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09 ナランハ亭の女将です
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「着いたわよヤッさん。ここがあたしたちの常宿『ナランハ亭』よ」
「いらっしゃいませ!」
中に入ると元気な声が四人を出迎えた。
「あらあらいつ帰ってきたのよ、お帰りシーディア。疲れたろ、リュウトもビルもささ、入って入って……、ん?そちらの方は?」
シーディアの肩に捕まり白い杖を持つ康人のことを尋ねた。
「ただいまナーシェさん。この人はねヤスヒトさん。で、ヤッさん、この方はここの女将さんでナーシェさん。いつもあたしたちをお世話してくださるの」
「そうなのかい。いらっしゃいませ、ヤスヒトさん。あたしはナーシェ。ここナランハ亭の女将です。よろしくお願いしますね」
「あ、はい。お世話になります。康人です」
ペコリとする康人。
「それでねナーシェさん、ヤッさんは盲目なの。昔はまあまあ見えてたらしいんだけど今はほとんど見えなくなったんだって。で、実はこのヤッさんさ、アーウイナンから戻る途中で迷子になってたのを保護したのよ。で、あたしたちで、ヤッさんを一時保護することになってさ。こうして連れてきたのよ」
「そうだったのかい。目が不自由なのにたいへんだったねえ」
「はい。でもシーチャンたちと出逢えてよかったですよ。出会えたのが変な奴らだったらと思うとぞっとします」
「そうだね、よかったねえほんと」
とうれしそうなナーシェ。
「それからねヤッさん。ナーシェさんね、とーっても美人なのよ」
と微笑む。
あらやだわぁシーディアったらぁ。ほんと正直なんだからあ」
とニコニコ。
「そうなんだ美人なんだ。見えないのが残念だ。あはは」
「ほんとにねえ。あはは」
と笑う康人とナーシェ。
「さ、みんな早く着替えて降りといで。お茶用意しとくからさ」
「ありがとうナーシェさん。それじゃみんな部屋に行くぞ」
部屋は三階で南向きの部屋だった。
いつもはリュウトとシーディアで一部屋、ビルは一人部屋だ。とりあえず今日は康人はビルと同室になった。
「はいよ、お茶どうぞ。えと、ヤスヒトさん?」
「はい、ありがとうございます女将さん」
「女将さんだなんて、うふふ。ナーシェでいいよヤスヒトさん。たぶんあまり歳変わらないだろうしさ。もしかしたらあたしの方が上かも」
「え、そうなのかな。俺五十ですよ。女将さん、ナーシェさんの方が若いんじゃないかな?」
「あらびっくりだよ。そうなのかい、五十なのかい。あたしゃ今四十五だよ。ヤスヒトさんって若く見えるんだねえ。うらやましいよ」
楽しそうに話をする二人を見てリュウトたちも微笑む。
「まあ、どっちにしてもおっさんとおばさんだけどな。ははははは」
と笑うリュウト。
「おっさん言うな!」
「おばさん言うな!」
リュウトの方を向いて拳をつくる二人。
「あははは」
と笑うシーディア。
「ほんとだな。あはははは」
ビルも笑った。
と、和気藹々で話をしているとナランハ亭に一人の客が入ってきた。
「部屋空いてるか?」
「いらっしゃい。ああ、空いてるよ。一人かい?」
「ああ」
入ってきたのは男だった。そしてその声に聞き覚えのあった康人が声をかけた。
「あれ?その声ガンマじゃないか?」
「なんだと……。あっ!ヤッさん!それに姐御さんも」
ガンマはうれしそうに康人たちのテーブルに駆け寄った。
「あらガンマじゃない。どうしたの?ってここに宿取りに来たのね」
「ああ、そうなんっす。でも姐御さんたちに会えるとは思ってなかったっす」
とまたまたうれしそうな声のガンマ。
「ヤッさん、シーディア、こいつもしかしたらさっきギルドで治療してたヤツか?」
リュウトが尋ねると二人はそうだと。
「ガンマ、この人たちはシーチャンとパーティーを組んでるリュウトとビルだ。リュウトはシーチャンの旦那さんでビルはシーチャンの弟だ」
と康人が二人を紹介する。
「そうっすか。俺はガンマ。一人で冒険者してるんでさ。さっきはヤッさんと姐御さんにやっかいなケガを治してもらいまして。今後ともよろしくっす」
ガンマはその大きな身体を二つ折りにして頭を下げた。
「おう。見てたぞ。最初はなんか因縁つけてたみたいだったけどな。ははは」
「そうそう、ヤッさんを転ばせかけてたみたいだったよな。ははは」
とリュウトとビル。
「う、うぅっ。すんません。ついむしゃくしゃしてて、八つ当たりしてしまいましたっす。ほんと申し訳なかったっす」
ペコペコと何度も頭を下げるガンマ。
