【BL】王の花

春月 黒猫

文字の大きさ
2 / 33

ヴォルデ

しおりを挟む
この国の名は、ヴォルデという。
森に囲まれた小国だが、気候が穏やかで農業が盛んな為、周辺の国とも交易をし、民は飢えることも少なかった。

十年前、まだ十五歳になったばかりのランシェットは伯爵である父に連れられて王宮の庭を散策していた。

ここは歴代の王が思い思いの花や植物を植え、自ら品種開発をしていた為、領地では見たことも無い花が競うように咲き誇っていた。

先代の王より代替わりして間もない若い王にはこれからの人間が必要だ、
王も毎日私の様な老いぼれを見るよりはお前の相手をしている方が気が楽だろう

と弱々しい笑顔を浮かべ庭園の端にある蔓薔薇のアーチの陰に行き、言葉を継いだ時だった。 


「よいか?王にお会いしたら―」

「ほう、私に会ったらどうすると?」

「!!」 


アーチの最奥にあるベンチに寝ていたらしき人物は、間違いなく即位したばかりの王、フォルスト・アスタロシュ・ヴォルデその人だった。

ゆるやかな弧を描いた白銀の髪は、王家の血を濃く引いた証。
先代の王と同じと伝え聞く緑がかった深い青の瞳は人をからかう様な口調とは裏腹に聡明な光を湛えていた。

時が止まったかのように、ランシェットは息をするのも忘れて王に惹き付けられていた。


「…シェット!」



我を忘れ王の瞳に見入っていたが、父の声によって現実に引き戻された。
同時に、膝を折って前に跪いている父の姿が視界に入り、慌てて父に倣い膝を折る。



「ランシェットというのか」

「は、はい」

「幾つになる」

「じゅう…ごです」



たどたどしく、すっかり普段より精彩を欠いてしまった受け答えを聞き、父は明らかに落胆した様子だった。
これでは王の覚えもかんばしくなかろう、と自分でも思った矢先、その言葉は発せられた。 


「私の元に来い」 




これ以後、【フラム】の称号を受け、王に隣国ガズールより正妃が迎えられるまでの四年間、ランシェットは一身に王の寵愛を受けた。

少年時代の危さと成人へと変貌していく過程特有の美しさを併せ持ったランシェットは、
王ばかりでなく家臣の目をも奪うほどに成長していた。 






「んっ…ぁ、はぁ、あっ…ん…フォル、スト…っ…!」

「ランシェット…っ…!」 



ランシェットが十九歳を迎えた日の夜。
王の寝所より響くのは、ベッドの軋む音と衣擦れの音と、熱を帯び掠れた声。
朱に染まった頬、熟れた果実のような唇。
さらさらとした金色の細い髪は、月の光を浴びて淡く輝いていた。


その日は過去にないほど夜も昼もなくベッドで交わっていた為、ランシェットはベッドから起き上がることが出来ないで居た。

いつもなら限界だと訴えると手加減してくれたが、その日の王は聞き入れることなくランシェットを何度も抱いた。 


「な、んで…こんな…っ…ぁ…」


注ぎ込まれた白濁が溢れ、シルクのシーツを汚していく。 



「お前が狂おしいほどに愛しいからだ。
   …私の真の心はお前だけのものだ」






それから少しして、隣国ガズールより第一王女・アリオラ王女がフォルスト王の正妃として迎えられることが正式に決まったとランシェットは父から告げられた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

ワイ、そんな儚いやつとちゃうねん。

夜兄
BL
自給自足に踏み切ったオタクのなれ果ての作品です。 勘違い。すれ違い。めっちゃ好き! 腐向け。BLだよ?注意注意‼

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...