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第一章
思いを届ける
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思いを届ける
菊と麗華は日本史の授業を受けている。いつもなら、菊は授業のうちに覚えられることは覚えておこうとしっかり授業を受けて、麗華は昔の出来事なんか知らんとばかりに寝ている、そう、いつもなら...
(授業なんて聞いてられん!あれは一体何だったんだ!?)
菊は、昼休みの終わりに麗華が言いかけたことが気になって授業に集中できずにいた。
『友情とかは違うまた別のー』
(どういう意味なんだ、もしかしてあたしと同じ気持ち...なのか?)
麗華の言葉の続きには心当たりがある。菊にも感じていたこの気持ち、友情とかとは別のなにか。果たしてこの感情が、麗華と同じなのかは今すぐわかることではない。麗華はやはり寝ているのだろうか、人がこんなに考えてるというのにのんきなものだとそっと麗華のほうを見ると麗華は普通に起きていた。だが、顔を両手で覆っているせいでまともに表情が見えず、隣の席の人から「大丈夫?」と声をかけられても軽く頷くことしかできていない。
ーーーーーーーーーーーー
(私何言おうとしてるのよ~!)
麗華は自分が言おうとしていたことを思い返し、恥ずかしくて顔を伏せるしかなかった。隣から声をかけられているが脳内がパニック状態になってるためうまく声が出ず顔を動かすしかなかった。
(でも、私の気持ちをきくちゃんに届けたいのはほんと。だけどあそこで言おうなんて思ってなかった~...)
いつものように二人きりでご飯を食べていて、偶然間接キスして少し菊をからかおうとしたつもりだったが菊とずっと一緒にいたいと言ってしまった。
(なにがまじめな話よ~!これからきくちゃんとどう接したらいいの!?)
五月半ばの昼下がり、中間テストがもうすぐ始まる中、二人はお互いのことしか考えていなかった。
ーーーーーーーーーーーー
5時間目が終わり、早速麗華の席に行こうとしたら麗華はそそくさと走ってどこかに行ってしまった。菊も麗華を追いかけるために走ったが、陸上部の足に追いつけるはずもなく見失っていた。しばらくあたりを探したが見つからず6時間目が始まろうとしていた。教室に戻ろうかと考えたが、麗華がいなければどうせ集中できないだろうと授業をサボって麗華を探し続けた。すると外を出てすぐの校舎裏に人影があった。麗華だった。
「麗華、こんなところにいたのか」
「きくちゃん!授業は...」
「そんなの、今は関係ない。どうせ気になって集中できねえよ」
菊にも言いたいことがあった。この話をあまり先延ばしにしたくはなかったので授業を抜けてでも麗華と話したかった。
「さっきの話なんだけど、あれってーー」
「待って!」
「ん!?」
続きを持ちかけたところで麗華が大声で静止した。麗華がこんなに大きな声を出したのはめったになかったので、菊も麗華も驚いていた。しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは麗華だった。
「ごめんね大きな声を出しちゃって...。でもね、その続きを話すにはまだ心の準備ができてないの。だからもう少し時間をちょうだい?」
「いや、でも」
「お願いだから!お願い...待ってて」
麗華は苦しそうな顔をして俯いた。そんな苦しい顔をして欲しかったわけではない。菊自身も心の整理が済んでいないことをいまさらながら自覚し、ちゃんと向き合うためにも麗華を待つことにした。
「...わかった。いつまで待てばいい?」
「この時間だけでいいの。放課後、あの場所で待ってるから」
麗華はそういって上を見上げ、また走ってどこかに行ってしまった。そうだ。あの話の続きはその時した場所でなければならない。菊もそう思い、教室のほうに戻った。授業に遅れて教室に入ったのでクラスの視線は菊に集中していたが、難しい顔を浮かべていた菊が恐ろしかったのか先生もクラスメイトも授業に戻った。
(あいつに本当に伝えたいこと...)
