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1. 初召喚 ここ、どこ?
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ある春の日の天気のいい日曜日。本郷志郎はずっと部屋にいるのももったいないと散歩に出かけた。
町内を一周し自宅に向かうT字路を左に曲がった。が……。
「へ?ここどこだ?」
目の前はすべて真っ白だった。まるで濃霧の中にいるような、ミルクの中にいるような、右を見ても左を見ても真っ白だった。
「なんじゃここは?」
元の道に戻ろうと回れ右をするが、道がなかった。四方八方真っ白で濃霧の中にいるような、ミルクの中にいるような……とさっきと同じことを考えてしまう本郷志郎。とにかく真っ白な中に迷い込んだようだった。
「どうしよう」
腕組みをして考えるが何も思いつかない。と、その時微かに物音が聞こえた。
「なんだ?」
音がした方に顔を向けると志郎はゆっくりと歩きだした。そして十数歩いったところで、見慣れた物にぶつかった。。
「襖……だよな。なんでこんなとこに襖が……。ま、まあいいか。開けてみるか」
と志郎は何も考えずその襖をポスポスと叩いた。
「あの、誰かいる?開けますよ」
そう言いながら襖を開くと、そこは部屋だった。
「居間……?」
壁には大きな文字のカレンダー、その横にはきれいな花の額が飾られていた。そして部屋の角には液晶の薄型テレビ。中からは♪キンコーンカーン♪という鐘の音と『合格でーす!』という声が聞こえた。そして部屋の真ん中には女が座っていた。
年の頃は二十代半ばか。輝くほどの金色の髪、緑の瞳に白い肌。そんなとても美しい女性が座っていた。
志郎はその光景に一瞬固まったがボソッとつぶやいた。
「な、なんで女の人がいるんだ?……それも全裸で……」
そう、その女性は全裸だった。一糸まとわぬすっぽんぽんで座っている。
「何か呑んでるし……、って酒かあれ……」
ゴツン!
ぷはぁ!」
その金髪女性は酒の入ったグラスをテーブルに置くと突然入ってきた志郎をギロリと見る。だが、我関せずと柿の種をポイと口に放り込むと再びグラスを傾けた。
「昼間っから酒呑んでるし。……あ、あの……」
女性は少し身体を揺らすと足の向きを変えて胡坐をかいた。
「うわっ、丸見え」
女性の前のテーブルはなんと透明だった。ガラスかアクリルか何かはわからないが、透明な板でできてるようで下半身が丸見えだ。それなのに胡坐をかいたので、いろいろと大変な景色が一望できてしまっている。
「お、おい!あ、足をどうにかしろって。丸見えだぞ、おい!」
「ん~、そう~」
と言って再びグラスを傾けてゴクゴクと喉を鳴らして酒を呑む。
「んはははは。ふみゃ~」
と奇妙な声を出し今度は片膝を立てて志郎を見るとニやりとする。
「わ、わわわわわ!おいおいおい、何してんだよ。さっきより見えすぎだって。お、おい!具が見えそうだから足閉じろ!」
あわてる志郎。
「きゃはははははは!」
金髪女性は志郎を指差して大笑いをする。
「ふう。仕方ない。失礼しました」
と回れ右をして襖に手をかけた。
「あっ!ちょっと、ちょっと待ってちょっと待って!行っちゃいやん!」
そう聞こえたかと思ったら志郎はくるっと反転し透明のテーブルに向かって座らされた。それも正座で。
「な、何が起こった?。今俺引っ張られて……」
透き通ったガラスのようなテーブルを挟み女性の向かいに正座している志郎。
「きゃはははは!」
何が面白いのか大笑いをする金髪全裸女。
