歌の光花

古川優亜

文字の大きさ
36 / 40
まぶしい笑顔と明るい夏

いかせない

しおりを挟む
「ウカちゃん!!」
「はい?」
お昼ご飯を作ってたらいつも野菜を売ってくれる優しいお兄さんがノックもせずに入ってきた。
子供たちがみんな威嚇してる。
動物みたいで可愛い。
「ほのぼのしてる場合じゃない!!」
あら。
つっこまれた。
「ランちゃんが大変なんだ!!」
食器を用意する手が止まる。
「今すぐ、案内してください!チョコ、ちょっと行ってくる!何かあれば、サラ・サムの所にお願い!!」
私は着ていたエプロンをとりあえず投げる。
「て、ちょ!?」



「ラン、ラン!!ラン!」
「こら、君!離れないか!!」
「やだよ、ラン!俺を置いてくな!!」
私が着いたころにはレイが泣きじゃくってランから離れようとしなかった。
「レイ!」
「姉さん。ランが、ランがぁ。」
私に気づいたレイが助けを求めるように手を伸ばしてくる。
レイを抱き上げ、ランの元に向かう。
一体、どうすれば。
「魔力不足。」
ぼそりと聞こえた声。
私が顔をあげれば楽しそうにみているぼろぼろの男の子がいた。
この子は、誰なの。
「ラン!」
魔力不足。
この子の言葉を信じてみよう!!
♪「届け 君に ただ君に」
私は歌を歌う。
なるべくランに魔力を流すイメージをして。
♪「声が届くように いつまでも歌うよ」
ランの手を握れば、すごく冷たくて。
そうすれば、私の周りが光りだした。
綺麗な碧。
スイが好きな色。
私の周りの光が少しずつランの中に吸い込まれる。
手が温かくなり安心する。
「レイ、鞄を持って。私はランを運ぶから。」
「うん、姉さん。」
レイ、すごい顔色。
そりゃ、そうだよね。
自分を守るためにこうなったんだもん。
「あ、そういえば。」
私が顔をあげて辺りを見回す。
あれ?
さっきの男の子は??
「姉さん。」
不安そうに私のスカートを引っ張るレイ。
「帰ろうか。」
優しく笑いかければ安心したように頷く。
院までの道のりを歩きながら私はふと考えた。




「んんn。」
ランが寝がえりを打つ。
「なかなか、起きないね。ラン。」
アンが濡れたタオルを持ってきながら眉を寄せて考えていた。
「魔力不足で平均的に三日はかかるみたい。」
ラムがぼそりと言う。
「医療にはまったね、ラム。」
私の髪で得たお金でいろいろな本を買って。
その中に医療系の本があったみたい。
それを楽しそうに読んでたなぁ。
よくアンが怪我するのもあるんだろうな。
「姉さん。もうそろそろランに魔力を流してあげないと。多分、寝たきりだから流れが悪いんだと思う。」
ラムが首から手を離しながら言った。
言われたとおりにランの手を握って魔力を流す。
あの日からずっとレイはランのそばにいた。
ランの魔力にあたったからか、体調はいいみたい。
「ラン、目開けてよ。」
レイはずっとランの右手を握ってる。
違う意味で体調が悪そう。
寝返りうったときはすごく握りにくそう。
そんなことを考えていたら。
「んん。ここは?」
小さくかすれた愛らしい声が聞こえる。
この声は!!
「ラン!!」
あ、先越された。
レイが目にたくさんの涙をためてランに抱き着いてる。
私も抱き着きたかった!!
「え、え?え!?レイ、どうしたの!?」
「どうしたの?じゃねぇ!!!」
いつもボーカーフェイスのレイ。
そんなレイが珍しくていうか初めてこんな大きな声をだした。
「レイ!起きたばかりのランには、刺激が強すぎるよ!!」
うん、それは思った。
ラン、顔真っ赤にして熱上がってる気がする。
無事に起きたことに安心したのかレイはランを抱きしめたまま寝てる。
よかった。
みんな、安心して笑顔が溢れてる。
私も安心して、寝れる。
「ちょっと、休んでくるね。」
私はそう言い残して、自室に戻った。
絶対に誰も死なせない。
改めてそう心に誓った私だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...