歌の光花

古川優亜

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春の物語

怖い顔の裏には

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『何故無茶をするのですか・・・歌花さんは。』
神様の声がする。
「ん。ここどこ?」
花が咲き乱れる幻想的な場所。
花の優しい匂いが私の鼻をくすぶる。
「歌花さんは無茶をしたので一度こちらに来ていただいたのですよ。」
若い男性が目の前に突然現れた。
「だ、誰ですか⁉」
思わず後ずさる。
男性はそんな私を見て悲しそうな表情をする。
「私ですよ。歌花さんの神様です。」
自分を指さしながら言う男性。
「神様?」
私が聞き返すと男性は頷く。
「私、どうなったんですか?」
さっきまであった胸の痛みは消えていた。
神様は指をパチンと鳴らす。
すると私が倒れている姿が見える。
倒れている側には心配そうに私の顔をのぞき込むお兄さんがいた。
『何なんだよ!急に倒れやがって・・・どうすればいいんだよ。』
頭を抱え込んでいる姿。
「私の体、大丈夫ですよね?」
隣にいる神様に聞く。
神様は私の顔を見てから頷く。
「無茶をしないようにするための予防策ですら。大丈夫ですよ。」
私が安心して胸をなでおろす。
神様は私の顔を見ながらこう言った。
「あの男はどうするつもりですか?歌花さんを襲うかもしれませんよ。」
神様は眉間にしわを寄せながら言った。
私はスイからもらったブローチを握りしめる。
「小さいころスイからもらったのがあるんです。私がたまたま持ってたストラップをもとに作ったみたいで。
スイは飛び切りの笑顔で『これなら歌花にぴったりだ!』と言って私にくれたんです。
直方体の小さな瓶の形をしたストラップでした。ピンク色で可愛くて嬉しくて嬉しくて。
紐を通してずっと首から下げていました。スイの事を忘れていても、何故かお守りのように身に着けていたんです。」
私は男の人を見ながら話す。
「それがないと落ち着かなくて。持ってるか身に着けてないと怖かった。私は一人のように感じていました。でもスイのストラップがあると違った。たぶん、体は分かっていたんだと思います。
『私は一人じゃない。スイがいる。』って。」
男の人は一生懸命私の事を見ていた。
『汗、すごいな。寒いのにこのままじゃ風邪ひくだろ。」
私の汗をぬぐったり私に何かをかぶせたりしていた。
火も起こしていた。
「私はスイに会いに来ました。」
でも・・・。
「でも私はスイからもらった優しさをたくさんの人にあげたいんです。」
神様に言う。
神様は驚いたように笑った。
「歌花さんにはかないませんね。」
肩を落とす真似をしている神様。
私はおかしくて笑った。
「ありがとうございます、神様。そろそろ戻りますね。」
私が言うと神様は頷いた。
周りの景色がぼやけ始める。



体が少し寒い。
目を開けると火をじっと見てる男の人の横顔が見えた。
「あ、起きたか。」
私に気づくと男の人は私を起こしてくれた。
「ほら、水。ゆっくりと飲めよ。」
お水を渡されて少しだけ飲んだ。
冷たくておいしい。
「ありがとうございます。」
笑ってから言うと男の人はため息をついた。
私は少しづつ飲み続ける。
男の人は何も言わずに炎を見続ける。
「私は、心臓が悪いんです。」
私は星が輝く夜空を見ながら言う。
「黙れ。」
男の人が真顔で言った。
「小さいころ、普通に元気でした。でもある事が原因で心臓が弱くなりました。」
私は話し続ける。
「黙れって言ってるのが分からないのか?」
男の人は私の顔を見ながら言った。
私はニコリと笑う。
「今言わないでいつ言えばいいんですか?」
男の人は何とも言えない顔をしていた。
目が泳いでる。
私は水を飲むのをやめる。
温かい炎を見る。
「私は、誰かに信用してほしいなら自分の事を教えるのが一番だと思います。」
炎はゆらゆらと燃える。
「お前の・・・お前の家族はどうした。」
男の人は小さく呟いた。
私は小さく笑う。
「私は会いたい人がいます。家族は私の背中を・・・。」
私が話してる途中で男の人は勢いよく立ち上がった。
「体の弱い女を一人で出すか!」
大きな声で何故か私が怒鳴られた。
「しょうがないですよ。私一人だけしか行けなかったんですから。」
私が言うと男の人は
「寂しくないのかよ、お前は。」
と言った。
私は思わずこぼした。
「お兄ちゃんみたい。」
男の人は「は?」と間抜けな声を出した。
目が少し潤みそうになる。
「私にはお兄さんと年の近い兄がいるんです。」
なるべく泣きそうになってることを悟られないようにする。
「・・・。」
男の人は何も言わない。
私はただ笑うだけにした。
すると・・・。
「さっさと寝ろ。」
急に男の人が身に着けていたマントを被せられる。
「??」
私の頭の中では?マークがたくさんできた。
男の人は何も言わずに横になる。
「なんか遭ったら呼べ。俺の名はジョナ。」
そう言うと何も話さなくなった。
「ありがとうございます。」
私は横になったジョナさんに言った。


暖かい。
体が揺れている。
優しい匂いがする。
重たい目を開けると黒い布が見えた。
体が浮いてるような気がする。
?どうして??
「起こしたか?すまん。なるべく揺らさないようにしてたんだが・・・。」
顔が見えなくても分かるほど申し訳なさそうだった。
私はまだ少し寝ぼけていて思わず「お兄ちゃん?」と言っていた。
ジョナさんの足が止まる。
「・・・ミカ?」
低く震えた声で言った。
私はその声に反応した。
「ジョナさん!すみません、歩けるので下ろしてください。」
私が慌てて言うとジョナさんは「そうだな、分かった。」と言って下ろしてくれた。
地面に足がつく。
彼は俯いて手を握りしめていた。
私はどうしたらいいのか分からなくてただ黙って隣を歩いていた。
ミカ?誰だろう・・・。
ジョナさんとミカさんは何かあるのかな?
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