「まあまあリュウトもビルも、もうそのへんで許してやってくれ。な」
と康人。
「あはは。わかってるってヤッさん。なあビル」
「おう。わかってるぜヤッさん。おいガンマ。こっちこそよろしくな」
「へい。よろしくっす」
今度はうれしそうにペコリと頭を下げた。
そして夕食の時間。
一つのテーブルを囲むのは康人たち四人とガンマだ。ガンマもここナランハ亭で宿を取ることができこうして康人たちと夕食を共にすることとなったのだった。
五人は大いに食べそして大いに飲んだ。だが康人のゲコ発言でガンマがとても残念がっていたが康人が自分と変わらないほどの大食漢だとわかると驚いていた。
「ヤッさん、その歳でよく食うっすねぇ。それに俺より身体が小さいのにどこに入るんっすかねえ?」
「そうだろ、そう思うだろガンマ。俺たちも最初びっくりしたぞ。この小さな身体のどこに入るのか俺も聞きたいぞ」
とリュウト。
「たぶんお腹のほとんどが胃なのよきっと。ねえ」
「そうだそうだ、俺もそう思うぞ。この胃袋オヤジ」
シーディアもビルも爆笑する。
「おいおい。それは言い過ぎだぞ!せめて半分くらいが胃だって言ってくれ。ってそれでもでかいな。ははは」
康人も笑った。
「そんな大食いのヤッさんにはこれを食べてもらいましょう。うちの調理人の自慢の料理よ」
とナーシェがはこんできたのは両の掌を拡げたくらいの鳥の足だった。
「うわっ、こりゃでかいぞナッちゃん!いくらなんでも食べきれないぞこれ」
と手に持たされた鳥の足をちょんちょんと左手の指先で突く康人。
「あはは。ごめんごめん。これは切ってみんなで食べるもんなんだよ。あはは」
「そっか、よかったぁ」
「んじゃあたしが切り分けてあげるからねヤッさん」
「ありがとナッちゃん」
康人とナーシェはいつの間にかヤッさんナっちゃんと呼び合うようになっていた。
あらやだ、お皿が足りないね。ちょっとルミリア、お皿一枚持ってきて」
ナーシェが奥に声をかけると「はーい」と元気な声が返ってきた。
「はい、お皿」
一枚の皿を持ってきたのはここナランハ亭の若女将。そう、ナーシェの一人娘のルミリアだった。
「ありがと。配るの手伝っておくれ」
ナーシェは慣れた手つきで特大の鳥の足を切り分ける。それをルミリアがみんなの前に配る。
「おいしそうな匂いだなこれ」
と康人。自分の前に置かれた皿からは香ばしい匂いがしている。
「おいしいですよ。私の旦那が作ったんですから。さあ、お召し上がりください」
とドヤ顔のルミリア。
「そうなんだ。それじゃいただきます」
康人は鳥肉を箸で探り当てるとグイッと摘まみ口に運んだ。
「うまい!」
「そうでしょ」
とうれしそうなルミリア。
「うん。うまいとしか表現できない俺のボキャブラリーの貧しさが悩ましいぞ」
ニコリとうれしそうな顔で次々と鳥肉を口に運ぶ康人。
「私の父がきちんとレシピを残しておいてくれたからこれだけおいしい料理ができるんですよ。でも、私の旦那の腕もいいんですけどね」
とまたまたドヤ顔のルミリア。
「おいおい。それは言い過ぎだろルミリア」
「ん?あ、ウェルク、あはは」
ルミリアの後ろから夫のウェルクがニコニコしながらテーブルに近づいてきた。
「喜んでいただいてるようでありがとうございます」
みんなに頭を下げるここナランハ亭の調理人、ルミリアの夫ウェルク。
「ああ、うまいよこれ。ほんと人を笑顔にさせる料理だなこれは。なあ、みんな」
その言葉にみんなはそうだそうだと鳥肉を頬張る。
「ルミちゃーん。エールくれぇ!」
「はーい、ちょっとお待ちくださーい」
ルミリアは別の客に変じをすると、
それじゃゆっくり食べてくださいね」
と忙しそうに厨房に向かった。
そして康人たちは腹がはち切れるほどうまい料理を堪能したのだった。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎ食後、ガンマは自室に戻った。
そして他の四人は康人とビルの部屋に集まった。
「なあ、ヤッさん。ギルドを出たあとぶつかったあの男の魂の火についてもう一度教えてくれないか」
椅子に深く座ったリュウトがベッドに座る康人に尋ねた。
「ん、ああ。あの男か。……うん、わかった」
シーディアもビルも黙って康人を見つめた。
「旅でゴブリン相手に能力を検証したり、数ヶ所の村で何人もの人の魂の火を視てきた。ゴブリンやオークとか魔物たちの魂の火は赤い火だったし、人はほとんど青白い火だった。個人差があって青い火だったりもっと白っぽ買ったりしたけど基本は青白いんだ。そして火の勢いでその人の元気さがなんとなくわかった。病気だったり体調が悪かったりしてるときには火の勢いも弱いし色も薄かったりと火の勢いとその色で元気かどうかがわかるんだ」