「ふう。なんだろこの女は?まあ、酔っ払いの行動は読めんからなあ」
と仕方なく力を抜いてキチンと座りなおす志郎。
「ねえねえねえ、あんたさ、異世界行く?」
「は?」
突然の質問に答えられるはずもなく目の前のすっぽんぽん金髪女性を見つめた。
「きゃはは。そうよねえ、急にいわれてもわかんないわよねえ。あはははは」
笑ながらまた柿の種を小さな口に放り込み酒を一口。
「食べる?」
小さな掌に残った柿の種を志郎に差し出すとコテンと首を傾げる。
「いらんわ!それより、どういうことなんだ?異世界?それにここはどこで俺はなぜここにいるのか。わかるか?というより教えろ?わかってんだろ!」
なるべく首から下は見ないようにしてその緑の瞳を見つめて尋ねた。
「うーん。あのねえ、教えてあげるけど。でも、拒否権は無いんだけどいい?」
「ないのか?!……まあ、いい。教えてくれ」
「オッケー!」
といって話出した。
志郎のいる世界とは別の世界で勇者召喚の儀が行われた。その世界は人族対魔族で長年戦をしているらしい。これまで二国の力は拮抗していたがここ数年前に魔族に魔王が降臨したのだという。それから押される人族。
そこで人族は異世界から勇者を召喚し魔王を倒してもらおうと儀式を行った。そしてその白羽の矢が志郎に立ったのだと言う。
「でね、その儀式のお願いがあたしに届いたってわけなのよ。うぃっ!」
とまた酒を一口。
「な、なんじゃそりゃ?迷惑な話だな。なんで見ず知らずの国を俺が助けにゃならんのだ?それに俺には魔王を倒せるような力はないぞ。わかってんのかあんた」
とへらへらしている目の前の金髪素っ裸女を見る。
「それになんであんたが儀式の願いを叶えにゃならんのだ?」
と緑の瞳だけを見て尋ねる志郎。
「うい~っぷ。それはねえ、それはねえ、それは……。クー」
「寝るな!」
「ひゃい!あ、あはは。えと、それはねえ、あたしがねえ、神様だからなのよねえ」
あはははと笑うとまたまた酒を今度はゴクゴク。
「神様?ということはあんた、まさか女神様ってことなのか?」
「そうでーす。あたしはぁ、女神ぃ様ぁなーんですぅ~。とーっても美しくってぇ、セクシーでぇ、はち切れそうなボインボインの女神様なーのでーすぅ」
どうだ!と言って自己申告の通り巨大な胸を持ち上げて志郎に見せつけるエロ女神。
「はあ……。なんて女神だ。酔いどれ女神でエロいとは。そんな女神に召喚の願いが届いたなんて」
と頭を抱えて下を向いた。
「わっ、ヤバッ!」
あわてて顔を上げる。下を向いたら立膝で丸見えの御神体が目に入ってしまった。
「で、で、で、行ってくれるよね異世界」
と顔を近づける女神。
「うわっ、酒臭っ!で、でもい、嫌なんだけど。でもさっき言ってたよな、拒否権無いって?」
「そーでーす。言うこと聞いてくれないとずーっとここであたしといることになるよぉ!あたしはいいんだけどぉ。ここんとこ長いことご無沙汰だしぃ」
と赤い顔で志郎の下半身を見つめる女神。
「あはっ!盛り上がってるぅ」
とニコニコ。
「み、見るな!」
と両手で隠す志郎。
「わ、わかったよ。行けば、行けばいいんだろ。でも、さっきも言ったけど俺、力なんてないぞ」
「それはだーいじょーぶ!力あげるから!」
とその前にこれ見てとテーブルに紙を拡げた。それは今から行く異世界の地図だった。
「えとね、ここに行ってもらうから」
笑ってしまうほど見事な正三角形の大きな島をトントンと指先で叩いた。
「はは、なんか漫画に出てきそうな形の島だな」
と笑う志郎。
「そうでしょ。で、ここはね、えーと、えーと、何だったかなあ」
と首を捻る。
