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異世界と哀れな少年
第6話 ナンマイダァ
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田中 洋一視点。
時間を戻して(砦での戦闘後)
ギルドから言い渡されたミッションは、ダンジョンに潜りたいという異世界人の護衛だった。
もちろん僕も異世界人なのだけど、一応それを隠して活動をしていたら、僕に白羽の矢が立ってしまった。
やむを得まい。
そう諦めて護衛に参加すると案の定僕の存在がクラスメイトにばれてしった。
まぁ、それもやむを得まい。
最初からその可能性を感じていつつ、このミッションに参加したのは僕なんだし。
ワガママは申しません。
ダンジョンにこいつら(クラスメイト)を放り込んでしまえば少しは大人しくなるだろう。
そう、楽観的に思っていたら、
予想以上に事態は悪くなった。
ダンジョンの近くには砦があり、ダンジョンが活性化するのを監視していたのだが、その砦が落ちたのだ。
砦まであと少しという所で魔物に囲まれ何とか撃破したが、砦へ行って砦の魔物を倒してダンジョンへ行くなんて無理。
確実にダンジョンの魔物は活性化してる。
だからもう帰ろうよ。
って話になった。
んで、砦で一泊して翌日ダンジョンに潜る予定だったんだけど。一泊出来なかったって事になると、、、。
夜営だ。
夜営する事になっのだ。
でもレオンさんは、
「はぁ?ふざけんな。俺達は夜通し歩いて町に帰るぜ?なぁ?」
そう言って振り向くレオンさんに、本当は夜通し歩くなんてイヤだけと、頷いて見せる。
「早くダンジョンから離れねえで、夜営して留まるって事は危険性が増すって事だぜ?」
レオンさんが引き続きケンカ腰で兵士さんに話し掛ける。
兵士さんは表情を引きつらせて、
「じゃ、じゃあ、危険手当てを特別に、、、」
「当たり前だ!危険手当てと、夜営手当て!賠償金!全部しっかり払え!」
そうレオンさんがまくし立てた。
そのレオンさんの様はまるで893だが、これをするかしないかで、報酬が違うから大事だ。
賠償金は、先の戦闘で全身に異世界人がレオンさんの指示に従わず車を降りた事だろう。
ギルドから受けたミッションの内容は、
砦までの移動と、ダンジョンまでの移動を僕らで護衛する約束だったが、それの条件に必ず僕らの指示には従ってもらう事があった。
それを違反して異世界人(僕以外の)が魔物との戦闘に加わろうとしたため、レオンさんと僕達は戦場を離脱、町へ戻ろうとしたのだ。
契約違反を相手がしたなら無条件で報酬が確定される。
金が貰えると確定したのに我が身を危険にさらして働く馬鹿はいない。
そして、その契約違反をした相手を警護しろと言うのなら確かに追加で賠償金ぐらいは欲しい。
貰えるもんはしっかりもらう。
それも多く貰えるなら、より多く貰う!
これが冒険者だ!
そう僕とマリアの耳元で囁くジーンさんが教えてくれた。
なるほどな。
同じ働きで給料が変わるならそりゃ多い方が良い。
ましてや、冒険者は危険を伴う職業だ。命を掛けて得る報酬なんだ。働くという事に危険が多く含まれるなら、報酬が多いという事はより働かなくて良くなるので、つまりは危険が少ないって事に繋がる。
「だから後でちゃんとレオンさんにお礼を言うんだぞ?」
とジーンさんが冒険者のモラルについて説明してくれる。
そっか、レオンさんは僕達の為にも報酬を上げてくれたってわけか。
「それに、今回は相手側の契約違反だから良いが、逆に俺達も契約違反には気を付けろよ?クエストを終わらせて、ギルドで報酬を受け取ろうとしたら『契約違反をしているため報酬ははらえません』なんて言われたら最悪だぜ?そうならないために気を配るのもリーダーの大事な仕事だ。ヨウイチはリーダーにはならないだろうから要らない知識かもしれねぇが、報酬を上げる交渉はチームのリーダーの大切な仕事だ。疎かにしてると仲間が付いて来ねぇぜ?」
確かに僕はリーダーにはならないけど、「ありがとうございます」僕はそうお礼を言った。「そういう冒険者間の常識的なやつを教えて貰えると凄く助かります」
「へへ」ジーンさんは得意そうに、「まっ、他にも色々教えてやるよ」そう得意気に言った。
ジーンさんのその視線の先には、僕の背中にいるマリアに向いている。
どうやらジーンさんはマリアの事が気になるらしくて、頬を少し赤くさせてるが、、、残念!
