7 / 12
巡回者たち
蜜月
しおりを挟む
一体何日経ったのだろう。
昼も夜もなく薄暗いランプで照らされて、ジンに体を貪られた。
あの小瓶に入った油が無くなったと思ったら、甘ったるい香りのする違う小瓶が部屋に持ってこさせられ、行為が続けられた。
終わったと思ったら甘い果物を渡され、ジンに食べるように言われるがそれ以外はほぼ抱かれたままだ。
ジンの部屋からちょっとした庭に出ることが出来、そこに体を洗う場所も設えられており、そこから砦の全体や今まで過ごしていた砂漠一帯が見渡せる。
切り立った岩山にある神殿を利用して作った砦の最奥部になっているようで、外から訪れられるものは鳥くらいしかいなかった。
ここから脱出するとしたら、命はないだろう。
「ユーリ」
寝床で重い体のまま微睡んでいると、ジンから声をかけられる。
また抱かれるのか、と半ばうんざりしながら目を開けると、いつの間にかジンは外に出かけていたようできちんと服を身につけていて、土の香りがした。
「これを着て一緒に来い」
そう言うと薄い布で出来た服を渡された。
今まで触ったことの無い、さらさらとした上質な布地だ。
「お前の日に灼けた肌と黒い髪にはこの白い布が映える」
そう言うと、銀と藍色の石が着いた耳飾りをジンが俺の耳につけた。
服を着てみたが、足元が短く太腿の真ん中ほどまでしかなく、胸元が開き、スースーして落ち着かない。
「…下着とかは…?」
「付けるな、抱きたい時すぐ抱けない」
理由がやっぱり自分勝手すぎると思いながら、諦めてジンの後ろについて部屋を出た。
今は夕方のようで、砂漠で暖められた熱気が残る風が砦の回廊に設けられた窓から抜け、淡い紫の空が覗いていた。
日が落ちると砦の中は一気に冷える。
巡回者たちが集まった砦の集会場のような広い空間にジンとともに入ると、そこには篝火が焚かれていた。
厳しいガラの悪い奴らの視線が一気に集中する。
数にして100人ほどと言ったところか。
薄暗さの中でこんな男達を見ていたら以前の俺なら卒倒していたと思う。
中に見た事のある顔が何人か居ることだけが嫌な思い出もあるもののまだ救いだった。
「よう、お前ら悪さしてねえだろうな」
ジンが用意された何かの獣の皮で出来た敷物の上に俺の手を引いて座り、奴らに声をかけた。
「ジンの言いつけ守って動物捕まえたりしかしてねえよ」
「あれはあれで疲れるがケンカの腕がなまっちまうな」
あちこちで野太い声が上がる。
言いつけとはどういう事だろうか?
「それにしてもジン、長い間お楽しみだったな」
「そんなにその細っこいのが良かったか?」
「俺はエリルにお願いしたいね」
そんなに遠くない位置に座っていたエリルが軽口を叩いていた奴を睨み付ける。
「組み敷く方で良かったらお相手しますよ」
「それはお断りだ」
下卑た笑いがあちこちで起こる。
こいつら、やはりこういうことに目がないようだ。
「お前らも仲間内で揉めないなら好きにやりな」
そう言うとエリルがジンをすごい表情で睨んだ。
「まあこいつは俺のだから。手出したヤツは容赦しないから覚えとけ」
そう言うと一瞬空気がピリッと張り詰める。
「出さねえよ、おっかねえ」
「惚気だよ、若いっていいなあ」
そう言いながらも、上下関係にはあまり厳しくないようですぐに軽口が挟まれる。
全員の手元にはよく見ると酒や肉類が置かれていて、ジンや俺にもすぐにそれらが運ばれてくる。
この食料や物資の乏しい地域でどうやってこれらを集めたのだろう?
