歌の光花

古川優亜

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春の物語

一人だけの夜の向こうには

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光が止むと私は暗い森の中にいた。
私は泣くのをやめる。
『よしよし。いい子ですね。』
私は頭に響く声に驚いた。
「だ、誰?」
私が聞くと声は優しい声で言った。
『私は氏神に頼まれてお嬢さんをここに連れてきました、そうですね神様だと思っていてください。』
神様はそう言うと温かい風で私を包む。
「私、これからどうすればいいですか?」
私が聞くと神様は
『言語は分かるようにしました。歌花さんには私から祝福を授けましたよ。』
神様はあやすように優しい言葉を言う。
『だからこれからの͡ことは自分で決めてください。』
優しく、でも厳しく神様は言った。
「はい、神様。」
私が弱く小さな声で言うと神様は笑った。
『大丈夫ですよ。この近くには村があります。歌花さんが怪しまれないように髪の色も目の色も変えました。』
神様は青い光を作ると私の前の道を照らした。
『まっすぐ行くと着きます。盗賊に襲われたことにしなさい。そうすれば村人たちは歌花さんを置いてくれます。』
神様は風で私の背中を軽く押す。
『ここからは一人ですよ。大丈夫ですから前に進みなさい。』
私は振り返らずに進む。
「ありがとうございます、神様。」
振り返ったらいけない、そんな気がした。
私はまっすぐ神様に言われた通り歩き続ける。
『おや?よく考えたら三日はかかりますね。・・・歌花さん!もう行ってしまいましたか。
気の毒なことをしてしまいました・・・すみません、歌花さん。』
神様は歌花が居なくなった場所を見て反省をした。
『何もないといいんですが・・・。』



はぁ。はぁ。
どこまで歩けばいいの?
三時間くらい歩いても村は見つからない。
「神様の嘘つきぃ~。すぐには着きそうにはありませんよ~。」
息があがる。
足が少しずつ重くなる。
「もう歩けない!」
私は木の幹に座り込んだ。
ひんやりとしていて気持ちいい。
「何で月はあんなに明るいのかな?」
気がたくさんある森にしては明るい。
月が明るい。
淡い光は安らぎを与えてくれる。
♪「歌に願いを込めて歌えば」
♪「広場に町に公園に」
私は小学校の時習った歌を口ずさんだ。
うんぱっぱだっけ?
好きになった日から毎日歌い続けた。
私が歌い出すとよく家族が会わせて歌いだす。
皆で歌うと楽しい。
耳を澄ますと風や木、植物が歌ってるように感じていた。
不思議だった。
私は歌が魔法のように思っていた。
「ふぁ~。眠いなぁ。もう寝よう。」
私は地面に体を丸めて寝た。


うぅ。眩しい。
うっすらと目を開けると太陽の光が木の葉の間から漏れていた。
ゆっくりと体を起こすと水色の髪が顔にかかった。
「きれい。」
思わずこぼれた声は私のものかと驚いた。
「声も変わってる・・・?」
私は立つと、体のあちこちを見た。
肌は雪のように白い。
私は確認をしてから歩き出す。
夜とはまた違う景色を見ているような感じになる。
のどかで静かで落ち着くなぁ~。
でも、後ろからナイフを突きつけられて固まる。
「誰、ですか?」
私は声を小さくして言った。
「金目のものを置け、無いなら今、ここでお前を殺す。」
低く圧のある声だった。
「お金は持ってませんし、ここで死ぬわけにもいきません、から!」
私はそう言うと足に力を入れて走った。
風が体に当たる。
こけないように上手くよけながら私は叫びたくなった。
(何で、怖い人に会うのぉ~!)
「おい!待て!!」
男の人の声に私は出せるだけ大きな声を出す。
「待ちませんよ!」
私は捕まらないように走り続ける。
『歌花さん!今、助けますからね!』
神様の声がする。
後ろにあった木の枝が伸びて男の人を捕まえる。
私が立ち止まり振り向くと男の人は宙に浮いていた。
「なんだこれ!おい、女!何しやがった!」
私は肩出息をした。
『歌花さん無事ですか?』
神様が心配そうに聞く。
(はい。大丈夫です。でも胸が痛い。)
私は心臓が弱い。
胸を押さえると神様から男の見えないところに行くように言われた。
私はもがく男の人に言った。
「いつまでもこんなことしていたら、後で後悔しますよ?」
男の人は動くのを止める。
私はそれに追い打ちをかけた。





             ・・・・
「私と共に行動しませんか?お兄さん」
男の人は顔を上げる。
落ち着いてみたら男の人は私のお兄ちゃんくらいに見えた。
私のお兄ちゃんは16歳。
男の人は私の顔をじっと見た。
私は胸が痛くて本当なら寝転がりたい。
でも、このまま放置するのもできない。
「もし、共にいるとして・・・お前はどうするつもりだ?」
冷静に聞き返される。
私はニコリと笑う。
「あなたの力になるだけですよ?私はたくさんの人に笑顔でいてほしいだけですから。」
私の額から汗が流れる。
本格的にヤバイ。
息が荒くなる。
「分かった、ついていく。」
お兄さんがそう言った。
『・・・歌えば木の枝が動きます。』
神様が教えてくれる。
♪「歌に願いを込めて歌えば」
♪「広場に町に公園に」
♪楽しい歌が小鳥のように」
 皆の歌を歌い出す
♪「ウンッパパウンッパパ」
♪「どこでも」
♪「ウンッパパウンパッパ知っている」
♪「君と僕は友達さ」
♪「だからウンッパパ」
私が歌い終えるとお兄さんはゆっくりと地面に足がつく。
私は体がふらつき、目の前が真っ暗になる。
「おい!」
お兄さんの驚く声が聞こえた。
・・・苦しくて、痛、い。
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