マリアと僕は相思相愛!
誰かが僕とマリアの間に入るのは不可能なのです!
マリアは僕が奴隷商の所で死んでしまいそうな所を買った奴隷で、最初は目がくり貫かれ、声帯も潰され、耳も削がれ、火傷の跡もあり痛々しい姿だったが、今はそれらの傷が治りすっかりキレイな女の子になった。
手と足は無いけれど。
マリアは生得的に手と足が無いようで、僕がエクストラヒールを唱えても体の傷は治ったんだけど手と足は無いままだった。
それでも普段は義足と義手を付けて一人であるくことも出来る。それも、この世界の義足と義手は魔道工学なる技術で作られており、自分の意思で普通の手足の様に操る事が出来る。
とは言っても、マリア自身まだ義手と義足に不馴れであまり早く動く事は出来ない為、今はこうして背中にマリアをおぶっていた。
だからマリアの顔は僕の頭の直ぐうしろにあって、
そのマリアが、「ご主人様?」と喋るとその吐息が耳にかかって、ドキドキしてしまう。そしてマリアが、「マリアも歩きますか?」と言う。
「大丈夫。帰りは一度魔物を倒したし、多分そんなに魔物は出ないでしょ。そうすると移動のペースも早くなるかもしれないし。それに、レオンさんに掛けて貰った強化魔法の効果がまだ残ってるみたいで体も軽いんだよね」
「そうなんですか?凄いですね!では、ハイ!」
そう言ってマリアは残っている腕の部分に力を入れて僕の体にしがみついた。
それから今後の行動が決定したらしく、町へと帰還することに。
馬車を先導するようにして来た道を戻る。クラスメイトを四人づつ乗せた馬車は残り1台になっていて、来るときは長く延びた隊列だったのだが、今はかなり人と人の間隔が狭くなっていた。
そして来る時はクラスメイトに会うのが嫌だったから、馬車に乗ったクラスメイトに会わないようにかなり先を移動をしていたけど、今はクラスメイトに僕の存在はバレてるし、気にせずに歩く。
とは言っても、殆どのクラスメイトは死んでしまったが。
空城君とその取り巻きの三人の女性を残して全員死んでしまった。
普通、クラスメイト死んだとなれば悲しむものなのかもしれないが、僕は彼らに苛められていたので特になんにも感じなかった。
ざまぁみろ。
とは思わないが、可哀想とも思えなかった。
僕は薄情なのかな?
でも、彼等には苛められていたしな。
それに、この世界に来てゴブリンとか、オークとか沢山殺してたら、飛び散る血にも、死んで動かなくなった魔物にも何も感じなくなった。
人間は最初から他の生き物を殺して食べて生きる生き物だ。今まで見ることが無かっただけで、沢山の生き物を殺してその肉を食べて来たんだ。
今さら、人間だけが特別で、人間だけが死んだら可哀想なんてな。
そんな事は思えない。
でも、食べる前に頂きますを言い。食べた後にご馳走さまを言うように、せめて彼等の冥福ぐらいは祈っておくか。
「ナンマイダァ~」
と僕が言うと、マリアが、
「今のは何なんですか?」
って聞いてきた。
「僕を怨まないでくれってさ」
そんな雑談をしながら森の中を歩いた。
日はすっかり落ちて暗くなっていて、月の乏しい明かりが頼りだった。
・
熱帯夜してから三時間ぐらい歩いただろうか、少しみはらしの良い場所に来ると、そこで夜営をする事になった。
もちろん順番に魔物が来ないか見張らなければいけないのだが、
「ジーン、適当に人員を見繕って最初に休め。次に兵士さん、あんたらが休みな。次が俺と残りの奴等だ」
ん?
