(完)恋なんてのは忌まわしいだけだが必要だよ

川なみな

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「 1ー4 」出会いの場所

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寮の職員の吉田さんが置いて行った食事に薫は目を輝かせた。


「わ、わわわわ、肉ーー!!」


「!」が2つも出たのには、理由がある。叔父の家に世話になるようになってから、肉を食べて無いからだ。

正確には、食べさせてもらえ無かった。薫は別メニューで、食事していたのだ。お金のかからない「卵1個」や「お茶漬け」に「漬物」なんかだったから。


「スゲー、王子様になったみたいだ!」


ステーキ肉くらいで王子様の生活とはならないのだが、薫にとっては天と地ほどの差がある。箸でサイコロ肉を掴むと手が震えた。


「わー、わー、嬉しすぎる!」


口に入れたら柔らかくて美味しくて涙が溢れる。ご馳走だ!泣きそうだった。今日だけのご馳走かもしれないと味わって食べる。


「ご馳走さまでした。そういえば、寮とか言ってたけど。ここは、学校なの?」


留目で与えられている屋根裏部屋とは違う六畳ほどの部屋には、シングルベッドと机にクローゼット。寮の部屋とは思えない。

窓を開けると確かにテニスコートや運動場が有った。学校みたいだ。でも、あれは何だろう。


「ここは、アミューズメントテーマパークなの?それとも、近くにあるのかな。」


離れた場所の小山の上には、西洋のお城が見えた。遊園地があるのかもしれない。薫は、部屋の外に出て学校の中を歩いてみる事にした。








ウロウロウロウロ、キョロキョロ、コソコソコソ~~。挙動不審な人影が約1名。建物から出て来たら、庭にダッシュ。

ベンチの後ろへ滑り込んだ薫。当たりを確認してベンチへ座った。


「何だよ、ここ?広すぎ。電光掲示板の地図でも有ればいいのに。」

「あるか!」

「え、そーなの?」


誰かの返事に見回して首を捻る。誰も居ない。居るとしたら、これだけ。立ち上がると隣のベンチへ行って指でチョンと突いてみた。


「無礼者、殺すぞ!」


指を捕まれて薫は驚いた。凄い顔で睨まれてるけど、確認したかっただけだ。


「あ、生きてる!人形かと思ったのに。」


怖い顔で見られても、見惚れてしまう。それだけ、美しい顔だったからだ。陶器のような白い肌に整った顔立ちは、人並み外れていた。

ダークブラウンの肩までの髪。日差しに輝いて金にも見える。瞳は、晴れた空のようなスカイブルー。吸い込まれそうな色だった。


「俺を誰だと思ってるんだ、知らないはずが無い。」

「誰なの?」

「何だとー!」

「ね、名前を教えて。僕は、薫だよ。」

「貴様、名字を名乗るもんだろ。失礼な奴だな!」

「あ、ごめんなさい。僕は、留目の家の(世話になってる)薫なんです。」

「留目だって?貴様か。ふん、教えてやるよ。俺は、津海小路(つつみこうじ)の第3王子だ。御前(ごぜん)と呼べ!」


これが、薫と第3王子との運命の出会いであった。


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