「カンダールじゃないのか?」
「あっ、そうそう、カンダールだカンダール。よく知ってるねぇ」
とうれしそうだ。
「ここに国名が書いてある。それもカタカナで」
「あっ、ほんとだぁ!あははは」
と言ってまたまた酒を飲む女神。首元まで真っ赤だ。
「大丈夫か女神様?」
「大丈夫よぉ。それよりあなたに力あげるからねぇ。あなたに……ってあなた名前はなんて言うの?あたしはねあたしはねターシアって言うの。覚えててねぇ」
と言うとパチパチとまばたきをした。
「うっ、可愛いかも」
「あはん!そんなぁ、正直ねえ。お姉さんうれしいぃ!」
と言って再び酒をゴクン。
「でもあんまり酒呑みは好みじゃない。まあ、俺がそれほど呑めないってのもあるけどな」
「あら、そうなの。それじゃ自重しないとかなあ」
と少し寂しそうなターシァ。
「あ、あはは、ま、まああんまりのみすぎるなよな。で、えと、俺は志郎、本郷志郎」
「そうシローね。お~ぼえったっと。んじゃ力上げるね」
と言うと志郎の横に瞬間移動した。
「うわっ!」
女神ターシァは志郎に真横から抱き着くとその巨大な胸の間に志郎の腕を挟みこんだ。ついでに手首をそのムチムチの太ももで挟んだのだった。
「ちょっ……」
全裸の女神に抱き着かれてドギマギする志郎。腕には柔らかな感触と、手首にはちょっとチクチク感が……。
「黙ってて。今からあなたに、シローに力上げるから」
そう耳元で囁くといきなり志郎の頭を抱え込んだ。そして抵抗する間をおかせずその唇に自分の口を押し付けた。
ブッチュウウウウウウ!
「ぶごっ!」
「ジュルジュルジュル!」
まるで吸い付いているようだが女神ターシァは志郎の口の中へと力を注ぎ込んでいるのだ。
「ぷはぁ~」
ターシァが離れたのは十分後だった。その顔は上記しうっとりとしていた。
「く、苦しかったぁ。それに酒臭っ。おえっ!」
と志郎は口を押え対照的に青い顔をしていた。
「これでぇ、力を与えられましたぁ。ふう。久しぶりでよかったわぁ」
とペロッと唇を舐めるターシァ。
「さて、そろそろカンダールに行ってもらうわねぇ。早く来てぇってお願いの祈りがビンビン感じてるからぁ」
とテーブルに拡げた地図をトントン叩く。
「で、どうやってそこに行くんだ?」
と志郎。
「ふふーん。あたしが転送するのでーす」
と言って大きな胸を張る。
「やっぱりでかい。それにやっぱりエロ女神だなこりゃ」
「あはん。エロ女神だなんてぇ。うれしい~!」
「こ、こいすMか?」
くねくねと身もだえをして志郎をチラチラ見る女神ターシァ。
「さあ、するなら早くしてくれ」
「んもう。せっかちねえ。そんなんじゃ女を満足させられないぞぉ」
と再び片膝を立てる。
「だーかーらー、その格好やめんかい!」
「んもう。シローのいけずぅ」
「……ふう。いいから早くしてくれ。俺は早く解決して元の世界に戻りたいし」
とジト目で睨む。
「わかったわかった。んじゃ転送しまーす」
酒を一口呑んでシローの額にその細い指を充てる。するとその指が白く光った。そしてその光った指をテーブルに拡げた地図の上、目的の国カンダールの上にトンッと置こうとしたが、その時。
「ふぇっくちょん!ずずっ」
大きなくしゃみをして目的の国カンダールをかなりはずれ海のど真ん中にその指を追い手しまった。
「あっ……!間違えちゃった。あははは」
と赤い舌をペロッと出した。
「へ……?う、うわぁぁぁぁぁ!」
志郎は全身を白い光に包まれると、女神ターシァの目の前から消えた。
「……。さてと、お茶碗でも洗おっかなぁ。フンフンフーン」
ターシァは鼻歌を歌いながらキッチンに向かった。
