猫ホスト

猫幸世

文字の大きさ
上 下
11 / 11
猫ホスト

会員番号0特別編~後編~

しおりを挟む
ーヤクザの事務所ー 

食事を終えると隆史は3人分の弁当を袋の中に入れ片づけた。 

そして隆史が袋を持って部屋を出ていくと雪が銀太に話しかけた。

「銀太君に大事な話があるんだ」

「俺に?」

「あぁ」

「今?」

「2人きりで」

「わかりました」 

真剣な顔で見つめる雪に銀太が返事をすると隆史が部屋に戻ってきた。 

「袋を捨ててきました」

「ありがとう…隆史」

「はい」

「銀太君に大事な話があるから隆史は先に帰りなさい」

「わかりました」

返事をし隆史が部屋を出ていくと雪は椅子に座り口を開いた。 

「俺…病気なんだ」

「え…」

「ガンだ」

「隆史は知ってるのか?」

「俺の病気は誰も知らない」

「何で俺に話したんだ」

「君に頼みがあるから話したんだ」

「頼み?…何ですか?」

「俺の命がなくなったら俺の代わりに隆史にヤクザのボスになってもらいたいんだ」

「隆史に」

「その事を君から隆史に伝えてほしいんだ」

「あんたから話せば」

「頼む」

そう言って雪は椅子から立ち上がり真剣な顔でお辞儀をした。

「頼む」

「…わかりました…」

「ありがとう」

顔をあげると雪は椅子に座り煙草を吸い始めた。

「隆史、お前ならこの事務所を任せられる」

その後、雪は事務所から姿を消した。 

ー樹海ー 

空を見上げている金色の猫、隆史に銀色の猫、銀太が話しかけた。

「隆史」

「何だ」

空を見上げながら隆史が返事をすると銀太が雪の言葉を発した。

「雪さん、ガンなんだって」

「え…」

空から銀太に目を向けると銀太が口を開いた。

「今から話す言葉は雪さんの言葉だ」

「……」

「俺の命がなくなったら隆史にボスになってほしい…雪さんの言葉だ」

「知らなかったボスがガンなんて」

「明日、返事をしてやれよ」

「……」

「わかったのか」

「何だ」

「明日、返事をしてやれよ」

「…わかった…」

「どこに行くんだ」

「考えたいんだ」

そう言って隆史は金色の猫で樹海を歩きまわった。 

「ボスが病気…ガン…」

「隆史さん」

「……」

名を呼ばれ動きを止め振り返った隆史は私服姿の司に目を向けた。 

「司さん、どうしてここに」

「もう一度お礼が言いたくて来ました」

「そうですか」

そう言って隆史が落ち込んだ顔をすると司が口を開いた。 

「俺で良かったら話を聞きますよ」

「ありがとう」

隆史は司にボスの病気やヤクザのボスの受け継ぎのことを話した。 

「ボスは俺に受け継いでほしいみたいけど、俺につとまるのか心配で」

「俺は隆史さんならボスをやれると思いますよ」

「そうですかね」

「優しいヤクザのボスさん良いじゃないですか、俺は好きですよ」

「え…」

「好きですよ」

そう言って司は金色の猫、隆史を抱っこしキスをした。 

その後、司は金色の猫、隆史をおろし背を向け口を開いた。 

「優しいヤクザのボスさん頑張ってください」

「優しいヤクザのボス頑張ります」

歩いていく司に向かって口にすると金色の猫、隆史はヤクザのボスになること決意した。

ー翌日ー 

人間の姿で事務所にやって来た隆史は手下から柴崎雪が姿を消したことを知る。

「探しましょう」

隆史と手下達は雪の家に行ったり雪がよく行く場所に行き探した。

それから1週間後、隆史と手下達は病院からの連絡で雪の死を知った。 

隆史は悲しむ手下達の前でボスの受け継ぎを口にした。 

「俺が雪さんの代わりにこの事務所を守ります、雪さんのボスを受け継ぎます」

「俺達は隆史がボスになること反対しないよ」

「ありがとうございます」

手下達に向かって隆史がお辞儀をすると手下が口を開いた。 

「ボスが手下にお辞儀をするなよ」

「……」

手下に言われ顔をあげると隆史の目から涙が流れた。 

その後、隆史は手下の宮下を秘書にし部屋に向かった。 

隆史がヤクザのボスになって1ヶ月後、隆史は樹海の中を歩いていた。  

「久しぶりだな」

「隆史」

「銀太」

「久しぶりだな」

近づいてくる隆史に銀色の猫、銀太が口にすると隆史が口を開いた。

「銀太、俺の仲間にならないか」

「嬉しいけど、樹海を守らないといけないから」

「樹海のことなんだけど司さんはどうかな」

「普通の人間に樹海を任せるってことか」

「司さんが引き受けてくれるかわからないけど、頼んでみようと思ってる」

「もし司さんが樹海を引き受けてくれたら俺は旅に出るよ」

「旅?」

「俺の夢なんだ日本一周」

「そうか、わかった」

隆史は樹海を離れ司が働いているホストクラブに向かった。 

ー司が働いているホストクラブー 

2人の女性客を司が接客していると隆史が来店してきた。 

「すみません、男性客はお断りしています」

「俺は客じゃありません、司さんを呼んでいただけますか」

「お待ちください」

男性スタッフは司の元に向かい口を開いた。 

「司さん、男性の方がお待ちです」

「隆史さん!」

