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(7) 自立の1歩①
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駄目、駄目よ、泣いたら。だって、貴族の令嬢よ。エドウィン公爵家の者なのに。こらえないと、いけないのに。
あー、抑えきれない。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
またしても、ギャン泣きしてしまったアンジェラ。アグアニエベに引き取られて何不自由ない生活を与えられて幸せなはずなのに。いつか、奪われてしまう気がして。
「気持ちは、泣いて出さないとね。」
この男、悪い人です。優しいんですもの。優しさに飢えている喪のに与えたら勘違いてしまう。愛されているかもしれないと思いしまうのよ。
「泣きたくなったら、何時でも呼んで。僕の胸なら貸してあげるから。」
ほら、また。欲しい言葉を言うから。ねえ、いいの。あなたを好きになっても?
「もしもし、エドワードさん。また、泣かせて。いけませんね、本気になるでしょ。何度、惚れさせるんですか!」
「ちっー、邪魔だな。」
え、今、何て言いましたか。あなた?アンジェラは、そそくさと立ち上がるエドワードを見上げる。夢の世界が崩れ落ちた。
側に立っているアグアニエベが、タオルでアンジェラの涙で汚れた顔を拭いてくれる。
「いいですか、エドワードは遊び人なのです。優しい言葉に惑わされないように。来てみて良かったですよ。」
「・・・・・・・・。」
アンジェラは、困惑する。何だったのだろう、エドワードの仕草は。あれは、本気ではなかったの?
この人って、何て人なのでしょう。世間知らずの令嬢には理解できません。もう少しで恋するところでした。
ダンジョンデビュー成績、ワニザウルス1匹と3級魔石1個をゲット。だが、もう少しでイケメンの餌食になるところであった。
翌日、アグアニエベはアンジェラを連れて外出する事にした。
「今日は、私の友人を紹介しましょう。これから、あなたの力になってくれるはずです。彼は負ける事を知らない男ですから」
そんなに強い男の人なのなら、筋肉の固まりなのかしら。そう思っていたら、町の商会の事務所に居たのは驚くくらいの容姿の男性だった。
「あなたが、アンジェラ令嬢ですね。はじめまして、私はドルウ・ゴメスです。」
丁寧に挨拶されたのだが、アンジェラは口ごもりながら自己紹介をしていた。
「私・・、アンジェラ・ラペスです。よろしくお願いします。」
頬が赤らむのを抑えきれない。青みがかった黒い髪の端正な顔立ち。その翠の瞳は宝石のようで目が離せない。立ち上がった相手は長身で貴夫人を相手にするように手を胸に当てて会釈した。敬意を示してくれたのだ。
連られてアンジェラも膝を折る。宮廷マナーで返したのだ。それは、身分を教えるような物だという事に気がついていない。
「これからは、アンジェラさんとお呼びします。アグアニエベから預かった大事なお嬢さまですから、何でも言って下さい。」
「あの、パパちゃまのお友達ですか?」
「パパちゃま?」
ゴメスの眉が寄った。側に居るアグアニエベを見やる。
「おい、何だ。「パパちゃま」ってのは?」
「いやだなあ、ゴメスさん。娘なようだから、転生前の娘と同じ呼び方にしてるだけですよ。」
「ほう、娘か。どうせ、飲み屋のお姉ちゃんあたりだろ。」
「そんなわけ、ないでしょ(ギクッ!)」
どうして、分かったんでしょう。キャバクラの「3番、ルナ」ちゃんが可愛ゆくて。追加する時は、「パパちゃま」と言って甘えてくるんですよ。
目の前で交わされている会話がアンジェラには理解できません。飲み屋のお姉ちゃんというのは、何かのお仕事なのでしょうか。貴族のお嬢様とは縁の無い世界でした。
ゴメスは、大きな商会の会長である。あちこちの国で品物を買い取ったり売ったりしていた。
「家も売り買いしています。ここも、買い取った物件です。」
案内されたのは、湖畔に建つ屋敷。貴族の別荘に使われていたという。家具も付いている。戸惑いながら、アンジェラはアグアニエベの顔を見た。アグアニエベは、笑顔で説明する。
「何時までも一緒に暮らしたいのですが、あなたは人間ですから町で暮らすべきです。」
「私、パパちゃまと暮らしたいです!」
「ありがとう、嬉しいですよ。でも、あなたは自分の家族を作らないといけません。」
「家族なんて、必要ありません!」
だって、平気で捨てるから。私が酷い目に合っても助けてもくれない。
「大丈夫です。私は、あなたの側に居ます。離れていても、呼べば来ますよ。出来ない事は、無い。悪魔ですから。」
優しく言うアグアニエベはアンジェラを抱き締めた。少し冷たい体温は悪魔だからだけど、ホッとする。
そして、その屋敷はアンジェラの物となった。
「あんたの知り合いだから、安くしておいたよ。これが、家の権利書だ。注文通り家具も入れておいたから、こちらが請求者。使用人も紹介していいけど。」
「ありがとうございます。さすが、ゴメスさん。気配りして頂き助かります。」
目の前で自分が屋敷の持ち主になる手続きを見るしかないアンジェラ。1文無しですが、アグアニエベが出してくれています。
アンジェラ・ラペス22歳(本当は10歳)。スポンサー付きで自立しなくてはいけなくなりました。
あー、抑えきれない。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
またしても、ギャン泣きしてしまったアンジェラ。アグアニエベに引き取られて何不自由ない生活を与えられて幸せなはずなのに。いつか、奪われてしまう気がして。
「気持ちは、泣いて出さないとね。」
この男、悪い人です。優しいんですもの。優しさに飢えている喪のに与えたら勘違いてしまう。愛されているかもしれないと思いしまうのよ。
「泣きたくなったら、何時でも呼んで。僕の胸なら貸してあげるから。」
ほら、また。欲しい言葉を言うから。ねえ、いいの。あなたを好きになっても?