町内を一周し自宅に向かうT字路を左に曲がった。が……。
「へ?ここどこだ?」
目の前はすべて真っ白だった。まるで濃霧の中にいるような、ミルクの中にいるような、右を見ても左を見ても真っ白だった。
「なんじゃここは?」
元の道に戻ろうと回れ右をするが、道がなかった。四方八方真っ白で濃霧の中にいるような、ミルクの中にいるような……とさっきと同じことを考えてしまう本郷志郎。とにかく真っ白な中に迷い込んだようだった。
「どうしよう」
腕組みをして考えるが何も思いつかない。と、その時微かに物音が聞こえた。
「なんだ?」
音がした方に顔を向けると志郎はゆっくりと歩きだした。そして十数歩いったところで、見慣れた物にぶつかった。。
「襖……だよな。なんでこんなとこに襖が……。ま、まあいいか。開けてみるか」
と志郎は何も考えずその襖をポスポスと叩いた。
「あの、誰かいる?開けますよ」
そう言いながら襖を開くと、そこは部屋だった。
「居間……?」
壁には大きな文字のカレンダー、その横にはきれいな花の額が飾られていた。そして部屋の角には液晶の薄型テレビ。中からは♪キンコーンカーン♪という鐘の音と『合格でーす!』という声が聞こえた。そして部屋の真ん中には女が座っていた。
年の頃は二十代半ばか。輝くほどの金色の髪、緑の瞳に白い肌。そんなとても美しい女性が座っていた。
志郎はその光景に一瞬固まったがボソッとつぶやいた。
「な、なんで女の人がいるんだ?……それも全裸で……」
そう、その女性は全裸だった。一糸まとわぬすっぽんぽんで座っている。
「何か呑んでるし……、って酒かあれ……」
ゴツン!
ぷはぁ!」
その金髪女性は酒の入ったグラスをテーブルに置くと突然入ってきた志郎をギロリと見る。だが、我関せずと柿の種をポイと口に放り込むと再びグラスを傾けた。
「昼間っから酒呑んでるし。……あ、あの……」
女性は少し身体を揺らすと足の向きを変えて胡坐をかいた。
「うわっ、丸見え」
女性の前のテーブルはなんと透明だった。ガラスかアクリルか何かはわからないが、透明な板でできてるようで下半身が丸見えだ。それなのに胡坐をかいたので、いろいろと大変な景色が一望できてしまっている。
「お、おい!あ、足をどうにかしろって。丸見えだぞ、おい!」
「ん~、そう~」
と言って再びグラスを傾けてゴクゴクと喉を鳴らして酒を呑む。
「んはははは。ふみゃ~」
と奇妙な声を出し今度は片膝を立てて志郎を見るとニやりとする。
「わ、わわわわわ!おいおいおい、何してんだよ。さっきより見えすぎだって。お、おい!具が見えそうだから足閉じろ!」
あわてる志郎。
「きゃはははははは!」
金髪女性は志郎を指差して大笑いをする。
「ふう。仕方ない。失礼しました」
と回れ右をして襖に手をかけた。
「あっ!ちょっと、ちょっと待ってちょっと待って!行っちゃいやん!」
そう聞こえたかと思ったら志郎はくるっと反転し透明のテーブルに向かって座らされた。それも正座で。
「な、何が起こった?。今俺引っ張られて……」
透き通ったガラスのようなテーブルを挟み女性の向かいに正座している志郎。
「きゃはははは!」
何が面白いのか大笑いをする金髪全裸女。
「ふう。なんだろこの女は?まあ、酔っ払いの行動は読めんからなあ」
と仕方なく力を抜いてキチンと座りなおす志郎。
「ねえねえねえ、あんたさ、異世界行く?」
「は?」
突然の質問に答えられるはずもなく目の前のすっぽんぽん金髪女性を見つめた。
「きゃはは。そうよねえ、急にいわれてもわかんないわよねえ。あはははは」
笑ながらまた柿の種を小さな口に放り込み酒を一口。
