諦めなかった。次の手を打つ。
講義棟の掃除用具入れ。鉄心が通りかかったタイミングで、背後から押し込んだ。三人がかりで扉を押さえ、施錠の魔法をかける。
「ふん。暗い場所で頭を冷やすがいい」
マルクスが勝ち誇った声を上げた——その三秒後。
バキィッ!
金属の扉が内側から膨らみ、蝶番が悲鳴を上げて弾け飛んだ。鉄心が満面の笑みで扉を押し開けて出てきた。
「おう、狭いから筋トレにちょうどいいな! アイソメトリックスって知ってるか? 壁を押すだけで鍛えられるんだぜ!」
汗ひとつかいていない。むしろ上機嫌だった。
マルクスの取り巻きが、じりじりと後退した。その目に浮かんでいるのは軽蔑ではない。恐怖だった。
◇
夕暮れ。寮の部屋に戻った鉄心は、扉を開けて足を止めた。
壁に、魔法の光で文字が焼きつけられていた。
『ノーマジックは出ていけ』
赤黒い光が脈打つように明滅している。高度な定着魔法——簡単には消せない呪印だった。部屋の空気が冷たく、焦げた匂いが鼻をついた。
「おお……」
鉄心は目を丸くした。
「魔法の文字ってかっこいいな! 光ってるし、なんか紋章みたいだ!」
感嘆の声だった。純粋な、混じり気のない感動。
「消すのもったいないけど、寮の壁だから消さないとな」
鉄心は拳を構え——壁を削り取った。
ドゴォッ、と石壁が抉れる。呪印ごと壁材を剥がし取る荒業だった。魔法で消せないなら、壁ごと除去する。発想が根本的に違う。
そのとき、削れた壁の断面に何かが見えた。
「ん? なんだこれ」
壁の内部に、古い紋様が刻まれていた。学院の建材に直接彫り込まれた、見たことのない文様。魔法陣とも違う、もっと原始的な——まるで素手で刻んだような荒々しい線。
「模様があるな……まあいいか。先に壁を直さないと」
鉄心は訓練場から資材を持ってきて、黙々と壁を修繕し始めた。セメントに似た充填材を練り、穴を埋め、表面を拳で叩いて平らにする。一時間後、壁は元通り——いや、元より頑丈になっていた。
「よし、完璧だ!」
腕を組んで満足げに頷く鉄心の背後で、扉が開いた。
「……おい、鉄心」
カイルだった。赤毛を掻きながら、複雑な顔で部屋を見回している。
「聞いたぞ。昼飯に変なもん入れられたり、廊下で罠仕掛けられたり、ロッカーに閉じ込められたり」
「ああ、今日はいろいろあったな。この学院、イベント多くて楽しいぜ!」
カイルの眉間に皺が寄った。
「あのな、鉄心。あいつら——マルクスって奴とその取り巻き——お前を虐めてるんだぞ」
沈黙が落ちた。
鉄心の笑顔が凍った。——と思ったら、別の意味で固まっていた。
「えっ、マジで?」
心の底から驚いた声だった。
「俺てっきり歓迎の儀式かと……。入学したての新入りにやる、こう、洗礼みたいな」
「どこの世界に毒盛って歓迎する学校があるんだよ!」
カイルが声を荒らげた。だが鉄心の顔を見て、こみ上げるものを堪えきれなくなった。唇が震え、ぷっと吹き出す。
「……お前、ほんと馬鹿だな」
「おう、よく言われる!」
カイルは笑いながら、窓枠に腰を下ろした。夕日が二人の影を長く伸ばしている。
「……俺は男爵家の三男だから、こういう貴族の陰湿さはよく知ってるよ」
カイルの声から、笑いが消えていた。窓の外を見る横顔に、鉄心は何かを感じ取った。
「上の兄貴二人は魔力が高くてさ。三男の俺は——まあ、いなくても困らない存在ってやつだ。家の晩餐会で俺の席だけ端に追いやられてても、誰も気にしなかった。学院に入っても同じさ。男爵家の三男なんて、上位貴族からすれば空気みたいなもんだ。廊下ですれ違っても目も合わせてもらえない」
カイルは自嘲するように笑った。
「だからかもな。お前が誰にでも『おう、おはよう!』って声かけてるの見て——ちょっと眩しかったんだよ。身分も魔力も関係なく、誰にでも同じ態度を取れる奴なんて、初めて見た」
「……カイル」
「だからって、やられっぱなしでいいわけじゃない。お前も、気をつけろよ」
鉄心は黙って頷いた。そして——大きな手でカイルの肩を叩いた。
「ありがとな、教えてくれて」
カイルの肩が、一瞬だけ跳ねた。
「……別に。当たり前のことだろ」
そう言って顔を背けたカイルの耳が、夕日のせいだけではなく赤かった。
◇
同じ頃。
上級生寮の一室で、マルクスは拳を机に叩きつけていた。
「どうして——どうしてあの野蛮人に、何一つ通じない……!」
計画は全て裏目に出た。毒は効かず、罠は壊され、閉じ込めても笑顔で出てくる。取り巻きは怯え始め、嘲笑は自分に向き始めている。
マルクスの視線が、部屋の奥に向いた。
上級生の机の上に、古びた書類の束がある。そこには学院の非公式な制度——いや、公式でありながら滅多に使われない制度の申請書が綴じられていた。
「裁定戦」。
魔法による正式な決闘。学院が認める合法的な力の行使。勝者は敗者に一つだけ命令を下せる。
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