康人は一呼吸置いた。
「黒っぽい火はケガしてる局所的な部位に視えるんだ。今日のカノンちゃんの足のこと覚えてるか?足の指を撃ったとこが黒く視えたっていってたのを」
「ああ、うん。覚えてるわよ。グラマス、まだ痛むって言ってたわよね」
とシーディア。
「でも今日のあの男、全体的に赤黒っぽい火だった。魂の青白い火も視えたのは視えたけど、その赤黒っぽい火に覆い隠されたようにほとんど視えなかった。火の勢いも弱かったのを覚えてる。ただ体調が悪かっただけじゃないように思うんだが……。なんだったんだろうな」
康人が話終わると三人は考え込む。
「ほんと、どういうことなんだろうな。俺の頭じゃわからんな。はは」
と苦笑するビル。
「単純に考えると病かケガが身体をむしばんできてるとか」
とシーディア。
「魂の火が黒っぽいならそう考えるのが妥当だろうがな」
とリュウトも頷く。
「そうなのかな……。なんか違和感だ」
「そうね……。そんな単純なことならいいんだけど……。あたしもちょっと気になる」
シーディアは腕を組んで眉間を寄せる康人を見てそう言った。
「うーん……。ま、一応グラマスには明日報告に行ってくる」
「それがいいかもな」
とビル。
「もしカノンちゃんから呼び出しがあったら俺も行くから」
と康人。
「わかった」
と頷くリュウト。
「さて、ということでみんな、そろそろ休もうか。ヤッさんは特に疲れただろうしゆっくり休んでくれ」
とリュウト。
「あ、そうだな。ゆっくり休ませてもらうよ」
「そうしてねヤッさん。それじゃ休むとしますか」
二人がドアに向かった時、康人はにやりと黒い笑みを浮かべ一言言った。
「おやすみリュウト、シーちゃん。部屋の壁薄いから戻ったらすぐに防音の結界を張るんだぞ。なんせシーチャンの声ってよく通るからな」
というと二人の動きが停まった。そしてリュウトが振り向いた。
「あ、あはは。何言ってんだよ……、ヤッさん」
リュウトの目は泳いでいた。
「そ、そうよヤッさん。何のことかわからないけど。ね、リュウト」
あははと乾いた笑いのシーディア。
「あ……、いや……。すまん。まさか今日……、いや、あはは。さ、早く休んでくれ。な」
「あ、うん。そうするよ。なあシーディア」
「そ、そうね。あはは。それじゃヤッさんお休み。えと、ビルも……」
二人はぎこちなく部屋を出て行った。
「やっさん」
「なんだビル」
「姉さんたち、どうしたんだ?」
……え……?……きにせずもう休もうかビル」
「え?うん」
そして、ビルは自分のベッドに行くと武具の手入れを始めた。
「今日はとても忙しい日だったなヤッさん」
「ん?そうだな。なんかとても疲れたよ。うーん」
自分のベッドで仰向けになった康人。両手を挙げて伸びをする。
「あはは。そりゃそうだ。今日一日でいろんなことあったもんな。さあヤッさん、早く寝た方がいいぞ」
「ああ、そうするよ。ビルも早く寝ろよ」
「うん。手入れが終わったらすぐに寝るよ」
そんな会話をしていると康人の意識はあっという間に深い眠りに落ちたのだった。
「おはようございます、ヤッさん」
洗面所から出てきた康人に元気な声が聞こえた。
「あ、おはよう、ナッちゃん」
手を拭きながらゆっくりと廊下を部屋にもどろうとしていた康人は立ち止まり声のした方に身体を向けた。
「昨夜はよく寝られたかい?」
「ああ。ゆっくり休ませてもらったよ、ありがと」
「いえいえ。もうすぐ朝食の準備ができるからそろそろ降りてきてってみんなに言っといてくれるかい」
「わかった。それじゃ」
「あわてなくてもいいからね」
「おう」
トントントンと会談を軽やかに上がって行く康人を見上げながらつぶやく。
「あれで視えてないんだからねえ。私なら躓いて落っこちるよほんと。勘がいいんだろうねえ」
ナーシェは微笑むと厨房に戻って行った。
「で、今日の予定は?」
朝食後、ナランハ亭自慢のお茶を飲みながら今日の予定を聞く康人。
「えと、そうだな、特にはないが昨日のことをグラマスに報告するくらいかな」
とリュウト。
「あたしとビルはなんの用もないわ。よければヤッさん、この町の案内でもしよっか?」
「そうだよヤッさん。俺も暇だし姉さんと三人で町をうろうろしようぜ」
とビル。
「そうだな。それいいかもな。よろしく。で、ガンマは?」
と康人。
「俺はギルドに行ってなんか依頼がないか見てくるっす。なんかあったらそのまま出かける予定っす」
とガンマ。
「そうか。でもあんまり無理するなよ。首と肩を治したとこだからな」
「わかってるっすヤッさん。軽いものにしとくっす」
