歌の光花

古川優亜

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まぶしい笑顔と明るい夏

いかせない

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「ウカちゃん!!」
「はい?」
お昼ご飯を作ってたらいつも野菜を売ってくれる優しいお兄さんがノックもせずに入ってきた。
子供たちがみんな威嚇してる。
動物みたいで可愛い。
「ほのぼのしてる場合じゃない!!」
あら。
つっこまれた。
「ランちゃんが大変なんだ!!」
食器を用意する手が止まる。
「今すぐ、案内してください!チョコ、ちょっと行ってくる!何かあれば、サラ・サムの所にお願い!!」
私は着ていたエプロンをとりあえず投げる。
「て、ちょ!?」



「ラン、ラン!!ラン!」
「こら、君!離れないか!!」
「やだよ、ラン!俺を置いてくな!!」
私が着いたころにはレイが泣きじゃくってランから離れようとしなかった。
「レイ!」
「姉さん。ランが、ランがぁ。」
私に気づいたレイが助けを求めるように手を伸ばしてくる。
レイを抱き上げ、ランの元に向かう。
一体、どうすれば。
「魔力不足。」
ぼそりと聞こえた声。
私が顔をあげれば楽しそうにみているぼろぼろの男の子がいた。
この子は、誰なの。
「ラン!」
魔力不足。
この子の言葉を信じてみよう!!
♪「届け 君に ただ君に」
私は歌を歌う。
なるべくランに魔力を流すイメージをして。
♪「声が届くように いつまでも歌うよ」
ランの手を握れば、すごく冷たくて。
そうすれば、私の周りが光りだした。
綺麗な碧。
スイが好きな色。
私の周りの光が少しずつランの中に吸い込まれる。
手が温かくなり安心する。
「レイ、鞄を持って。私はランを運ぶから。」
「うん、姉さん。」
レイ、すごい顔色。
そりゃ、そうだよね。
自分を守るためにこうなったんだもん。
「あ、そういえば。」
私が顔をあげて辺りを見回す。
あれ?
さっきの男の子は??
「姉さん。」
不安そうに私のスカートを引っ張るレイ。
「帰ろうか。」
優しく笑いかければ安心したように頷く。
院までの道のりを歩きながら私はふと考えた。




「んんn。」
ランが寝がえりを打つ。
「なかなか、起きないね。ラン。」
アンが濡れたタオルを持ってきながら眉を寄せて考えていた。
「魔力不足で平均的に三日はかかるみたい。」
ラムがぼそりと言う。
「医療にはまったね、ラム。」
私の髪で得たお金でいろいろな本を買って。
その中に医療系の本があったみたい。
それを楽しそうに読んでたなぁ。
よくアンが怪我するのもあるんだろうな。
「姉さん。もうそろそろランに魔力を流してあげないと。多分、寝たきりだから流れが悪いんだと思う。」
ラムが首から手を離しながら言った。
言われたとおりにランの手を握って魔力を流す。
あの日からずっとレイはランのそばにいた。
ランの魔力にあたったからか、体調はいいみたい。
「ラン、目開けてよ。」
レイはずっとランの右手を握ってる。
違う意味で体調が悪そう。
寝返りうったときはすごく握りにくそう。
そんなことを考えていたら。
「んん。ここは?」
小さくかすれた愛らしい声が聞こえる。
この声は!!
「ラン!!」
あ、先越された。
レイが目にたくさんの涙をためてランに抱き着いてる。
私も抱き着きたかった!!
「え、え?え!?レイ、どうしたの!?」
「どうしたの?じゃねぇ!!!」
いつもボーカーフェイスのレイ。
そんなレイが珍しくていうか初めてこんな大きな声をだした。
「レイ!起きたばかりのランには、刺激が強すぎるよ!!」
うん、それは思った。
ラン、顔真っ赤にして熱上がってる気がする。
無事に起きたことに安心したのかレイはランを抱きしめたまま寝てる。
よかった。
みんな、安心して笑顔が溢れてる。
私も安心して、寝れる。
「ちょっと、休んでくるね。」
私はそう言い残して、自室に戻った。
絶対に誰も死なせない。
改めてそう心に誓った私だった。
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