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房
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その後、宿屋に入ると隣合う2つの部屋に分かれて泊まることになった。
イーラの強い希望でイーラとグリゴール、ランシェットとアムリ。
護衛はそれぞれ交替すれば問題ないとのことで押し切られてしまった。
ランシェットの泊まる部屋は設えは白を基調とした部屋で、なかなか居心地が良さそうだ。
「ランシェット様、一晩ではありますが宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
改めて恭しく一礼され、久しく忘れかけていた貴族との生活を思い出す。
グリゴールも貴族ではあるが余りに砕けた言動で貴族と言うより兵士と接している感じが否めなかった。
「夕飯時までまだお時間がございますね、連日の移動でお疲れでしょう。疲れを取る我が一族秘伝のマッサージをさせて頂かせても宜しいでしょうか」
てきぱきと予め施されているベッドメイキングの上に肌触りの良い緋色の敷物を広げそう言われては、断ることは出来ない。
ランシェットは感謝の言葉を述べるとそこへ腰掛けた。
「それではまず、服の上から失礼致します」
そう言ってアムリはランシェットの服の上から体の起伏を探るようにするすると触れていった。
「ふ…っあ、…んっ…」
久々の感触にビクビクと体が反応してしまう。
自分でも思いがけない反応に、恥ずかしくなったランシェットは手で口元を覆った。
「…お気になさいませんよう。やはりお体がかなり疲れているようです。…ふふ、まだまだ気持ちよくなるのはこれからですよ?」
「これは…っ!あ、アムリ殿…少し、待っ…!」
脇腹に触れた指が急に下方へ急移動し、ランシェットの細い腰を捕らえた。
「塔生活で体力が落ちたところに慣れない乗馬で、筋肉の少ない腰に負担が掛かっているようです。早めに対処しませんと。…失礼致しますね」
抵抗する間もなく組み敷かれ、アムリの意と連動するかのように少し毛足の長い敷物がしっかりとランシェットの体を押さえる。
「力を抜いて下さいね」
「ふ、ぁあ…っ!!」
ビクリと体が跳ねる。
少しの圧迫感があり、それに伴い強い刺激が触られた箇所ごとにびりびりと体を伝っていく。
脚に触れられているのにつま先や腰の辺りまで刺激が及び、はしたない声をあげてしまう。
「ふふ、気持ちいいですか?…お疲れの証拠です。
王にお会いしたらたっぷり愛して頂くためにも、きちんとお体を柔らかくしておかねば」
イーラはアムリにいつもこのような過激なマッサージを受けているのだろうか?と、荒い息をつき少しぼんやりとした頭で考える。
それもアムリには見透かされていたようで、
「慣れてしまえばこんなものは何でもありませんよ」
とやさしく微笑みを湛えたままやり過ごされてしまった。
押し返そうと肩の辺りを押してみるがびくともしない。
イーラはただでだえ強いのにアムリはその護衛もしているのだ。
「ん、はぁ、ぁっ…」
血流が良くなってきたのがランシェット自身にも分かるようになり、日に当たらず真っ白になっていた手や足の爪先にも熱と赤みが加わってきた。
「うつ伏せになって頂けますか?」
気持ちよさになすがままになり、促されるままランシェットはごろりと身体を反転させた。
「おやおや、腰よりこちらのほうが深刻なようですね…」
「ぅ、ああっ…!?…やっ、そこはっ…!!」
「マッサージですよ」
「ぁあ…っ!!」
「ちょっと!!!」
バンッと音を立ててイーラが部屋に乗り込んできた。
「これはこれはイーラ様。
部屋に入る際はこちらではノックをとお教えしたはずですが」
「ノック無しで部屋に侵入してくるその声をまず抑えてから言いなよ!」
「はっ、あ…!大変失礼しました!」
「夜やったら承知しないからね!」
鬼の形相でイーラは怒り心頭だ。
何せ彼の自尊心は酷く傷ついていた。
グリゴールと久しぶりに甘い時間を過ごそうと寝床に雪崩込んだのも束の間、壁越しに聞こえてきたランシェットの嬌声によって、グリゴール自身が反応してしまったのだから。
「…ん?…アムリ、ちょっと何してるの」
「一族秘伝のマッサージ、ですが?」
はああ、とイーラは大きな溜息をついた。
「アンタさ、ちょっとは警戒心持たないと…マッサージって言われてもアムリにそんな所触らせてどうするの」