うれしそうに話をするガンマ。
と、その時ナランハ亭に誰かが入ってきた。
「いらっしゃい。あれ?」
「邪魔するぞ」
その声に康人たちがそちらを向くと胸を張って立つちっちゃなエルフがいた。
「その声は、カノンちゃん」
「あっ、よくわかったねヤッさん。そう、あたしはみんなのアイドル、グランドギルドマスターのカノンちゃんでーす!」
ぱちぱちぱちと自分で手を叩くカノン。
「軽い依頼あればいいなガンマ」
「ああ、えと、え……」
康人とカノンを交互に見て少しうろたえるガンマ。だが康人はかまわず話続ける。
「できればしばらくは町の中で雑務とかした方がいいと思うぞ。無理して身体壊したら大変だからな。身体が資本なんだしさ」
「え、まあ、えと……」
再び康人とカノンを見るガンマ。
「おい!こらっ!」
目を吊り上げて康人に近づくカノン。
「てやっ!」
「あ痛ぇ!」
頭のてっぺんを両手で押さえる康人。
「な、何するんだカノンちゃん!」
「ただチョップしただけ!それより無視しないでよ!」
「ん?ああ、あはは。おはようカノンちゃん。朝から元気だな。で、どうしたんだ?」
「んもう。まあいいか。えとね、、ヤッさんの治療院の場所が見つかったよ」
「「えっ!もう見つかったのか!」」
康人とリュウトたちが驚いた。
「そだよ。私頑張ったんだから」
とカノンは胸を張りドヤ顔。
「ありがとうカノンちゃん。俺うれしいぞ」
とカノンに手を伸ばす。それを掴むカノン。
「ありがとうなカノンちゃん」
「えへへ。どういたしまして」
と少し赤い顔。
「ううっ!キュン!」
とシーディア。
「「ん?」」
とシーディアを見る三人の男は首をひねった。
「それじゃさっそくそこに行ってみようかヤッさん。私が連れてってあげるからね」
とカノン。
「ああ。行こう。連れてってくれ」
「うん!」
「それじゃナっちゃん、ちょっと出てくる」
「はいよ。気をつけてね」
ナーシェは康人たちを見送るために玄関の外まで出てきて康人の肩をポンと叩いた。
「それじゃ行こヤッさん」
「ああ」
カノンは康人の左腕にしがみつくように右手をからめるとその小さな身体に似つかわしくない旨を押し付けて手引きする。
「おいおいカノンちゃん。わりと大きな胸が腕に当たってるぞ。なかなかいい感触だけどちょっと歩きにくいんだが……」
といいながらニヤケる康人。
「サービスサービス。まあ気にしない気にしない」
鼻歌交じりに康人を手引きするカノン。
「どうなってんのよグラマス。鬼神と呼ばれた人がねえ……」
ナーシェは康人にぶらさがるように歩くカノンを見て首をひねる。
「うふふふふ」
二人のあとについて歩くシーディアはなぜか楽しそうだ。
「さあ、着いたよヤッさん」
「へ?着いた?ナランハ亭を出て二十歩も歩いてないぞ」
「うん。ナランハ亭のお隣だから」
「……」
あっけにとられる康人たち。
「あはははは」
みんなを見送りに出たナーシェは大笑いをしていた。
入った家は二階建で、。玄関を入るとまっすぐ廊下が続き左側に部屋が一部屋あった。廊下の先の引き戸を開けると十二,三畳ほどの広い部屋。そしてそのまた奥にはキッチンのようで竈やテーブルなどがあった。
その厨房の左側には庭に出る扉がありその庭には井戸と風呂まであった。
「なかなか広そうな家だな」
「そうでしょ。私、頑張ったもん」
と康人の腕をつかむ手に少し力が入る。
「カノンちゃん、またまた巨乳が……」
「うれしい?」
「はい、とても。……じゃなくてだな」
「あはは」
カノンはそう笑うと手を離して康人を見上げる。
「どうヤッさんこの家、いいと思うんだけど。二階にも部屋があるしここで暮らせるよ」
「ああ。いいと思う。いろいろありがとな」
すぐ横にいるカノンの頭をクシャクシャと撫でた。
「よかったわねヤッさん」
とシーディア。
「この家でいいとして、治療院にするには何がいるのか教えてくれ。いろいろと買い揃えないといけないだろ」
とリュウト。
「それにここで住むんだから生活用品もいるだろ」
とビル。
「ベッドとか椅子とか、そのほかいろいろいるな。生活用品も一から用意しないといけないし。たくさん金がいる。カノンちゃん、たくさん借金しそうだ」
と苦笑する康人。
「いいって。利子もいらないしある時払いでかまわないよ」
「ありがとう。最初は少し甘えさせてもらうけど、軌道に乗ったらきちんと返済するから」
「うん。あせらないでいいからね」
と笑うカノン。
そしてそれからが大変だった。
買い物ならオッティー商店だと康人はシーディアを伴い店に向かった。ちなみにカノンはグラマスとしての雑務があるのだとギルドに帰っていった。リュウトも昨日の話をするためにカノンに同行する。
