召喚召喚、また召喚

アデュスタム

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 ガランガランと鈴を鳴らし賽銭をあげた二人はパンパンと手を合わせ願いをした。
「あれ?」
 ふとターシァの方を見た志郎はその身体がほんのりと光っているのに気が付いた。
「お、おいターシァ。お前なんか光ってないか?大丈夫なのか?」
 と周囲を見渡すが誰も気づいていないようだった。
「ん?ああ、シローには見えてるのね。安心して他の人には見えてないから。それよりちょっとあたしと来てくれる」
 そう言って志郎の手を掴むと人込みから離れ神社の奥の方に向かったのだった。
「お、おいターシァ?」
 社殿を回り込み細い道をズンズン入って行くターシァに引っ張られる志郎。
「おい、おいって、どこ行くんだよ。この先には何にもないぞ」
「わかってるわよ。っていってるうちに着いたわよ」

 着いたところは小さな広場だった。
「お初にお目にかかります女神様。わたくし当神社に祀られております狐のスズと申します。以後お見知りおきを」
 そう言って深々と頭を下げているのは頭の上にキツネ耳をピョコンと立てた女性だ。短い草の上に正座をして少し緊張気味にターシァと志郎を見上げていた。
「こっちこそよろしくねスズ。あたしは召喚の女神ターシァ。わざわざ呼び出して悪かったわね」
「いえ、お気になさらず。でも、わたくしのような末席の神に何用でございますでしょうか女神ターシァ様?」
 再び叩頭する狐のスズ。
「お、おいターシァ。この人は……、もしかして……」
「そうよ。この神社の御祭神ごさいじん。さっきちょっと出てきてあたしと話してくれないかって聞いてたのよ。そしたらオッケーしてくれてさ」
「そ、そうなんだ……。ここの神社はキツネが祀られてるって聞いてたけど本当だったんだ」
 ニコリと微笑むスズを見て呆ける志郎。
「あの、その方は?見覚えがあるのですが」
 とスズ。
「そうなんだ見覚えあるなら話が早い。この人はねシロー、あたしの大事な人よ。実はね……」
 志郎が子供の頃からこの神社でよく遊んだことや、志郎が自分の召喚の仕事を手伝ってくれてることなどを話しした。
「そうなんですか。道理で見覚えがあったのですね。それも今は女神ターシァ様のお手伝いをされてるとは。すごいですシロー様」
 と羨望の眼差しで志郎を見つめるスズ。
「ま、まあな……」
「それでさ、悪いんだけどシローがこっちの世界にいるときには守護してほしいんだけど。いいかしら?」
 それに驚いたのは志郎だった。
「おいターシァ、それってどういうことだよ」
「ん?言ったとおりのことよ。あたしの大事なシローにもしものことがあったらいけないから。ただそれだけよ。ねえ、いいかしらスズ」
 少し驚いているスズを見つめるターシァ。
「はい!お任せください。わたくしの妖力を駆使しシロー様を災いから守護いたします。ご安心ください!」
 と頭を下げるスズ。
「お、おいお前!それでいいのか?俺みたいなただの一般人を神社の神様が主語するだなんてこと」
「問題ありません。よろしくお願いします」
 とニコリと微笑む妖狐スズだった。

 初詣も終わり神社の屋台で買ってきた焼きそばとお好み焼きとベビーカステラと綿菓子と射的でゲットしたクマさんのぬいぐるみを持って志郎のマンションに戻ってきた二人。それらをたいらげるとターシァはそろそろ帰るわねと言った。
「もう還るのか?」
「うん。ありがとうシロー、とても楽しかったわ」
「あ、うん俺もだ。また遊びに来いよな」
 そしてターシァは志郎の傍まで近づくと横からギュッと抱き着いた。
「お、おい」
「ありがとシロー」
 そう言ってシローの頬にチュッとキスをした。
「ターシァ」
「それじゃシロー、還るわね」
「ああ」
 クマさんのぬいぐるみを抱えたターシァの身体が白く光ると徐々にその姿が薄くなってきた。
「シロー、また勇者の仕事よろしくね!」
「あっ、おい!ターシァそれは……」
 止めてくれと言おうとしたがその前にターシァの姿はこの世界から消えたのだった。
「あ……。そんな……。もう召喚されないって思ってたのに……。って俺が一人で思ってただけだけど……。あの様子じゃまた召喚されるだろうなあ……」
 両手で頭を抱えてどうしようと情けない顔になる志郎。
《急だけど召喚の仕事入ったわよ。こっちにきてもらうね」
 と頭の中に召喚の女神ターシァの声が響いた。
「お、おいこら!いきなりかよ!少しは休ませ……」
 文句を言い終わらないうちに志郎の姿はこの世界から消えたのだった。


 そしてそれからというもの志郎は何度も何度も何度も何度も召喚され勇者としていろいろな異世界を平和にしてきた。
「おう、キュウちゃん久しぶりだな。って俺は半年もたってないんだけどな」
「ははは、そうですか。俺たちにとっては三十年ぶりなんですけどね」
 苦笑するキュウベエ。
 志郎が初めて召喚されてからすでに三百年たっている。だが志郎にとってはまだ三年ほどしかたっていないのだ。なのでその頃に出会ったビスカやジオラ、イネリアはすでに故人となっている。だが次々と魔王を慕う魔法師や召喚師はもとより、獣人や亜人、精霊に妖精が魔王の許に集まっている。もちろん魔族や魔獣、なんとドラゴンまでもが魔王を慕い魔王とともにいろいろな世界を漫遊し悪をこらしめていたのだった。

 志郎を召喚師勇者として異世界に送り込んでいるターシァと言えば……。
「シロー、早く朝ごはん食べてちょうだい。ねえシロー、早くしないと仕事に送れるわよ。ねえってば!起きてよ!こらっ!」
 なぜか志郎のいる世界で志郎のマンションで志郎と同棲しているのだった。
「わ、わぁってるって……。そんなに怒ならなくてもいいだろうが………。スースー……、むにゃむにゃ……」
「だーかーらー!寝るな!起きろ!起きないと、むふふふ」
 ターシァは寝ている志郎の布団の中に手を入れるとゴソゴソし始めた。そして……。
「ムフフ。おはよう亀さん。やっぱり朝ね。昨夜と一緒でとても硬いわぁ。イヒヒヒヒ。ギュッ」
「……!お、おいこらターシァ!どこ触ってる!やめんかい!」
「ムフフフ。いいじゃなーい。減るもんじゃ無し。ほらほら!」
  にぎにぎ。もみもみ。さすさす。
「わ、わかったわかった起きるから!」

 志郎を擦り……、いや、叩き起こして仕事に送り出したターシァ。
「さてと、お掃除も終わったし。お仕事しよっかな。今日はどこでどんな召喚の儀をしてるかな」
 テレビのリモコンを手に取るとパチンと電源ボタンを押したのだった。

  一応《完》

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