俺とマリアは?
そう僕が思ってると、「ヨウイチは兵士達と一緒に休め」そう言ってから僕の近くに来ると耳元で、「スキル使って良いぞ。三時間だけだが、しっかり休め」そう言ってくれた。
「良いんですか?」
と僕が聞くと、
「大丈夫だろ。ビールを2缶頼む」
そう言った。
そうか、それが目当てか、
僕はこの世界に転移させられた時にスキルを授かっていて、そのスキル名が。
『ラブホテル』
と言う。
このスキルは、その名の通りラブホテルに泊まれる素敵スキルで。
中魔石一個で宿泊出来るんだけと、素敵な得点がいくつもあった。
一つ目はいろんな人とエッチをすると僕の能力が上昇するという内容で色々制約は有るものの、つい先日マリアと初エッチをしたため、能力が上昇していた。
もう一つはもちろん宿泊。
中魔石一個で一泊できるんだけど、これが格安だった。
この世界の宿の宿泊料金は金貨一枚からと高い。もっと安い宿となると複数の冒険者同士での相部屋、雑魚寝で、これは銀貨1枚からと安いが防犯性は低く、レオンさんも何度も痛い目に合ったらしい。
この心配がラブホテルには一切無い。
そしてもう一つ、スキル『ラブホテル』の良いところが、
冷蔵庫の存在だ。
ラブホテルの中には冷蔵庫が2つ完備されていて、無料冷蔵庫の中には、無料で食べたり飲んだり出来る物が入ってて、もう一つの冷蔵庫は有料冷蔵庫なのだが、中の物が有料ではあるけど購入できる。
このすきるのお陰で僕は異世界にいながらにしてコラコーラやカップなんかを食べることが出来た。
あと、ビールも。
ラブホテルの中の無料ビールがレオンさんのお気に入りだった。日本ではありふれた(?)ユウヒビールなのだが、この世界のビールはもっと雑味がおおいらしく、レオンさん曰く『のど越しサイコー』らしい。
「おし!じゃあ俺等が先に寝るけど、用もねぇのに俺等の名前呼んだら殺すからな」
ジーンさんと三人の冒険者はそう言って体育座りをして目を閉じる。
僕は、『こんな所で寝れるのか?』なんて思っていたんだけど、しばらくするとジーンさんの寝息が聞こえた。
すげぇ。
寝てるよ。
そう感心してるとレオンさんが隣に来て、
「どこでも寝れる体にしとかねぇと冒険者はキツい。例え5分でも休める時に少しでも休めねぇとダメだ。そんで、一番効率が良いのが、『寝る』だ。寝たのと寝ないのでは疲れの取れが全然違う。少しでも効率良く休む為にも例え短時間でも寝る事を覚えた方が良い」
そりゃそうだ。
と思ってる所に、馬車を警護してる兵士さんの中から一人が此方に向かって歩いてくる。
そのシルバーの装備を纏った兵士さんが、頭に被ってる兜を外すと、兜を小脇に抱えて、
「先程はありがとうございました」
そう言って僕に向かって頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそ」
この兵士さんは深く傷を付けられていてかなり深刻な状態だった所を僕の『エクストラヒール』で助けてあげたのだ。
「これ程優秀な神聖魔法の使い手に治して頂けるとは光栄です」
「はぁ」と僕が気のない返事をすると。
「通常、ここまで綺麗に傷を直してくださる神聖魔法の使い手は希有なんです。良くない神聖魔法の使い手ですと、傷を治しても治ったのは見た目だけで、痺れが残ったり、血が上手く通わないなんて事が多いんです」
そうなん?
そう思ってレオンさんを見ると頷いて、
「その通りだ」そう言ってレオンさんはジーンさんを指差して、「アイツがお前を慕ってる理由がそれだ」と言った。
イヤイヤ、ジーンさんが慕ってるのはマリアでしょ。
そう思い、「はぁ、まぁ」とまた気のない返事をした。
でも確かにジーンさんもそう言ってたな。
この世界では神聖魔法があってそれで傷を治すんだけど、傷が治りきらなくて、それが原因で結局冒険者を辞める人が多いらしい。
そして兵士さんが、「実は、、、」と僕を見て申し訳なさそうに、「彼等が話してるのを聞いてしまったのですが、、、」そう言って僕が転移者だと知ってしまったと教えてくれた。
兵士さんが言う『彼等』 とは僕のクラスメイトの空城君達の事だろう。
集団転移でこの世界に来た僕はクラスメイトに僕の神様から貰った能力を馬鹿にされ、城から逃げて一人町の中で生活をしていたのだが、クラスメイトに馬鹿にされるのが嫌で、コソコソとしていた。
「僕の事は出来たら内緒にして貰っても良いですか?」
と僕は言いつつ、
良く考えたら空城君にバレたしもう内緒にする必要は無いのか?
なんて考えてたら、
「エマ女王が、貴方の事を探しておりまして、お会い出来たら謝罪と賠償をするようにと指示を受けております」
「お金ください!出来るだけ多目に!」
間髪開けずに言うと、兵士さんは少し後退りして、
「では、ヨウイチ様の事を女王にお伝えしても?」
「はい!どうぞ!お金優先で!」
思わぬ収入を得ることが出来た。
「おいくらぐらい、お支払すれば、、、」
と兵士さんが探りを入れて来るので、
「賠償金としてまず金貨1000枚とぉ、異世界人を国で一人養うのに掛かってる経費を1日金貨10枚としてぇ、それを僕にも生活費として月に300枚だからぁ、この世界に来て、半年は経つから、金貨1800でぇ、だからまずは金貨2800枚払って貰うとしてしてぇ、さらにそれを今後も払ってもらうとなるとぉ、、、」
どこまで吹っ掛けたら兵士さんの顔が青くなるか観察していたら、
「程々にしたまえ」
空城君の声がした。
でたでた。
空城節だよ。
時間を戻して(砦での戦闘後)
ギルドから言い渡されたミッションは、ダンジョンに潜りたいという異世界人の護衛だった。
もちろん僕も異世界人なのだけど、一応それを隠して活動をしていたら、僕に白羽の矢が立ってしまった。
やむを得まい。
そう諦めて護衛に参加すると案の定僕の存在がクラスメイトにばれてしった。
まぁ、それもやむを得まい。
最初からその可能性を感じていつつ、このミッションに参加したのは僕なんだし。
ワガママは申しません。
ダンジョンにこいつら(クラスメイト)を放り込んでしまえば少しは大人しくなるだろう。
そう、楽観的に思っていたら、
予想以上に事態は悪くなった。
ダンジョンの近くには砦があり、ダンジョンが活性化するのを監視していたのだが、その砦が落ちたのだ。
砦まであと少しという所で魔物に囲まれ何とか撃破したが、砦へ行って砦の魔物を倒してダンジョンへ行くなんて無理。
確実にダンジョンの魔物は活性化してる。
だからもう帰ろうよ。
って話になった。
んで、砦で一泊して翌日ダンジョンに潜る予定だったんだけど。一泊出来なかったって事になると、、、。
夜営だ。
夜営する事になっのだ。
でもレオンさんは、
「はぁ?ふざけんな。俺達は夜通し歩いて町に帰るぜ?なぁ?」
そう言って振り向くレオンさんに、本当は夜通し歩くなんてイヤだけと、頷いて見せる。
「早くダンジョンから離れねえで、夜営して留まるって事は危険性が増すって事だぜ?」
レオンさんが引き続きケンカ腰で兵士さんに話し掛ける。
兵士さんは表情を引きつらせて、
「じゃ、じゃあ、危険手当てを特別に、、、」
「当たり前だ!危険手当てと、夜営手当て!賠償金!全部しっかり払え!」
そうレオンさんがまくし立てた。
そのレオンさんの様はまるで893だが、これをするかしないかで、報酬が違うから大事だ。
賠償金は、先の戦闘で全身に異世界人がレオンさんの指示に従わず車を降りた事だろう。
ギルドから受けたミッションの内容は、
砦までの移動と、ダンジョンまでの移動を僕らで護衛する約束だったが、それの条件に必ず僕らの指示には従ってもらう事があった。
それを違反して異世界人(僕以外の)が魔物との戦闘に加わろうとしたため、レオンさんと僕達は戦場を離脱、町へ戻ろうとしたのだ。
契約違反を相手がしたなら無条件で報酬が確定される。
金が貰えると確定したのに我が身を危険にさらして働く馬鹿はいない。
そして、その契約違反をした相手を警護しろと言うのなら確かに追加で賠償金ぐらいは欲しい。
貰えるもんはしっかりもらう。
それも多く貰えるなら、より多く貰う!
これが冒険者だ!
そう僕とマリアの耳元で囁くジーンさんが教えてくれた。
なるほどな。
同じ働きで給料が変わるならそりゃ多い方が良い。
ましてや、冒険者は危険を伴う職業だ。命を掛けて得る報酬なんだ。働くという事に危険が多く含まれるなら、報酬が多いという事はより働かなくて良くなるので、つまりは危険が少ないって事に繋がる。
「だから後でちゃんとレオンさんにお礼を言うんだぞ?」
とジーンさんが冒険者のモラルについて説明してくれる。
そっか、レオンさんは僕達の為にも報酬を上げてくれたってわけか。
「それに、今回は相手側の契約違反だから良いが、逆に俺達も契約違反には気を付けろよ?クエストを終わらせて、ギルドで報酬を受け取ろうとしたら『契約違反をしているため報酬ははらえません』なんて言われたら最悪だぜ?そうならないために気を配るのもリーダーの大事な仕事だ。ヨウイチはリーダーにはならないだろうから要らない知識かもしれねぇが、報酬を上げる交渉はチームのリーダーの大切な仕事だ。疎かにしてると仲間が付いて来ねぇぜ?」
確かに僕はリーダーにはならないけど、「ありがとうございます」僕はそうお礼を言った。「そういう冒険者間の常識的なやつを教えて貰えると凄く助かります」
「へへ」ジーンさんは得意そうに、「まっ、他にも色々教えてやるよ」そう得意気に言った。
ジーンさんのその視線の先には、僕の背中にいるマリアに向いている。
どうやらジーンさんはマリアの事が気になるらしくて、頬を少し赤くさせてるが、、、残念!
マリアと僕は相思相愛!
誰かが僕とマリアの間に入るのは不可能なのです!