そしてビルはナランハ亭のナーシェとルミリアの手を借りて家の掃除をした。
「いらっしゃいませ!」
中に入ると元気な声が四人を出迎えた。
「あらあらいつ帰ってきたのよ、お帰りシーディア。疲れたろ、リュウトもビルもささ、入って入って……、ん?そちらの方は?」
シーディアの肩に捕まり白い杖を持つ康人のことを尋ねた。
「ただいまナーシェさん。この人はねヤスヒトさん。で、ヤッさん、この方はここの女将さんでナーシェさん。いつもあたしたちをお世話してくださるの」
「そうなのかい。いらっしゃいませ、ヤスヒトさん。あたしはナーシェ。ここナランハ亭の女将です。よろしくお願いしますね」
「あ、はい。お世話になります。康人です」
ペコリとする康人。
「それでねナーシェさん、ヤッさんは盲目なの。昔はまあまあ見えてたらしいんだけど今はほとんど見えなくなったんだって。で、実はこのヤッさんさ、アーウイナンから戻る途中で迷子になってたのを保護したのよ。で、あたしたちで、ヤッさんを一時保護することになってさ。こうして連れてきたのよ」
「そうだったのかい。目が不自由なのにたいへんだったねえ」
「はい。でもシーチャンたちと出逢えてよかったですよ。出会えたのが変な奴らだったらと思うとぞっとします」
「そうだね、よかったねえほんと」
とうれしそうなナーシェ。
「それからねヤッさん。ナーシェさんね、とーっても美人なのよ」
と微笑む。
あらやだわぁシーディアったらぁ。ほんと正直なんだからあ」
とニコニコ。
「そうなんだ美人なんだ。見えないのが残念だ。あはは」
「ほんとにねえ。あはは」
と笑う康人とナーシェ。
「さ、みんな早く着替えて降りといで。お茶用意しとくからさ」
「ありがとうナーシェさん。それじゃみんな部屋に行くぞ」
部屋は三階で南向きの部屋だった。
いつもはリュウトとシーディアで一部屋、ビルは一人部屋だ。とりあえず今日は康人はビルと同室になった。
「はいよ、お茶どうぞ。えと、ヤスヒトさん?」
「はい、ありがとうございます女将さん」
「女将さんだなんて、うふふ。ナーシェでいいよヤスヒトさん。たぶんあまり歳変わらないだろうしさ。もしかしたらあたしの方が上かも」
「え、そうなのかな。俺五十ですよ。女将さん、ナーシェさんの方が若いんじゃないかな?」
「あらびっくりだよ。そうなのかい、五十なのかい。あたしゃ今四十五だよ。ヤスヒトさんって若く見えるんだねえ。うらやましいよ」
楽しそうに話をする二人を見てリュウトたちも微笑む。
「まあ、どっちにしてもおっさんとおばさんだけどな。ははははは」
と笑うリュウト。
「おっさん言うな!」
「おばさん言うな!」
リュウトの方を向いて拳をつくる二人。
「あははは」
と笑うシーディア。
「ほんとだな。あはははは」
ビルも笑った。
と、和気藹々で話をしているとナランハ亭に一人の客が入ってきた。
「部屋空いてるか?」
「いらっしゃい。ああ、空いてるよ。一人かい?」
「ああ」
入ってきたのは男だった。そしてその声に聞き覚えのあった康人が声をかけた。
「あれ?その声ガンマじゃないか?」
「なんだと……。あっ!ヤッさん!それに姐御さんも」
ガンマはうれしそうに康人たちのテーブルに駆け寄った。
「あらガンマじゃない。どうしたの?ってここに宿取りに来たのね」
「ああ、そうなんっす。でも姐御さんたちに会えるとは思ってなかったっす」
とまたまたうれしそうな声のガンマ。
「ヤッさん、シーディア、こいつもしかしたらさっきギルドで治療してたヤツか?」
リュウトが尋ねると二人はそうだと。
「ガンマ、この人たちはシーチャンとパーティーを組んでるリュウトとビルだ。リュウトはシーチャンの旦那さんでビルはシーチャンの弟だ」
と康人が二人を紹介する。
「そうっすか。俺はガンマ。一人で冒険者してるんでさ。さっきはヤッさんと姐御さんにやっかいなケガを治してもらいまして。今後ともよろしくっす」
ガンマはその大きな身体を二つ折りにして頭を下げた。
「おう。見てたぞ。最初はなんか因縁つけてたみたいだったけどな。ははは」
「そうそう、ヤッさんを転ばせかけてたみたいだったよな。ははは」
とリュウトとビル。
「う、うぅっ。すんません。ついむしゃくしゃしてて、八つ当たりしてしまいましたっす。ほんと申し訳なかったっす」
ペコペコと何度も頭を下げるガンマ。
「まあまあリュウトもビルも、もうそのへんで許してやってくれ。な」
と康人。
「あはは。わかってるってヤッさん。なあビル」
「おう。わかってるぜヤッさん。おいガンマ。こっちこそよろしくな」
「へい。よろしくっす」
今度はうれしそうにペコリと頭を下げた。
そして夕食の時間。
一つのテーブルを囲むのは康人たち四人とガンマだ。ガンマもここナランハ亭で宿を取ることができこうして康人たちと夕食を共にすることとなったのだった。
五人は大いに食べそして大いに飲んだ。だが康人のゲコ発言でガンマがとても残念がっていたが康人が自分と変わらないほどの大食漢だとわかると驚いていた。
「ヤッさん、その歳でよく食うっすねぇ。それに俺より身体が小さいのにどこに入るんっすかねえ?」
「そうだろ、そう思うだろガンマ。俺たちも最初びっくりしたぞ。この小さな身体のどこに入るのか俺も聞きたいぞ」
とリュウト。
「たぶんお腹のほとんどが胃なのよきっと。ねえ」
「そうだそうだ、俺もそう思うぞ。この胃袋オヤジ」
シーディアもビルも爆笑する。
「おいおい。それは言い過ぎだぞ!せめて半分くらいが胃だって言ってくれ。ってそれでもでかいな。ははは」
康人も笑った。
「そんな大食いのヤッさんにはこれを食べてもらいましょう。うちの調理人の自慢の料理よ」
とナーシェがはこんできたのは両の掌を拡げたくらいの鳥の足だった。
「うわっ、こりゃでかいぞナッちゃん!いくらなんでも食べきれないぞこれ」
と手に持たされた鳥の足をちょんちょんと左手の指先で突く康人。
「あはは。ごめんごめん。これは切ってみんなで食べるもんなんだよ。あはは」
「そっか、よかったぁ」
「んじゃあたしが切り分けてあげるからねヤッさん」
「ありがとナッちゃん」
康人とナーシェはいつの間にかヤッさんナっちゃんと呼び合うようになっていた。
あらやだ、お皿が足りないね。ちょっとルミリア、お皿一枚持ってきて」
ナーシェが奥に声をかけると「はーい」と元気な声が返ってきた。
「はい、お皿」
一枚の皿を持ってきたのはここナランハ亭の若女将。そう、ナーシェの一人娘のルミリアだった。
「ありがと。配るの手伝っておくれ」
ナーシェは慣れた手つきで特大の鳥の足を切り分ける。それをルミリアがみんなの前に配る。
「おいしそうな匂いだなこれ」
と康人。自分の前に置かれた皿からは香ばしい匂いがしている。
「おいしいですよ。私の旦那が作ったんですから。さあ、お召し上がりください」
とドヤ顔のルミリア。
「そうなんだ。それじゃいただきます」
康人は鳥肉を箸で探り当てるとグイッと摘まみ口に運んだ。
「うまい!」
「そうでしょ」
とうれしそうなルミリア。
「うん。うまいとしか表現できない俺のボキャブラリーの貧しさが悩ましいぞ」
ニコリとうれしそうな顔で次々と鳥肉を口に運ぶ康人。
「私の父がきちんとレシピを残しておいてくれたからこれだけおいしい料理ができるんですよ。でも、私の旦那の腕もいいんですけどね」
とまたまたドヤ顔のルミリア。
「おいおい。それは言い過ぎだろルミリア」
「ん?あ、ウェルク、あはは」
ルミリアの後ろから夫のウェルクがニコニコしながらテーブルに近づいてきた。
「喜んでいただいてるようでありがとうございます」
みんなに頭を下げるここナランハ亭の調理人、ルミリアの夫ウェルク。
「ああ、うまいよこれ。ほんと人を笑顔にさせる料理だなこれは。なあ、みんな」
その言葉にみんなはそうだそうだと鳥肉を頬張る。
「ルミちゃーん。エールくれぇ!」
「はーい、ちょっとお待ちくださーい」
ルミリアは別の客に変じをすると、
それじゃゆっくり食べてくださいね」
と忙しそうに厨房に向かった。
そして康人たちは腹がはち切れるほどうまい料理を堪能したのだった。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎ食後、ガンマは自室に戻った。
そして他の四人は康人とビルの部屋に集まった。
「なあ、ヤッさん。ギルドを出たあとぶつかったあの男の魂の火についてもう一度教えてくれないか」
椅子に深く座ったリュウトがベッドに座る康人に尋ねた。
「ん、ああ。あの男か。……うん、わかった」
シーディアもビルも黙って康人を見つめた。
「旅でゴブリン相手に能力を検証したり、数ヶ所の村で何人もの人の魂の火を視てきた。ゴブリンやオークとか魔物たちの魂の火は赤い火だったし、人はほとんど青白い火だった。個人差があって青い火だったりもっと白っぽ買ったりしたけど基本は青白いんだ。そして火の勢いでその人の元気さがなんとなくわかった。病気だったり体調が悪かったりしてるときには火の勢いも弱いし色も薄かったりと火の勢いとその色で元気かどうかがわかるんだ」
康人は一呼吸置いた。
「黒っぽい火はケガしてる局所的な部位に視えるんだ。今日のカノンちゃんの足のこと覚えてるか?足の指を撃ったとこが黒く視えたっていってたのを」