キョロキョロと食料を見ている俺の様子に気づき、エリルが苦笑する。
「この食料が気になってるようだよ、ジン」
「何だ、欲しかったらいくらでも食べていいぞ」
「そういうことじゃないと思いますけどねぇ」
「あ?…これの入手経路か?」
こくこくと頷くと、ジンは俺を腕の中に抱き寄せ、得意げに懐にしまっていた紙を取り出した。
広げると、どうやらこの砦ーもとい元神殿の見取り図のようで何ヶ所かに○印が描かれている。
「この砦を作る時に出てきたモノの1部をな、砂漠の外のキャラバンに少し前に渡したんだが…失われた技術で作られてるとかで結構な対価が手に入ったんだ。ここら辺の気候でも生きるような家畜とかだな」
それって。
青ざめた俺を見て、すかさずエリルが頷く。
「まあ言いたいことはわかりますよ。でも、ジンがもう【ネズミ】には手を出さないって言うんです。食い扶持を稼ぐには罰当たりだろうが売れるものは売りますよ」
やっぱりか…
元々あった信仰が最近では廃れているとはいえ、神殿の財宝を食料や酒に変えやがった。
「ユーリが着てるその服と耳飾りなんか家畜10匹分位はしたんじゃないですか?」
「は!?」
「おお、12匹分だ」
信じられない。
どう考えてもこの大所帯では食料の方が大事だろう。
「これ要らないから元の服と替えて!」
青ざめる俺を見て広間にどっと笑い声が起きる。
「もらっといてやりなよ、ジンがお前さんのためにわざわざ誂えたんだぜ」
訳が分からない。
何故俺がここまで甘やかされるのか。
というより、これはジンが言うように"嫁"への愛情だというのだろうか?
記憶にうっすらと残っている俺の母親と父親は、こんな関係ではなかった。
一方的に愛を注がれるのではなく、互いに苦しい時は支え合い、ほんのささやかな事で笑いあっていた。
熟れすぎた果実から漏れる蜜のような、むせ返るような甘ったるい関係。
それでいて、俺からは離れることが出来ない。
ジンの腕の中で甘えることだけが許されているー
これは愛情と言えるのだろうか?
昼も夜もなく薄暗いランプで照らされて、ジンに体を貪られた。
あの小瓶に入った油が無くなったと思ったら、甘ったるい香りのする違う小瓶が部屋に持ってこさせられ、行為が続けられた。
終わったと思ったら甘い果物を渡され、ジンに食べるように言われるがそれ以外はほぼ抱かれたままだ。
ジンの部屋からちょっとした庭に出ることが出来、そこに体を洗う場所も設えられており、そこから砦の全体や今まで過ごしていた砂漠一帯が見渡せる。
切り立った岩山にある神殿を利用して作った砦の最奥部になっているようで、外から訪れられるものは鳥くらいしかいなかった。
ここから脱出するとしたら、命はないだろう。
「ユーリ」
寝床で重い体のまま微睡んでいると、ジンから声をかけられる。
また抱かれるのか、と半ばうんざりしながら目を開けると、いつの間にかジンは外に出かけていたようできちんと服を身につけていて、土の香りがした。
「これを着て一緒に来い」
そう言うと薄い布で出来た服を渡された。
今まで触ったことの無い、さらさらとした上質な布地だ。
「お前の日に灼けた肌と黒い髪にはこの白い布が映える」
そう言うと、銀と藍色の石が着いた耳飾りをジンが俺の耳につけた。
服を着てみたが、足元が短く太腿の真ん中ほどまでしかなく、胸元が開き、スースーして落ち着かない。
「…下着とかは…?」
「付けるな、抱きたい時すぐ抱けない」
理由がやっぱり自分勝手すぎると思いながら、諦めてジンの後ろについて部屋を出た。
今は夕方のようで、砂漠で暖められた熱気が残る風が砦の回廊に設けられた窓から抜け、淡い紫の空が覗いていた。
日が落ちると砦の中は一気に冷える。
巡回者たちが集まった砦の集会場のような広い空間にジンとともに入ると、そこには篝火が焚かれていた。
厳しいガラの悪い奴らの視線が一気に集中する。
数にして100人ほどと言ったところか。
薄暗さの中でこんな男達を見ていたら以前の俺なら卒倒していたと思う。
中に見た事のある顔が何人か居ることだけが嫌な思い出もあるもののまだ救いだった。
「よう、お前ら悪さしてねえだろうな」
ジンが用意された何かの獣の皮で出来た敷物の上に俺の手を引いて座り、奴らに声をかけた。
「ジンの言いつけ守って動物捕まえたりしかしてねえよ」
「あれはあれで疲れるがケンカの腕がなまっちまうな」
あちこちで野太い声が上がる。
言いつけとはどういう事だろうか?