「もしもし、エドワードさん。また、泣かせて。いけませんね、本気になるでしょ。何度、惚れさせるんですか!」
「ちっー、邪魔だな。」
え、今、何て言いましたか。あなた?アンジェラは、そそくさと立ち上がるエドワードを見上げる。夢の世界が崩れ落ちた。
側に立っているアグアニエベが、タオルでアンジェラの涙で汚れた顔を拭いてくれる。
「いいですか、エドワードは遊び人なのです。優しい言葉に惑わされないように。来てみて良かったですよ。」
「・・・・・・・・。」
アンジェラは、困惑する。何だったのだろう、エドワードの仕草は。あれは、本気ではなかったの?
この人って、何て人なのでしょう。世間知らずの令嬢には理解できません。もう少しで恋するところでした。
ダンジョンデビュー成績、ワニザウルス1匹と3級魔石1個をゲット。だが、もう少しでイケメンの餌食になるところであった。
翌日、アグアニエベはアンジェラを連れて外出する事にした。
「今日は、私の友人を紹介しましょう。これから、あなたの力になってくれるはずです。彼は負ける事を知らない男ですから」
そんなに強い男の人なのなら、筋肉の固まりなのかしら。そう思っていたら、町の商会の事務所に居たのは驚くくらいの容姿の男性だった。
「あなたが、アンジェラ令嬢ですね。はじめまして、私はドルウ・ゴメスです。」
丁寧に挨拶されたのだが、アンジェラは口ごもりながら自己紹介をしていた。
「私・・、アンジェラ・ラペスです。よろしくお願いします。」
頬が赤らむのを抑えきれない。青みがかった黒い髪の端正な顔立ち。その翠の瞳は宝石のようで目が離せない。立ち上がった相手は長身で貴夫人を相手にするように手を胸に当てて会釈した。敬意を示してくれたのだ。
連られてアンジェラも膝を折る。宮廷マナーで返したのだ。それは、身分を教えるような物だという事に気がついていない。
「これからは、アンジェラさんとお呼びします。アグアニエベから預かった大事なお嬢さまですから、何でも言って下さい。」
「あの、パパちゃまのお友達ですか?」
「パパちゃま?」
ゴメスの眉が寄った。側に居るアグアニエベを見やる。
「おい、何だ。「パパちゃま」ってのは?」
「いやだなあ、ゴメスさん。娘なようだから、転生前の娘と同じ呼び方にしてるだけですよ。」
「ほう、娘か。どうせ、飲み屋のお姉ちゃんあたりだろ。」
「そんなわけ、ないでしょ(ギクッ!)」
どうして、分かったんでしょう。キャバクラの「3番、ルナ」ちゃんが可愛ゆくて。追加する時は、「パパちゃま」と言って甘えてくるんですよ。
目の前で交わされている会話がアンジェラには理解できません。飲み屋のお姉ちゃんというのは、何かのお仕事なのでしょうか。貴族のお嬢様とは縁の無い世界でした。
ゴメスは、大きな商会の会長である。あちこちの国で品物を買い取ったり売ったりしていた。
「家も売り買いしています。ここも、買い取った物件です。」
案内されたのは、湖畔に建つ屋敷。貴族の別荘に使われていたという。家具も付いている。戸惑いながら、アンジェラはアグアニエベの顔を見た。アグアニエベは、笑顔で説明する。
「何時までも一緒に暮らしたいのですが、あなたは人間ですから町で暮らすべきです。」
「私、パパちゃまと暮らしたいです!」
「ありがとう、嬉しいですよ。でも、あなたは自分の家族を作らないといけません。」
「家族なんて、必要ありません!」
だって、平気で捨てるから。私が酷い目に合っても助けてもくれない。
「大丈夫です。私は、あなたの側に居ます。離れていても、呼べば来ますよ。出来ない事は、無い。悪魔ですから。」
優しく言うアグアニエベはアンジェラを抱き締めた。少し冷たい体温は悪魔だからだけど、ホッとする。
そして、その屋敷はアンジェラの物となった。
「あんたの知り合いだから、安くしておいたよ。これが、家の権利書だ。注文通り家具も入れておいたから、こちらが請求者。使用人も紹介していいけど。」
「ありがとうございます。さすが、ゴメスさん。気配りして頂き助かります。」
目の前で自分が屋敷の持ち主になる手続きを見るしかないアンジェラ。1文無しですが、アグアニエベが出してくれています。
アンジェラ・ラペス22歳(本当は10歳)。スポンサー付きで自立しなくてはいけなくなりました。
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