「ああ、うん。覚えてるわよ。グラマス、まだ痛むって言ってたわよね」
とシーディア。
「でも今日のあの男、全体的に赤黒っぽい火だった。魂の青白い火も視えたのは視えたけど、その赤黒っぽい火に覆い隠されたようにほとんど視えなかった。火の勢いも弱かったのを覚えてる。ただ体調が悪かっただけじゃないように思うんだが……。なんだったんだろうな」
康人が話終わると三人は考え込む。
「ほんと、どういうことなんだろうな。俺の頭じゃわからんな。はは」
と苦笑するビル。
「単純に考えると病かケガが身体をむしばんできてるとか」
とシーディア。
「魂の火が黒っぽいならそう考えるのが妥当だろうがな」
とリュウトも頷く。
「そうなのかな……。なんか違和感だ」
「そうね……。そんな単純なことならいいんだけど……。あたしもちょっと気になる」
シーディアは腕を組んで眉間を寄せる康人を見てそう言った。
「うーん……。ま、一応グラマスには明日報告に行ってくる」
「それがいいかもな」
とビル。
「もしカノンちゃんから呼び出しがあったら俺も行くから」
と康人。
「わかった」
と頷くリュウト。
「さて、ということでみんな、そろそろ休もうか。ヤッさんは特に疲れただろうしゆっくり休んでくれ」
とリュウト。
「あ、そうだな。ゆっくり休ませてもらうよ」
「そうしてねヤッさん。それじゃ休むとしますか」
二人がドアに向かった時、康人はにやりと黒い笑みを浮かべ一言言った。
「おやすみリュウト、シーちゃん。部屋の壁薄いから戻ったらすぐに防音の結界を張るんだぞ。なんせシーチャンの声ってよく通るからな」
というと二人の動きが停まった。そしてリュウトが振り向いた。
「あ、あはは。何言ってんだよ……、ヤッさん」
リュウトの目は泳いでいた。
「そ、そうよヤッさん。何のことかわからないけど。ね、リュウト」
あははと乾いた笑いのシーディア。
「あ……、いや……。すまん。まさか今日……、いや、あはは。さ、早く休んでくれ。な」
「あ、うん。そうするよ。なあシーディア」
「そ、そうね。あはは。それじゃヤッさんお休み。えと、ビルも……」
二人はぎこちなく部屋を出て行った。
「やっさん」
「なんだビル」
「姉さんたち、どうしたんだ?」
……え……?……きにせずもう休もうかビル」
「え?うん」
そして、ビルは自分のベッドに行くと武具の手入れを始めた。
「今日はとても忙しい日だったなヤッさん」
「ん?そうだな。なんかとても疲れたよ。うーん」
自分のベッドで仰向けになった康人。両手を挙げて伸びをする。
「あはは。そりゃそうだ。今日一日でいろんなことあったもんな。さあヤッさん、早く寝た方がいいぞ」
「ああ、そうするよ。ビルも早く寝ろよ」
「うん。手入れが終わったらすぐに寝るよ」
そんな会話をしていると康人の意識はあっという間に深い眠りに落ちたのだった。
「おはようございます、ヤッさん」
洗面所から出てきた康人に元気な声が聞こえた。
「あ、おはよう、ナッちゃん」
手を拭きながらゆっくりと廊下を部屋にもどろうとしていた康人は立ち止まり声のした方に身体を向けた。
「昨夜はよく寝られたかい?」
「ああ。ゆっくり休ませてもらったよ、ありがと」
「いえいえ。もうすぐ朝食の準備ができるからそろそろ降りてきてってみんなに言っといてくれるかい」
「わかった。それじゃ」
「あわてなくてもいいからね」
「おう」
トントントンと会談を軽やかに上がって行く康人を見上げながらつぶやく。
「あれで視えてないんだからねえ。私なら躓いて落っこちるよほんと。勘がいいんだろうねえ」
ナーシェは微笑むと厨房に戻って行った。
「で、今日の予定は?」
朝食後、ナランハ亭自慢のお茶を飲みながら今日の予定を聞く康人。
「えと、そうだな、特にはないが昨日のことをグラマスに報告するくらいかな」
とリュウト。
「あたしとビルはなんの用もないわ。よければヤッさん、この町の案内でもしよっか?」
「そうだよヤッさん。俺も暇だし姉さんと三人で町をうろうろしようぜ」
とビル。
「そうだな。それいいかもな。よろしく。で、ガンマは?」
と康人。
「俺はギルドに行ってなんか依頼がないか見てくるっす。なんかあったらそのまま出かける予定っす」
とガンマ。
「そうか。でもあんまり無理するなよ。首と肩を治したとこだからな」
「わかってるっすヤッさん。軽いものにしとくっす」
うれしそうに話をするガンマ。
と、その時ナランハ亭に誰かが入ってきた。
「いらっしゃい。あれ?」
「邪魔するぞ」
その声に康人たちがそちらを向くと胸を張って立つちっちゃなエルフがいた。
「その声は、カノンちゃん」
「あっ、よくわかったねヤッさん。そう、あたしはみんなのアイドル、グランドギルドマスターのカノンちゃんでーす!」
ぱちぱちぱちと自分で手を叩くカノン。
「軽い依頼あればいいなガンマ」
「ああ、えと、え……」
康人とカノンを交互に見て少しうろたえるガンマ。だが康人はかまわず話続ける。
「できればしばらくは町の中で雑務とかした方がいいと思うぞ。無理して身体壊したら大変だからな。身体が資本なんだしさ」
「え、まあ、えと……」
再び康人とカノンを見るガンマ。
「おい!こらっ!」
目を吊り上げて康人に近づくカノン。
「てやっ!」
「あ痛ぇ!」
頭のてっぺんを両手で押さえる康人。
「な、何するんだカノンちゃん!」
「ただチョップしただけ!それより無視しないでよ!」
「ん?ああ、あはは。おはようカノンちゃん。朝から元気だな。で、どうしたんだ?」
「んもう。まあいいか。えとね、、ヤッさんの治療院の場所が見つかったよ」
「「えっ!もう見つかったのか!」」
康人とリュウトたちが驚いた。
「そだよ。私頑張ったんだから」
とカノンは胸を張りドヤ顔。
「ありがとうカノンちゃん。俺うれしいぞ」
とカノンに手を伸ばす。それを掴むカノン。
「ありがとうなカノンちゃん」
「えへへ。どういたしまして」
と少し赤い顔。
「ううっ!キュン!」
とシーディア。
「「ん?」」
とシーディアを見る三人の男は首をひねった。
「それじゃさっそくそこに行ってみようかヤッさん。私が連れてってあげるからね」
とカノン。
「ああ。行こう。連れてってくれ」
「うん!」
「それじゃナっちゃん、ちょっと出てくる」
「はいよ。気をつけてね」
ナーシェは康人たちを見送るために玄関の外まで出てきて康人の肩をポンと叩いた。
「それじゃ行こヤッさん」
「ああ」
カノンは康人の左腕にしがみつくように右手をからめるとその小さな身体に似つかわしくない旨を押し付けて手引きする。
「おいおいカノンちゃん。わりと大きな胸が腕に当たってるぞ。なかなかいい感触だけどちょっと歩きにくいんだが……」
といいながらニヤケる康人。
「サービスサービス。まあ気にしない気にしない」
鼻歌交じりに康人を手引きするカノン。
「どうなってんのよグラマス。鬼神と呼ばれた人がねえ……」
ナーシェは康人にぶらさがるように歩くカノンを見て首をひねる。
「うふふふふ」
二人のあとについて歩くシーディアはなぜか楽しそうだ。
「さあ、着いたよヤッさん」
「へ?着いた?ナランハ亭を出て二十歩も歩いてないぞ」
「うん。ナランハ亭のお隣だから」
「……」
あっけにとられる康人たち。
「あはははは」
みんなを見送りに出たナーシェは大笑いをしていた。
入った家は二階建で、。玄関を入るとまっすぐ廊下が続き左側に部屋が一部屋あった。廊下の先の引き戸を開けると十二,三畳ほどの広い部屋。そしてそのまた奥にはキッチンのようで竈やテーブルなどがあった。
その厨房の左側には庭に出る扉がありその庭には井戸と風呂まであった。
「なかなか広そうな家だな」
「そうでしょ。私、頑張ったもん」
と康人の腕をつかむ手に少し力が入る。
「カノンちゃん、またまた巨乳が……」
「うれしい?」
「はい、とても。……じゃなくてだな」
「あはは」
カノンはそう笑うと手を離して康人を見上げる。
「どうヤッさんこの家、いいと思うんだけど。二階にも部屋があるしここで暮らせるよ」
「ああ。いいと思う。いろいろありがとな」
すぐ横にいるカノンの頭をクシャクシャと撫でた。
「よかったわねヤッさん」
とシーディア。
「この家でいいとして、治療院にするには何がいるのか教えてくれ。いろいろと買い揃えないといけないだろ」
とリュウト。
「それにここで住むんだから生活用品もいるだろ」
とビル。
「ベッドとか椅子とか、そのほかいろいろいるな。生活用品も一から用意しないといけないし。たくさん金がいる。カノンちゃん、たくさん借金しそうだ」
と苦笑する康人。
「いいって。利子もいらないしある時払いでかまわないよ」
「ありがとう。最初は少し甘えさせてもらうけど、軌道に乗ったらきちんと返済するから」
「うん。あせらないでいいからね」
と笑うカノン。
そしてそれからが大変だった。
買い物ならオッティー商店だと康人はシーディアを伴い店に向かった。ちなみにカノンはグラマスとしての雑務があるのだとギルドに帰っていった。リュウトも昨日の話をするためにカノンに同行する。
そしてビルはナランハ亭のナーシェとルミリアの手を借りて家の掃除をした。
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