自分は麗華のことをどう思っているのか。ちゃんと向き合うためには「なにか」などと曖昧な言葉にはしてはいけない。この気持ちに名前を付けるのならきっとーーなぜあたしは教室に戻ってきてしまったのかと菊は後悔した。こんなに心拍数が上がるとは思わなかったからだ。今なら顔を覆った麗華の気持ちがわかる気がした。
麗華は人目につかない校舎の裏で気持ちを整理していた。菊に自分の気持ちを最後まで伝えられるように。
(私、いつからきくちゃんのこと...。もういつからとかじゃないか。気づいたときにはこうだったかも。だから言葉にしにくいんだなぁ。でもこの気持ちは、ちゃんときくちゃんに伝えたい)
菊に対する感情は思い返すたびに重なって固まっていき、そして1つの答えにたどり着く。授業ももうすぐ終わる。麗華は一足先に屋上に向かった。
授業の終わりのチャイムが鳴り、それと同時に菊は教室を飛び出して屋上に向かった。階段を駆け上り、屋上の入り口の前に行くと屋上に出るドアの前に麗華が立っていた。
「あちゃー、屋上開いてなかった~」
今考えてみれば、屋上は昼休みに解放されているものであり、部活の練習で使われることもあるがまだその時間ではないため開いていない。だが菊も麗華も話をするのはここだと決めていたので関係なかった。
「仕方ない、ね。じゃあここで、話の続き」
麗華は笑顔を浮かべているが、気持ちは真剣そのものだった。
「あぁ、あたしも伝えたいことがある」
その気持ちに答えるように菊も真剣な顔を浮かべた。
「私ね、この気持ちはずっと前から感じてたの。いつからとか覚えてないくらい。ただなんていうものなのかわからなかったんだぁ。でもね、昼休みに言いかけて、それからたくさん考えてわかった」
麗華は心臓の鼓動が速くなるのを無理やりおさえ話をつづけた。
「私はきくちゃんのこと...好き、なんだよ」
声がすごく震えていたが、菊の顔が真っ赤になったので伝わったんだなっていうのが分かり、麗華もつられて顔が火照った。
「この好きはね、友達だからとか幼馴染だからとかそういうんじゃなくて、これはきっとーー」
「「恋」」
麗華はきっとそういってくれると確信して、菊は言葉を重ねた。
「きくちゃん、なんで私の言おうとしたことーー」
「そりゃ、何年幼馴染やってると思ってんだよ」
菊は恥ずかしそうに言ったが、目はずっと麗華をとらえていた。
「麗華はいつも勉強やらずに遊んでばっかだし、人目を気にせずくっついてくるしからかってくる。どれだけ大変だったと思ってる」
菊は今までのことを振り返り麗華にぶつける。それを麗華は静かに受け止めていた。
「でも、大変ではあったけど嫌ではなかったんだ。そうやって麗華と一緒にいる時間がすごい楽しかったんだ。一緒に遊んだり、どこかに行ったり、ただ話してるときでさえな。そう思えたのは...」
麗華は涙をこぼした。自分でもなんで泣いているかわからないらしく、戸惑いながらも涙を袖で拭いていた。菊は泣いている麗華の顔をこちらに向かせて、そっと麗華の涙を指で拭った。
「麗華のことを大事に思ってるってことに気づいたからだ。幼馴染とか親友とかそんなんじゃなくて、一人の人間として」
「うん」
「あたしも、麗華のこと、好きだよ。誰よりも何よりも一番好きだ」
「うん、うん!」
涙が出てくるばかりで言葉がうまく出せず頷くことしかできなかった麗華を今度はやさしく抱きしめた。
「ずっと隣にいる、誰よりも近くにいる。絶対に離れたりしない」
「うん!私も...絶対に離れない」
抱き合う二人の顔は吐息がかかる距離までくる。以前にもこんなことがあった。あのとき、菊は顔をそむけたが今はしっかりと麗華を見ている。見つめあう瞳は徐々に近づき、気づいたときには唇に柔らかな感触がした。その時ーー
「屋上のカギ持ってる?」
「さっき先生からもらってきたー」
「絶対外暑いよね」
「ねー」
屋上を使う部活動の人たちがこちらに向かってくる声が聞こえた。気づいた二人は同時に唇を離し、階段の方を振り向き、再び見合って声を少し殺して話した。
「どうしよ~ここにいるのがバレちゃうよ~」
「仕方ない、このまま走って通り過ぎよう。もうこれしか方法はねえ、行くぞ麗華」
「うっうん、わかった!」
菊は麗華の手を取り走り出した。麗華もそれに合わせて階段を駆け下りる。降りるときに体育着姿の女子二人とすれ違ったが気にする余裕もなく走った。
教室に荷物を置いたままだったので、それを取りに行くと教室には誰もおらずカーテンが風でなびいているだけだった。
「誰もいないね~」
「まあいても困るけどな」
「そう、だね」
二人の間に少し気まずい空気が流れる。半ばその場の雰囲気に踊らされキスをしたことを思い出し二人して顔を合わせることができなかった。それぞれの荷物を回収し菊が先に教室を出ようと思ったところ
「ここで、さっきの続きをしない?」
麗華が続きを要求してきた。
「ここで!?いやさすがにそれは」
「いいでしょ誰もいないし、ほ~ら」
そういって麗華はキス待ち顔で止まった。これは本気だと悟った菊は覚悟を決めて麗華に近づいた。
(改めてすると結構緊張するな...もうどうにでもなれ!)