「食べる?」
小さな掌に残った柿の種を志郎に差し出すとコテンと首を傾げる。
「いらんわ!それより、どういうことなんだ?異世界?それにここはどこで俺はなぜここにいるのか。わかるか?というより教えろ?わかってんだろ!」
なるべく首から下は見ないようにしてその緑の瞳を見つめて尋ねた。
「うーん。あのねえ、教えてあげるけど。でも、拒否権は無いんだけどいい?」
「ないのか?!……まあ、いい。教えてくれ」
「オッケー!」
といって話出した。
志郎のいる世界とは別の世界で勇者召喚の儀が行われた。その世界は人族対魔族で長年戦をしているらしい。これまで二国の力は拮抗していたがここ数年前に魔族に魔王が降臨したのだという。それから押される人族。
そこで人族は異世界から勇者を召喚し魔王を倒してもらおうと儀式を行った。そしてその白羽の矢が志郎に立ったのだと言う。
「でね、その儀式のお願いがあたしに届いたってわけなのよ。うぃっ!」
とまた酒を一口。
「な、なんじゃそりゃ?迷惑な話だな。なんで見ず知らずの国を俺が助けにゃならんのだ?それに俺には魔王を倒せるような力はないぞ。わかってんのかあんた」
とへらへらしている目の前の金髪素っ裸女を見る。
「それになんであんたが儀式の願いを叶えにゃならんのだ?」
と緑の瞳だけを見て尋ねる志郎。
「うい~っぷ。それはねえ、それはねえ、それは……。クー」
「寝るな!」
「ひゃい!あ、あはは。えと、それはねえ、あたしがねえ、神様だからなのよねえ」
あはははと笑うとまたまた酒を今度はゴクゴク。
「神様?ということはあんた、まさか女神様ってことなのか?」
「そうでーす。あたしはぁ、女神ぃ様ぁなーんですぅ~。とーっても美しくってぇ、セクシーでぇ、はち切れそうなボインボインの女神様なーのでーすぅ」
どうだ!と言って自己申告の通り巨大な胸を持ち上げて志郎に見せつけるエロ女神。
「はあ……。なんて女神だ。酔いどれ女神でエロいとは。そんな女神に召喚の願いが届いたなんて」
と頭を抱えて下を向いた。
「わっ、ヤバッ!」
あわてて顔を上げる。下を向いたら立膝で丸見えの御神体が目に入ってしまった。
「で、で、で、行ってくれるよね異世界」
と顔を近づける女神。
「うわっ、酒臭っ!で、でもい、嫌なんだけど。でもさっき言ってたよな、拒否権無いって?」
「そーでーす。言うこと聞いてくれないとずーっとここであたしといることになるよぉ!あたしはいいんだけどぉ。ここんとこ長いことご無沙汰だしぃ」
と赤い顔で志郎の下半身を見つめる女神。
「あはっ!盛り上がってるぅ」
とニコニコ。
「み、見るな!」
と両手で隠す志郎。
「わ、わかったよ。行けば、行けばいいんだろ。でも、さっきも言ったけど俺、力なんてないぞ」
「それはだーいじょーぶ!力あげるから!」
とその前にこれ見てとテーブルに紙を拡げた。それは今から行く異世界の地図だった。
「えとね、ここに行ってもらうから」
笑ってしまうほど見事な正三角形の大きな島をトントンと指先で叩いた。
「はは、なんか漫画に出てきそうな形の島だな」
と笑う志郎。
「そうでしょ。で、ここはね、えーと、えーと、何だったかなあ」
と首を捻る。
「カンダールじゃないのか?」
「あっ、そうそう、カンダールだカンダール。よく知ってるねぇ」
とうれしそうだ。
「ここに国名が書いてある。それもカタカナで」
「あっ、ほんとだぁ!あははは」
と言ってまたまた酒を飲む女神。首元まで真っ赤だ。
「大丈夫か女神様?」