男性スタッフに言われ隆史を見た司は2人の女性客を男性スタッフに任せ隆史に近づいた。 

「俺が働いている場所よくわかりましたね」

「司さんの願いを叶えた金色の猫だよ」

「そうですよね」

「司さんに大事な話があるんだ」

「外で話しましょうか」

そう言って司と隆史はホストクラブを出ていった。 

「大事な話って何ですか?」

司が問いかけると隆史は司が驚くような言葉を発した。 

「俺の代わりに樹海を守ってほしいんだ」

「俺が?」

「頼めるの君しかいなくて、ゴメン、忘れてくれ」

背を向け隆史が歩き出そうとしたその時、司が口を開いた。

「やります」

「……」

立ち止まり無言で隆史が振り向くと司が口を開いた。 

「俺があなたの役にたてられるのなら俺、樹海を守ります」

「今の仕事」

「辞めます」

「司、君に俺の力を授ける」

そう言って隆史は司を抱き寄せ唇を重ねた。 

その後、隆史は司を連れて樹海に向かった。 

ー樹海ー 

「本当に良いのか?」

「はい」

微笑みながら司が返事をすると隆史は手を差し出しながら口を開いた。 

「樹海をよろしくお願いします」

「お任せください」

そう言って司は差し出された隆史の手を握った。 

その後、司は樹海で隆史と別れスマホを取り出しホストクラブオーナーに連絡した。  

「もしもしオーナー、司です」

「司、今、どこにいるんだ」

「すみませんオーナー」

「謝らなくて良いから戻ってこい」

「オーナー、俺、ホスト辞めます」

「急にどうした」

「すみません…ロッカーの中の私服は処分してくださいその代わりスーツは俺にください…それと給料はいりません」

「司」

「わがまま言ってすみません…お願いします」

そう言って通話を切りスマホをポケットの中に入れると銀色の猫が6匹の猫を連れて現れた。 

「初めまして司さん」

「どうして俺の名前を」

「俺は銀太、隆史の友達です」

「それで俺の名前を知ってるんですね」

「コイツらをあなたに紹介したくて連れてきました」

「この猫ちゃん達も喋れるんですか?」

「喋りますよ」

「俺は司といいます、三毛猫ちゃんの名前は何ていうのかな」

「名前はありません」

司の問いに三毛猫が返事をすると銀太が口を開いた。 

「司さんが6匹の名前をつけてあげてください」

「俺が?」

「それじゃ俺いきますね」

「え…」

三毛猫から銀太の方に目を向けた司は姿が消えていることに驚いた。 

「居ない…」

「司さん、俺達の名前お願いします」

「どんな名前でも良いの?」

「はい」

返事後、6匹の猫は横並びに並んだ。 

「わかった、名前つけるね」

そう言って司は三毛猫に目を向け口を開いた。 

「三毛猫ちゃんはミク、灰色のハチワレ猫ちゃんはシラタマ、茶トラの猫ちゃんはミキオ、サバトラの猫ちゃんはタイガ、黒猫ちゃんはマスク、白黒猫ちゃんはブリ、どうかな?」 

「良い名前をありがとう」

そう言って6匹の猫が司の前で人間の姿に変身した。 

「イケメンだね…そうだ」

「どうしたんですか?」

「猫ホストクラブ」

「猫ホストクラブ?」

「心にダメージを受けた人が樹海に助けを求めに来るイケメン猫ホストが心を癒しその人の新しい人生を授ける、どうかな?」 

「俺は良いと思うけど」

茶トラ猫のミキオの言葉に他の猫達も賛成した。 

「俺が猫のホストクラブを建てるから皆は助けを求める人達にここのことを教えてあげて」

「わかった」

人間姿の猫達がその場を離れていくと司は樹海に向かって話しかけた。

「樹海さん、俺に力を貸してください」

そう言って左右の手を伸ばしたその時、司の目の前に猫のホストクラブが建てられた。 

「凄い」

「ここのことを送ったぞ」

人間姿の猫達が司の元に戻ると1人の女性がやって来た。 

「すみません、ここのことを聞いてきたんですが」

「皆、お願い」

「どうぞ中へ」

人間姿の猫達は女性を猫のホストクラブの中に案内し女性の心のダメージを聞き癒した。 

そして人間姿の猫達は女性の願いを聞き人間姿のミクが女性の唇に唇を重ね願いを叶えた。 

「あなたの願いは叶いました」

「本当ですか?」

「あなたをいじめていた者達はあなたにとって大切な友達になります」

「ありがとうございます」

「新しい人生を楽しんで」

「はい」

喜びながら出ていく女性の姿を見て人間姿の猫達は嬉しい気持ちになった。 

これをきっかけに樹海に心にダメージを受けた男性や女性が現れ社長の司はイケメン猫達の中から指名し男性や女性に出会わせ猫のホストクラブに案内させた。 

司が樹海に向かって「これからよろしく」と言って目を閉じると樹海もよろしくと言って司の髪をなびかせた。 

その後、司は目を開きやって来た女性を猫のホストクラブに案内し中に入れた。 

「……」

30分後、猫のホストクラブから嬉しそうな顔で女性が出ていき歩いていく姿を司はニコリと笑いながら見送った。 

それから月日が流れ司と6匹のイケメン猫ホスト達は田中美穂と出会う。 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...