さっきよりも勢いのついたキスをした。キスをしてる自覚がはっきりとある分恥ずかしくなりすぐに離した。麗華はすぐに終わってしまったことが不満だったのか口をとがらせ文句を言った。
「なんですぐ離しちゃうのさ~。もっとしようよ~」
そう言いつつ、麗華も恥ずかしくて仕方がなく顔が火照っていた。
「麗華だって恥ずかしいんだろ!何もここでしなくても他のところでできるだろ!」
「べっ別に恥ずかしくなんて!ってえっ?じゃあ他の場所だったらしてもいいの?」
「あっ!んま、まあ。家の中で二人きりの時とか...なら...」
菊はしてる姿を想像し恥ずかしくて死にそうになっていたが、麗華の不満そうな顔がぱっと明るくなった。
「ふふ~ん、そうなんだー。じゃあいつでもできるね!家お隣同士なんだから♡」
「そんな頻繁にするもんじゃねえだろ!」
「いーじゃんもうキスしてるんだから~。毎日しようよ~」
「まだ駄目だ!ほらさっさと帰るぞ」
「は~い」
そうして教室を出ようとしたところで、どこかから視線を感じた。何度か感じたことがある感覚だ。周りを見回しても誰もいないし廊下にも誰もいなかった。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。行こう」
「うん」
二人はそのまま昇降口へと向かった。その姿を隠れながら見ている人がいるとも思わずに。
(あの二人、まさかそういう関係なの!?)
赤井毬は、教室での出来事を一部始終目撃してしまった。自分の教室で勉強をしていてキリがよくなったので帰ろうとしたところ、菊の姿が見えたので教室に入ろうとしたら他の人と一緒にいたので反射的に隠れてしまった。
(GWの時、神社で見かけたのが赤崎さんかどうか確認したかったけど一緒にいた人もあの時に見たわね。やっぱりあれは赤崎さんだったのね)
菊の幼馴染というのは本人から聞いたことがあったが、まさかそれ以上の関係だったとは思いもしなかった。
(なんで私はこんなモヤモヤした気持ちになっているのかしら)
自分の抱いている感情が理解できず、しばらくその場で考えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昇降口で靴に履き替えた菊は、麗華が靴を履き終わったのを確認し歩き出そうとしたところ麗華が前にやってきて左手を向けてきた。
「手、つないで帰ろ?」
「あぁ、そうだな」
しっかりと麗華の手を握り、並んで歩きだした。いつもの帰り道を進むといつもと変わらないはずの景色が少し違って見えた気がした。
「これからどうなるのかな~私たち」
「そんなのわかんねえよ」
「もういじわる~」
「だって、今日のことで頭いっぱいなんだよ...」
「...!ふふっ、そんなに私のこと考えてくれてるの~?かわいい~好き~」
「かわいいゆうなー!...麗華だって十分かわいいだろ...」
「えっ!?あっありがとう...」
二人とも今日はいろいろありすぎて距離感がよくわからなくなってしまっていた。だがあまり気まずいとは思わずそのまま会話は続いた。そうしているうちに家に着いた。距離は変わらないはずなのに今日はあっという間に思えた。家の前についてもしばらくは手をつないだままでいたが、先に手を話したのは麗華だった。
「また明日、きくちゃん」
「おう、また明日」
麗華が玄関に向かうのを確認して菊も帰ろうとしたとき
「きくちゃん!」
名前を呼ばれ、振り返ると麗華が駆け寄ってきて3度目のキスを麗華のほうからしてきた。
「これからよろしくね!」
そういって走って家に入っていった。しばらく何が起こったかわからずにいた菊は理解した瞬間自分の家に駆け込み母のおかえりの言葉も気にもとめず自室のベッドにダイブした。
「うあああああああああああ!」
よくわからない大きい感情をベッドの上でごろごろ転がりながら叫んで発散した。
「うわああああ!しちゃったよーーー!」
菊とほとんど同時に麗華も枕に顔を押し付け、足をパタパタ交互にベッドに叩きつけていた。
家が隣というのは近いようで少し離れた距離だった。だが今日はそんな距離もないくらいに近くに存在を感じられた。
続く
菊と麗華は日本史の授業を受けている。いつもなら、菊は授業のうちに覚えられることは覚えておこうとしっかり授業を受けて、麗華は昔の出来事なんか知らんとばかりに寝ている、そう、いつもなら...