「それにしてもジン、長い間お楽しみだったな」
「そんなにその細っこいのが良かったか?」
「俺はエリルにお願いしたいね」
そんなに遠くない位置に座っていたエリルが軽口を叩いていた奴を睨み付ける。
「組み敷く方で良かったらお相手しますよ」
「それはお断りだ」
下卑た笑いがあちこちで起こる。
こいつら、やはりこういうことに目がないようだ。
「お前らも仲間内で揉めないなら好きにやりな」
そう言うとエリルがジンをすごい表情で睨んだ。
「まあこいつは俺のだから。手出したヤツは容赦しないから覚えとけ」
そう言うと一瞬空気がピリッと張り詰める。
「出さねえよ、おっかねえ」
「惚気だよ、若いっていいなあ」
そう言いながらも、上下関係にはあまり厳しくないようですぐに軽口が挟まれる。
全員の手元にはよく見ると酒や肉類が置かれていて、ジンや俺にもすぐにそれらが運ばれてくる。
この食料や物資の乏しい地域でどうやってこれらを集めたのだろう?
キョロキョロと食料を見ている俺の様子に気づき、エリルが苦笑する。
「この食料が気になってるようだよ、ジン」
「何だ、欲しかったらいくらでも食べていいぞ」
「そういうことじゃないと思いますけどねぇ」
「あ?…これの入手経路か?」
こくこくと頷くと、ジンは俺を腕の中に抱き寄せ、得意げに懐にしまっていた紙を取り出した。
広げると、どうやらこの砦ーもとい元神殿の見取り図のようで何ヶ所かに○印が描かれている。
「この砦を作る時に出てきたモノの1部をな、砂漠の外のキャラバンに少し前に渡したんだが…失われた技術で作られてるとかで結構な対価が手に入ったんだ。ここら辺の気候でも生きるような家畜とかだな」
それって。
青ざめた俺を見て、すかさずエリルが頷く。
「まあ言いたいことはわかりますよ。でも、ジンがもう【ネズミ】には手を出さないって言うんです。食い扶持を稼ぐには罰当たりだろうが売れるものは売りますよ」
やっぱりか…
元々あった信仰が最近では廃れているとはいえ、神殿の財宝を食料や酒に変えやがった。
「ユーリが着てるその服と耳飾りなんか家畜10匹分位はしたんじゃないですか?」
「は!?」
「おお、12匹分だ」
信じられない。
どう考えてもこの大所帯では食料の方が大事だろう。
「これ要らないから元の服と替えて!」
青ざめる俺を見て広間にどっと笑い声が起きる。
「もらっといてやりなよ、ジンがお前さんのためにわざわざ誂えたんだぜ」
訳が分からない。
何故俺がここまで甘やかされるのか。
というより、これはジンが言うように"嫁"への愛情だというのだろうか?
記憶にうっすらと残っている俺の母親と父親は、こんな関係ではなかった。
一方的に愛を注がれるのではなく、互いに苦しい時は支え合い、ほんのささやかな事で笑いあっていた。
熟れすぎた果実から漏れる蜜のような、むせ返るような甘ったるい関係。
それでいて、俺からは離れることが出来ない。
ジンの腕の中で甘えることだけが許されているー
これは愛情と言えるのだろうか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる