鏡合わせのミロワール

知己

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第8章 明かされた真実

第56話 人類の天敵

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 皆の視線を一身に受けたミロワが静かに語り始める。
 
「……まず『晄石獣ジェムート』とは『鏡人かがみびと』と同じく『あるじ』————『母』が産み出した生物兵器です」
「えっ⁉︎」
「彼らに与えられためいは人類を滅ぼすこと、その一点のみ。捕食対象が人間だけであったり、生殖機能が存在しないのはそのためです」
「ええっ⁉︎」
「ジャン、うるさいんじゃ! さっきからいちいち話のコシ折るなや!」
 
 苛立った様子でリンファが言うと、ジャンはジゼルを指差しながら答える。
 
「……い、いや、だってよ……今の話、ハカセが書いてたメモ書きとまるっきりおんなじだぜ……‼︎」
「アレを見たのかね……?」
「あ、ああ……、悪いとは思ったけど、掃除してたらたまたま眼に入っちまって……」
「……まあ、見てしまったものは仕方ない。とりあえず質問は後にして、ミロワ嬢の話を最後まで聞いてみようじゃないか」
「お、おう……」
 
 ジゼルの様子に首を傾げながらもジャンはミロワへ向き直った。再び注がれた視線に応えるようにミロワが話し出す。
 
「そもそも人間が『晄石ジェム』と呼んでいる彼らのツノとは武器であり、そして欲にまみれた人間をおびき寄せるための擬似餌なのです」
 
 一同が固唾を飲んで聞き入る中、ジゼルだけが幾度もうなずきながらミロワの話を咀嚼している。
 
「しかし、人類は『晄石ジェム』を採取しエネルギー源として利用する方法を編み出してしまった。結果、文明はさらなる発展を遂げ、強力な兵器を操る『晄石狩りハンター』の出現により『晄石獣ジェムート』だけでは進化していく人類を滅ぼすことが出来ないと感じた『母』は次なる人類の天敵を産み出すことを決めたのです……!」
「————それが、『鏡人かがみびと』か……‼︎」
 
 その衝撃の事実にタスクは思わず口を開いてしまったが、とがめるものは誰もいない。
 
「【人類を滅ぼすには人類に酷似した生物が相応ふさわしい】という『母』の意思の元に産み出された『鏡人かがみびと』たちは世界各地の強力な能力を持った人間を写し取り始めました。私やゼンマ、リンファさんの姉弟子あねでしを写し取った個体もその中の一人……。そして『写し』を終えた『鏡人かがみびと』は写し元の人間の記憶を引き継ぎながら『母』の意思に支配される生物兵器となるのです」
『…………‼︎』
 
 直接の被害者であるタスクとリンファが言葉を失っていると、もう我慢出来ないという風に金髪の男が立ち上がった。
 
「……なあ、もう質問タイムでいいだろ……⁉︎ そろそろ皆が一番知りたがってることを聞かせてもらおうぜ……!」
 
 ジャンは同意を得るように皆の顔を見渡し異論がないことを確認すると、深呼吸した後ミロワへと手を伸ばした。
 
「その『晄石獣ジェムート』や『カガミビト』の親玉の『母』ってヤツは、いったいドコのどいつなんだ……⁉︎」
「それは————」
「————ここまで情報が漏れてしまっては仕方がないな……」
 
 しゃべりかけたミロワを遮るようにジゼルがつぶやいた。
 
「ハカセ……⁉︎」
 
 一同の視線をミロワから奪ったジゼルはゆらりと立ち上がった。無言のまま窓際まで歩き出し、ブラインドに指を掛けながら恐るべきことを口走る。
 
「……誤算だったよ。まさか私の人類滅亡計画がこれほど早く露見してしまうとはね……!」
「ジゼル殿……‼︎」
「おめえ……ッ‼︎」
 
 タスクとリンファも立ち上がりそれぞれの得物に手を掛けた。
 
 ゆっくりと振り返ったジゼルは魔性の笑みを浮かべて大仰に腕を広げた。
 
「————なんて、驚いたかね?」
『は?』
 
 広げていた手をパンと叩いたジゼルの笑みは朗らかなものに戻っていた。
 
「いやー、すまない諸君。ミロワ嬢の話を聞いていたら、どうしてもやってみたくなってね。ちょっとした茶目っ気だよ。許してくれたまえ、ハッハッハ!」
「ハッハッハじゃねえよ、このババア! 話のコシ折るどころか、とんでもねえバクダン落としやがって! 笑えねえんだよ‼︎」
「ホンマじゃ……! ボケてええ時といけん時があるじゃろうが……‼︎」
「…………」
 
 こめかみに青筋を浮かべたタスクが鯉口を切った時、ミロワが大きく声を張り上げた。
 
「————待って、みんな!」
「どした、ミロワちゃん?」
「……来ている……!」
「来てる? って誰が?」
 
 精神を集中させているのか、ミロワは眼を閉じて答える。
 
「…………『鏡人かがみびと』が二人……! 今、街の中に入って来た……!」
「二人だと……⁉︎ ゼンマとルゥインが戻って来たのか⁉︎」
「……いいえ。二人とは波長が異なる……」
「どっちにしろヤベえじゃん! またこの街で虐殺を始めんのかよ⁉︎」
 
 慌てふためくジャンにミロワは首を振って見せる。
 
「……違うわ。真っ直ぐにこちらに向かって来ている……!」
「なんじゃと⁉︎」
「恐らく……、『母』のめいを受けて邪魔な私たちを始末するつもりよ……!」
「そういうことならそとで迎え打つぞ……! ジャンとジゼル殿は室内ここに残っていろ!」
 
 言うなりタスクとミロワ、リンファの三人は部屋を飛び出して行った。
 
「ちょ、待てよ! なんかここで待ってる方がおっかねえよ! 俺も出るって!」
 
 慌てて三人を追い掛けていったジャンを尻目にジゼルはいつになく真剣な表情でつぶやく。
 
「……私の予想が正しければ『母』の正体とは————」
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