(授業なんて聞いてられん!あれは一体何だったんだ!?)
菊は、昼休みの終わりに麗華が言いかけたことが気になって授業に集中できずにいた。
『友情とかは違うまた別のー』
(どういう意味なんだ、もしかしてあたしと同じ気持ち...なのか?)
麗華の言葉の続きには心当たりがある。菊にも感じていたこの気持ち、友情とかとは別のなにか。果たしてこの感情が、麗華と同じなのかは今すぐわかることではない。麗華はやはり寝ているのだろうか、人がこんなに考えてるというのにのんきなものだとそっと麗華のほうを見ると麗華は普通に起きていた。だが、顔を両手で覆っているせいでまともに表情が見えず、隣の席の人から「大丈夫?」と声をかけられても軽く頷くことしかできていない。
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(私何言おうとしてるのよ~!)
麗華は自分が言おうとしていたことを思い返し、恥ずかしくて顔を伏せるしかなかった。隣から声をかけられているが脳内がパニック状態になってるためうまく声が出ず顔を動かすしかなかった。
(でも、私の気持ちをきくちゃんに届けたいのはほんと。だけどあそこで言おうなんて思ってなかった~...)
いつものように二人きりでご飯を食べていて、偶然間接キスして少し菊をからかおうとしたつもりだったが菊とずっと一緒にいたいと言ってしまった。
(なにがまじめな話よ~!これからきくちゃんとどう接したらいいの!?)
五月半ばの昼下がり、中間テストがもうすぐ始まる中、二人はお互いのことしか考えていなかった。
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5時間目が終わり、早速麗華の席に行こうとしたら麗華はそそくさと走ってどこかに行ってしまった。菊も麗華を追いかけるために走ったが、陸上部の足に追いつけるはずもなく見失っていた。しばらくあたりを探したが見つからず6時間目が始まろうとしていた。教室に戻ろうかと考えたが、麗華がいなければどうせ集中できないだろうと授業をサボって麗華を探し続けた。すると外を出てすぐの校舎裏に人影があった。麗華だった。
「麗華、こんなところにいたのか」
「きくちゃん!授業は...」
「そんなの、今は関係ない。どうせ気になって集中できねえよ」
菊にも言いたいことがあった。この話をあまり先延ばしにしたくはなかったので授業を抜けてでも麗華と話したかった。
「さっきの話なんだけど、あれってーー」
「待って!」
「ん!?」
続きを持ちかけたところで麗華が大声で静止した。麗華がこんなに大きな声を出したのはめったになかったので、菊も麗華も驚いていた。しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは麗華だった。
「ごめんね大きな声を出しちゃって...。でもね、その続きを話すにはまだ心の準備ができてないの。だからもう少し時間をちょうだい?」
「いや、でも」
「お願いだから!お願い...待ってて」
麗華は苦しそうな顔をして俯いた。そんな苦しい顔をして欲しかったわけではない。菊自身も心の整理が済んでいないことをいまさらながら自覚し、ちゃんと向き合うためにも麗華を待つことにした。
「...わかった。いつまで待てばいい?」
「この時間だけでいいの。放課後、あの場所で待ってるから」
麗華はそういって上を見上げ、また走ってどこかに行ってしまった。そうだ。あの話の続きはその時した場所でなければならない。菊もそう思い、教室のほうに戻った。授業に遅れて教室に入ったのでクラスの視線は菊に集中していたが、難しい顔を浮かべていた菊が恐ろしかったのか先生もクラスメイトも授業に戻った。
(あいつに本当に伝えたいこと...)
自分は麗華のことをどう思っているのか。ちゃんと向き合うためには「なにか」などと曖昧な言葉にはしてはいけない。この気持ちに名前を付けるのならきっとーーなぜあたしは教室に戻ってきてしまったのかと菊は後悔した。こんなに心拍数が上がるとは思わなかったからだ。今なら顔を覆った麗華の気持ちがわかる気がした。
麗華は人目につかない校舎の裏で気持ちを整理していた。菊に自分の気持ちを最後まで伝えられるように。
(私、いつからきくちゃんのこと...。もういつからとかじゃないか。気づいたときにはこうだったかも。だから言葉にしにくいんだなぁ。でもこの気持ちは、ちゃんときくちゃんに伝えたい)
菊に対する感情は思い返すたびに重なって固まっていき、そして1つの答えにたどり着く。授業ももうすぐ終わる。麗華は一足先に屋上に向かった。
授業の終わりのチャイムが鳴り、それと同時に菊は教室を飛び出して屋上に向かった。階段を駆け上り、屋上の入り口の前に行くと屋上に出るドアの前に麗華が立っていた。
「あちゃー、屋上開いてなかった~」
今考えてみれば、屋上は昼休みに解放されているものであり、部活の練習で使われることもあるがまだその時間ではないため開いていない。だが菊も麗華も話をするのはここだと決めていたので関係なかった。
「仕方ない、ね。じゃあここで、話の続き」
麗華は笑顔を浮かべているが、気持ちは真剣そのものだった。
「あぁ、あたしも伝えたいことがある」
その気持ちに答えるように菊も真剣な顔を浮かべた。
「私ね、この気持ちはずっと前から感じてたの。いつからとか覚えてないくらい。ただなんていうものなのかわからなかったんだぁ。でもね、昼休みに言いかけて、それからたくさん考えてわかった」
麗華は心臓の鼓動が速くなるのを無理やりおさえ話をつづけた。
「私はきくちゃんのこと...好き、なんだよ」
声がすごく震えていたが、菊の顔が真っ赤になったので伝わったんだなっていうのが分かり、麗華もつられて顔が火照った。
「この好きはね、友達だからとか幼馴染だからとかそういうんじゃなくて、これはきっとーー」
「「恋」」
麗華はきっとそういってくれると確信して、菊は言葉を重ねた。
「きくちゃん、なんで私の言おうとしたことーー」
「そりゃ、何年幼馴染やってると思ってんだよ」
菊は恥ずかしそうに言ったが、目はずっと麗華をとらえていた。
「麗華はいつも勉強やらずに遊んでばっかだし、人目を気にせずくっついてくるしからかってくる。どれだけ大変だったと思ってる」
菊は今までのことを振り返り麗華にぶつける。それを麗華は静かに受け止めていた。
「でも、大変ではあったけど嫌ではなかったんだ。そうやって麗華と一緒にいる時間がすごい楽しかったんだ。一緒に遊んだり、どこかに行ったり、ただ話してるときでさえな。そう思えたのは...」
麗華は涙をこぼした。自分でもなんで泣いているかわからないらしく、戸惑いながらも涙を袖で拭いていた。菊は泣いている麗華の顔をこちらに向かせて、そっと麗華の涙を指で拭った。
「麗華のことを大事に思ってるってことに気づいたからだ。幼馴染とか親友とかそんなんじゃなくて、一人の人間として」
「うん」
「あたしも、麗華のこと、好きだよ。誰よりも何よりも一番好きだ」
「うん、うん!」
涙が出てくるばかりで言葉がうまく出せず頷くことしかできなかった麗華を今度はやさしく抱きしめた。
「ずっと隣にいる、誰よりも近くにいる。絶対に離れたりしない」
「うん!私も...絶対に離れない」
抱き合う二人の顔は吐息がかかる距離までくる。以前にもこんなことがあった。あのとき、菊は顔をそむけたが今はしっかりと麗華を見ている。見つめあう瞳は徐々に近づき、気づいたときには唇に柔らかな感触がした。その時ーー
「屋上のカギ持ってる?」
「さっき先生からもらってきたー」
「絶対外暑いよね」
「ねー」
屋上を使う部活動の人たちがこちらに向かってくる声が聞こえた。気づいた二人は同時に唇を離し、階段の方を振り向き、再び見合って声を少し殺して話した。
「どうしよ~ここにいるのがバレちゃうよ~」
「仕方ない、このまま走って通り過ぎよう。もうこれしか方法はねえ、行くぞ麗華」
「うっうん、わかった!」
菊は麗華の手を取り走り出した。麗華もそれに合わせて階段を駆け下りる。降りるときに体育着姿の女子二人とすれ違ったが気にする余裕もなく走った。
教室に荷物を置いたままだったので、それを取りに行くと教室には誰もおらずカーテンが風でなびいているだけだった。
「誰もいないね~」
「まあいても困るけどな」
「そう、だね」
二人の間に少し気まずい空気が流れる。半ばその場の雰囲気に踊らされキスをしたことを思い出し二人して顔を合わせることができなかった。それぞれの荷物を回収し菊が先に教室を出ようと思ったところ
「ここで、さっきの続きをしない?」
麗華が続きを要求してきた。
「ここで!?いやさすがにそれは」
「いいでしょ誰もいないし、ほ~ら」
そういって麗華はキス待ち顔で止まった。これは本気だと悟った菊は覚悟を決めて麗華に近づいた。
(改めてすると結構緊張するな...もうどうにでもなれ!)
さっきよりも勢いのついたキスをした。キスをしてる自覚がはっきりとある分恥ずかしくなりすぐに離した。麗華はすぐに終わってしまったことが不満だったのか口をとがらせ文句を言った。
「なんですぐ離しちゃうのさ~。もっとしようよ~」
そう言いつつ、麗華も恥ずかしくて仕方がなく顔が火照っていた。
「麗華だって恥ずかしいんだろ!何もここでしなくても他のところでできるだろ!」
「べっ別に恥ずかしくなんて!ってえっ?じゃあ他の場所だったらしてもいいの?」
「あっ!んま、まあ。家の中で二人きりの時とか...なら...」
菊はしてる姿を想像し恥ずかしくて死にそうになっていたが、麗華の不満そうな顔がぱっと明るくなった。
「ふふ~ん、そうなんだー。じゃあいつでもできるね!家お隣同士なんだから♡」
「そんな頻繁にするもんじゃねえだろ!」
「いーじゃんもうキスしてるんだから~。毎日しようよ~」
「まだ駄目だ!ほらさっさと帰るぞ」
「は~い」
そうして教室を出ようとしたところで、どこかから視線を感じた。何度か感じたことがある感覚だ。周りを見回しても誰もいないし廊下にも誰もいなかった。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。行こう」
「うん」
二人はそのまま昇降口へと向かった。その姿を隠れながら見ている人がいるとも思わずに。
(あの二人、まさかそういう関係なの!?)
赤井毬は、教室での出来事を一部始終目撃してしまった。自分の教室で勉強をしていてキリがよくなったので帰ろうとしたところ、菊の姿が見えたので教室に入ろうとしたら他の人と一緒にいたので反射的に隠れてしまった。
(GWの時、神社で見かけたのが赤崎さんかどうか確認したかったけど一緒にいた人もあの時に見たわね。やっぱりあれは赤崎さんだったのね)
菊の幼馴染というのは本人から聞いたことがあったが、まさかそれ以上の関係だったとは思いもしなかった。
(なんで私はこんなモヤモヤした気持ちになっているのかしら)
自分の抱いている感情が理解できず、しばらくその場で考えていた。
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昇降口で靴に履き替えた菊は、麗華が靴を履き終わったのを確認し歩き出そうとしたところ麗華が前にやってきて左手を向けてきた。
「手、つないで帰ろ?」
「あぁ、そうだな」
しっかりと麗華の手を握り、並んで歩きだした。いつもの帰り道を進むといつもと変わらないはずの景色が少し違って見えた気がした。
「これからどうなるのかな~私たち」
「そんなのわかんねえよ」
「もういじわる~」
「だって、今日のことで頭いっぱいなんだよ...」
「...!ふふっ、そんなに私のこと考えてくれてるの~?かわいい~好き~」
「かわいいゆうなー!...麗華だって十分かわいいだろ...」
「えっ!?あっありがとう...」
二人とも今日はいろいろありすぎて距離感がよくわからなくなってしまっていた。だがあまり気まずいとは思わずそのまま会話は続いた。そうしているうちに家に着いた。距離は変わらないはずなのに今日はあっという間に思えた。家の前についてもしばらくは手をつないだままでいたが、先に手を話したのは麗華だった。
「また明日、きくちゃん」
「おう、また明日」
麗華が玄関に向かうのを確認して菊も帰ろうとしたとき
「きくちゃん!」
名前を呼ばれ、振り返ると麗華が駆け寄ってきて3度目のキスを麗華のほうからしてきた。
「これからよろしくね!」
そういって走って家に入っていった。しばらく何が起こったかわからずにいた菊は理解した瞬間自分の家に駆け込み母のおかえりの言葉も気にもとめず自室のベッドにダイブした。
「うあああああああああああ!」
よくわからない大きい感情をベッドの上でごろごろ転がりながら叫んで発散した。
「うわああああ!しちゃったよーーー!」
菊とほとんど同時に麗華も枕に顔を押し付け、足をパタパタ交互にベッドに叩きつけていた。
家が隣というのは近いようで少し離れた距離だった。だが今日はそんな距離もないくらいに近くに存在を感じられた。
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