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変化
仮初め
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大広間にジンに伴われてからというもの、1日1回同じ時刻頃に皆で食事をするようになった。
それ以外の食事は各自好きな時間にしているようで、俺はジンの部屋で昼頃に運ばれてきた食事を一緒に食べるようになっていた。
今日はここいらの砂漠に昔からいる鳥を何かの香草と蒸したもので、肉に風味が加わり食欲を刺激した。
砂漠にいた時はただ丸焼きにするだけだったが、こういう食べ方もあったとは。
「…この前、【ネズミ】にもう手を出さないって言ってたのって本当なのか?」
恐る恐る、食事の手を止めてジンに聞いてみる。
ここに来るまでの10数年間、今まで散々こいつらに食料を奪われたりしてきたので、急にはいそうですかと信じられるものでは無い。
ここに来てひと月ほどが経つが、何の変哲もない俺のような男を"嫁"だなんて呼んで朝も夜もなく抱いているジンは、ただの気まぐれで俺を弄んでいるようにしか思えなかった。
「まだ信用出来ないか?…お前の家族や仲間を知らずに傷つけたら顔向けできないからな」
そう言うと、ジンは俺が先程まで鶏肉を掴んでいた指を口に咥えた。
油断も隙もない。
そのままわざとらしく指の間をジンの舌先が刺激する。
先程までもつれ合っていたのを真似るように、食事の最中だったのもお構い無しにゆっくりと寝具に沈められていく。
もうあの香油も必要ない程に、俺の体はジンを容易く受け入れるようになってしまっていた。
そればかりか体が快楽を覚えてしまったようで、少し用事でジンが砦を空けることがあると、もどかしささえ感じるようになっていた。
「昨夜は寂しくなかったか?」
俺の心の中を見透かしたようにジンが意地悪に問いかけてくる。
太腿を指が伝い、中心に触れそうになると別の場所へ移動する。
じれったい。
こんな感情が自分の中に芽生えた事自体驚きだが、こういう行為自体生まれてこの方したことがなかったのだから、俺も溺れてしまっているのだろうとどこか冷めた思いで切り離して見ることにしていた。
【巡回者】たちと俺たち【ネズミ】は違うと散々虐げてきたこいつらが早々変わるはずがない、と。
そうでなければ、先にこいつらに殺された仲間たちに顔向けができない。
ただ、命を取られないよう従っているフリをしていればいい。
食料を与えられている間、怒らせないように、俺はジンに体を与える。
「寂しいって言ったらどうする?」
俺は、ぎこちない仕草でジンの頭に腕を回し、引き寄せた。
ジンの双眸が見開かれ、深い緑だったことにやっと気づく。
いつも余裕なくこいつを受け入れるだけだったが、これからは違う。
少しずつ、掌にこいつを捕らえてやる。
いつか外に出る為に。
「お前からそんな言葉が聞けるとは思わなかった」
嬉しそうなジンを、擦れた感情で眺める。
少し胸が痛んだが、エリルのようにずっとここにいる気はない。
交易をしている外の世界へ出れたら。
ここで命を落とす恐怖も、巡回者たちに追い回される生活もしなくて良くなるかもしれない。
「…ジンが居なかったら俺はここで何したらいいの?」
甘えた声でこんなことを言う自分に吐き気がした。
ジンの唇が下りてきて、俺の唇を塞いだ。
それ以外の食事は各自好きな時間にしているようで、俺はジンの部屋で昼頃に運ばれてきた食事を一緒に食べるようになっていた。
今日はここいらの砂漠に昔からいる鳥を何かの香草と蒸したもので、肉に風味が加わり食欲を刺激した。
砂漠にいた時はただ丸焼きにするだけだったが、こういう食べ方もあったとは。
「…この前、【ネズミ】にもう手を出さないって言ってたのって本当なのか?」
恐る恐る、食事の手を止めてジンに聞いてみる。
ここに来るまでの10数年間、今まで散々こいつらに食料を奪われたりしてきたので、急にはいそうですかと信じられるものでは無い。
ここに来てひと月ほどが経つが、何の変哲もない俺のような男を"嫁"だなんて呼んで朝も夜もなく抱いているジンは、ただの気まぐれで俺を弄んでいるようにしか思えなかった。
「まだ信用出来ないか?…お前の家族や仲間を知らずに傷つけたら顔向けできないからな」
そう言うと、ジンは俺が先程まで鶏肉を掴んでいた指を口に咥えた。
油断も隙もない。
そのままわざとらしく指の間をジンの舌先が刺激する。
先程までもつれ合っていたのを真似るように、食事の最中だったのもお構い無しにゆっくりと寝具に沈められていく。
もうあの香油も必要ない程に、俺の体はジンを容易く受け入れるようになってしまっていた。
そればかりか体が快楽を覚えてしまったようで、少し用事でジンが砦を空けることがあると、もどかしささえ感じるようになっていた。
「昨夜は寂しくなかったか?」
俺の心の中を見透かしたようにジンが意地悪に問いかけてくる。
太腿を指が伝い、中心に触れそうになると別の場所へ移動する。
じれったい。
こんな感情が自分の中に芽生えた事自体驚きだが、こういう行為自体生まれてこの方したことがなかったのだから、俺も溺れてしまっているのだろうとどこか冷めた思いで切り離して見ることにしていた。
【巡回者】たちと俺たち【ネズミ】は違うと散々虐げてきたこいつらが早々変わるはずがない、と。
そうでなければ、先にこいつらに殺された仲間たちに顔向けができない。
ただ、命を取られないよう従っているフリをしていればいい。
食料を与えられている間、怒らせないように、俺はジンに体を与える。
「寂しいって言ったらどうする?」
俺は、ぎこちない仕草でジンの頭に腕を回し、引き寄せた。
ジンの双眸が見開かれ、深い緑だったことにやっと気づく。
いつも余裕なくこいつを受け入れるだけだったが、これからは違う。
少しずつ、掌にこいつを捕らえてやる。
いつか外に出る為に。
「お前からそんな言葉が聞けるとは思わなかった」
嬉しそうなジンを、擦れた感情で眺める。
少し胸が痛んだが、エリルのようにずっとここにいる気はない。
交易をしている外の世界へ出れたら。
ここで命を落とす恐怖も、巡回者たちに追い回される生活もしなくて良くなるかもしれない。
「…ジンが居なかったら俺はここで何したらいいの?」
甘えた声でこんなことを言う自分に吐き気がした。
ジンの唇が下りてきて、俺の唇を塞いだ。
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