…アムリの手は、慣れない乗馬で最も酷使された尻肉を揉みしだいていた所だった。
イーラの強い希望でイーラとグリゴール、ランシェットとアムリ。
護衛はそれぞれ交替すれば問題ないとのことで押し切られてしまった。
ランシェットの泊まる部屋は設えは白を基調とした部屋で、なかなか居心地が良さそうだ。
「ランシェット様、一晩ではありますが宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
改めて恭しく一礼され、久しく忘れかけていた貴族との生活を思い出す。
グリゴールも貴族ではあるが余りに砕けた言動で貴族と言うより兵士と接している感じが否めなかった。
「夕飯時までまだお時間がございますね、連日の移動でお疲れでしょう。疲れを取る我が一族秘伝のマッサージをさせて頂かせても宜しいでしょうか」
てきぱきと予め施されているベッドメイキングの上に肌触りの良い緋色の敷物を広げそう言われては、断ることは出来ない。
ランシェットは感謝の言葉を述べるとそこへ腰掛けた。
「それではまず、服の上から失礼致します」
そう言ってアムリはランシェットの服の上から体の起伏を探るようにするすると触れていった。
「ふ…っあ、…んっ…」
久々の感触にビクビクと体が反応してしまう。
自分でも思いがけない反応に、恥ずかしくなったランシェットは手で口元を覆った。
「…お気になさいませんよう。やはりお体がかなり疲れているようです。…ふふ、まだまだ気持ちよくなるのはこれからですよ?」
「これは…っ!あ、アムリ殿…少し、待っ…!」
脇腹に触れた指が急に下方へ急移動し、ランシェットの細い腰を捕らえた。
「塔生活で体力が落ちたところに慣れない乗馬で、筋肉の少ない腰に負担が掛かっているようです。早めに対処しませんと。…失礼致しますね」
抵抗する間もなく組み敷かれ、アムリの意と連動するかのように少し毛足の長い敷物がしっかりとランシェットの体を押さえる。
「力を抜いて下さいね」
「ふ、ぁあ…っ!!」
ビクリと体が跳ねる。
少しの圧迫感があり、それに伴い強い刺激が触られた箇所ごとにびりびりと体を伝っていく。
脚に触れられているのにつま先や腰の辺りまで刺激が及び、はしたない声をあげてしまう。
「ふふ、気持ちいいですか?…お疲れの証拠です。
王にお会いしたらたっぷり愛して頂くためにも、きちんとお体を柔らかくしておかねば」
イーラはアムリにいつもこのような過激なマッサージを受けているのだろうか?と、荒い息をつき少しぼんやりとした頭で考える。
それもアムリには見透かされていたようで、
「慣れてしまえばこんなものは何でもありませんよ」
とやさしく微笑みを湛えたままやり過ごされてしまった。
押し返そうと肩の辺りを押してみるがびくともしない。
イーラはただでだえ強いのにアムリはその護衛もしているのだ。
「ん、はぁ、ぁっ…」
血流が良くなってきたのがランシェット自身にも分かるようになり、日に当たらず真っ白になっていた手や足の爪先にも熱と赤みが加わってきた。
「うつ伏せになって頂けますか?」
気持ちよさになすがままになり、促されるままランシェットはごろりと身体を反転させた。
「おやおや、腰よりこちらのほうが深刻なようですね…」
「ぅ、ああっ…!?…やっ、そこはっ…!!」
「マッサージですよ」
「ぁあ…っ!!」
「ちょっと!!!」
バンッと音を立ててイーラが部屋に乗り込んできた。
「これはこれはイーラ様。
部屋に入る際はこちらではノックをとお教えしたはずですが」
「ノック無しで部屋に侵入してくるその声をまず抑えてから言いなよ!」
「はっ、あ…!大変失礼しました!」
「夜やったら承知しないからね!」
鬼の形相でイーラは怒り心頭だ。
何せ彼の自尊心は酷く傷ついていた。
グリゴールと久しぶりに甘い時間を過ごそうと寝床に雪崩込んだのも束の間、壁越しに聞こえてきたランシェットの嬌声によって、グリゴール自身が反応してしまったのだから。
「…ん?…アムリ、ちょっと何してるの」
「一族秘伝のマッサージ、ですが?」
はああ、とイーラは大きな溜息をついた。
「アンタさ、ちょっとは警戒心持たないと…マッサージって言われてもアムリにそんな所触らせてどうするの」
…アムリの手は、慣れない乗馬で最も酷使された尻肉を揉みしだいていた所だった。
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