マリアは僕が奴隷商の所で死んでしまいそうな所を買った奴隷で、最初は目がくり貫かれ、声帯も潰され、耳も削がれ、火傷の跡もあり痛々しい姿だったが、今はそれらの傷が治りすっかりキレイな女の子になった。
手と足は無いけれど。
マリアは生得的に手と足が無いようで、僕がエクストラヒールを唱えても体の傷は治ったんだけど手と足は無いままだった。
それでも普段は義足と義手を付けて一人であるくことも出来る。それも、この世界の義足と義手は魔道工学なる技術で作られており、自分の意思で普通の手足の様に操る事が出来る。
とは言っても、マリア自身まだ義手と義足に不馴れであまり早く動く事は出来ない為、今はこうして背中にマリアをおぶっていた。
だからマリアの顔は僕の頭の直ぐうしろにあって、
そのマリアが、「ご主人様?」と喋るとその吐息が耳にかかって、ドキドキしてしまう。そしてマリアが、「マリアも歩きますか?」と言う。
「大丈夫。帰りは一度魔物を倒したし、多分そんなに魔物は出ないでしょ。そうすると移動のペースも早くなるかもしれないし。それに、レオンさんに掛けて貰った強化魔法の効果がまだ残ってるみたいで体も軽いんだよね」
「そうなんですか?凄いですね!では、ハイ!」
そう言ってマリアは残っている腕の部分に力を入れて僕の体にしがみついた。
それから今後の行動が決定したらしく、町へと帰還することに。
馬車を先導するようにして来た道を戻る。クラスメイトを四人づつ乗せた馬車は残り1台になっていて、来るときは長く延びた隊列だったのだが、今はかなり人と人の間隔が狭くなっていた。
そして来る時はクラスメイトに会うのが嫌だったから、馬車に乗ったクラスメイトに会わないようにかなり先を移動をしていたけど、今はクラスメイトに僕の存在はバレてるし、気にせずに歩く。
とは言っても、殆どのクラスメイトは死んでしまったが。
空城君とその取り巻きの三人の女性を残して全員死んでしまった。
普通、クラスメイト死んだとなれば悲しむものなのかもしれないが、僕は彼らに苛められていたので特になんにも感じなかった。
ざまぁみろ。
とは思わないが、可哀想とも思えなかった。
僕は薄情なのかな?
でも、彼等には苛められていたしな。
それに、この世界に来てゴブリンとか、オークとか沢山殺してたら、飛び散る血にも、死んで動かなくなった魔物にも何も感じなくなった。
人間は最初から他の生き物を殺して食べて生きる生き物だ。今まで見ることが無かっただけで、沢山の生き物を殺してその肉を食べて来たんだ。
今さら、人間だけが特別で、人間だけが死んだら可哀想なんてな。
そんな事は思えない。
でも、食べる前に頂きますを言い。食べた後にご馳走さまを言うように、せめて彼等の冥福ぐらいは祈っておくか。
「ナンマイダァ~」
と僕が言うと、マリアが、
「今のは何なんですか?」
って聞いてきた。
「僕を怨まないでくれってさ」
そんな雑談をしながら森の中を歩いた。
日はすっかり落ちて暗くなっていて、月の乏しい明かりが頼りだった。
・
熱帯夜してから三時間ぐらい歩いただろうか、少しみはらしの良い場所に来ると、そこで夜営をする事になった。
もちろん順番に魔物が来ないか見張らなければいけないのだが、
「ジーン、適当に人員を見繕って最初に休め。次に兵士さん、あんたらが休みな。次が俺と残りの奴等だ」
ん?
俺とマリアは?