「大丈夫よぉ。それよりあなたに力あげるからねぇ。あなたに……ってあなた名前はなんて言うの?あたしはねあたしはねターシアって言うの。覚えててねぇ」
と言うとパチパチとまばたきをした。
「うっ、可愛いかも」
「あはん!そんなぁ、正直ねえ。お姉さんうれしいぃ!」
と言って再び酒をゴクン。
「でもあんまり酒呑みは好みじゃない。まあ、俺がそれほど呑めないってのもあるけどな」
「あら、そうなの。それじゃ自重しないとかなあ」
と少し寂しそうなターシァ。
「あ、あはは、ま、まああんまりのみすぎるなよな。で、えと、俺は志郎、本郷志郎」
「そうシローね。お~ぼえったっと。んじゃ力上げるね」
と言うと志郎の横に瞬間移動した。
「うわっ!」
女神ターシァは志郎に真横から抱き着くとその巨大な胸の間に志郎の腕を挟みこんだ。ついでに手首をそのムチムチの太ももで挟んだのだった。
「ちょっ……」
全裸の女神に抱き着かれてドギマギする志郎。腕には柔らかな感触と、手首にはちょっとチクチク感が……。
「黙ってて。今からあなたに、シローに力上げるから」
そう耳元で囁くといきなり志郎の頭を抱え込んだ。そして抵抗する間をおかせずその唇に自分の口を押し付けた。
ブッチュウウウウウウ!
「ぶごっ!」
「ジュルジュルジュル!」
まるで吸い付いているようだが女神ターシァは志郎の口の中へと力を注ぎ込んでいるのだ。
「ぷはぁ~」
ターシァが離れたのは十分後だった。その顔は上記しうっとりとしていた。
「く、苦しかったぁ。それに酒臭っ。おえっ!」
と志郎は口を押え対照的に青い顔をしていた。
「これでぇ、力を与えられましたぁ。ふう。久しぶりでよかったわぁ」
とペロッと唇を舐めるターシァ。
「さて、そろそろカンダールに行ってもらうわねぇ。早く来てぇってお願いの祈りがビンビン感じてるからぁ」
とテーブルに拡げた地図をトントン叩く。
「で、どうやってそこに行くんだ?」
と志郎。
「ふふーん。あたしが転送するのでーす」
と言って大きな胸を張る。
「やっぱりでかい。それにやっぱりエロ女神だなこりゃ」
「あはん。エロ女神だなんてぇ。うれしい~!」
「こ、こいすMか?」
くねくねと身もだえをして志郎をチラチラ見る女神ターシァ。
「さあ、するなら早くしてくれ」
「んもう。せっかちねえ。そんなんじゃ女を満足させられないぞぉ」
と再び片膝を立てる。
「だーかーらー、その格好やめんかい!」
「んもう。シローのいけずぅ」
「……ふう。いいから早くしてくれ。俺は早く解決して元の世界に戻りたいし」
とジト目で睨む。
「わかったわかった。んじゃ転送しまーす」
酒を一口呑んでシローの額にその細い指を充てる。するとその指が白く光った。そしてその光った指をテーブルに拡げた地図の上、目的の国カンダールの上にトンッと置こうとしたが、その時。
「ふぇっくちょん!ずずっ」
大きなくしゃみをして目的の国カンダールをかなりはずれ海のど真ん中にその指を追い手しまった。
「あっ……!間違えちゃった。あははは」
と赤い舌をペロッと出した。
「へ……?う、うわぁぁぁぁぁ!」
志郎は全身を白い光に包まれると、女神ターシァの目の前から消えた。
「……。さてと、お茶碗でも洗おっかなぁ。フンフンフーン」
ターシァは鼻歌を歌いながらキッチンに向かった。
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眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
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