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(6) 勤務2日目

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気がついたら、弟のシモンの部屋のベッドに寝ていたエレンだった。どうやら、泣き疲れて眠ってしまったらしい。昨日の夜に眠れ無かったのもあったのか。


「帰っちゃったんだ。」


1人、呟く。家政婦は通いなので、1人の夕食。好色親父は、酒場で飲んでるらしい。パトリシアが寝てる間に帰ったのが不満。


「帰るのなら、挨拶したかったのに。冷たいんだから。ブーブー!」


昼間、爆睡したので今度は眠れない。自分の部屋のベッドで本を読んでいると、荒っぽく玄関の扉を叩く音が響いた。驚いて飛び上がったエレンは、叫ぶ。


「いやああああ、クソオヤジーー!」


途端に、音は止む。だけど、変な声がします。見に行くと、好色親父が1人で踊っているではないか。だらしない顔で誰かを抱き締めてリビングで回っていた。


「んー、可愛いな。お前は、エレン。大好きだぞ!」


えっ、また。エアー愛娼とスキンシップ中。エレンは呆れて見学。そのうち、キスが始まったので退散。


チュッチュッチュッチュババババーー!


あんなキスされたなら、顔が腫れそう。うひゃああ。ても、オジサンは幸せな夢の中。若い愛娼とお楽しみ中です。今夜はバリケードを作らないエレン。


(魔法の呪文て凄いわ。あの一言で、大丈夫なんですもの。)


ただ、弟のシモンが心配です。お姉さんのお仕事を理解出来るでしょうか?







所属しているゴメス商会へ顔を出したエレンは、心配事を会長のゴメスに相談した。だけど、それは直ぐに解決する。


「シモンくんには、私が説明してあるから。頭のいい子だね。ついでに、魔法の呪文も教えといた。」


エレンは、ホッとする。そして、ゴメスから新しいミッションを受けるのだ。


「エレン、君には私の魔法学校へ入って欲しいんだ。君には、才能があるからね。葡萄園が手に入ったら頼みたいと思っている。」

「葡萄園をですか?私は、詳しい事は知らないんです。お役に立てるか。」

「大丈夫さ。君には、守護が付いてる。」

「守護って、見えてますか?私には、見えないんです。」

「まだ、時期では無いからだろう。近いうちに、お会いできるよ。」

「え、本当ですか!」


小さな頃から側に現れていたのは分かっていたが、姿を見る事は出来ない。それが見えるようになるのなら、嬉しい。でも。


「私が葡萄園をする事になったら、この町を出て行くという事ですよね。ここに、ずっと居たかった。」


それは、エレンの告白にも近かった。貴方と会えなくなるなんて。好色親父の愛娼になっても、顔を合わせるから良かったのに。遠くに離れるたくない。


「魔法学校は、俺が講師なんだ。離れた場所でも魔法で移動できるから心配ない。」


魔法で移動?移動できるって、空を飛ぶとか?では、飛ぶ練習をしなくては。高い処は苦手ですけど頑張ります。落ち方を勉強した方がいいでしょうか?

それを聞いたゴメスさんが、笑ってますけど。何が、おかしいのかしら。

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