そう僕が思ってると、「ヨウイチは兵士達と一緒に休め」そう言ってから僕の近くに来ると耳元で、「スキル使って良いぞ。三時間だけだが、しっかり休め」そう言ってくれた。
「良いんですか?」
と僕が聞くと、
「大丈夫だろ。ビールを2缶頼む」
そう言った。
そうか、それが目当てか、
僕はこの世界に転移させられた時にスキルを授かっていて、そのスキル名が。
『ラブホテル』
と言う。
このスキルは、その名の通りラブホテルに泊まれる素敵スキルで。
中魔石一個で宿泊出来るんだけと、素敵な得点がいくつもあった。
一つ目はいろんな人とエッチをすると僕の能力が上昇するという内容で色々制約は有るものの、つい先日マリアと初エッチをしたため、能力が上昇していた。
もう一つはもちろん宿泊。
中魔石一個で一泊できるんだけど、これが格安だった。
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この心配がラブホテルには一切無い。
そしてもう一つ、スキル『ラブホテル』の良いところが、
冷蔵庫の存在だ。
ラブホテルの中には冷蔵庫が2つ完備されていて、無料冷蔵庫の中には、無料で食べたり飲んだり出来る物が入ってて、もう一つの冷蔵庫は有料冷蔵庫なのだが、中の物が有料ではあるけど購入できる。
このすきるのお陰で僕は異世界にいながらにしてコラコーラやカップなんかを食べることが出来た。
あと、ビールも。
ラブホテルの中の無料ビールがレオンさんのお気に入りだった。日本ではありふれた(?)ユウヒビールなのだが、この世界のビールはもっと雑味がおおいらしく、レオンさん曰く『のど越しサイコー』らしい。
「おし!じゃあ俺等が先に寝るけど、用もねぇのに俺等の名前呼んだら殺すからな」
ジーンさんと三人の冒険者はそう言って体育座りをして目を閉じる。
僕は、『こんな所で寝れるのか?』なんて思っていたんだけど、しばらくするとジーンさんの寝息が聞こえた。
すげぇ。
寝てるよ。
そう感心してるとレオンさんが隣に来て、
「どこでも寝れる体にしとかねぇと冒険者はキツい。例え5分でも休める時に少しでも休めねぇとダメだ。そんで、一番効率が良いのが、『寝る』だ。寝たのと寝ないのでは疲れの取れが全然違う。少しでも効率良く休む為にも例え短時間でも寝る事を覚えた方が良い」
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そう言って僕に向かって頭を下げた。
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この兵士さんは深く傷を付けられていてかなり深刻な状態だった所を僕の『エクストラヒール』で助けてあげたのだ。
「これ程優秀な神聖魔法の使い手に治して頂けるとは光栄です」
「はぁ」と僕が気のない返事をすると。
「通常、ここまで綺麗に傷を直してくださる神聖魔法の使い手は希有なんです。良くない神聖魔法の使い手ですと、傷を治しても治ったのは見た目だけで、痺れが残ったり、血が上手く通わないなんて事が多いんです」
そうなん?
そう思ってレオンさんを見ると頷いて、
「その通りだ」そう言ってレオンさんはジーンさんを指差して、「アイツがお前を慕ってる理由がそれだ」と言った。
イヤイヤ、ジーンさんが慕ってるのはマリアでしょ。
そう思い、「はぁ、まぁ」とまた気のない返事をした。
でも確かにジーンさんもそう言ってたな。
この世界では神聖魔法があってそれで傷を治すんだけど、傷が治りきらなくて、それが原因で結局冒険者を辞める人が多いらしい。
そして兵士さんが、「実は、、、」と僕を見て申し訳なさそうに、「彼等が話してるのを聞いてしまったのですが、、、」そう言って僕が転移者だと知ってしまったと教えてくれた。
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「僕の事は出来たら内緒にして貰っても良いですか?」
と僕は言いつつ、
良く考えたら空城君にバレたしもう内緒にする必要は無いのか?
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「エマ女王が、貴方の事を探しておりまして、お会い出来たら謝罪と賠償をするようにと指示を受けております」
「お金ください!出来るだけ多目に!」
間髪開けずに言うと、兵士さんは少し後退りして、
「では、ヨウイチ様の事を女王にお伝えしても?」
「はい!どうぞ!お金優先で!」
思わぬ収入を得ることが出来た。
「おいくらぐらい、お支払すれば、、、」
と兵士さんが探りを入れて来るので、
「賠償金としてまず金貨1000枚とぉ、異世界人を国で一人養うのに掛かってる経費を1日金貨10枚としてぇ、それを僕にも生活費として月に300枚だからぁ、この世界に来て、半年は経つから、金貨1800でぇ、だからまずは金貨2800枚払って貰うとしてしてぇ、さらにそれを今後も払ってもらうとなるとぉ、、、」
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これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
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